ハイスクールD×D ~ボンゴレファミリー来る!~ 作:ムンメイ
まさかまさかの展開、次巻が楽しみですね!
こちらも急いで追いかけますよ!
パンっ!
部室に乾いた音が響く。
俺ーーー沢田綱吉はイッセーが部長に頬を叩かれるのを驚いて見ていた。
今日、イッセーは昨日の怪我の予後が芳しくなく、部長から休暇命令を受けていたんだ。
けど……どうやら外出した際、あのシスターさんと出会ったらしく、一日中遊びに連れていってあげていたらしい。
その時、彼女の過去を聞いたイッセーは『どんなことがあっても、俺達は友達だ』って、彼女を励ましたそうだ。
彼女は教会を追放された身で、今は堕天使の保護を受けていると聞いていたけど……。
イッセーは彼女の過去について少し教えてくれた。
『どんな怪我も治す奇跡の力を持つ少女』として周囲から持て囃され、いつの間にか『聖女』として祭り上げられていた彼女。
友達を作ることもできず、話し相手すらいなかったそうだ。
そんなある日、彼女は一人の男性が怪我をしていて倒れ込んでいる場面に遭遇し、彼に治療を施す。
それが悪夢の始まりだった。
その男性は悪魔だったのだ。
彼女自身はその事について後悔はないそうだが、運悪くその場面を教会の者に目撃されてしまう。
それを知った周囲の人間は、悪魔すら治療できてしまう彼女の力を恐れ始めた。
『聖女』として崇められていた彼女は、いつしか『魔女』と呼ばれるようになり、教会は彼女を追放してしまう。
そして行き場のなくなったアーシアさんを拾ったのが、極東の悪魔祓い組織という訳だ。
だが、アーシアさんはあの教会から逃げてきたんだと語ったらしい。
平気で人殺しを行うような場所には戻りたくないと、涙を流して……。
イッセーがアーシアさんから話を聞いていると、突然堕天使……イッセーを殺した者が現れたそうだ。
その堕天使ーーーレイナーレは「自分達の計画、儀式にはアーシアが必要だ。その下級悪魔を殺されたくなければ、戻ってこい」とアーシアさんを脅した。
イッセーは抵抗しようとしたそうだが、アーシアさんは自ら堕天使の元へ行ってしまう……。
イッセーはいてもたってもいられず、彼女を助けるべくこうして部長に提案をしにきたんだ。
ーーー俺はイッセーの話を聞いて、激しく後悔した。
あの時部長に止められていても、彼女を連れてくるべきだった!
「何度言ったらわかるの?ダメなものはダメよ」
部長は頑なに否を突きつけるが、イッセーもそれに食ってかかるように反論する。
「なら、俺一人でも行きます。その儀式ってのが、アーシアの身に危険が振りかかるような気がしてならないんです」
「行けば確実に殺されるわ!それがわかっているの?それに、あなたはグレモリー眷属の悪魔なの。あなたの行動で周りに多大な迷惑がかかるのよ!?」
「俺を眷属から外してください、それなら迷惑はかからないですよね?」
「そんなことできるわけないでしょう!?どうしてわかってくれないのよ!」
……イッセーの友情も、部長の心配もなんとなくわかる。
俺は部長に意見を言う。
「それなら俺が行きます。俺は悪魔じゃないし……それに、俺もあの時のこと、すごく後悔しているんです」
「ツナ……!」
イッセーが驚いたように俺を見る。
そうだよ、イッセー。俺だって悔しいんだ。
「……あなたは奴らに姿を見られている。たしかに悪魔ではないけれど、私達の関係者ということはバレているとみた方がいいわ」
くそっ……!
何か、何か手は……。
ーーー!
そうだ、あの人なら……!
俺がある案を考えついた時、朱乃さんが部長へ近づき、何やら耳打ちをする。
その表情は険しいものだが、部長も朱乃さんの報告を聞いて同じように顔を険しくさせる。
何かあったのかな……?
部長は部室にいる全員を見渡して言った。
「急用ができたわ。私と朱乃はこれから少しでるわね」
そ、そんな!
