ハイスクールD×D ~ボンゴレファミリー来る!~ 作:ムンメイ
作中で触れていないものは、番外編として拾っていければと思います。
少なくともリボーンとボンゴレギアはやろうかな。
深夜。
俺ーーー兵藤一誠は部員達+二人……山本と笹川先輩も一緒に町外れの廃屋に来ていた。
ーーーはぐれ悪魔。
悪魔の下僕となった者が主を裏切り……あるいは殺害して、逃亡した者。
力に溺れたり、私利私欲のために各地で暴れ回る事件がごく稀に起こるそうだ。
このはぐれ悪魔は天使側、堕天使側でも危険視しており、見つけ次第殺すようにしているらしい。
あのドーナシークとかいう堕天使も、俺をはぐれ悪魔と勘違いして襲ってきたしな。
先程の朱乃さんからの報告は、このはぐれ悪魔の討伐任務だった。
これも悪魔の仕事の一つで、はぐれ悪魔が現れた土地を管理している悪魔にこういった任務が回ってくる。
「ーーー血の臭い」
小猫ちゃんが顔をしかめて呟く。
え?そんな臭いするか?
もしかして小猫ちゃんは鼻がいいのだろうか。
でも、俺にもこれだけはわかる。
辺りを満たす敵意と殺意。
足がガクガク震える。
だって怖いよ!仲間がいなかったら即逃げてるね。
「イッセー、今日はあなたに悪魔としての戦いを見学してもらうわ」
「け、見学ですか?」
「ええ。厳しいことを言うようだけど……あなたに戦闘はまだ無理。だけど見学ならできるわ。今日は私達の戦いをよく見ておきなさい」
よ、良かったぁぁ……。
いきなり「戦いなさい」なんて言われても、どうしようもなかったし!
「そうね、下僕の特性についても説明しておこうかしら」
「特性……ですか?死ぬ気の炎みたいな?」
ふふっ、と小さく笑う部長。
「ええ、そのようなものよ。……この際だし、悪魔の歴史も含めて教えてあげるわ」
お、お手柔らかにお願いします……。
「遥か昔、悪魔と堕天使、そして天使を率いる神は三つ巴の大きな戦争をしたの。長い戦いだったと聞くわ……。その結果、どの勢力も大きな痛手を負い、勝者のいないまま戦争は数百年前に終結したの」
木場が続く。
「純粋な悪魔はその戦いで多く亡くなったんだ。でも、戦争は終わっても、三つ巴の睨み合いは今でも続いているんだ。いくら神も堕天使も部下の大半を失ったとはいえ、少しの隙を見せれば危うくなる」
今度は朱乃さんだ。
「そこで悪魔は、ある方法で同族を増やすことにしたのです」
ある方法?
部長は一つ頷いて語る。
「それが
チェス、ですか。
「主となる悪魔が『
「好評、とは?」
「競うようになったのよ。『自分の下僕の方が強い!』って。そこで新しいゲームが生まれたの。私たちは『レーティングゲーム』と呼んでいて、今では大会も行われているわ」
えーと、つまり……偉い悪魔さんが自分の下僕を戦わせるゲームをしているってことか?
それはちょっと複雑だな。
「私はまだ公式の大会には出場できないの。色々な条件があって、それをクリアしないとプレイすることができないわ」
ってことは、部長達もまだゲームをしたことはないんだな。
と、それよりも気になることが。
「部長、俺の駒は何ですか?どんな特性があるんです?」
「イッセーはーーー」
そこで言葉止める部長。
俺にもわかる。
敵意や殺意がより濃くなっていたからだ。
そして、『ソレ』は姿を現す。
「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?辛いのかな?」
ヤバい、これは怖い。
女性の上半身に……化け物の下半身。
かなりデカく、五メートル以上はありそうだ。
しかも槍を二本も持ってる!
逃げようにも体が動かず、その場に棒立ちになる俺!
「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅しに来たわ」
堂々と言い放つ部長。
「主の元から逃げ、己の欲のためだけに暴れ回るのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを滅してあげる!」
「こざかしぃぃ!この小娘がぁぁぁ!お前の髪のように血で染め上げてやるぅぅぅ!」
吠える化け物だが、部長は気にも留めない。
「祐斗!」
「はい!」
木場が飛び出していく。
速い!
全然反応できなかったぞ!
「さっきのレクチャーの続きをするわ。祐斗の役割は『騎士』。その特性はスピードよ」
部長の言う通り、目にも止まらぬ速さで化け物の攻撃を躱している。
「そして、祐斗の一番の武器は剣」
いつの間にか剣を握っていた木場。
スッ!
