ーユートマー
外に出て直ぐの所にある崖、そこでコブ太と二人で景色を見て想いに耽っていると、
「…ふぉっふぉっふぉっ、…この地にわし以外の者がいるとはの。」
突然背後から声が、…驚きのあまり崖下に落ちるかと思った。しかしそのことを顔に出さず振り向くと、そこにいたのはフードを深く被った白髭の老人。…気配なんてなかったぞ、…何者だ? この老人。
俺は突然現れた老人をジッと見詰めてみる、…何処かで会ったことがあるような? …コブ太の方はクンクンと臭いを嗅いどるし。何か不思議そうな顔をしているけど、変な所があったのか? そんな感じで失礼極まりない俺達に老人は…、
「わしのことはどうでもいいではないか、お主達に敵意などありゃせんよ。」
とにこやかに言ってきた。確かに敵意は感じないが胡散臭い、…どうしたものか。対応に困る俺に対し、
「…背格好と隣のボコブリン、…そうかお前達なのじゃな。…ふむ、……そうかそうか。」
老人は何かをボソボソと呟き、一人で納得しているようだ。……この老人、俺達のことを知っているのでは?
胡散臭い老人ではあるが敵意がないのならいい、そう思って普通に接すればいいかと結論付けた。そこから情報収集の為に話を聞けば、この謎の老人は意外にも丁寧に色々と教えてくれた。
老人が言うには、ここは『始まりの台地』と言われる場所で、ハイラル王国の発祥の地と言われているらしい。そして今いる場所から見える朽ちた建物、あれは遥か昔より王国の祭事に使われていた神殿であり、百年前に王国が滅んで以来長らく放置されてしまいああなったと…。
続いて老人が指を差す方向へ視線を向ければ、遠くに城があり…そこには……、
「…あの城を包み込むモノ、…アレは怨念? …俺はアレを知っている?」
頭に浮かんだのは怨念という言葉、…初めて見た筈なのに何故知っている? コブ太を見れば、…あの黒いモノを睨み付けて唸っていた。…コブ太も知っているのか? しかも危険視している? そんな俺達を見て、
「記憶がなくともその身体が覚えているのじゃろ、…アレの名は厄災ガノン。百年前にハイラル王国を滅亡させた元凶じゃ、ヤツによって街は破壊され…多くの民達の命が奪われた。そして百年間…、ハイラル城に憑いておるのじゃ。」
老人がアレのことを教えてくれた。…厄災ガノン、たぶんアレをどうにかすることが俺の目標。…倒す役目は俺ではない、…そんな気がする。
アレのことを聞いた後はこの台地の現状。…この『始まりの台地』と呼ばれる地は、陸の孤島…絶壁の台地であるという。故にこの地から出ることは不可能、飛び降りようものなら…死は確実とのこと。しかし…ある道具があれば脱出は可能だという、…空を飛ぶ道具ってところか?
…案の定、パラセールという滑空する為の道具が必要みたいだ。見せてもらったところ、…何故か見覚えがある。…というか、作り方を知っている? このパラセール、…素材さえあれば作れる気がする。そのことを老人に言えば、
「ふぉっふぉっふぉっ、それはそうじゃろう。このパラセールはお主が作った物じゃからな、訳あってわしが預かっておる。…預かっておる身なれど、これをお主に返すわけにはいかぬ。…このパラセールには、正当なる継承者がおる故にな。…すまぬ、…ユートマよ。」
…このパラセール、俺が作った物なのか? なら見覚えあるのは当たり前だな。記憶にないことだけど、そのパラセールは俺が預けた物らしい。なら返してもらえばいいじゃない、…そう思うかもしれないが俺としては返してもらわなくてもいいと思っている。現に老人は返せないと言っているし、…継承者がいるっていうのにも納得が出来る。俺がその継承者の為に作って預けた物なのだと思う、そう考えるとしっくりくるんだよね。
無駄に薬を作りました。