「で、先輩。この後はどうするんですか?」
横浜の市内を、路地裏の近くに用意しておいた車で走る。
当然車を運転しているのは私で、先輩は助手席に座っている。
ひょっとして先輩は車の運転ができない人?
「
(原作だと意気揚々と殴り込みした広津さんたちが、探偵社の皆さんにフルボッコされた話だよね。ご愁傷様です)
「それで樋口。お前は何処に向かっている?」
「………すぐに着きます」
そう言ってから五分後。私は行きつけのデパートの地下にある駐車場に車を止めた。
「ここは?」
「私の行きつけのデパートです。いつもここで生活品を買い揃えていますが、まぁそんなことはどうでもいいでしょう」
マフィアの私が行きつけという時点で、このデパートが真っ当な店ではないのはお察しだが、そんなことを言うためにここへ来たわけじゃないし、先輩も他に聞きたいことがある筈。
車のエンジンを切り、シートベルトも外して、楽な姿勢で先輩に体を向けた。
すると先輩は何を警戒しているのか、これ見よがしに黒外套を蠢かした。
「では、樋口。先刻見せたお前の異能について聞かせて貰おう」
ま、そりゃそこからだろう。
私は先輩にメトーデのことも、デバイスLiberated Flameのことも話してない。その上、先ほど「異能のようなもの」だと言ってしまったので、この勘違いは必然だ。
「火を扱う異能だというのは理解した。しかし貴様はいつ異能を発現した?如何にして異能を制御する術を身に付けた?全て嘘偽りなく答えよ」
「異能ではありません」
「何?」
「私のこれは、異能ではありません」
私は端的に事実を告げた。
<side芥川龍之介>
「異能ではない、だと?」
「はい」
そう言う樋口に嘘を吐いている気配はない。
だが、異能でないとすれば何なのか。
そう思ったとき、樋口がおもむろに手袋のようにはめていたものを外して、僕に突き出してきた。不思議に思いながらもそれを受け取る。
受け取った瞬間それを危うく落としかけた。
見た目からは想像できないほどの重量があったのだ。
「これは…………?」
「Liberated Flameという科学兵器です」
樋口は着ているスーツを脱ぎ、ズボンの裾を上げた。そして履いている膝丈まであるブーツから足を出した。樋口はその下にあるものを僕に見せた。
樋口の両腕と両脚は、先ほど手渡されたものと同じ素材の機械で覆われている。スーツ越しだと分からなかったが、よく見れば体の各部に不自然な膨らみがあった。
「Liberated Flameは、観測が極めて難しい粒子を散布させ、それを媒介にして狙った位置に莫大なエネルギーを伝達させることができます」
「……あくまでも異能でなく科学だというか」
僕が疑うように言えば、樋口は腕を伸ばしてカーナビの画面に触れた。
直後、あまりにも緻密な設計図が表示された。
………正直に言って、僕にはとても理解できるものではなかった。
「つまり樋口。貴様は異能に準ずる力を手に入れた、ということだな?」
「最低限ですけどね。肝心の威力に難ありです。こんなもの異能力なんてとても言えません」
これは改良必須ですね。
などと言いながら、樋口は機械で覆われた自身の腕を撫でた。
「………一体何を目指しているのだ」
思わず吐いた溜め息とともに呆れた声が出て、そして脱力した。
「……まぁ、いい」
樋口とて人。嘘も隠し事もあるのだろう。
本来、そのような者を信じることなどできるわけがないのだが。
樋口を疑うというのも、何故かできそうになかった。
黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)
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書く(幕間終了後、黒の時代)
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書かない(幕間終了後、三社鼎立)