また高速で移動した!
次の瞬間。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
見れば、化け物の片腕が胴体から切り落とされていた。
「目では捉えきれない速度と、剣さばき。これが祐斗の力」
悲鳴をあげる化け物。
だが、奴は残った腕で木場に襲いかかる!
その時、俺達の後ろから一つの影が飛び出す。
あれは……山本!?
「下がりなさい、武!」
これには部長も驚いたのか、慌てて山本を呼び止めようとする。
しかし山本は止まることなく、そのまま木場と奴の間に割り込む!
ギィンッ!!
硬い金属が響く。
山本は見事、槍を受け止めた!
……ん?あれ、もしかして竹刀か?
「ハハッ!間一髪だったな、木場!」
「山本くん!」
奴と鍔迫り合いながら木場に声をかける山本。
いやいや、そんな余裕かましてる場合じゃないでしょう!
「いやー、俺嬉しくってさ。つい手助けしちまったぜ。まさか木場も剣士だなんて思わなかったもんな」
木場『も』剣士?
ということは山本も剣を使うのか?
いや、たしかに竹刀も剣といえば剣だけど!
木場の持っている剣と比べたら頼りなさすぎだろ!
「……彼の竹刀、あれはおそらく鋼鉄製ね」
山本の持っている竹刀をジッと見つめる部長。
「さっきは驚いて思わず引き留めようとしてしまったけど、彼の力も見てみたいわ」
そ、それは俺も見てみたい。
俺達の家庭教師になってくれた以上、山本も強いだろうし。
でも……竹刀じゃなぁ……。
そうこうしている内に、戦いの方に変化があった。
山本は相手の槍をいなし、素早く懐に飛び込む。
山本が技の構えのようなものを取ると……。
プシュッ。
な、なんだあれ!?
竹刀だったものが急に日本刀に変わったぞ!?
しかも刀身には青い炎……雨属性の死ぬ気の炎だ!
「あれは『時雨金時』といって、山本が使う剣の内の一振りです。普段はただの竹刀と同じなんですが、山本が技を放つ時、刀身が潰れて刃が現れるんです」
ツナが皆に解説してくれた。
「山本は時雨金時に雨の炎を纏わせ、斬撃と共に炎を放ちます。雨の炎の特性は『鎮静』。斬撃を受ければ受けるほど、相手は動きが鈍くなっていくんです」
な、なるほど……!
「うがぁぁぁぁぁぁ!!」
うわ!残っていたもう片方の腕も切られて宙を舞った!
「山本はとある流派の後継者で、今のもその流派の技ですね」
ただの野球少年かと思っていたら、剣の達人ですか!
「うぐぐぐ……許さん、もう許さんぞぉぉぉぉ!!」
奴が山本と木場に突進していく!
「……やらせない」
あれ!?小猫ちゃん!?
今度は小猫ちゃんが間に入る。
って、そのままだと……。
山本も割って入ろうとするが、ギリギリ間に合わない!
ズンッ!
ちょ、ちょっと、それはヤバイ……。
だが、突進してきたはずの奴の体は、小猫ちゃんと衝突したところで完全に止まっていた。
それどころか、少しずつ後退している!
「小猫は『戦車』。特性は、バカげた力と屈強な防御力。あの程度はまったく問題ないわ」
部長の言う通り、小猫ちゃんは奴を両手で受け止め、押し返している。
そして遂には突き飛ばした!
そのまま素早くジャンプし、奴の腹目掛けてパンチを放つ。
「……ふっ飛べ」
ドドンッ!
化け物が大きく後方へふっ飛んだ!
怪力ってレベルじゃないぞ!
……うん、小猫ちゃんには逆らわないでおこう。
「最後に朱乃ね」
「はい、部長」
朱乃さんがうふふと笑いながら、小猫ちゃんの一撃で倒れこんでいる化け物の元へ向かう。
「朱乃は『女王』。『王』以外の力を併せ持つ無敵の副部長よ」
朱乃さんは天に向かって手をかざしている。
すると天が輝き、化け物に雷が落ちた。
「ガガガガッ!ガガガガガッ!」
激しく感電する化け物。
「あらあら、まだ元気そうですわね?」
再び天が輝き、雷が化け物を襲う。
な、なんか朱乃さん、楽しんでませんか……?
「朱乃は魔力を使った攻撃が得意なの。あの雷のように、自然現象を魔力で起こす力ね」
「うふふふふ。どこまで耐えられるかしら。まだ死んではダメよ?トドメは私の主なのですから!」
高笑いしながら尚も雷を落とし続ける朱乃さん!