イッセーが慌てて止めようとする。
「部長!まだ話はーーー」
「イッセー、あなたにいくつか話しておくわ。まず一つ。あなたは『兵士』の駒が弱いと思っているわね?」
イッセーが頷く。
「それは大きな間違いよ。兵士にはある特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」
プロモーション?
俺も首をかしげる。
「兵士は相手陣地の最深部へ赴いた時、昇格ーーーつまり、王以外の全ての駒に変化することが可能なの。わかる?あなたは私が『敵の陣地』だと認識したところへ足を踏み入れたとき、昇格できるようになるのよ」
兵士にそんな力があったのか……。
「今はまだ女王への昇格は無理でしょう。体が女王の力についてこられないと思うの。でも、それ以外の駒なら変化できる。心の中で強く『プロモーション』と願えば、あなたの力に変化が訪れるわ」
イッセーは小さく拳を握りしめる。
それを聞いて何かを得たようだ。
「それともう一つ。イッセー、
想い……覚悟、か。
「最後にイッセー。これだけは絶対に忘れないこと。兵士でも王は取れるわ。これは実際のチェスでも同じことよ。……あなたは強くなれるわ」
イッセーの表情が変わった。
一つの覚悟が決まったような、そんな顔だ。
「ツナも来てちょうだい。少し話があるの」
それだけ言い残すと、部長は朱乃さんと部室を出ていった。
話ってなんだろう?
俺は先に行ってしまった部長を慌てて追いかけた。
~○~
「イッセーは行ってしまうでしょう。おそらく、祐斗と小猫も一緒にね」
部室から出て旧校舎の空き教室で話し合う俺と部室、朱乃さん。
「うふふ、部長も素直ではないですものね。あんな言い方でイッセーくんに力の使い方を教えてあげるなんて」
朱乃さんにそう突っ込まれ、部長はバツの悪そうな顔をした。
え、ということは……部長、イッセーの背中を押してあげてたんですか!?
「ツナくんもわからなかったみたいですわね」
すみません、全然気づきませんでした!
「そ、それはもういいの!……それより、ツナはさっき、何か策を思いついたような顔をしていたわね?」
流石部長、きちんと見てましたか。
「はい。実は……ある人に手伝ってもらおうと思って」
「ある人?」
そう、俺はあの人なら任せられるかもしれないと思ったんだ。
「今からその人に連絡をいれてもいいですか?」
「もちろんよ。……悪いわね、こんなことに巻き込んでしまって」
申し訳なさそうに謝る部長。
「いえ、俺もオカ研の部員として手伝いたいですから」
そう言うと、部長は少しだけ笑顔を見せてくれた。
「ありがとう、ツナ……さて、その人に連絡をしたら私達も向かいましょうか」
部長は朱乃さんへ魔方陣の準備を促すと、立ち上がって言う。
「向かう、ですか?」
「ええ、あの教会へ」
ーーーっ!
イッセー。
俺達の部長は厳しいけど、とても優しい
ー○●○ー
すでに辺りを暗闇が覆う時間。
俺ーーー兵藤一誠は、木場と小猫ちゃんを連れ立って、あの教会が見える少し離れた場所へ来ていた。
もちろんアーシア救出のためだが、なんとこの二人も手伝ってくれると言うのだ!
俺は嬉しくて仕方がなかったよ!
『無事に帰ってきたら、絶対にイッセーって呼べよ!仲間だからな!』なんて言ってしまったし!
と、それはさておき。
「これはあの教会の図面だよ」
木場が見取り図のようなものを広げた。
こいつ、いつの間に……。
「聖堂の他に宿舎。怪しいのは聖堂の地下だろうね」
「なんでだ?」
「教会を追われた悪魔祓いに堕天使。そんな奴らが、いくら教会の中とはいえ、地上で怪しげな儀式を行うとも思えないよ」
そ、そういうもんか……?
「聖堂までは一気に行けると思う。問題は地下への入口を探さなければならないことと、待ち受けているであろう刺客を倒せるかどうか」
刺客、か。
そんなもん、ここに来る時に覚悟はできてんだ!
俺達は顔を見合せ、頷きあった。
いざ教会へ乗り込もうとしたーーー瞬間!
ドオォォォンッ!
