とある科学の歪曲時計   作:割り箸戦隊

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第8話

 

あれから一夜が過ぎ、久遠が現在居る場所は『17拠点』。

 

 

「こちらも確定情報は少ない。元々、お前の勧誘は計画実行の直前に行う予定だった」

 

「お前はそのまま【メンバー】に所属していろ。アレイスターの情報はいくらあっても困らねえからな」

 

「これからは情報を共有して行動する。反逆を察知されるなよ」

 

 

結局、垣根の計画に乗るのではなく情報共有する『同盟』を組むことになった。

久遠の目的と垣根の目的は完全に一致している訳ではないし、お互いを利用しあう方がいいだろう。

 

久遠は【スクール】の拠点を去ってからも、アレイスターの『プラン』について考えていた。

垣根が確信している『プラン』の存在について、情報交換したあとも久遠は半信半疑といったところだ。

まず、目的も何をしてるのかもハッキリしないし、見えてこない。

真実だとしても、入口も出口も存在しない『窓のないビル』に引きこもった奴をどうやって探ったらいいのやら。

 

久遠側の要求の「『妹達』の残機が百体を下回ったら、二人がかりで【一方通行(アクセラレータ)】を始末する」が通らなかったら決裂もありえたが、そこは了承して貰えた。

 

垣根側の要求、「【スクール】が反逆したあと、【メンバー】の任務として垣根帝督と敵対しない」も別に問題ない。上層部に一回の任務放棄くらいで切られるほど超能力者(レベル5)の価値は低くないはずだ。

 

それに、お互いに別の暗部組織に所属するだけあって有益な情報交換ではあった。

垣根は暗部組織【ブロック】を知らなかったし、久遠は【アイテム】を知らなかった。

 

そして、二万人の『妹達』。残機は一万弱。

 

他には二つの組織が今まで受けた任務の詳細。

【スクール】の連中は『幻想御手』事件で現れた化け物、『幻想猛獣』を知らなかったのだ。

垣根は虚数学区の化け物、『幻想猛獣』に異常なほど興味を見せ、これに【メンバー】が当てられたのは必ず理由があると考えているようだった。

 

垣根が『プラン』を確信した理由は教えて貰えなかった。

ただ、一言だけ。

 

「アレイスターは学園都市の出来事を知り過ぎてる」

 

そう言って、それ以降は何も。

久遠が自分で気づけということなのだろうか。

 

垣根が気にしていた『幻想御手』事件だが、確かにおかしなことはいくつもある。

暗部の仕事なんてそんな物かもしれないが、それを並べると少し異常だ。

 

まず、木山が犯人だと特定される時間と、【メンバー】に任務が与えられるまでの時間がおかしい。

犯人の特定が遅過ぎるのもそうだが、警備員に情報操作が間に合わないほどギリギリのタイミングでの依頼なんて中々ない。

学園都市の能力者が一万人も昏睡させられておいてのこの拙さ。

そこまで後手に回るほど、上層部は無能じゃない。

 

次に、【第三位】【超電磁砲(レールガン)】御坂美琴。

事件の功労者の一人で、巻き込まれた一般人。

しかし、木山の住居から『妹達』『絶対能力進化計画』の情報が発見された。

それに、久遠は上に報告していないが、二人の別れ際の会話から木山の『幻想御手』制作時から間接的に縁が繋がっていた可能性がある。

 

そして、『幻想猛獣』。

あの時はファンタジーな化け物の登場に現実逃避していたが、そもそも『一万人の能力者のAIM拡散力場』の暴走がどうしてあんな見た目なのか。

出来損ないの胎児のような、天使のような。

『虚数学区』はアレが居るようなおかしな場所なのか。アレがそもそもおかしいのか。

 

それに、原子力実験炉に向かう化け物に久遠が自分から向かうまでの間、アレイスターの指示を受けているはずの『仲介役』の女は、一度も久遠達に連絡をしてこなかった。

何故か、任務遂行を急かすこともなく。

 

超電磁砲(レールガン)】に何かを対峙させたかったのか。

 

歪曲時計(ワールドクロック)】に何かを観察させたかったのか。

 

もしくは、両方なのか。

考え過ぎかもしれないが、そうして近づいて行くしかない。

 

なんにせよ、調べることはたくさんある。

『窓のないビル』、『幻想猛獣』、『虚数学区』、現時点でもよくわからないことがこんなにだ。

 

馬場を巻き込むか否か。きっと馬場の情報収集能力は役に立つ。

久遠の反逆を悟られない範囲でなら可能だろうか。

 

一息ついて思考を切り替える。

馬場が『17拠点』に顔を出すならそろそろだ。

いつもの久遠に戻らなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅っせぇなぁ」

 

 

