※マフィアの首領、森鴎外の一人称を間違えていたことをお詫び申し上げます
あれから、芥川先輩がカルマドラムチプトの残党に攫われてから数日が経った。たったそれだけの間に、なんと先輩は負った傷のほとんどを癒やした。
(いやオカシイ)
あれだけの傷は普通、こんな短期間で治らないだろう。人間の身体はそんな風にできてない。
「樋口、まだ任務はないか」
「ありません。病み上がりなんですから、大人しくして下さい」
ない、というより他に回している。リハビリついでに軽いものなら先輩に伝えても良かったけど、これから先は
ので、少なくとも完治するまでは大人しくして貰うつもりだ。
しかし何を思ってか、先輩は私の家に入り浸っている。まぁ前に合い鍵を渡したことだし、気にするようなことでもない。
朝食の片付けをしている途中、ピリリと私の携帯が鳴った。ポケットから取り出して画面を開く。
「はい、首領」
『やぁ樋口君。何、先日の件で臨時の幹部会を開くから、君にも出席して貰おうと思ってね。ところで芥川君が何処にいるか知らないかい?」
………組合のことがあるから、臨時の幹部会が開かれるのは分かる。けどそれに私が呼ばれるということはだ。
(スノウドロップか虎、もしかしたらその両方について?)
あれは幹部の一人である中也さんも介入したほどの出来事だったのだ。鴎外さんに情報が届いていないなどあり得ない。
「先輩なら私と一緒にいます。代わりますか?」
『いや、それには及ばない。でも丁度良かったよ。彼も連れて来てくれ給え。芥川君にも君の事を説明したいからね』
「いいんですか?」
何て言ったって元より首領である鴎外さんの決定に異議を申し立てても仕方ない。この状況にまでなって、隠し続けた方が組織にとって不利益になるとでも思ったんだろう。
それはそれとして。
「分かりました。ちなみに幹部会はいつからですか?」
『ん?今からだが』
ブチッ
通話を切り携帯の画面を閉じた。
「首領からか?」
「えぇ、はい。芥川先輩と私は幹部会に出席せよとのことです」
こんな言い方じゃなかったけど内容は合ってる。
私がスーツに着替えたりと準備をしている間、先輩にはゆったりと茶を飲んで待ってもらう。
………着の身着のままでいいからって呑気だな。
<side芥川龍之介>
首領との通話を終えてすぐに、いつものスーツに着替えるため私室に入った樋口に扉越しに話しかけた。
「お前は首領と連絡を取れるのか?」
「え?はい。そんなに頻度があるわけではありませんが」
返ってきた言葉に「そうか」と呟く。
マフィアの構成員は数多くいれど、その中で首領と連絡が出来る者など一握りしかいない。通常、首領が何者かに用がある場合は、専用の連絡員から一方的に指示を伝えられるか呼び出しを受ける。
首領と電話一つで話が出来るなど、幹部くらいのものだろう。
(だが“ない”とも言い切れん)
思えば首領に認められるだけの腕はあったとしても可笑しくない。
樋口は僕の部下だ。そうなった当初こそ特に何も思いはしなかったが、今ではポートマフィアの古参である広津柳浪よりも信を置いている。
任務で使用する物資や武器、そして移動手段の準備。黒蜥蜴への伝達と警察に対する情報攪乱。任務後の逃走経路の確保に加え周辺カメラのハッキング。その他諸々。
…………………思えば樋口に任せてきた事柄は多岐に渡る。改めて考えてみれば、よほどのことでない限り任務がある際は真っ先に樋口に連絡をしていた。
頼って、いたのだろうか?
「以前の僕ならこのようなこと、考えることもしなかっただろう」
小声で呟く。
ただあの人の背中を、太宰さんの姿だけを求めていた。今とてそれは変わらない。心の根底には常に彼の人が居る。
ーーーしかし
「先輩お待たせしました…………先輩?何か考え事ですか?」
「いや、そういうわけではない。それより準備は出来たのか」
「はい」
少しばかり周りを気にする程度に余裕ができたのも事実。
「では行くぞ」
僕自身が信を置くと言っている、一人の部下のことくらいは知ろうとそう思ったのだ。
本当に久し振り過ぎて書くのが難しい……それにしても芥川先輩丸くなり過ぎでは?と書いてて思いました
黒の時代編を書く?書かない?(マジで何も考えてません)
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書く(幕間終了後、黒の時代)
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書かない(幕間終了後、三社鼎立)