時よ止まれ、お前は美しい   作:クトゥルフ時計

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 ゲッテルデメルング終わったので初投稿です。実は前回投稿から二日後には終わってました。投稿遅いのはデフォなのです。

 今回はちょっとエロいよ。


第十四話

 雨が降っていた。

 

 雨。空の涙。神の嘆き。そんな表現があることを思い出して、昔の人は自然に作為的な何かを見出そうとしていたのだろうかと、逢瀬は黒い雲に覆われた空を見上げて考えた。

 

 手に持っているのは傘。遥か上空から雫が叩きつけられ、小さな破裂音とともに散っていく。

 

 ひどい雨だった。梅雨がそろそろ明ける頃だからか、空が最後の大盤振る舞いだとでも言わんばかりに涙を流す。

 

 逢瀬は今、雨空の下で立っていた。その表情は何処と無く物憂げで、まるでこれから起きることに対して大きな拒絶の意思を抱いているかのようだった。

 

 ────君も随分意地の悪いことをする。

 

 ────運命の悪戯か。それとも仕返しのつもりかな、丸山嬢?

 

 ふと、足元の水溜まりに映った己を見た。そこにはいつもの瀬田逢瀬がいる。落ちる雫が波紋となって、そのシルエットを掻き乱して混ざる。

 

 逢瀬は溜め息を吐いた。嗚呼、ひどく憂鬱だ。出来れば()()()には進みたくない。その思いが彼の心に一筋の光芒となって尾を引く。

 

 彼が今何処にいるのか。果たして何を思って其処にいるのか。その全ては、彼の表情が物語っていた。

 

 彼は今、白鷺家の玄関扉の前に立っていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 時は雨が降り始める前、逢瀬が事務所内にいた頃にまで遡る。

 

「白鷺さんが来ない?」

 

 気絶から回復した丸山彩は、逢瀬に一つの相談を持ちかけていた。

 

 場所は事務所の一角に備え付けてあるカフェテリアの端の席。手元には逢瀬のコーヒーと彩のスムージー。既に彩は練習着から普段着に着替え、逢瀬も結んでいた髪を下ろしたいつも通りの格好で相対(あいたい)していた。

 

 彩の相談事というのは白鷺千聖のことであった。Pastel*Palettesのベース担当、仮にも仲間と呼べるはずの間柄の少女。そんな彼女が、例の一件以来何度も行われていたパスパレの練習に()()()()()()()

 

 メッセージアプリで連絡を交わすことはあっても、それだって『明日は別の仕事がある』などの業務連絡のみで、練習への参加に好意的な反応を示されたことはない。そういうこともある、千聖ちゃんだって忙しいんだから。そう自分に言い聞かせて、日に日に心に食い込む疑心の棘を誤魔化すのも、少し辛くなっていた。

 

 故、縋ろう。この人に。自分ではどうにもできない問題なら、その解決に最も近い人間の力を借りるべきだ。彩がその結論に至るのに、さして時間はかからなかった。

 

「つまり君は、僕に彼女の説得を任せたいということだね」

 

 その結論は間違っていない。それは誰でも辿り着く最良の帰結だ。逢瀬とて、彩の真意に気づかなかったわけではない。

 

 だがそれでも、逢瀬はいつものようにキザに快く了承することを躊躇っていた。

 

 白鷺千聖に近づく。それは、彼が何よりも避けるべき()()()()である。それこそ、最近は接触の機会が多くなったとはいえ、己の〝最奥〟に触れさせるには至っていない。それほどまでに、逢瀬はその接触を忌避している。

 

 それは彼なりの〝矜持〟の問題だ。()()()から現在まで、途絶えることなく続いてきた〝歌劇〟を、イレギュラーで終わらせない為の、高潔でドス黒い〝矜持〟。それが今、彩から告げられた願いを承諾することを良しとしていないのだ。

 