久遠はイライラしていた。馬場はいつもならすでに顔を出している時間なのだが、一向に来る気配はない。

あの腹の贅肉を肥やすことが趣味の性根の曲がった男は、意外にも人付き合いが得意だった。

いいとこのお坊ちゃんを気取った仮面を被り、ごく普通の高校に通う馬場は友人もそれなりにいる。

馬場の癖に何処かに遊びに行っているのだろうか。

人格を偽ってまで他人に媚びる。あいつのそんな生き方を日頃から久遠はクソだと思っていたが、今日こそは本当にあきれ果てた。

外面だけの仮面を被って手に入れた友好にいったい何の価値があるというのだろうか。

 

本当に大切な物はそんなくだらない物じゃないんだ。

 

みんなに本当の自分を見せてみろよ。

 

そこから初めて『本当の自分』が始まるんだから。

 

久遠はそんなことをつらつらと査楽に語りだす。

 

 

「久遠君にだけは言われたくないと思いますが」

「俺はこっちが偽物の人格だからさ」

 

 

ソファーにだらしなく寝転びながらくつろぐ久遠と、何かのアイドル雑誌を読んでいる査楽。

 

 

「もう、今日は来ないかなぁ、あの小太り」

「かもしれませんね」

「よし、なんかイタズラしようぜ」

 

 

久遠は悪い笑顔を浮かべて立ち上がる。

 

 

「僕は遠慮しておきます。あとが怖いので」

「あいつ、本当に性格悪いからなぁ」

 

 

完全に自分を棚に上げた久遠は、馬場の私物が溢れる場所へ歩きだした。

オタク趣味全開の馬場のコレクション。略して『馬場コレ』。

フィギュアやら、PCゲームやら、二次元の女の子が盛り沢山なそのエリア。

久遠はその中でもケースに大切に保管された美少女フィギュアに目をつけた。乱雑な取り扱いでそれを握りしめて、定位置のソファーに戻ってくる。

フィギュアを査楽に見せつけながら、久遠は邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「【歪曲時計(ワールドクロック)】でこいつを五百歳くらいにしてやろう」

 

 

 

 

 

「……間違いなく激昂すると思いますよ」

「馬場が来ないから、俺はもっと激昂してるんだ」

 

 

久遠は能力を悪用したイタズラを躊躇なく実行する。

みるみるうちにお婆ちゃんになっていく、美少女フィギュアだった物。

 

そこで部屋のドアが開き。

 

 

「お、二人ともいるんだ。珍しっておぉォォォぉい!!やめろォォ!!」

「馬場ちゃん、遅っそいじゃんか」

「久遠テメェェッ!!戻せッ!!早く戻しやがれッ!!」

 

 

久遠は、一転して真面目な表情に変わる。

 

 

「……頼みがあるんだ。馬場」

「いいからッ!!さっさと戻せよッ!!」

「話を聞いてくれ。そんな場合じゃないんだ」

 

 

久遠はミイラになったフィギュアを投げ捨てて。

 

 

 

 

 

「俺達は、ずっと騙されていたんだよ。この学園都市に」

 

 

 

 

 

シリアスな雰囲気でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、久遠は馬場がキレて疲れて黙るまで【歪曲時計(ワールドクロック)】を使わなかったので、外はすっかり日が暮れてしまっていた。

 

 

「……久遠、二度と僕のコレクションに触らないと誓え」

「てかさぁ、フィギュアなんか集めるのやめたらいいじゃん」

「人の趣味はそれぞれだと思いますが」

 

 

一息ついて、定位置に収まった三人は会話を再開する。

 

 

「そんな些細なイタズラを引きずんなよな」

「オマエは本当の本当に人格が歪んでるな」

 

 

こういった久遠の能力を使用したイタズラは今日に始まった話ではないのだが、今回のフィギュアは馬場の逆鱗だったらしい。

 

 

「やるならケースの外のヤツにしろよ」

 

 

そう言って馬場は別のフィギュアを投げつけてきた。

久遠には違いがよくわからないが、並々ならぬこだわりを感じたので一応は返事をしてやることにする。

 

 

「わかった、わかった。次はバレないようにやるよ」

「やるなって言ってるんだよッ!!」

「まったく、こんな人形の何がいいんだか」

 

 

そう言って馬場が投げてきたフィギュアを眺める。

そしてスカートを捲ったりしてみるが、久遠は生身の人間の方がいいとしか思えなかった。

 

 

「……で、話なんだけどな」

 

 

久遠は再び、シリアスな雰囲気を作りだしていく。

 

 

「馬場ちゃんに調べて欲しいことがあるんだよ」

 

 

馬場が怪訝な表情でこちらを見てくる。

 

さて、なにから調べて誤魔化すか。

 

 

 

 

 

「『窓のないビル』の行き方」

 

 

 

 

 

まずは、アレイスター=クロウリー。

お前が一番不気味だよな。

 

 

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