私は“樋口一葉”   作:紅ヶ霞 夢涯

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 1ヶ月も空けてしまい、ホント申し訳ありません。そして我ながらかなり出来がひどいと思います。重ねてお詫びします。

 それでは、どうぞです。



第34話 虎。そして終わり

 

 何故か倉庫の壁を破って現れたのは、ポートマフィアの最大戦力の一人であろう中也さん。

 

 それを見た黒服の構成員たちが「あれって幹部の…」だの「どうしてここに?」だのざわつく。

 

 いいから早く先輩を外に連れてけや。

 

「うわ、ホントに来た………」

 

 中也さんに視線を向けて思わず呟いてしまった。それが聞こえたのか、彼にギロリと睨まれる。

 

「色々と言いてえこともあるが、一先ずは置いとく。後で説明しろ」

 

 そう言う中也さんへの対応を広津さんに丸投げし、私は彼の異能によって潰れた死体に近づいた。

 

 

 死体には花が咲いていた。彩り鮮やかな花びらが、まるで蛆虫のように集っていた。

 

 

 一瞬の驚愕の後、納得する。

 

 なるほど。スノウドロップのデバイスであれば、あるいはこういうことも可能ではあるかもしれない。

 

「へぇ?スノウドロップも、なかなか面白いことするじゃない」

 

 さしずめ、人間をhIEの代わりにしたってところか。

 

 スノウドロップを見れば彼女は自分を守らせるためか、周囲に死体を並べている。その全てが一度潰れたものだが、無理やり花で人の形を保たせていた。

 

 幹部の中也さん相手には、焼け石に水ほどの効果もないだろうに。無駄なことをする。

 

 そう思い中也さんの隣に移動した。

 

「中也さん。どうしたんですか?あれくらいの相手なんて、敵じゃないですよね?」

 

 スノウドロップに直接的な戦闘能力がないことは、彼ならば分かっている筈だ。

 

 しかし彼の顔は険しい。

 

 まるでスノウドロップではない、何かを警戒しているような………。

 

 唐突にスノウドロップから視線を外し、彼はに私たちに指示を出す。

 

「今すぐ芥川を連れて此処から離れろ!全員だ!!」

 

「いや急に何、を………」

 

 ようやく私も気づいた。

 

 ()の気配がすぐ側にある。

 

「中也さん、一体何が!?」

 

「いいから速くしろ!来るぞ!!」

 

 彼がそう言った直後に、倉庫内を炎が埋めた。

 

(メトーデ風を使います!)

 

『補助くらいはしなさいよ、オーナー』

 

 メトーデが言い終わってすぐに、私の視界に数式が山ほど現れる。

 

 これはLiberated Flameを使うのに必要な演算式。それをメトーデ(AI)と変わらぬ速度で彼女と共に解いて、Liberated Flameの機能を使用する。

 

 私はBEATLESSでメトーデ、いや超高度AIのヒギンズがしたように、デバイスの能力を応用して風を起こした。

 

 その風で自身と広津さんたちを覆って、突如として現れた炎から守る。

 

 中也さん?自分で何とかしてるからいいや。

 

「初めて試したけど、案外上手くやれるものね」

 

 ぶっつけ本番なんて二度としたくないが。

 

 一言呟いて、炎の原因に視線を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 そこにいたのは一匹の虎だった。

 

 

 文豪ストレイドッグスで虎といえば、中島敦に他ならない。が、あの巨大な虎は彼ではない。彼は炎を扱うなどできはしない。

 

 では何か?

 

 見間違いだと思いたい。しかし間違いなくあの虎に私は、私だけは見覚えがあった。

 

 あの赤い虎は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーあれは羽川翼(わたし)だ。

 

 

「速く倉庫から出ろ!急げ!!」

 

 私たちの方を見もせずそう言ったに中也さんは、瞬時に虎へと駆け寄りその巨体へと蹴りを放った。

 

 虎の喉元に蹴りが突き刺さる。さらに突き刺した片脚を軸にして、回し蹴りで虎を吹き飛ばした。

 

 ここまで僅か数秒である。流石は幹部といったところ。

 

 何が何だか分からないけど、あれは中也さんに任せていいか。

 

 私はスノウドロップを見た。彼女は何が起きているか判断できないのか、跡形もなく燃え尽きた死体に何の反応もせずに立っている。

 

「またね?」

 

 私にだけ視線を向けて手を振った。

 

「お断りよ」

 

 そう言ってスノウドロップにLiberated Flameの炎を叩きつける。

 

 しかし予想していたのか、彼女は危なげなくそれを躱した。それから人間離れした脚力で、あっという間にここからいなくなる。

 

『追わないの?オーナーならまだ追いつけるわ』

 

 メトーデの言う通り、今なら追いつけるだろう。

 

 しかし私を除いた全員が既に倉庫の外に出ているので、それをするのは流石にこう………………何か気まずい。

 

「次に会ったときが貴女の最後よ」

 

 吐き捨てるようにそう言った。

 

 倉庫の中にも外にも、既に虎の気配はない。どうやら中也さんが追い払ったらしい。

 

 倉庫の外に出て、芥川先輩を中心にして固まっている広津さんたちの所に足を運ぶ。それから道を空けて貰い、右手のデバイスを外して先輩に近寄った。

 

 彼の顔を覗き込んだら、普通に目を覚ましている。

 

「樋口、か……?」

 

「はい、先輩」

 

 そりゃあ、まぁ。さすがにあれだけ騒がしくしたら起きるか。

 

 私が彼の手を遠慮がちに握りしめると、意外なことに芥川先輩は握り返してきた。

 

 思わず視線を合わせる。

 

「……世話をかけるな」

 

 顔を背けながらもそう言う先輩に、どう返答すればいいか分からない。

 

 そんな思いの外子供っぽい先輩の様子に、少し見惚れた。

 

(この人もこんな顔するんだ)

 

「仕事ですから」

 

 結局こう応えて、笑った。

 

 スノウドロップのことやあの虎のこと。そしてこれから襲い来るであろう組合(ギルド)のこと。

 

 考えるべきことは山ほどある。

 

 けれどき今はきっとこれでいい。

 

 

 当たり前みたいにこの人の手を握れていれば。

 




 
 一先ずこれでアニメの一期を完結といたします。

※ロクでなし魔術講師と禁忌教典でも書き始めてみました。よろしければそちらもお願いします。

黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)

  • 書く(幕間終了後、黒の時代)
  • 書かない(幕間終了後、三社鼎立)
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