 お人好しな善性と()()()()()()()()()()()()が鬩ぎ合う。彩の願いの根底にあるものは、仲間たる千聖を思いやり、居場所たるPastel*Palettesの存続を求める生粋の善意だ。それをわかっているからこそ、迷う。

 

 夢物語、綺麗事、それを為すのは今のはずだ。()()()()()()()()()()────お人好しの原則が、逃げようとする逢瀬の足を引っ張る影となる。

 

 その葛藤に終止符を打ったのは、対面に座る彩だった。

 

「ダメ……ですか?」

 

 不安。僅かな寂寥を滲ませた表情。迷惑なことを言ってしまったかと、恩人を苛むようなことをしてしまったかと。その思いを、彼女の顔が物語る。

 

 ────ああ、ダメだ。

 

 ────その顔は、ズルいよ。

 

 困ったように微笑んで、彼は「いいよ」と口にした。

 

「請け負った。君の願いは必ず僕が遂げるとも」

 

 目の前で誰かにそういう顔をされてしまえば、このお人好しは断れない。彩にそこまでの意図と策謀が無いことはわかっていても、その顔を曇らせることを、逢瀬は是とすることが出来ないのだ。

 

 果たしてそれは強さか弱さか。その気性を嫌悪したことも後悔したことも無いが、時々薫から難色を示されるのは確実にそれが原因だろう。自覚はしている。

 

 残っていたコーヒーを飲み干して、逢瀬は席を立った。彩が慌てて付いて行こうとスムージーのストローに口をつけるのを優しく制し、あとは任せておけと言わんばかりの笑みを浮かべる。

 

 気の進まない事案ではある。しかしそれでも、一度首を縦に振った以上やり遂げる他に道はない。

 

「……ああ、雨だ」

 

 気まぐれに目を向けた窓の外は、雨模様だった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 インターホンに手を伸ばし、奥へ押し込むことを躊躇う。そんなことを既に三回繰り返していた。雨音が反響して傘の内側を駆け抜ける。ただ数センチ手を動かすだけの単純な動作を、他ならぬ逢瀬自身が拒んでいた。

 

 思い出されるのは以前あった出来事。千聖に昼食に誘われた時のこと。此処に来るのはそれっきりだと思っていたが、まさかまた来ることになるとは思ってもみなかった。

 

 あの時、背後から抱擁した千聖の言葉がフラッシュバックしそうになって、それを急いで抑え込む。またあの頭痛に見舞われては彩からの頼まれ事を果たせなくなりそうだったからだ。

 

 一言だけ要件を伝えて早く帰ろう。逢瀬は覚悟を決めてインターホンに指を当て、力を込めた。

 

 十秒待った。二十秒待った。三十秒待った。返事はない。外出中だろうか。それならそれで日を改める必要が出てくる。また覚悟を決め直すのは手間だった。

 

 もう一度押す。瞬間、ポケットに入れていたスマートフォンが震えた。誰かからの電話の着信だと気づくのに時間はいらなかった。表示されていた名前は、白鷺千聖。

 

「……白鷺さん」

『開いてるわ。入って』

 

 その一言で電話は切れる。言われた通りドアノブに手を掛けると、僅かな抵抗感すら無く扉が開かれた。

 

 不用心な、と心の内で呟く。まさか普段から開けっ放しではないだろうとは思うが、それでも玄関に並ぶ靴の数を見る限り、今この家にいるのが千聖一人であることは明白だった。そんな状況で鍵を掛けないのは果たしてどういう心境か。

 

 玄関を上がり、千聖の部屋を目指す。案の定家中の電気は消えていて、空間に満ちたその仄暗さが、今彼女が一人だということを指し示していた。

 

 そこで、はて、逢瀬は困った。()()()()()()()()()()

 

 思えば記憶の中に彼女の部屋の様相というものは残っていなかった。当然、場所も。というよりも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 近くの扉を一つ一つ叩いていく。それを繰り返す内、階層としては二階の奥、そこでようやくそれらしき部屋を発見した。部屋の中から僅かな物音が聞こえる。衣擦れと呼ぶには少し鈍い音。けれど、何か布が擦れているということを明らかに指し示すような音だった。

