何とか日付変更前に書けました!
今月最後の投稿です。
ガチャ、と家の扉を開ける。
そのとき玄関に鏡花ちゃんの靴、というか下駄がないのに気づいて、思わずため息を吐いた。
「またですか」
「また、とは?」
途中で降ろそうとして失敗し、結局家まで来た先輩の声は無視。靴を脱いでデバイスはそのままに家に上がる。先輩は勝手に上がり込んだ。
鏡花ちゃんの姿は案の定ない。
「鏡花は、どうした?」
当然それが気になったのだろう。尋ねる先輩に、私は無言で机の上に置かれていた手紙を渡した。
それは達筆な文字で埋められていて、最後にある人の名前が書かれていた。
ーーー尾崎紅葉。
(無断で連れて行くのを止めて欲しいとは言ったけどさ~。一言あったら連れて行ってもいいってわけじゃないんですけど)
たぶん今頃鏡花ちゃんは、原作で少しだけ出てきた座敷牢のような所にいるのだろう。
鏡花ちゃんには申し訳ないが、異能の制御ができないのでは仕方のない措置だと思う。
それはそれとして、息抜きくらいは必要だろうと思い同棲してたりするわけだが。
「……………」
「……………」
「……………これから夕飯ですが、一緒にどうですか?」
「いただこう」
さいで。
スーツの上着をハンガーに掛けエプロンを着る。
鏡花ちゃんがいないのだから、カレーは十分に余っていることだろう。
冷蔵庫から鍋を取り出し、コンロの上に置いて温め始める。すぐに焦げるようなことはないので、しばらく放置。今日デパートで買った食材の中から、豚肉を一枚用意する。
で、これを揚げる。今夜はカツカレーだ。
<side芥川龍之介>
「お待たせしました」
机の上に並べられる二人分のカレー。それには食べやすいよう切り分けられた、揚げられた肉が乗っている。
加えて言えば、普通のカレーより赤い……気がする。
樋口はギリギリまで氷水の入った水差しから、二つのコップに水を入れた。
「いただきます」
「……いただきます」
控えめな声でそう言ってスプーンでカレーを口の中に放り込んだ。
美味かった。
しかしそれと同じ程、あるいはそれ以上に辛かった。
まだヒリヒリと痛む口にコップを運ぶ。ひんやりとした水が、喉を通る感覚が心地いい。
何とはなしに樋口を視界に収める。
仕事のときとは違い、どこか樋口の纏う雰囲気は柔らかい。それこそマフィアではないと思えるほど。
そしてその姿もいつものスーツ姿ではなかった。
すでに風呂に入ったため、今の樋口は寝巻き姿。それもまるで貴族が使うかのようなネグリジェ。しっとり濡れた金髪がうなじに張りついている。樋口はそれを鬱陶しそうに握っているタオルで拭う。
そのタオルを肩に掛けて、樋口は
「……なぁ、樋」
話しかけようとして遮るように何かを放り渡された。
反射的に掴み取ったのは、鈍く光る銀色の鍵。
「それ、ここの合い鍵。貰っておいて下さい」
「ーーー良いのか?」
「良いんです。それより早く戻った方が良くないですか?いつまでもここにいるわけにもいかないでしょう?」
「………そう、だな。邪魔をした」
鍵を外套のポケットに入れて立ち上がる。
「見送ります」
「いや、構わぬ。お前はもう休め」
「そうですか。では先輩」
「何だ?」
玄関に続く通路で一度振り返る。
樋口は仕事のときは決して浮かべぬ、花のような、と形容するに相応しい笑みを浮かべて言った。
「今日はお疲れ様でした。また来て下さい」
「………邪魔をしたな」
扉を閉めて鍵を掛けた。
それからしばらくの間、先ほど目にした樋口の顔が頭から離れなかった。
黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)
-
書く(幕間終了後、黒の時代)
-
書かない(幕間終了後、三社鼎立)