コツコツと革靴特有の硬い足音が路地裏を満たす。
足音の原因であるくたびれたスーツを着た青年は少し気だるげに歩を進めていた。
曲がり角を用心深く見ていく。何かを探すように。
しばらく歩いて青年は深くため息をつく。今日も外れかと呟き帰路につこうかと考えた途端、何かの気配を感じた。
咄嗟にスーツの内ポケットにしまってたナイフを抜き取り鞘から刃を出す。
ゆっくり、ゆっくりとナイフを構えながら左手で眼鏡を外し、鞘と一緒に内ポケットになおす。その時、目の色が少し変わった。
1歩1歩と距離を縮め、気配があったところにダンっと飛び出てナイフを気配に向けて構える。しかし、青年はその構えを解いた。
「………女の子?」
いたのは、青年の探していた者ではなく女の子がいた。
黒髪で赤いメッシュを付けた女の子。多分高校生だろう。近くの高校の制服を着ているから青年はそう判断した。
「何故こんなところにいる。ここら辺は色々と物騒だぞ」
内ポケットから鞘を取り出してナイフをしまう。ついでに眼鏡もかけ直す。
ナイフや青年の顔を見たから怯えていたが、怯えた表情を出さないよう歯を食いしばってキッと青年を睨んでいた。
芯がしっかりした少女だ。
そう青年は感じた。気も強く、しっかりしている。だから"家出なんてしてしまったんだろう"と思った。
「何か話したらどうだ?………それとも――ん?」
青年は何かを伝えようとしたが中断する。少女も青年の見る方に顔を向ける。
空からポツリ、ポツリと冷たいものが落ちてきた。
「…………はぁ」
ポリポリと頭を掻きながら青年は
「とりあえず雨宿りするか?」
と少女に手を差しのべたのだった。
20:00、雨のせいかいつもより外はどんよりと暗い。
「で?何故お前はあんなとこにいた」
「それよりもなんであたしを部屋に上がらせたの?まさか」
「そんなR18な展開を俺は求めていない。つかそんな貧相な身体でよくそんなこと言えるな」
「な!?貧相!!?」
青年は少女を自宅で雨宿りさせることにした。あーだこーだ言いそうだと青年は身構えていたが、少女はすんなりと着いてきた。それに対して不気味さを感じたが、青年は何も言わずに少女を自室に上がらせた。
カップにお湯を注いで机に置く。
「飲め。少し濡れただろ……インスタントだけどまだマシな味だ」
「…………ありがと」
少女は渡されたインスタントコーヒーを啜る。少し睨みながら三角座りに座りなおす。
「で、何で部屋に上がらせたの?」
「すんなり着いてきたくせに何言ってんだか…」
「で、何で部屋に上がらせたの?」
「睨むな睨むな。……あのままあの路地裏にいたら危険だったからだ。見た感じ家出少女で、泊まるために友人の家になんて行ける状況じゃなかったんだろ?だからあんなとこにいた。家出にも2つあって数日前から念入りに計画するタイプと自暴自棄になって飛び出すタイプ。お前は後のタイプと見たんだ。違うか?」
「……………」
その沈黙は肯定と見なされるぞと言いながらクローゼットを開く。
青年はごそごそと何かを取り出そうと漁っている。
「答えになってない」
「は?」
青年は手の動きを止める。そして少女の方を見る。相変わらず少女は強く睨んだままだった。
「私をこの部屋に上がらせた理由を答えてない。それが理由ならネカフェとかに突っ込めば良かったじゃない」
「…………お前、今自暴自棄になってるだろ。そんな奴を放置して大変な目に会ったなんて後から聞かされたら目覚めが悪い」
「………本当にそれが理由?」
「残念ながらな。初対面の人間にホイホイ着いてきてるのが良い例だ。お前、何があったのか知らないが、このままだと壊れるぞ」
「……………」
はぁ……と青年はため息をつき、作業に戻る。
タオルやTシャツとか出していたら急に着信音が部屋中に鳴り響いた。
「出ろよ。親御さんだろ?」
「………やだ」
「ワガママ言うな。こんなところより自宅の方がずっと安全だ。さっさと仲直りして帰れ」
「仲直りなんて絶対にできない!」
鳴り響いた着信音は止み、静寂が訪れる。少女は涙目になりながら青年を睨んだ。
曰く、彼女は幼なじみ4人とバンドを組んでるらしい。中学の時からやってるらしく、今ではライブハウスの常連とも言えるレベルに達してるそうだ。つまりかなりの腕前を持ってるということだ。しかし、それは彼女の父親には伝わってない。ちゃんとコミュニケーションを取ってなかったそうだ。それですれ違いが起きてしまった。