 

 二回、叩く。

 

「白鷺さん?」

「入って」

 

 既に一度聞いた端的な一言。それに少しだけ、逢瀬はたじろいだ。

 

 千聖の部屋。即ち彼女の居城。そこに踏み込むのは、彼には(いささ)か以上に難しい問題だった。

 

 ────否、否、否。

 

 その困難を、呼吸一つと共に噛み砕く。白鷺千聖の部屋に入る? これまで拒んできた彼女の居城に踏み込む? その上で彼女を説得する? ああ、それは確かに難題と云えよう。

 

 だが────()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 否である。今求められるべきは、少女達を繋ぐ橋渡し。そこに瀬田逢瀬の()()()()()が果たして必要なのか。そうではない。そんなもの、誰も求めていないだろう。

 

「それじゃあ、入るよ」

 

 扉を押し開く。そこにあった光景は、ある種歪とも云えるものだった。

 

 散らかった部屋だった。床にはシーツや服が散乱し、普段の整然とした〝白鷺千聖〟らしさというものをまるで感じさせない。視線を前へズラせば、そこにはベッドの上でシーツにくるまり逢瀬を見つめる千聖の姿があった。

 

 部屋の隅には机。その横に立てかけられるようにして置かれているベース。埃を被ったような様子は見られず、表面の光沢から見える手入れの跡が、それがただのインテリアになっていないことを暗に示していた。

 

 彼がこの部屋を歪と評したのはそれが原因の一つだ。酷くちぐはぐ。例えば床を見れば一面に広がる布の絨毯があるのに、そんな中でも、本棚や逢瀬を映して煌めく姿見は整然と俯瞰するようにそこにある。噛み合わない、空気から浮くような配列。僅かな違和感が視覚となって脳裏を入り込んだ。

 

 部屋に一歩踏み込む。足の下で、踏まれたシーツが軋みのように衣摺れを奏でた。

 

「白鷺さん。話があって来たんだけど、いいかな」

「知ってるわ。彩ちゃんから聞いたもの」

 

 ベッドの上から千聖は返す。その(げん)から察するに、彩は既に千聖に連絡の一本でも入れていたようだった。

 

 わざわざ『これからあなたを説得しに向かわせます』と当の本人に伝えるのは、果たして良いことなのか悪いことなのか判断がつかないが、それでも本題に入る前の状況説明を省略出来たのは嬉しい誤算だった。

 

「それなら話は早い。言いたいことはわかっているんだろう? 君もそろそろ、彼女たちの前に顔を出したらどうかな」

 

 それに、と逢瀬はベースを指差す。

 

「君だって、Pastel*Palettes(あそこ)から逃げてるわけではないんだろう?」

 

 もしも千聖が、ただPastel*Palettesという居場所を見限っただけだとしたら、彼女のベースは埃を被っているはずだ。

 

 千聖は限りなくリアリストな精神性を持っている。やるべきことを精査し、やらねばいけないことをこなし、そしてやる必要の無いことを徹底的に排除する。千聖が〝Pastel*Palettesのベース〟という役割を〝必要の無いこと〟だと判断したなら、彼女はそれを徹底して排除しようとするだろう。それが起きていないということは、まだ千聖はそこに価値があると考えているということだ。

 

「君が何を選ぶかは自由だけど……それでも、君を待っている人がいることは覚えておいた方がいいと思うよ」

「一つ、聞かせて」

 

 彼の言葉は、果たして千聖に届いたのか。逢瀬の言葉尻に重なるようにして、千聖は一つの問いを投げる。

 

「あなたがここに来たのは、彩ちゃんに頼まれたから?」

 

 その言葉は、どことなく悲しげで。

 

 身体に纏ったシーツの端を握り締め、千聖はそう口にした。

 

