私は“樋口一葉”   作:紅ヶ霞 夢涯

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一章
第1話 私は……


 

「はぁ、はぁ、はぁ……、くそが!!」

 

 明かりのない夜道を駆ける一人の男。

 

 彼は悪態を吐きながら必死に足を動かしていた。

 

(何故だ!何故こんな目に遭わなければならない!!こんな筈ではなかった!こんな……)

 

 彼は、裏社会ではそこそこ名の通った人物で、とある密輸業社のトップだった。

 

 だが彼は自分がそこそこであることが我慢ならず、ある組織(・・・・)に手を出してしまったのだ。

 

 確かにその組織(・・・・)を利用し、無事に利益を上げることができたのなら、男は裏社会において一躍有名人となっただろう。

 

 

 しかし彼は間違えた。

 

 

 その組織(・・・・)にだけは手を出してはならなかった。

 

 

 男がいる地は横浜。

 

 手を出してしまった組織はポートマフィア。

 

 港湾都市横浜を縄張りとする、凶悪極まりない組織である。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…行き止まりだと?」

 

 息を整えながら足を止めた男は、気づけば人の気配など微塵もない何処かの路地裏、しかも袋小路にいた。

 

 なぜ袋小路なんかに辿り着いたことを疑問に思わなかったわけではないが、そんなことよりもと、男は助けを求めるために懐から携帯を取り出して、馴染みの番号に電話を掛け始めた。

 

 

 ーーーしかし、繋がらない。

 

 

「何で出ない!早くしろ!」

 

 焦っているのか、男は意味もなく手に持つ携帯に向けて怒鳴りつける。

 

 だが携帯から聞こえるのは延々と続く発信音だけで、やはり繋がることはない。

 

「くそ!!」

 

 苛立ちを隠そうともせず携帯を放り捨てる。

 

(考えろ、考えろ。これからどうする?どうすればいい?奴らから、ポートマフィアから逃げるにはどうすれば……)

 

 不気味な静けさの中に靴音が響く。

 

「ひっ」

 

 振り返って視界に入るのはポートマフィアの構成員なのだろう、黒いスーツを身に纏った一人の女性。

 

「対象を発見しました。処理しますので、後些末の部隊を送って下さい」

 

 女性は片手に無骨な拳銃を握り、耳に当てていた携帯を懐に仕舞った。

 

「待て!待ってくれ!もうお前たちには手を出さない!!頼むから見逃してくれ!何だったら金を払っても構わない!!」

 

 男の必死な懇願に女性が耳を傾けることはない。

 

 無慈悲なまでに女性は引き金を引いた。

 

 夜の横浜に乾いた銃声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度仕舞い込んだ携帯を再び手にして、私は上司に連絡をしていた。

 

「……芥川先輩ですか?対象の処理、終わりました」

 

『そうか。広津をそこに向かわせた。後は広津に任せてある。お前は早々にその場から離れろ』

 

 上司の名は、芥川龍之介。

 

 この世界(・・・・)において、最も重要な人物の一人だ。

 

「分かりました」

 

 ピッ

 

 電話を切るとほぼ同時に、黒いコートにストールを巻き、片眼鏡を掛けた初老の男性、先ほど芥川先輩が言っていた広津柳浪さんが姿を見せた。

 

「随分早いですね、広津さん」

 

「急ぐような案件でもないが、無駄に時間を使うようなことでもないのでね」

 

 煙草を吸いながらそう言った広津さんは、僅かに遅れて到着した部下に次々と指示を出す。

 

「それでは私はこれで。お先に失礼します」

 

「む、そうかね。ならば彼女(・・)を連れて帰ってくれないか?押し付けるようで、すまないが」

 

「別に構いません。嫌というわけでもないので」

 

 今度こそ、そこを後にする。

 

 広津さんが言う彼女(・・)は、考えるまでもなく泉鏡花のことだろう。

 

 彼女もまた強力な異能の持ち主ではあるのだが、それの制御が上手くできていない。

 

 故に色々とやってどうにか使えるようにしたらしいのだが、まぁ異能者でもない私に理解できるようなことではない。

 

 

 

 

 

 そういえば私の自己紹介をしていなかった。

 

 ーーー今の私は樋口一葉。

 

 どういう理由(わけ)かこの世界ーーー文豪ストレイドッグスの世界の登場人物である、樋口一葉に憑依した者だ。

 

黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)

  • 書く(幕間終了後、黒の時代)
  • 書かない(幕間終了後、三社鼎立)
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