「モカたちとぶつかったりしたけど、仲直りして父さんと話してみるって言ったんだ。でも……」
「父親さんは取り合ってくれなかった」
こくりと頷く。コーヒーを飲み干してお代わりを要求するが、青年は飲み過ぎると寝れなくなると言ってカップを取って洗い始めた。
「あたしの話を聞いてと言っても忙しいから後にしろや、辞めないなら話しても無駄だとか言って聞く耳持たずだった」
「………」
「ねぇ…あたしが悪かったの?父さんと全く話をしなかったから?ねぇ………」
「そこにタオルとか置いてるから風呂に入れ。雨に当たって寒いだろ」
「……………ねぇ、あんたがあたしを泊めたのって………やっぱいい」
そう言って少女は脱衣場の方へ歩いていった。
シャーというシャワーの音が微かに聞こえてくる。それと外の風の音が静寂な部屋を満たしていた。
少女が風呂から上がったのと同時に少女の携帯から着信音が鳴り響いた。
「誰からってなってる?」
脱衣場の方から少女は青年に質問した。
「"お父さん"となってる」
「出て」
「は?」
「あんたが出て」
「何で?」
「いいから早く」
青年は何度目か分からないため息をついて少女の携帯……スマートフォンをスワイプさせる。
「……………」
『…おい、蘭。蘭!無事か!』
「……………」
青年は無言のままスマートフォンを机の上に置いて、スピーカーに切り替えた。
『蘭!蘭!返事をしろ!蘭!』
「だそうだ。返事をしたらどうだ?」
「っ!何でスピーカーにしたのよ!」
「ちゃんと髪の毛拭けよ。風邪引くぞ」
ダダダと駆けるように少女……蘭は近づいてきた。風呂上がりでブカブカのジャージにTシャツを年頃の女の子が着たら何か……意外と色気があるなと青年は思ってしまった。
『おい、今男の声が聞こえたんだが…蘭!今どこにいる!っおい、何をする!』
『蘭!無事なの!お願い返事をして!』
「っ…ひまり…………」
どうやら今の声が少女蘭の幼なじみらしい。
『蘭!何か言ってくれ!大丈夫なのか!』
『らーん、声出してー。モカちゃん心配なんだよ?』
『蘭ちゃん!大丈夫?男の人の声が聞こえたって蘭ちゃんのお父さんが言ってたんだけど……今どこにいるの?』
無言で蘭の方を見ると、彼女は下を向いてギリッと歯を食いしばっていた。心配させたことに自分に対して苛立っているのだろう。
青年は、またまたため息をついてスマートフォンのスピーカーに顔を近づける。
「もしもし、私はえーと………彼女を保護したものだ」
『!?』
スマホの向こう側で息を飲む音が聞こえる。それを無視して青年は話を続ける。
「彼女は今かなり混乱している。見知らぬ男の家に上がり込むほどにな」
「ちょっ―モガッ」
何か言い出そうとする蘭の口を手で押さえる。
「明日には帰らせる。だが、今一度考えてほしい。何故こんなことになったのかを」
『それは……』
「確かに彼女の自暴自棄も原因の1つだが、自暴自棄になってしまった……事件の根源を見直してください」
『おい、お前!蘭に手を出していないだろな!』
「そんなこと心配する暇があれば、これまでの娘との会話を思い出してろ」
相手の返事を待たずに電話を切る。口から手を放して切ったスマホを蘭に向けて投げる。それを危なげにキャッチし、危ないじゃないかと蘭は怒った。それを無視して青年は牛乳の入ったカップを机に置いた。
「少しは頭、冴えてきたか?」
「…………うん」
蘭はまた三角座りして机に置いてあるカップを手に取った。
「ねぇ……何か話して」
「……どうした急に」
「コーヒーのせいで目が冴えてるの。何か話して」
「何か……ねぇ」
時刻は0:00。あの後青年は1度外に出て、色々と食材を買ってきた。それで夕食を作り、食事をしながら蘭はポツリポツリと話をした。学校のこと、バンドのこと、色々なことをポツポツと話していった。青年はそれを相づちを入れながら聞いていった。
気づけば時刻は23:30。寝るかと言って青年は蘭にベッドを使うように言った。蘭もそれは悪いと言って承諾しなかったが、寝ないとナイフで刺すぞと脅して無理やりベッドに寝かした。青年はクローゼットから毛布を取り出して床に寝転がった。