うん、あの人絶対Sだよ。間違いない。
朱乃さんがようやく一息ついたところで、部長が化け物へ近づく。
「何か言い残すことはあるかしら」
「殺せ」
化け物は一言、そう呟いた。
「そう、なら消し飛びなさい」
ドンッ!
部長の手の平から巨大でドス黒い魔力の塊が撃ち出され、化け物を完全に消滅させてしまった。
「終わりね、皆ご苦労様。武もありがとう」
「いえいえ、これくらい大丈夫っすよ!」
本当に余裕そうだな。
全然本気なんてだしていないって感じだ。
しかし、これで討伐任務も終わりか。
……悪魔の戦い。凄まじいものだった 。
まだまだ俺の知らない世界は多いな。
あ、そうだ。
「部長、さっき聞きそびれてしまったんですけど……俺の駒ってなんですか?」
ニッコリと微笑みながら、部長はハッキリと言ってくれた。
「『兵士』よ」
俺は一番下っ端でした。
ー○●○ー
数日後の深夜。
悪魔の仕事で呼び出され、俺は一軒の家へ訪れていた。
普通の一軒家なんて初めてだな。
ブザーを鳴らそうとして、ふと気づく。
玄関が開いている……しかも嫌な寒気というおまけ付き。
申し訳ないと思いつつも、俺は中に入る。
明かりはなく、真っ暗だ。
俺は小さな声で呼びかけた。
「こんばんはー……グレモリー様の使いで来ましたー……」
ところが、返ってきたのは悪意に満ちた声だった。
「んー?これはこれは、悪魔くんではあーりませんかー」
声の方へ振り向くと、若い白髪の男がいた。
神父のような格好をしている。
……って、神父!?
マズイ!教会の関係者には関わるなって言われてたのに!
「俺は神父♪少年神父~♪悪魔な輩をぶった斬り~、俺はおまんまもらうのさ~♪」
な、なんだこいつ、突然歌いだしたぞ!
「俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織の末端でございますよ。大丈夫、俺がすぐに殺してあげる。後ろの奴らみたいに、泣けるほどの快感を味わおうZE!」
殺すって……!
ん?後ろの奴らみたいに?
俺はおそるおそる後ろを振り向く。
「うぇっ……!」
それを見た瞬間、俺はこみ上げてくるものを押さえきれずに吐いてしまった。
壁に遺体が貼りつけられている。
逆十字の形で上下逆さまに、太く大きな釘で至るところを打ち付けられていた。
切り刻まれた体からは内臓らしきものがこぼれていて……。
「俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯みたいだしー」
こいつ、完全にイカれてやがる!
でも一応、言いたいことは言ってやる!
「人間が人間を殺すってどうなんだよ!お前らが殺すのは悪魔だけじゃないのか?」
「はぁぁぁ?悪魔のくせに説教ですかぁぁぁ?ハハ、笑える笑える。いいか、よく聞けクソ悪魔。悪魔に頼った人間ってのはクソなんですよ。人間として終わったもおんなじ。だから俺が殺してあげたのさー」
悪魔だってここまでのことはしないぞ!
神父はおもむろに懐から剣の柄と拳銃を取り出す。
うわ!柄から光の刀身が出てきた!
「っていうかー、俺的にお前がアレなんで、斬ってもいですか?撃ってもいいですか?いいんですね?了解です。今すぐ殺してさしあげます!」
神父が俺に向かって飛び出す!
横に薙いだ光の剣をなんとか避けるが、足に激痛が走った。
「ぐあぁぁっ!」
「どうよ!光の弾丸のお味は!イッちゃいそうになるくらい気持ちいいだろ?」
ふざけんな!めちゃくちゃ痛えよ!
全身に痛みが襲い、俺はまともに立てない。
「死ね死ね悪魔!どうか俺の悦楽の糧になってちょうだぁい!」
キレた笑い声をあげながら、トドメを刺そうとしてきた。
「やめてください!」
聞き覚えのある声。
俺と神父は視線だけそちらへ向ける。
ーーーっ。
「アーシア」
あの時会ったシスターだ……。
「おんや、アーシアちゃんじゃあーりませんか。結界は張り終わったのかな?」
「……!い、いやぁぁぁぁぁっ!」
アーシアが壁の遺体に気づき、悲鳴をあげた。
「あーあー、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですねかぇ。とくと見よ!これが悪魔に魅入られたダメ人間の末路です!」
「……そ、そんな……」
ふいにアーシアの視線がこちらへ向く。
「……フリード神父……その人は……」
「人?違う違う。こいつはクソ悪魔くんですよ」
目を見開いて驚く彼女。
……そりゃそうだよな。
まさか偶然出会った人間が、実は悪魔だなんて思わないだろう。
別れの時、また会いたいだなんて思っていたけど……こんなことなら会わない方がよかった。
「あららら?もしかしたらキミらお知り合い?わーお、これは驚き桃の木!だ・け・ど~?悪魔と人間は相容れません!俺達は神にすら見放された異端ですよ?堕天使さまからのご加護がないと生きていけないハンパ者ですぞぉ?」
堕天使?なんのことだ?