 逢瀬は閉口した。ここで返すべき最適解を見失ったからだ。それを千聖もわかっているのか、「そうよね」と続けた。

 

「わかっているの、私も。あなたお人好しだもの。頼まれたら断りきれない。彩ちゃんに頼まれたから、こうして私の部屋まで来てる」

「それは……」

「そうでないと、あなたがここに来る理由にならないわ」

 

 全て正解だった。お人好しだから。断れないから。丸山彩という少女の瞳に悲嘆を感じたから。それが全て。彼の行動原理、お人好しの原則に、白鷺千聖という少女は一切介入していない。

 

 千聖にとって、それは鋭利な剣のような事実だった。千聖の前にいる瀬田逢瀬という人間は、逢瀬の前にいる白鷺千聖を見ていない。狭い部屋に二人きりでいるのではなく、一人と一人が同じ空間にいるだけ。二人を隔てる()()()という確たる壁がそこにはあった。

 

 千聖にはそれがひどく悲しい事実に思えた。ああどうして。()()()()()()()()()()()()()

 

「だから、ごめんね、逢瀬君」

 

 ────私があなたに触れるには、こうするしかないから。

 

 その独白が逢瀬の耳に届くより早く、千聖は握っていたシーツの端を思い切り引っ張った。瞬間、そこから繋がる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()白い布────即ち、逢瀬が足を乗せているシーツが宙を舞った。

 

 上と下が逆転する。前を向いていたはずの視界は一瞬で天井へと移され、重力の楔から解き放たれた身体がその刹那のみ地を離れる。それを認識する前に、背中に走った衝撃が、今自分の身に何が起きたかを如実に彼に伝えていた。

 

 肺が圧迫され、中の空気を残らず吐き出す。危険を感じた本能が咳き込むように呼吸を繰り返し、血液が酸素を求めて血管を駆ける。ようやく脳が現実を理解した時、彼は己のすぐ(そば)にある影を視認した。

 

「──何、を」

 

 それは千聖だった。身に纏っていたシーツはベッドの上に投げ捨てられ、乱れた髪を直すこともせず()()()()()()()()()()()()()。その吐息は僅かな熱を帯びており、瞳は何かを決意したかのように据わっている。

 

「ごめんなさい。出し抜くみたいな真似をして。でも仕方ないの。こうしないと、私はあなたに触れられない」

 

 千聖の髪が逢瀬の胸に落ちた。彼女の手が逢瀬の頰に添えられ、吐息に籠もった温度がより一層の熱を纏う。

 

「……私、何か間違ったのかしら。わかってるのよ、全部。この四年間、あなたが私を避けていることも、その理由も。胸が痛いわ。すごく、痛い。あなたが近くにいないことが、すごく(つら)い」

「白鷺さん……」

「どうしても、ダメなの? 私はもうあの頃の()()()じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()ような女じゃないのよ」

 

 悲痛な声が雨音に溶ける。彼女の瞳から雫が流れ、逢瀬の横へ落ちた。

 

「ねえ、だから……もう一度、◾️◾️◾️って呼んで?」

 

 ◾️◾️◾️────その音が響いた瞬間、逢瀬の脳を激痛が駆け抜けた。聞くな、聞くなと頭の中の誰かが告げる。あまりの痛みと不意打ちに、彼は表情を取り繕うことすらままならなかった。

 

 千聖はそれをどう解釈したのだろうか。一際悲しそうな顔をして、空いていたもう片方の手も逢瀬の頰に添えた。

 

「白鷺さ────」

「黙って」

 

 二本の親指が口に捻じ込まれた。下の歯を押さえつけられ、口を閉じることを封じられる。言葉にならない唸り声が喉から漏れた。

 

 その時、口に何か熱いものが流れ込んできた。甘い匂いがして、脳が染められていくような、粘性のある液体。それが、同じく対面で口を開けた千聖から滴る()()()()()だと気づくのに時間はいらなかった。

 