「何でもいい。何か眠りにつくまで話して、修也」
「うーん………美竹、俺に面白い話を求めても何もないぞ」
夕食中に青年少女は自己紹介をした。その際に少女は青年を修也と、青年は少女を美竹と呼ぶようにした。
「いいから」
「はぁ……そうだなぁ。美竹、お前は世界がどう見える?」
「は?世界?」
「言い方が悪かったな。そうだな……目の前で折り紙を折ってる子を想像してくれ」
「え?あ、うん……したよ?」
「折り紙の色は?」
「えっと…オレンジ?」
「折ってる子の服は?」
「水色のパーカーで白のTシャツ………」
蘭は疑問に思いながらも修也の質問に答えていく。修也は天井を見ながら息を吸い込んだ。
「昔昔のお話だ。ある施設に少年がいました。少年は幼い頃に高熱を出して生死をさ迷ったそうだ」
「………それって…」
「その高熱のせいで少年の目には色が無くなってしまったのでした。モノクロの世界。それが彼の見える世界でした」
「…………」
蘭は無言で話を聞いた。そうしないといけない……そう思えるほどにこの話は重要だと思ったのだ。
「少年はそのせいなのか"生きる"ことに実感を持てなくなっていて、ある日少年は施設を飛び出してしまいました。少年は生きる実感を求めてさ迷い続けました。迷って迷って、迷い続けて、時には間違った道を歩んでしまったり、自身が壊れかけたりしました。そして、少年自身の色が無くなっていく。そんな気がしてならなくなりました」
ここで修也は一息つく。眼鏡を外してまた天井を見る。
「少年の身体が黒く塗りつぶされていく。ああ、消えていくんだと思ったとき、待ったと黒の侵食を止めた人がいた…………」
「…………ねぇ」
「お前には手を伸ばしてくれる人がたくさんいるだろ?」
「え?」
「お前にはあるだろ?色が。お前を彩ってくれる人たちが。幼なじみもしかり、高校の友人もしかり。そして、ずっとお前を支えてくれていた親御さんも」
「…………」
「親というのはな。無条件で彩ってくれる人なんだ。絵の具や画材が切れたら買ってきてくれて、風景を描きたいと言ったら描きたい場所に連れていってくれる。被写体になってほしいって言ったらなってくれる。友人とかだと貸し借りとかあるだろ?幼なじみでもしかり。親というのはどんなことがあっても最後に味方になってくれる……そんな存在なんだ」
一旦言葉を切る。そして修也はゴロンと寝返りを打った。
「少し話しすぎた。もう寝ろ。明日は一緒にお前んとこの家に行くぞ。お前の親御さんには貸しを与えたんだからな。その分しっかり回収しないとな」
そう言って話すのを止めた。しばらくしたらスースーと寝息が聞こえた。それは蘭からなのか、修也からなのか、はたまた両者からなのか、この答えは本人たちにしか分からなかった。
「ありがと……それじゃ」
そう言ってあたしは修也の家を出た。
机に置いてあった鍵を使って鍵を閉めて、鍵はドアのポストに入れる。その時ガチャンと結構大きな音がなったので慌ててその場を後にした。
雨は小雨になっていた。これなら走って帰ればそんなに濡れないだろう。まあ、すでに制服は先の雨で湿ってしまっているが。
修也が寝たことを確認してあたしは制服に着替えて借りた服は洗濯機の上に置いた。そして、机の上に世話になったことと、後日お礼をするという置き手紙を書いて彼の家を出た。
「4月も終わるというのに寒っ」
駆け足で道を駆け抜ける。雨のせいか肌寒く道は薄暗い。
後数分で自宅につく所であたしの身体は凍り付いた。
急に動かなくなったのだ。声も出ない、手足が痺れたかのように全く反応しない。まるで金縛りにあったように。
「ありゃ?おいらを見たら皆失神するのにこの娘はまだ意識があるぞ?」
20m先に"異物"があった。黒髪で学ランの少年。それだけなら普通なのだが、その少年の顔、口の右側がパックリと裂けていた。まるで大きなモノを食べるためのように。そして、学ランの下のカッターシャツは血を浴びたかのように真っ赤に染まっていた。
一目見たら分かる。これは異常だと。
逃げたいのに身体が動かない。
叫びたいのに口から出るのは空気だけ。
「まあ、いいか。久々の女の子だぁ。ちょっと嬉しいよ」
ズシンズシンと奴が歩く度に地面が揺れているような感覚に陥る。
逃げないと
逃げないと
逃げないと!
