ただ記憶のままに   作:空澄みの鵯

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初・投稿!
ジョジョが好きです。でもPS3がブッ壊れてゲームが出来なかった。故に超憂さ晴らしで書いてます。

スタンド能力に関しての妄想は絶対にジョジョ読んだ人ならやると思うんですよね。例えば世界(ザ・ワールド)とかキング・クリムゾンとか、典型的な使いやすいスタンドや、ちょっとマイナーなら正義(ジャスティス)とかでもいいかも。あのクソチートの負け方があんまり過ぎて吹いたのは俺だけだろうか。

これもその類です。ただ、ジョジョ程に熱くスゴ味を出せるか、と問われれば無理なので生暖かく見守ってください。


中継駅にて

例えばの話。転生できるとしたら、あなたは一体どんな願いを願うだろうか。

 

主人公最強の王道は良い。

 

能力は尋常でなくとも、基本的に負け知らずな主人公の行動は見ていて痛快だ。何よりも欝展開が少ないのはありがたい。読み進めていて軽い気持ちのままでいられるというのは、暇つぶしには持っておきだし良質なものだとやはり胸が熱くなる。

 

主人公脇役の外伝も良い。

 

脇役と言いつつ主人公ばりの働きをする場合もあるが、脇役に徹している作品では本当に日陰者扱いであったりする。しかしそれでも暗雲の中を進むような軌跡の中で、刹那的であろうと輝いたその瞬間の煌きには日向にいる主人公を掻き消すような鮮やかさがある。

 

転生という要素を含めたとしても、主人公を起点として考えるとやはり昨今の流行はこの二種だろう。ゲームのスペックを持ったままゲームの世界へ、なんて場合であっても大抵はこの二種だ。如いて言うならば、自分で掻き乱すか巻き込まれるかのような程度の差はあるだろうが。

 

ならばこそ。ならばこそ自分がその分岐路に立たされたときに、どちらを選ぶのかは重要だと言えるだろう。

 

目の前の幾つもの道を見ながら苦笑しつつ、そんなことを思う。

 

今自分が立つ目の前の道は幾つもの、それこそ数え切れない程の道が生まれては消えを繰り返している。先は全く見えないにも関わらず何となくこの先にあるであろう世界の輪郭を覗けるのは、今立つ場所がそういった場所だからなのだろうと判断した。というよりも思案してもどうしようもない。わかるのだから、としか言い様がないのだから。

 

背後の道は明るくじっと目を凝らせばシャボン玉の様にふわふわと何かが浮いてくる。表面が虹色に色づいたかと思えば、まるで液晶の様にそこに誰かの姿が映し出される。楽しげに友人と思われる人物と戯れる男性が自分であったのだとわかる。が、それは記憶というよりも記録に近い感情で、だからどうしたと言わんばかりの感想が浮かび上がりそうになる。

 

これが実に恐ろしい。

 

自分であった誰かを見ての感想が「だからどうした」では今までの自分に申し訳が立たない。いや、第一にこんな事を考えている時点で自分が自分ではないなんて……ううん、やめよう。実に馬鹿らしい結論が生まれてしまいそうだ。

 

要するに纏めてしまえば背後の道は自分が歩んできた軌跡であり、目の前の道は切り開くべき荒野なのだろう。

 

前が転生。後ろが人生。では横は?

 

見れば横は同じ世界で死んだらしいお仲間さん達が歩いている。彼らの背後の道を見ても記憶の塊の様なアレが浮かんでこないので、やはりコレを見ることが出来るのは自分の記録だけなのだろう。ただ不思議な事に彼らは決して背後を振り返らないのだ。

 

まるで必要がない――いや、違う。まるで自意識が無いかのようにただ黙々と前へ前へと進んでいる。まるで蜃気楼の様に揺れる目の前の道に躊躇いなく踏み込み、フラフラと彷徨うようでありながらも愚直に前へ前へと進み別の世界の道を踏みしめていく。

 

勇気があると称するには少々不気味な彼らの姿を見るたびに背後の道を見て、浮かぶ記憶の中に映る自分を見てどうしようもない不安感を埋める。この工程を幾度繰り返しただろうか。幾度では済まない。幾十、幾百と繰り返していた気もする。おそらくは間違いではないだろう。背後の自分が消えてしまうような気がして、怖かったのだから。

 

やはりなんとなくだが、わかるのだ。ここが分岐路で、背後に浮かぶソレが記憶で、前の道が転生への段取りで、進んだ先には記憶の中の自分がいないであろうことが。それは実際体感してみると実に恐ろしく、足踏みをするには十分だった。

 

だが、何度も何度も彼らが転生するのを見ているうちに、つい先ほどようやく転生するのだと心で受け止めることができたという訳だ。というよりも、

 

「……面倒だなぁ」

 

記憶を失い記録を知るだけになってなお、根本的に自分が面倒くさがりの駄目人間だというのが大きいだろう。つまることろ、怖い云々以上に立ちすくんだまま悩み続けることを放棄してしまったのである。

 

さりとて彼は転生する先の道筋を決め兼ねていた。

 

先程から絶え間なく進むお仲間さんと同じように適当に進んでもいいのかもしれないが、彼らの姿を見ているとソレにならうというのは愚行でしかない気がする。直感でしかないが、背後の記録を見れば案外バカにできない精度で当たっているようなのだから経験則とも言える。

