「んじゃあ、次は俺からだ。あんたの力を教えてもらう。これから一緒に戦うってのに、何ができるのかも分からなきゃ困るだろ?」
続いてクーフーリンが質問した。
実力。それも確かに大事なことだ。
元々は、目標の大聖杯を守っている英霊___聖剣の持ち主に対抗する戦力を得るために英霊召喚を行ったのだ。結果、出てきたのは謎の立方体な訳だが。
しかし、本業ではないと言いながら確かな実力を持つクーフーリンと、なりたてのデミ・サーヴァントとはいえ、少しずつ力を付けていっているマシュ。
そんな二人の攻撃を受けていながら平気でいられるのだから、それなりには実力があるハズだ。
『分かりました。少し長くなるますが、いいでしょうか?』
「いや、言葉はいらねえ。あいつらで教えてくれればすぐに分かるからな」
クーフーリンは、そう言いながら剣や槍等の武器を振り回しながらこちらに向かってきている数体のガイコツに杖の先を向けた。散々叫んだ一同の声に釣られたのだろう。
「っ!敵です!先輩、指示を!」
聞き手に徹しながら休息を取っていたマシュも、敵に気付くと同時に盾を手に立夏に指示を求めた。
立夏はMCSの方を見た。マシュ達がいるとはいえ、万が一MCSがやられてしまったらと不安で仕方ないのだ。
それに対してMCSは、心配しないでと言うように、力強く頷いた。
「じゃあ、お願いしてもいい?」
その言葉を聞いたMCSは、ガイコツに向かっていった。ある程度まで近付くと、自分の背後から小粒サイズの何かを生み出した。
「あれは…刃の欠片か?飛ばして戦うなら、アーチャーってところか?」
自分の方に向かってくるガイコツを火球で燃やしながら、クーフーリンは様子を観察していた。その言葉に立夏は、見るからに弓矢ではないものを武器にしているのに、なんでアーチャーなんだと疑問を抱いた。
MCSは浮かべていた欠片を、迫ってきているガイコツに向けて飛ばした。ガイコツは、飛んでくる欠片を振り回していた剣で弾いたが、弾かれた欠片は弧を描きながらガイコツの背後に回り込み、その頭を砕こうと速度を上げながら向かっていった。
カンッ
…欠片は、ガイコツの頭に命中した。だがその一撃は、頭蓋を砕くことなく、頭を軽く弾き、体勢を崩させるだけに終わった。
続けて、MCSは自身を光らせ、レーザーを撃ち出した。それは今度こそガイコツの頭を貫き、その時点でガイコツは消滅した。
その時、MCSの背後を取っていた生き残りのガイコツが、手に持っている剣を振り下ろした。
「MCS!」
立夏が叫ぶ。それに対してMCSは気付いていたようで、振り向きながら、瞬時に目の前に大きい半透明な板を作り出した。防御のためのものと思われるそれは、ガイコツの攻撃を受けると鈍い光を発した。
すると、攻撃をした側のガイコツの右手が吹き飛んだ。困惑しているようなガイコツの眉間に、先程のようにレーザーを撃つ。それと同時に、他に相手をしていたガイコツも全滅し、戦闘が終了した。
『とりあえずは、こんな感じです。私の攻撃手段は、今見せた欠片とレーザーに、攻撃を反射する板と、あとは宝具だけです。』
「ああ、よく分かった。だがまだ知りてえことが残ってる。
俺や嬢ちゃんの攻撃が効かなかったのは、なんでだ?」
クーフーリンが問う。戦い方が分かったのはありがたいが、やはり一番知りたいのはそこだった。
防御どころか、無抵抗でいながら無傷だったのだ。なんらかのスキルによるものだろう。
「はい、それは_______」
答えようとした時、空気が揺れた。廃墟の曲がり角から土煙が上がり、獣の叫びが鼓膜を揺らした。
「やべぇッ、バーサーカーだ!」
クーフーリンが叫んだ。立夏は彼がバーサーカーについて話していたのを思い出す。
真名はヘラクレス。名前だけなら立夏ですら知っているような、ギリシャ神話の大英雄だ。
1サーヴァントでしかないクーフーリンがバーサーカーの真名を知っていたのは、バーサーカーのマスターが自分から真名を言いふらしていたからである。
かの大英雄も聖剣の持ち主には敵わなかったらしく、今はシャドウサーヴァントと化し、なぜか大聖杯への道を阻む事のない森の中に陣取っており、無視すれば問題ないとのことだった。
なのに。
「■■■■■■■!!!」
目の前にいる巨大な影は。
「なんでテメエがここにいるんだよ、バーサーカー!」
誤字・脱字報告よろしくお願いします。
今回出てきた欠片は、MCSのAボタンのアレです。
次回はバーサーカーです