私は“樋口一葉”   作:紅ヶ霞 夢涯

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 ちょっと一言。

 ………泉鏡花って可愛いですよね?


第2話 至福の時間

 

 喧しい目覚ましの音で目を覚ました。

 

「……んっ」

 

 耳元で五月蝿い音を立てる時計を止める。

 

 突然だが、私が自宅として使っている住居には一人の同居人がいる。

 

 隣で穏やかな寝顔で静かに寝ている彼女、泉鏡花がその同居人だ。

 

(毎回思うけど、アニメではこういう描写ーーー樋口一葉(わたし)と鏡花ちゃんの同棲ーーーなんてなかったよね?漫画の方は違うのかなぁ?いや別にいいんだけどね。得しかしてないし)

 

 目を覚ましそうにない彼女の長い髪を起こさないよう優しく撫でる。

 

(この感触がたまりませんなぁ、ふへへっ)

 

 一通り満足したので、洗面所にて顔を洗った私は鏡に映る自分の姿を眺める。

 

 原作の樋口一葉は、「睡蓮の花の如く儚く可憐」と評されるほどに容姿端麗だ。

 

 ただ私は原作の彼女とは違い、彼女、というか私の持つ綺麗な金髪をかなり長く伸ばしている。

 

 原作的には短くした方がいいのだろうが、まぁ、うん。やっぱり金髪で長髪っていうのは一種のステータスだと思うのです。

 

 どこで使えるのかも分からないが、やはり髪を切るつもりにはなれない。

 

「……………おはよう、樋口」

 

「おはようございます、鏡花」

 

 ぼんやりとした様子で、目をゴシゴシとこすりながら挨拶をする鏡花の顔を濡らしたタオルで拭いてやる。

 

(いや寝起きの鏡花ちゃんヤバい可愛すぎでしょ。何これめっちゃいい匂いするんですけど。はっ!なるほど天使はここに居たか)

 

 そんな内心を表情に出すことなく、しかし少しだけ笑みを浮かべる。

 

 使ったタオルを洗濯機に放り投げて朝食を作るためキッチンに向かった。

 

 料理が得意というわけではなかったが、鏡花ちゃんにカップ麺とか食べさせたくないので、どうにか料理ができるようになったのだ。

 

(あれ?確か原作の鏡花ちゃんって料理出来てた、よね?……台所で一生懸命料理する鏡花ちゃん……いい)

 

 しかし料理ができるとはいえ、やはり子供の鏡花ちゃんに包丁は持たせなくない。

 

 まぁ、もう鏡花ちゃんは包丁以上に重たい刃物を握ってしまったのだから、私の我が儘でしかないのだけれど。

 

「着替え終わったらテーブルを片付けておいて下さい。その間に、………そうですね。私は湯豆腐と卵焼きでも作っています」

 

 湯豆腐、と聞いた瞬間に鏡花ちゃんの顔が無表情のまま、しかし目だけは嬉しそうに輝かせる。

 

 ………あっ、ヤバい。鼻血出そうになった。

 

 エプロンを掛けて冷蔵庫を覗く。

 

 鏡花ちゃんは湯豆腐、というより豆腐が好きなので、彼女の分は2つ作ることにしよう。その程度の出費、彼女のためならば痛くも痒くもない。

 

 しっかし惜しむらくは私が和服に慣れていないことだろう。

 

 もう少し和服についての知識があれば、鏡花ちゃんの着替えを手伝うことだって出来たのに。

 

 一つため息を吐いて調理に取りかかった。

 

 

 

 

 

<side泉鏡花>

 

 私の名前は泉鏡花。

 

 私がマフィアに拾われて、今までで35人もの人を殺した。

 

 ーーーもう一人だって殺したくない。

 

 その想いは消えない。

 

 けど私の異能『夜叉白雪』は、人を殺す、ただそのために在ると言っても過言ではないほどの殺人に特化した異能。

 

 それに加え私が身につけているのは暗殺者としての技術ばかり。

 

 異能を御する術も、他の生き方も、私は何も知らない。

 

 テーブルの上に乱雑に置かれている書類を片付けながら、そんなことを考える。

 

 諦め、なのだろうか。よく分からない。

 

 けど一つだけ、たった一つだけ良かったと思えることは、マフィアの世界でこの人と会えたこと。

 

「鏡花、もうすぐで出来上がるので器を出してもらえますか」

 

 樋口一葉。

 

 私がマフィアに入って以来、何度も行動を共にし、かなりの時間を一緒に過ごしてきた。

 

 仕事(・・)をしているときの樋口は苦手だけれど、それ以外のときの樋口はそんなことない。例えば今みたいに料理をしているときの樋口は、マフィアと言われても信じられないほど優しい雰囲気を纏っている。

 

「分かった」

 

 端的に返事をして体を動かす。

 

 纏めた書類を棚に置き、キッチンにある食器棚から湯豆腐用の深めの皿と小皿を取り出して台所にいる樋口に渡した。

 

<sideout>

 

 

 

 

 

 

 鏡花ちゃんが用意してくれた皿に、盛り付けが終わったときだった。

 

 ーーーーーーピンポーン

 

 来客を告げるインターホンが鳴らされた。

 

「樋口、誰か来た」

 

(ちっこんな時間に誰よ。これから鏡花ちゃんに湯豆腐とかあーんしてあげる至高の、そして至福の時間が始まるっていうのに。あーあー、きっと凄い空気読めないような人に違いないだろうなー)

 

「みたいですね。テーブルに並べてくれますか?」

 

 そんな面倒な客は追い払うに限る。

 

 エプロンを外して玄関に向かう。

 

 これで私と鏡花ちゃんの時間を邪魔した奴が新聞勧誘とかだったら有り得ないくらいの罵詈雑言をくれてやる。

  

 我ながら妙な意気込みをして玄関の扉を開けた。

 

「はい、一体どちら様、で……」

 

 

 ーーーーーーそのまま固まった。

 

 

「ゴホッ。仕事だ、樋口」

 

 口元を片手で抑え咳を交えながらそう言った黒外套(・・・)の青年。

 

 芥川龍之介。

 

 そこにいたのは樋口一葉の、つまりは私の上司だった。

 

 

 

 

 

 ………………………………………………は?何で?

 





 中身が別人ならきっとこんなこともありますよね?

黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)

  • 書く(幕間終了後、黒の時代)
  • 書かない(幕間終了後、三社鼎立)
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