私は“樋口一葉”   作:紅ヶ霞 夢涯

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 少しマフィア側から外れて武装探偵社側に。そして“蒼の使徒”に入ってみます。

 今回は皆さんご存知の何でも知ってるあの人が出てます。

 「何でもは知らないわよ。知っていることだけ」

 もうお分かりですよね?



第17話 探偵社の情報屋

 

 探偵社にポートマフィアからの襲撃があった数日後。そして昨今横浜を騒がしている失踪事件を調査している今日この頃。

 

 俺、国木田独歩は新入りの社員である中島敦を連れて、横浜にある一つのデパートを訪れていた。

 

「えっと…国木田さん。ここデパートですよね?一体何しに……」

 

 デパート内を歩きながら敦が尋ねる。

 

「このデパートには情報屋に会いにきた」

 

「情報屋、ですか?」

 

「そうだ。その情報屋は、探偵社とはそれなりの付き合いがある。お前もこのデパートと今から会う奴のことは覚えておけ。今後、世話にならんとも限らん」

 

 フードコートの一角で立ち止まる。俺はそこに一人で座っている女性に声を掛けた。

 

「久し振りだな。ーーー羽川翼(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

<side中島敦>

 

 国木田さんが羽川翼と呼んだその人はどこかの学生なのか、ピンク色の制服と黒のスカートを身につけていた。眼鏡を掛けていて、黒い綺麗な髪は三つ編みにしてある。

 

 その人のことなんて何も知らないけど、多分『委員長』とか呼ばれているんだろうなぁと思った。

 

「お久しぶりですね、国木田さん。とりあえず座って下さい」

 

 その人は自分の向かい側の空いている席を示す。

 

 国木田さんが座ったので、慌てて僕も隣の席に座った。

 

「そっちは新人さん?」

 

「あぁ。まぁ、お前なら知っているだろうがな。小僧挨拶しろ」

 

 言われて頭を下げた。

 

「あ、はい。初めまして。武装探偵社の中島敦です」

 

「これはご丁寧に。聞いていたと思うけど、私は情報屋の羽川翼。いつも探偵社の皆さんには懇意にしてもらっています」

 

 彼女は柔らかな微笑みを浮かべて軽く会釈した。

 

「横浜のことで分からんことがあったらこいつに聞け。何でも知っているからな」

 

「何でもは知らないわよ。知っていることだけ」

 

 国木田さんの言葉に羽川さんは軽く言葉を返した。

 

 つまり知ってさえいれば何にでも答えられるのだろうか。

 

 肯定されてもどう反応すればいいのか分からないので、あまり深く聞くつもりはないけど。

 

「それで、国木田さんはどうして来たのかなぁ?わざわざ新人の敦君を私に会わせに来ただけ、なーんて。そんなわけがないよね」

 何かしら聞きたいことがあるんでしょ?

 

 首を僅かに傾けて笑みを浮かべそう言う彼女は、なるほど確かに、何でも知っていそうな気がする。

 

「相変わらずだな。……で、羽川」

 

 いつもの手帳とペンを取り出して、いよいよ本題という風に国木田さんは言った。

 

「昨今この横浜を騒がしている失踪事件は知っているな?それに関係があることを教えろ。いつも通り、お前の主観で構わん」

  

(羽川さんの、主観?)

 

 情報屋がどんなものか詳しく知らないけど、依頼の内容によって情報屋が売るものは変わると思う。

 

(それが主観でいいってことは、探偵社から信頼されているんだな)

 

 羽川さんは無言で何かを要求するように手を伸ばした。

 

 それを見た国木田さんは、「ちっ」と舌打ちをして、財布から一万円札を五枚取り出して羽川さんに渡した。

 

(いや五万!?そんなにするのか情報料って!)