5mとなった瞬間身体は動き出し、あたしは来た道を引き返した。
「うわぁ、すごい。おいらから逃げ出した人、久しぶりに見た。じゃあ追いかけよう!」
異物はあたしを捕らえるためにものすごいスピードで追いかけてきた。
全力で走りながら頭の中を急いで整理しようと頑張った。
あれは何?見た感じ、近くの工業高校の制服に見えたけど、学ランなんて、どこにでもあるから正直正解なのか分からない。
そういえば修也は何かを探すように歩き回ってたような気がする。まさかあれを探していたの?じゃあ、あんな異物を探していた修也は一体何者なの?
分からない。
分からない!
分からない!!
気づけば路地裏に入っていて、異物は目の前まで迫っていた。
必死に走るが身体がよろけて転けてしまった。
「うっ……コフッ……………はぁ……はぁ……」
何度もゴロゴロと転がる。全身に痛みが走りうめき声が吐き出た。
もう声も出ない。恐怖で身体がまた痺れたかのように動かない。
「ふぅ……君、陸上部だったの?すごい脚力だったね。でもおいらも走るのは得意なんだ」
何か異物が話しているが意識が段々と遠退いていて聞こえづらくなってきた。
「うーん、やっぱり今回は一級品だよ。とても芯の強い女の子だぁ。食べごたえがある」
だらだらと頬の裂け目から涎が垂れている。見てるだけで寒気がする。でももう、あたしの身体は凍り付いて動かなくなった。
あたしの人生、こんなとこで終わりなのかな?
こんな危険な奴に食い殺されてしまうのかな?
…………結局父さんにバンドを認めて貰えなかったな。もっと早く言っとけば良かった。そうすればこんなことにならなかったのに。
たらればの話をしてもどうしようもない。あたしはもうここで終わってしまうんだ。
………だよ
…………………嫌だよ。
…………………………嫌だ!こんなところで終わりたくない!
まだまだもっとモカたちとバンドを続けたい!もっともっと楽しいことをしたい!何であたしがこんな目にあうの!ふざけないで!!
「んあ?目に力が入った?すごーい。こんな状況でまだそんな目ができるんだ。本当に君は心が強いんだね!今のうちに食べないと!」
動いて!少しでも距離離さないと本当に死んでしまう。どこでもいい、早く、早く!
「ったく、お前ら陸上部か何かかよ……」
「へ?ゴホッ!」
目の前にいた異物がぶれたと思ったら姿が消えた。
異物のいたところに見知った男が立っていた。くたびれたスーツにボサボサの黒髪、少し覇気のない目をした猫背の男。
「修……也?」
「嫌な勘というのはよく当たる。この時間にうろついたら危ないだろ。ニュース見てないのか?」
「え………あ」
「連続虐殺事件。あれがあの犯人だ」
この近くで深夜頃になると殺人事件が起きると言っていたような気がする。性別、年齢関係なく、この時間に1人でいたら食いちぎられたかのように殺されると、ニュースでやっていたはず。
「修也は警察だったの?」
「いや、警察じゃ手に終えない事件を上司が引っ張ってきてな。それを解決するのが俺の仕事。元々俺は用心棒だ。いつの間にかこんな仕事をやらされてたんだ」
ため息をつきながら内ポケットからナイフを取り出し、眼鏡をしまった。
「痛いなぁもぉ……今の飛び蹴り本当に痛かったよ?」
「そりゃそうだろ。そういうふうにしたんだから」
「だからね?慰謝料として君の肉を頂戴!」
フラりと異物は立ち上がったかと思うと、一瞬にして修也と距離を詰め、手を腹に向けて剥ぎ取るように振るった。それを修也はナイフでいなした。
何合か打ち合うと、あたしを中心にして修也と異物は距離を置いた。
「お前、生まれつき身体が硬いのか?」
「そうだよぉ?小さい頃からおいらは身体が硬いんだ!注射器も通らない、車に引かれても無傷だよ?でも、君の蹴りは凄く痛かった。何で?」
「そりゃ………いや、マジックのネタバレは面白くないだろ?」
「そうだね!……クフフ、それよりもおいら、とっても嬉しいな」
「どうした急に」
修也は怪訝な顔をする。異物はユラユラ揺れながらケラケラと笑い続けていた。
「だって、"同類"と会えたんだもん」
同類?どういう意味だろう?