爆発音!
教会からだ!
俺は嫌な予感を必死で振り払い、急いで教会へと走った。
~○~
教会の中へ入った俺達。
だけど……なんだこれ!?
中は至るところが破壊され、何人もの神父が倒れている。
誰かここで戦ったのか?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
早く聖堂へ向かわないと!
「……見つけました」
聖堂を探索していた俺達だったが、小猫ちゃんが祭壇の下に、地下へ伸びる階段を見つけたようだ。
俺達は素早く階段を下りていく。
奥へと進んでいくと……大きな扉が現れる。
木場が中から何かを感じ取ったのか、手元に剣をーーー造り出した!?
「ああ、僕も神器を持っているんだ」
驚いている俺に気づいた木場は、さらりと言ってのけた。
剣を造れる神器……ちょっとかっこいいじゃねーか!
「そんなことより、気をつけた方がいいよ。とてつもなく強い何かの気配を感じる」
その言葉に気を引き締める俺。
一応俺も神器を出現させておいた。
何の力があるかわからないが、何もないよりましだろう。
意を決して扉を開こうとすると、扉が勝手に開きだした!
「いらっしゃい、悪魔の皆さん」
堕天使レイナーレが中から声をかけてきた。
奴一人か?
いや、もう一人いる。
あれは……
「ひ、雲雀先輩!?どうしてここに!?」
そう!雲雀先輩だ!
ここ最近姿を見ていなかったんだけど……それにしても意外すぎる!
木場と小猫ちゃんもビックリしているよ!
「やあ。兵藤一誠、何しに来たの?」
「何しにって、それはこっちのセリフです! 」
「僕はただ、噛み殺せる奴がいるって聞いたから来ただけさ。それより、邪魔をしないでくれる?これからいいところなんだ」
聞いた?誰にだ……?
一瞬考え込む俺だが、ふと視界にレイナーレの後ろに倒れているアーシアを見つける!
「アーシア!」
すぐさま駆け寄り、アーシアを抱き抱える。
気を失っているのか、目を閉じたまま微動だにしない。
俺はアーシアを揺り動かし起こそうとするが、それでも目を覚ます気配はない。
アーシア……?
「……フフッ、アッハハハハハハハハ!!無駄よ!その子はもう死んでるもの!」
……は?
「死んだの!その子はもう二度と起き上がることなんてないわ!」
何、言ってんだ……?
レイナーレは俺に見せるように手を差し出した。
「これが何だかわかる?これはね、その子の神器よ」
……神器?なんでこいつが持ってるんだ?
「そこの彼が来る前にちょうど儀式が終わったのよ。神器を抜き出す儀式がね」
抜き出す……レイナーレはアーシアから神器を取り出したのか?
「ただ、神器を抜かれた者は死ぬわ」
ーーーっ!
じゃあ、アーシアは本当に……もう……。
俺は溢れる涙を止められなかった。
それを見たレイナーレが声高に嘲笑う。
「あら?もしかして泣いているの?か弱い女の子に助けられて、そのくせ自分は何もできずにただ泣くだけ。本当に無様で笑っちゃうわ」
レイナーレは思い出したかのように言う。
「そういえば、あなたと付き合っていても可笑しなことだらけだったわね。女を知らない男の子はからかいがいがあったわ」
「……初めての彼女だった……大事にしようと思ってたんだ」
「そうね、私に気を遣ってあれこれしてくれたけど、とてもじゃないけど見ていられなかったわ。それにあのデート!まさに王道って感じで、あり得ないほどつまらなかったわ」
「……夕麻ちゃん」
「あなたを夕暮れに殺そうと思っていたからその名前にしたの。素敵でしょ?イッセーくん」
怒りの限界を超えていた俺は、奴に向かって叫ぶ!
「レイナーレェェェェェェェェェェェェッッ!!!」
『
俺の絶叫に呼応するように、左腕の神器が動き出す。
手の甲の宝玉が眩い輝きを放ち、籠手に何かの紋様らしきものが浮かんだ。
同時に左腕から全身へ、俺の体を力が駆け巡る。
ーーー強く想いなさい。神器は想いの力で動きだし、力も決定するの。
部長の言葉が頭を過る。
「雲雀先輩……ここは俺にやらせてください」
「……君の覚悟、見させてもらうよ」
ツナ達からはかなりの戦闘狂で、邪魔をする奴は誰であっても容赦をしないって聞いていたけど、ここは素直に譲ってくれたようだ。
それなら遠慮なく、この力を奴にぶつけてやる!
