____鉄華団
火星の組織の少年兵達が創り上げた私設組織。
苦境から這い上がろうと勝ち取りたい明日のために戦い続けながら、理想を現実にすることは叶わず散った。
その団長、オルガ・イツカ。家族である団員と、今日を、そして明日を生きるために奮闘したが、ヒットマンの凶弾に倒れ、遺された団員達に道を指し示しながら逝った____
「…とまぁ、そして」
「待って!火星!?火星って宇宙だよね!?」
召喚が終わってから。
「ん、あんた、こんなところで何してるんだ?」
「いやぁ、働きすぎだ!って言われちゃってね…ははは」
働きづめなんだから少し休めと、管制室から弾き出されぶらついていたロマニは、先程召喚されたばかりのオルガと話していた。
ロマニは、オルガについて知りたかった。革のズボンを履き、ジャケットを腰に巻き付け、逞しい上半身を晒すその姿から、近代の英霊らしいと当たりを付けてはいたが、それ以外のことは何一つとしてわからなかった。近代において、『オルガ』という人物は歴史に名を残していないのだ。
一応、ピカソの第一夫人の名前がオルガではあるが、召喚されたオルガはどうみても男なのでそれはないだろう。
所長のうんちくを聞かされるにつれていつの間にか伝説等に詳しくなっていき、そこそこに知識があると自負していたロマニにとって、英霊の服装で生きた時代を推察するぐらいしかできないというのは中々に堪えた(MCSは論外である)。
そんな折に、この出会いである。そうだ、その人について知りたいなら、直接聞けばいいのだ。そのあたりの事情において、英霊というのはとても都合がいい。
そう考え、しばらく雑談したのち、ロマニはオルガにこう聞いた。
––––––––"君はどんな英霊なのか、何を成したのか"、と。
「…鉄華団」
しばらくの間黙っていたオルガは、ぽつりと呟いた。
「鉄華団。決して散ることのない鉄の華。そうあれと、そうありたいと、願いを込めて付けられた名前だ」
「鉄華団、いい名前だね」
前触れもなく始まった語りに、返した言葉は当たり障りのないものになってしまった。オルガはそれに構わず続ける。
「オルガ・イツカ。鉄華団のリーダー…団長だった男の名前だ」
他人事のように語るその顔には、隠しきれない程の哀しみが滲んでいた。
英霊とは過去の人だ、必ず死を経験している。そしてその死は、必ずしも幸福な最期とは限らない。
悲痛な死を遂げる者もいれば、裏切りによって殺された場合すらある。目の前の彼も、仲間と信じていた誰かに背中を刺されたのかもしれない。そんな繊細な事情を、今から話そうとしてくれているのだ。
ロマニは居住まいを正し、神妙な気持ちでオルガの言葉に耳を傾ける。オルガは静かに語った。鉄華団の軌跡を、オルガ・イツカの生き様を––––––––
そして、開幕のやりとりに至った。
まず、火星で暮らしてきたという嘘のような話に驚いた。しかも彼らが築き上げた鉄華団の団員たちは少年兵で、過酷な生活を強いられてきたという。
モビルスーツと呼ばれるロボット。300年前に起きた厄祭戦。オルガ・イツカの親友、三日月・オーガスが半身不随になったという話で受けたショックからようやく立ち直ったところで、正気に戻ったロマニの叫びが修復作業の続くカルデアの一室に響いた。
「今の地球には一般人でも乗れる宇宙船なんて作れるわけがない!まさか君は未来人…?っていやいや!」
規模の大きい話を聞いているうちに、飛躍しすぎた自分の発想にツッコミを入れる。そんなあたふたとしたロマニの様子に、オルガは笑いながらも真実を打ち明けた。
「ああ、悪い悪い!あんた、MUGENを知らないんだろ?じゃあ、MUGENについて話さなきゃな」
オルガはズボンのポケットを漁り、取り出した何かを机の上に置いた。
「これは…?」
それは一枚の手紙だった。乱暴に取り出されたせいでくしゃくしゃになっているが、荒い字で大きく『果たし状』と書かれているのがわかる。
「『招待状』ってやつらしい。知らないうちに持ってた。これがあれば、MUGENに参加できるんだとよ」
…さっきから、無限無限と言われても、なんのことだかさっぱり分からない。説明すると言ったんだから、肝心なところの説明に早く入ってほしい。
そう言うと、せっかちな奴だと溜息を吐かれた。
「MUGENってのはな、格闘大会だ。超規模のな」
誤字・脱字報告よろしくお願いします。
続きます