 

 しかし“魔都”横浜の情報を扱うのなら、そんなものなのかもしれない。

 

 彼女は唐突に、何の脈絡もなく話し出した。

 

「最近裏の市場の価格が崩れててね、誰かが後ろ盾もなしにたくさんの臓器を売り出したんだ。これ失踪した人たちの臓器だと思うよ?証拠はないけど。あと新しく横浜に入ってきた裏組織が一つあるから気に留めておくこと。多分臓器とか武器とか、その辺りの密売が目的じゃないかなぁ。ま、横浜だとそんな珍しいことじゃないけどね。あぁそれと、もしかしたらマフィアだって動くかもしれないから気をつけてね」

 

 一気に告げられた情報に驚愕した。

 

 失踪した人たちの臓器が売り出されてる!?いや待てしかも新しい非合法組織が横浜に!?それどころかマフィアが動くかもだって!?

 

 何で彼女はそんなこと知っているんだ?そんなこと探偵社でも一朝一夕で調べられるようなことじゃないぞ。

 

 僕は狼狽えまくっていたが、しかし隣の国木田さんに動揺した様子は一切なく、冷静に今羽川さんが言った内容を手帳に書き込んでいる。

 

「分かった。いつも悪いな」

 

「こちらこそ。社長さんにもよろしくね」

 

「今度また、機会があれば社長もここを訪れるだろう。そのときに自分で言え。行くぞ、小僧」

 

「あぁ、はい」

 

 こんなのでいいのか?と思いながらもガタッと立ち上がった。

 

「あっ、敦君ちょっと待って」

 

「え、何ですか?」

 

 僕は声を掛けられ立ち止まったが、国木田さんは先に行ってしまった。このままだと置いて行かれるかもしれない。

 

 少し急かすように顔を向けると、羽川さんは目を閉じてゆっくりと口を開く。

 

 

「『ーーー生きるがいい。必ず誰かが、誰でもないお前を待っている』」

 

 

「っ!」

 

 

 その言葉は、『生きる(・・・)』という行為を重く感じていた僕には、とても大きな衝撃となるものだった。

 

「これはある人からの受け売りなんだけどね?割と良い言葉でしょう」

 

「……な、なんで」

 

 何と言えば分からずに、僕はただそう言うことしかできなかった。そんな僕に彼女は微笑む。

 

「何だか今の敦君に言った方がいいかなって気がしてね。………参考になったらいいんだけど」

 

「……いえ、大変参考になります。それでは羽川さん、いずれまた」

 

 行儀良く座っている羽川さんに頭を下げ、僕は急いで国木田さんを追った。

 

 探偵社に戻る途中に、国木田さんから話しかけられた。

 

「羽川から何かアドバイスでも貰ったか?」

 

「はい。アドバイスかどうかは分かりませんけど、一応」

 

「そうか。……どう思った?」

 

 どうとは羽川さんのことだろう。

 

「何だか、良い人ですね。羽川さん」

 

「当然だ。何せあいつは探偵社にスカウトされたこともあるからな。それも社長が直々に、だ」

 

 あの社長から直接スカウトされるほどの人なのか、羽川さんは。

 

「え、そうなんですか?」

 

 でもそれが本当なら、何で彼女は探偵社に入社していないのだろう?横浜で情報屋なんて危なそうなことをするより、探偵社で働く方がいい筈だ。

 

 そんな疑問が顔に出ていたのか国木田さんは続けた。

 

「そのとき羽川は一つ条件を付けてきてな」

 

「条件、ですか。それはどんな?」

 

 少し間をおいて国木田さんは言った。

 

「『羽川翼を調べる(・・・・・・・)こと』。彼女は探偵社にそれを要求、いや違うな。依頼してきた。その報酬として自分が探偵社に入ることを約束した」

 

「??」

 

 それはどういうことなのか?探偵社を試すにしては回りくどい気がする。正直わけが分からない。

 

「ま、お前も暇があったら羽川について纏めた資料を見ておけ」

 

「はぁ……分かりました」

 

 このとき僕は彼女が探偵社に入ったらいいな、なんて。

 

 漠然とそう思っていた。

 





 台詞の一つ。Fateのカルナから引用してみました。
 

黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)

  • 書く(幕間終了後、黒の時代)
  • 書かない(幕間終了後、三社鼎立)
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