私は“樋口一葉”   作:紅ヶ霞 夢涯

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第33話 想定外

 Liberated Flameを起動した私は、広津さんに芥川先輩を任せることにする。

 

「広津さんは黒蜥蜴を連れて、芥川先輩の奪還を」

 

「それは構わないが……君はどうするのかね?」

 

 広津さんの前に進み出て、スノウドロップと視線を合わせた。

 

「少しアレの相手を、ね」

 

 広津さんにそう告げて彼女目掛けて駆け出し、いや飛んだ(・・・)

 

 次の瞬間には顔を驚愕に染めるスノウドロップの姿が、私の視界に広がる。

 

「速い!?」

 

 そう言いながら身を翻し、少しでも私から離れようとするスノウドロップだが。

 

「遅い」

 

 彼女の右手首を掴んで、片脚で胴体を蹴り飛ばす。それもLiberated Flameで上げた、人間離れした身体能力で。ベキバキッと嫌な音を残して、スノウドロップは倉庫の入り口まで吹き飛んだ。

 

(あれ絶対受け身できてないよね?スッゴく痛そう)

 

 とはいえ、敵に容赦なんてしないが。

 

 それに痛そうというも、彼女が人間だった場合なのだけど。

 

 手に残ったスノウドロップの右手(肘から先)を見る。

 

 断面からは何本もの引きちぎれたコードと、何かよく分からん液体がポタポタと落ちている。筋肉も血管も骨もない。

 

 間違いなく機械のそれだ。

 

「速いのね」

 

「そういうアナタは思ったより弱いのね」

 

「うん。でも今度はこっちの番」

 

「させると思う?」

 

 明確な構えなんてものはせず、しかしいつでも動けるよう脚部に力を込める。

 

 すると何を思ったのかスノウドロップは、残った左手をまるで指揮棒のように振った。

 

 一瞬だけ彼女の全身が輝き、胸部と肩周りのデバイスが一際強く輝く。

 

 スノウドロップが何をしたのかを把握するのは、私よりもメトーデの方が速かった。

 

『オーナー死体を!速くっ!!』

 

 しかしメトーデの反応が異常なまでに速くとも、私がそれに反応するのは少しばかり遅かった。

 

「広津さん!」

 

 スノウドロップだけに注意を向けていたせいで、芥川先輩を連れ出す彼にそう言うことしかできなかった。

 

 死体が動く(・・・・・)というあり得ない事態に。

 

(カルマドラムチプトと傭兵の死体が……全部動いてる!?一体どうして。いやそんなことよりも数が多い。引き金に指を掛けてるから銃は使える?だとしたら、流石にこの数はマズい。急いで止めないと)

 

 しかし止めるにしてもどうすれば……。スノウドロップを破壊すれば止まるのだろうか?否、そんな確証はどこにもない。それよりも芥川先輩や広津さん達を守った方がいい?

 

 一体何をすればいいのか、どうするのが正しいのか分からず、頭の中でグルグルと思考だけが巡る。

 

 不気味に動く死体が、芥川先輩と広津さん達黒蜥蜴に銃口を向けた。その瞬間に芥川先輩の周囲にいる黒蜥蜴の前に移動して、Liberated Flameの炎で銃弾を防ごうとデバイスを起動する。

 

 

 そうしようとした次の瞬間に、死体は全て潰れた(・・・)

 

 

 僅かな沈黙が倉庫に流れ、直後に若い男性の声がそれを破る。

 

首領(ボス)の指示で来てみれば、何が起きてんだよ。死体を動かすとかどんな異能力だ?」

 

 小柄な青年だ。紳士的な黒が基調の服装で、黒いコートを羽織っている。オレンジ色の髪の上に洒落た帽子を乗せていた。

 

 彼は指をスノウドロップに向ける。

 

「で、手前が敵だな?そこの緑の奴」

 

 ポートマフィアが誇る五大幹部、其の一人。

 

 中原中也がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 ………タイミング図ってたわけじゃないよね、この人。

 




 実は中原中也の展開は、今皆さんから頂いた感想を読ませて貰っているときに、唐突に閃いたものなのです。

 今後も感想や誤字報告して頂けると、大変嬉しいです。

黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)

  • 書く(幕間終了後、黒の時代)
  • 書かない(幕間終了後、三社鼎立)
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