Fate/MugenOrder   作:ゴミ君

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MCSはカンフーマンでも倒せます。


知っている

『私の能力は「反転」です。攻撃を受けると傷を癒せるんです。その代わりに、攻撃を受けていないとダメージを受けていきますが』

 

 MCSが打ち明ける。バーサーカーの猛攻を受けきった後で疲れてすらいないのは、逆に散々攻撃を食らったお陰で全快できたからだ。

 

「反転…じゃあ、お前さんは、攻撃でダメージは受けないってことか?」

 

 クーフーリンが問う。えげつない能力だ。タネを知っていれば対処は簡単だが、知らなかったら確実に長期戦になる。面倒臭いことこの上ない。

 

『はい、そう思っていただいて大丈夫です』

「だったらさ!聖剣はMCSに受けてもらおうよ!」

 

 MCSの肯定に被せるように立夏が発言する。聖剣がどれ程のものかは計り知れないが、バーサーカーの攻撃をあれだけ耐えられたなら大丈夫そうではあると思っての発言だ。

 MCSもその役を引き受け、クーフーリンは聖剣が放たれている間に宝具の準備をすることになった。

 

 

 

「んで、あの宝具はなんだ?嫌な奴の背中が見えたが」

 

『あっ、えっと…相手の見たくないものを見せる…って感じです』

 

「そうか、微妙だな」

 

『あ、あはははは…』

 

 

 

 

 

 

「あれが大聖杯…なんでこんなものが極東の…」

 

 

『資料によると…』

 

 

 俺達は、レイシフトの目的の聖杯を前に立ち尽くしていた。

 

 ちなみに聖杯とは、どんな願いも叶えてくれるとても貴重な物らしい。話を聞いたときは正直うさんくさいと思った。英霊も、話だけなら嘘みたいな存在なんだけどね。

 

 

 でも、これなら確かに、何でも叶いそうだ。

 

 巨大だ。廃墟になる前のどの建物よりもきっと大きい。見た目は器で、金色に輝いている。なんというか、見ていて神聖さを感じる光だ。

 

 

 そして、その聖杯への道を塞ぐように立っている、あの人影こそがきっと_____

 

 

「悪いが、お喋りはそこまでだ。奴さんに気付かれたぜ。」

 

 クーフーリンさんが声をかける。何か難しいことを話していた所長とロマニさんは口を閉じて、人影に目を向けた。

 

 人影が歩み寄ってくる。徐々にその姿が見えてきた。

 

 鎧を纏い、その下に長いスカートを履いている。短い金髪は綺麗に手入れされている。

 あの人こそあのアーサー王であり、ならば右手に持っている剣が、聖剣____エクスカリバーなんだろう。

 

 でも、気になることがある。

 

「黒い…あれが、本当にあのアーサー王なのですか…?」

 

 そう、黒かった。鎧も、ドレスも、手に握る聖剣すら。あれが理想の騎士で、あの黒い剣が聖剣だと言われても、誰も信じないだろう。

 

『うん、間違いない。何か変質しているようだけど、彼女はブリテンの王、聖剣の持ち主のアーサーだ。』

 

「彼女…?あっ、ほんとです。女性なんですね、あの方」

 

 変質…何があったんだろう。アーサー王ですら、人が変わるような何かがあったのかな。

 

…って、女性!?アーサー王って男じゃないの!?

実は女だったなんて、そんな、ウソみたいだ…

 

 

 

「見た目は華奢だが甘く見るなよ。アレの魔力放出はバケモンだ。気を抜くと上半身ごとぶっ飛ばされるぞ」

 

「ご忠告感謝します。…はい、全力で応戦します」

 

 

 クーフーリンさんがアドバイスをくれる。本当にいい人なんだけど、アーサー王を倒したらお別れらしい。また会えるといいな。

 

 アーサー王はすぐ近くまで来ると立ち止まり、俺達の顔を流し見る。マシュを見ると少し目を見開いてから、微笑んでいた。

 

「______ほう。

 ここまで辿り着くとはな」

 

「なっ!?テメエ、喋れたのかよ!?今までだんまり決め込んでやがったのか!?」

 

「ああ、何を語っても見られている。

 故にかかしに徹していた」

 

見られてる…?何のことだろう、俺達以外にも誰かいるのかな。

 

「だが_____もう、いいだろう。

 

 

構えるがいい、名も知らぬマスター達よ。

貴様らが人理の救済者に相応しいかどうか、この剣で確かめてやろう!」

 

 

 王様の言葉について考えていたが、アーサー王が聖剣を構えたことで中断させられた。魔力を集中しているらしい聖剣は黒く輝いて、今にも圧縮された光が爆発しようとしている。

 

 「MCS!」

 

『はい、お任せを!』

 

 こうしていたいんです、と霊体化していたMCSが俺の前に立つ。やる気満々だ。戦ってばかりだって言ってたし、戦うのが好きなんだろうな。

 

「、 貴様が…まあいい」

 

いきなり現れたMCSを見てアーサー王が驚いているようだ。気持ちは分かる、初めて見ると誰だって驚くよな。

 

『行きましょう___マスター!』

 

「ああ、頑張ろう!」

 

 

 

 

「行くぞ。

 卑王鉄槌、極光は反転する

 

____光を呑め!約束された勝利の剣!(エクスカリバー)

 

 

 

 アーサー王が宝具を放った。黒い極光が俺達を呑み込もうとしている。あんなの食らったら絶対死ぬよな。それを迷いなく使う辺り、アーサー王は結構容赦ない性格だよ、反転してるからかもしれないけど。

 

 

 でも、まあ。

 

 そんな事を考える余裕があるぐらいには、安心できてるって事だよな。

 

 

 

 考えてみれば、おかしい話だ。ちょっと前までは普通に生きてたのに、今だってもしかしたら死ぬかもしれない目に遭っている。

 人付き合いは良かったけど、偉人と話すなんて思ってもなかった。

 でも、クーフーリンさんは偉いのに偉そうにしないとってもいい人で。俺みたいなのを先輩と呼んでくれる子とも知り合えた。

 

 

何よりも___俺にとって最高の、友達ができた。

 

 

 

 MCSが極光に衝突した。瞬間、視界一杯に輝く闇が広がった。しかし痛みはなく、どうやらMCSが聖剣のエネルギーを吸収しているようだった。おそれは光が止むまで続き、遂に聖剣の極光は、立夏を呑むことなくかき消えてしまった。

 

 一同は本当に聖剣を無力化させたMCSに驚愕した。立夏はMCSの凄さに感激して、MCSは今更ながらアーサー王の姿に見覚えを感じた。

 

 

 

 

_______そして、アルトリア・オルタは、自分の宝具が無意味に終わった事に何の感慨も抱かなかった。

 

 




誤字・脱字報告よろしくお願いします


次回、『専用対策』どうなるMCS!

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