「君もおいらと同じで、人を殺すことで生を感じるんだろう?」
え?
「同類は匂いや感覚で分かる。そうだろ?」
「そうだな。確かに思考はお前らと同じだろうな」
嘘、急に何なの?闘ったと思えば、次は修也とあの異物は同類だとか、意味が分からない。
「おいらが人を食い殺すのは」
「己が生きているという実感を得るため」
「おいらがやってるのは」
「生物の本能のようなもの」
「そこまで分かってるなら、何故君はおいらの前に立ち塞がる?」
「上司が怖いからな」
今度は修也がケラケラと笑いだす。でも目は全く笑ってなかった。
「確かにお前らと俺は同類だと周りは定義するだろう。でもな、俺は残念ながらお前らみたいに答えを持ってないんだ」
「は?」
異物は怪訝な顔をする。あたしも多分同じ顔をしてるのだろう。彼の言ってることを全く理解できてないから。
「俺はな、中途半端なんだ。お前らは人を殺すことで生きることを感じるという"答え"を持っている。本当なら俺も本能に身を任せて人を刺し殺せば良いのに。それはダメだと違う俺が留めるんだ。それは答えではないって。じゃあ、答えって何だ?分からない。今日も答えを求めて宙ぶらりんの生活を送る………でもな」
クルクルとナイフを回す。そして身を低くして構える。
「少なくとも今はこれだけは分かる。彼女は殺されてはいけない。彼女はまだ彩り始めたばかりだから」
「彩……え?」
異物は彼の言葉の意味を考えるが分からなかったのだろう。少しイライラしている。
「何、さっきから意味分からない事を言ってるんだ!おいらにも分かるように説明しろ!」
さっきより数段も早いスピードで異物は修也に迫る。爪を立て顔に突き刺すように手を伸ばした。
「つまり、お前は消えろ」
修也はそう呟き、目を見開く。目が青黒く濁った色になり、何本も白い亀裂の走った目に変わった。その瞬間、修也は伸びてくる手を流れるように避けて異物の亀裂の走った頬の近くにナイフを振るった。まるで何かを斬るように。
すると異物はへぁ?とすっとんきょうな声を上げて倒れてしまった。
あたしは修也の方をボーッと見ていた。修也はふと空を見上げた。つられてあたしも空を見る。
小雨は止み、雲の隙間から星が見えた。多分一番星だろう………。
えっと、ここからは後日談。
あの後あの異物は全く動かなくなった。白目を向いて不気味だったけど、修也曰く大丈夫らしい。修也はどこかに電話した後、これからどうするのかと聞いてきた。
それで、あたしは修也と一緒に自分の家に帰った。
帰ると家から出てきたのはモカだった。あんなモカを見たのは初めてだった。モカはあたしに抱きついて
「心配したんだよ?本当に心配したんだよ!」
と涙を流していた。すると家から幼なじみが続々と出て来て心配したんだとたくさん言われた。
最後に父さんが出て来て、
「話があるんだろ?言ってみなさい」
と言ってきた。言いたいことがたくさんあるのにそれを我慢して父さんはじっとあたしを見てきた。
あたしは勝手に家出したことの謝罪とこのメンバーでバンドを続けたいこと、それを認めてもらうために今度のライブを見てほしいとチケットを渡そうとしたが、チケットは雨でヨレヨレになってしまっていた。今度渡すと言おうとしたら父さんはあたしの手にあるチケットを取り、
「分かった。中途半端な演奏だったらきっちり辞めてもらうからな」
と言って修也の方へ足を運んだ。軽く何か話すと父さんは、
「ありがとう」
とお礼を言って家に入っていき、
「まだ深夜だ。今日は皆泊まっていきなさい」
と言った。修也は、あたしに近づいてきて
「今回のことは内密にな」
と言って名刺を渡して去っていった。
"空の堂 宇田川修也"
そう記されていた。
バンドリしようと開いたらメンテナンスで、深夜のテンションで書き上げまして……もうメチャクチャです。駄文だよ駄文。
でも後悔はありません。1度こんな感じのものを書いてみたいと思ってましたし。
ちなみに空は"カラ"と読みます
分かってる?ですよね