 信じられない行為だった。互いの口を繋ぐ銀の橋。彼女の舌を伝って落ちるそれを躱そうとしても、逢瀬の顔は千聖の両手で固定されていて逸らす事が出来ない。彼にはそれを受け入れる以外の選択肢は用意されていなかった。

 

 そして、それだけでは終わらず────

 

「んっ……」

 

 千聖が直接唇を押し当てた。柔らかい感触と、眼前を埋めるように広がる千聖の表情(カオ)。それが逢瀬を侵食していく。現状の理解を脳が拒んでいる。

 

 何が起きた(Error)わからない(Error)認めない(Error)認めたくない(Error)

 

 それは果たしてどれほどの時間続いていたのか。機能を停止していた脳が漸く現状(イマ)を理解する。大急ぎで逢瀬は千聖の肩を掴んで彼女を引き剥がし、酸素不足と頭痛で揺らぐ思考を回した。

 

「白鷺さん……なんでっ、こんな……」

 

 逢瀬の息は荒い。嫌な汗が全身を伝う。その表情(カオ)は紛れもなく病人のそれに違いない。

 

 対する千聖に慌てた様子は無かった。ただ『やはりこうなったか』と、抵抗される未来を予めわかっていたかのように逢瀬の瞳を見つめている。その()から逃れる為に、彼は上に乗る千聖をどかしてその体勢から抜け出した。

 

「ここ最近の君は君らしくない。前まではこんなことしなかっただろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()。どうしてこんなことを……」

「……ただの幼馴染?」

 

 逢瀬の言葉を契機とするように、千聖の声音が変わった。そこに含まれるのは悲しみだけではない。僅かだが、怒りがあった。

 

「そう。そうなのね。あなた、()()()()()()()()にするつもりなのね」

 

 ────これは、まずい。

 

 逢瀬は直感する。今、確実に己は何か触れてはならない領域に触れた。言うなれば逆鱗。無意識に踏み入った過去の残滓のようなナニカ。

 

 千聖が立ち上がり、逢瀬の胸を軽く押す。さして力の入ってないそれではあったが、逢瀬はまるで見えない力に引かれるかのように部屋の外へと押し出された。

 

「練習には次から参加するわ。曲は一通り弾けるようになってるから心配しないでって、皆に伝えておいて」

 

 その一言とともに部屋の扉が閉められる。「ちょっと」と、逢瀬の上げようとした抗議の声は行き場を失い、誰もいない廊下に虚しく響いた。

 

 兎にも角にも、『千聖を説得する』という当初の目的は達成された。意図せぬハプニングと紆余曲折を経てもそれは変わらぬ事実である。扉越しに「お邪魔したね」と告げ、痛む頭を押さえて彼は外へと向かった。

 

 雨音は、どこまでも響く────。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 閉められた扉の内側。千聖は扉に(もた)れるようにして座り込んだ。

 

 〝やってしまった〟。彼女の心を支配するのは後悔だった。どのような経緯であろうと、彼が来ると聞いた時。嬉しかった。どうしようもなく嬉しかった。

 

 だからだろうか。どうしても気持ちの内側に渦巻く感情を抑えきれなくて、出し抜くような真似をしてまで触れたいと願ってしまった。それが許されないことだとわかっていても、どうしても。

 

 自分の唇をなぞる。まだ感触が残っているような気がした。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その思いが脳内で免罪符を生み出して、恋情という罪悪感を消していく。

 

 残ったのは一つの思い。先の会話の最中(さなか)、彼の言葉を聞いて生まれた気持ち。

 

 即ち────

 

「絶対に、なかったことになんてさせないんだから」

 

 響く雨音はどこまでも。

 

 彼らの運命を、嘲笑う。




 千聖さん別に病んでないです。ただ愛が重いだけです。……病んでないよね?

 ここからは評価してくださった方々。
☆9 輪廻転生様、*SeTO*様、Cペンギン様、小傘様
☆6 Bibaru様

 以上の皆様に感謝を。

 そういえばお気に入りが900を突破致しました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
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