「まあまあ、それはいいとして。とっととこの悪魔くんを殺っちゃわないと」
再び剣を突きつける神父。
だが、俺と神父の間に彼女が立ち塞がる。
「おいおい、自分が何をしているのかわかっているのでしょうかぁ?」
「……お願いです。この方を見逃して下さい」
俺を庇ってくれるのか?
「悪魔に魅入られたからといって、人間や悪魔を殺すだなんて間違っています!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?バカこいてんじゃねぇよこ、このクソアマが!」
バキッ!
「キャッ!」
あいつ、アーシアを殴りやがった!
「……あー、こいつは流石の俺ちゃんもプッチンきましたわ。堕天使姉さんからは殺すなとか言われてっけど、ちょっと○○○まがいのことしてもいいですかねぇ?」
野郎……!
俺は震える体に鞭打ち、立ち上がる。
本当は怖い。
逃げられるなら逃げたいさ。
でも……庇ってくれた女の子を置いて逃げるなんて、俺にはできない!
「マジマジ?戦っちゃう感じ?死んじゃうよ?いいの?それならさっさと殺っちまいましょうかねぇ!」
奴が飛び出してくるーーーその時、床が紅く光りだした。
魔方陣だ。
しかもこれはグレモリーの紋章!
いや、もう一つーーーその魔方陣の横にオレンジの光も発生している。
その紋章は見たことがない。
翼の生えた貝に……拳銃の弾?
光の中から現れたのは、俺の仲間達。
「兵藤くん、助けにきたよ」
木場!それに部長と朱乃さん、小猫ちゃんも!
「遅くなってすまない」
オレンジの魔方陣から現れたのは……ツナ!?
なんで魔方陣から!?
ガキン!
金属音が鳴り響く。
神父の不意討ちをツナがーーーかなりゴツい、金属製のグローブで受け止めた。
「お前さんもクソ悪魔に魅入られたダメ人間ですかねぇ?なら、即断即決真っ二つ!」
「……お前には無理だ」
「まーた生意気言ってくれちゃいますか。どいつもこいつもクソの分際で……胸くそ悪いなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣を大きく振りかぶってツナに襲いかかる!
だが、奴の目の前にいたはずのツナは……一瞬で奴の後ろに回り込んでいた!
なんだ、瞬間移動か!?
奴も突然消えたツナに驚いていたが、すぐに後ろを振り向きーーー終わる前に、ツナが奴へ拳を放った!
「ぶげあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
そのまま一直線に後方の壁へ叩きつけられる!
なんてパンチだよ、人がノーバウンドでふっ飛ぶなんて初めてみたぜ……。
「部長、堕天使らしき者が複数近づいていますわ」
朱乃さんが何かを感じ取ったのか、部長に報告をする。
「……朱乃、イッセーを回収して帰還するわ。ジャンプの用意を」
「はい、部長」
ジャンプ?
ってことは、このまま帰るのか?
俺はふいにアーシアへ視線を向ける。
「部長!あの子も!」
「無理よ、この魔方陣は私の眷属しかジャンプできないの」
「なら俺の魔方陣でーーー」
ツナが進言してくれる。
一目見て、この状況をある程度察してくれたようだ。
がーーー
「それもダメ。言ったでしょう?彼女は教会の者。私達の本拠地に連れていくことはできないわ」
「……くっ!」
ツナが悔しげに漏らす。
そ、そんな……。
「イッセーさん。また、お会いしましょう」
アーシアは笑顔でそう言った。
次の瞬間、床の魔方陣が再び輝きを放つ。
「逃がすかって!」
ツナにふっ飛ばされていた神父が三度襲いかかってくるが、小猫ちゃんが大きなソファーを軽々と投げつける。
神父それを剣で薙ぎ払う頃、俺達は部室へと転移していた。
……俺はアーシアの最後の笑顔が忘れられなかった。