レイナーレに向かって拳を突き出したが、軽々と避けられてしまった。
「はっ!それがなによ!いいわ、特別に教えてあげる。あなたの神器は
そっか、これにはそんな力があったのか。
「でも、ただの元人間の力が倍になったところで、一の力が二になるだけ。あなたはどうやったって私には勝てないの!」
『
宝玉から再び音声が鳴る。
俺の中の力が更に大きくなる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「へぇ!少しだけ力を増したの?でもまだまだね!」
俺の攻撃は再び躱される。
レイナーレは俺の攻撃の隙を狙って光の槍で反撃をしてくるが、以前のように大ダメージを与えるような攻撃はしてこない。
奴はわざと俺に小さな傷を重ねているように感じる。
くそっ!なめやがって!
俺は悔しくて何が何でも一発入れてやりたかった。
何度躱されても、何度反撃されても、奴に向かっていく!
だが、ついに俺のダメージは限界を迎え、その場で膝をついてしまう。
『
相変わらず同じ音声が鳴り響く。
「もう終わり?情けないわね」
レイナーレが近づいてくる。
「もう少し遊んであげようと思ったけど、やめたわ」
光の槍を構え、トドメを刺そうとする。
……こんなところで、こんなもんで終わってたまるか。
俺は震える足に力を込め、なんとか立ち上がる。
それを見て可笑しそうに笑うレイナーレ。
「あら、そんなボロボロなのにまだやるつもりなの?往生際が悪いわね」
知るかよそんなこと。
俺は何が何でもこいつに一発ぶち込まなきゃ気が済まねえ。
さっき心の中でアーシアに約束したんだ。
だから、俺の友達を……アーシアを殺しやがった奴に、負けてなんかいられないんだ……!
俺は左腕の籠手に語りかけるように呟く。
「なあ、俺の神器さんよ。お前、想いの力で動くんだろ?想いが強ければ強いほど力が出るんだろ?だったら今すぐそれを出しやがれ……こいつを……このくそったれを殴り飛ばせるだけの力をよッ!」
『
その音声は先程より力強く響いた。
宝玉からは一層光が増し、その光に当たっているだけで力が湧いてくるようだった。
俺は構えをとる。
「……なによ、これ……ありえない……。その神器は力を倍にする龍の手でしょ?……なんで、こんな……これではまるで、上級悪魔の魔力みたいじゃない……」
今まで余裕をかましていたレイナーレは、途端に焦りの表情を見せる。
「嘘よ!私は究極の治癒を手に入れた堕天使!シェムハザ様とアザゼル様に愛される資格を手に入れたの!こんな下賎な輩に私は!」
構えていた光の槍を勢いよく投げ出してきた。
が。
俺はそれを拳で薙ぎ払った。
難なく消し飛んだ光の槍。
「い、いや!」
それを見たレイナーレは翼を広げ、今にも飛び出そうとしている。
おい、さっきまでの余裕はどうしたんだよ。
少しでも勝てないとわかったら撤退ですか?
タッ!
俺自身も信じられないようなスピードで駆け出し、逃げようとする奴の腕を掴む。
「逃がすか、バカ」
「わ、私は至高のーーー!」
「ふっ飛べ!クソ天使っ!」
ガッシャァァァァン!!
籠手の力を解放し、持てる力の全てを左腕に乗せて奴を殴り抜いた。
大きな破砕音を立てて、壁に叩きつけられるレイナーレ。
その衝撃で壁は壊れ、大きく穴が空いている。
どうやら外にまで達しているらしい。
奴が動く気配はない。
死んだかどうかはわからないが、そうそう立ち上がってはこれないだろう。
「ざまーみろ」
一矢報いた。
だが……また涙がこぼれる。
「……アーシア」
もう二度と、彼女は笑ってくれない。