 

彼の懸念は三つ。

 

一つ目が不確定な世界へ転生した際に、自分のこの記録を自意識は保たれるのかということ。記録としてでしかないが自分の死に様を把握している以上、再び自分が消えるような事は避けたい。例え自分が泡沫の夢のようなモノであったとしてもだ。

 

二つ目は転生した先の情勢だ。先ほどから目を凝らしていたためか、真っ暗な道の先にある世界にも色彩があることに気づかされた。黒であったり白であったりと色彩と呼ぶにはあまりにもモノクロームだが、それでも黒からはざわつく嫌な感じが、白からは心地よい感じがするので適当に踏み込むわけにはいかない。

 

三つ目は何時の間にか足元に座り込んでいるこの白い輪郭ののっぺらぼうだ。表情などないハズなのに、口元がニヤニヤしているのがわかるのはコレの雰囲気なのか、それともこの空間がそういった理解できてしまう場所だからなのか。とはいえ、お仲間さんの中に二人連れなんていなかったこともあり不安で仕方ない。

 

「植物の様に生きたい……とまでは言わないけれど、幸福ではありたいのに」

 

思わず記録の中の自分がよく呟いていた言葉を口にしていた。

 

ジョジョの奇妙な冒険。独特のタッチと世界観。そして狂言回しとも取れるような重みのある言葉が特徴的な作品。愛読書であり、自分の聖書(バイブル)とも言えるものであったらしい。記録の中で時々似合わないキメ顔で何かしら叫んでいたのを見たときは、自分でも呆れてしまった。だが、それは実に楽しそうで、今の様に立ちすくむ自分には無い輝きを感じたのも事実。

 

基本姿勢は勧善懲悪のあの物語の輝き。作者の語る人間讃歌を見て感じさせるという凄まじいインパクト。善性とは何かを問いかけるような主人公。悪党とは何かを魅せつけるような宿敵。一言では語り尽くせぬような物語は先述した王道のようでもあり、脇役も輝くその瞬間は外伝のようでもある。

 

『ほぉ、そこまで気に入っているのか』

 

「……しゃべれるのかよ、お前」

 

胡座をかいたままの白い輪郭のそれがしゃべりだしたことに驚かなかった訳ではないが、それを表に出すのは癪だったので押しとどめてソイツへと目線を向ける。右手を軽く上げて『よぉ』なんて行ってくるが顔の輪郭は動いていないように見えたので、おそらく人型であるが口から発声している訳ではないのだろう。

 

『いやはや、久しぶりの来客だから驚いたぜ?』

 

「客ってなんだよ。俺は死んだだけだぞ」

 

『おう、知ってる知ってる。テメェは死んだ。(ダスト)(アッシュ)(スクラップ)も吃驚な挽肉(ミンチ)からのハンバーグじゃねぇか、笑っちまうな』

 

「笑えねぇよ、流石に」

 

ケラケラと笑いながら――音程は不安定で高いかと思えば低くて、年齢も性別も判断し難い――ソイツは俺を見据えながら楽しげに語る。

 

『そいつはすまねぇな。まぁ、話を戻すがアレだ。来客ってのはこの空間で意識を保ってるってことだな、うん』

 

「あぁ、やっぱり普通はあぁなるのか」

 

そういって隣を歩く幽鬼の様な女性を指させばソイツは静かに頷いた。

 

『普通って言い方も可笑しいけどな。ほぼ絶対あぁいう風になるはずなんだぜ?死んだショックってのはデカイからな。どうしたって自意識が砕けちまう。時たまに執念や怨念、はたまた妄念で世界に残ることもあるが、それでもこっちに来るときには粉砕されるはずなんだ』

 

「粉砕って穏やかじゃねぇな。普通成仏ってのは安らかに、だろ」

 

『馬鹿言うなよ。お前だって分かってんだろうが、ここは死んだ魂が記憶を記録にして捨てていく場所だぞ。あまりにも魂に執着した記録は次の場所まで持って行っちまうことはあるぜ?それは才能と呼ばれたりするし、時たま麒麟児と呼ばれるような奴だっている。だけどな、普通はここに来た時点でそれはねぇんだよ』

 

ソイツは立ち上がると両手を鳥のよう広げて問いかける。

 

『俺の右手方向、何が見える?』

 

「次の世界だな」

 

『そうだ。んじゃ、左手方向には?』

 

「俺のいた世界か?」

 

『半分正解だな。そっちにあるのは前の世界だ』

 

「前の?」

 

『おう、前の世界だ。魂が輪廻を巡るってのは有名な話だが、それはこういうことなのさ。全ての魂は死ぬと世界から弾き出されて此処にくる。此処は世界が、それこそお前の知る世界以外の異世界も含めた莫大な数の生物の魂が収束して拡散していく起源兼終焉の世界ってのはちょっと痛々しいな。そうだな、次の人生への中継駅みたいなモンだ。そんな場所に、それこそ世界が密集して接続されるような部分に魂が記録を保ったままが普通だと思うか?この場所にたどり着く前にお前は幾千万のミキサーの刃をくぐり抜けてきてるようなモンなんだよ』

 

世界が収束する一点。その密度はおそらく考えるのも馬鹿らしいようなものだろう。そこを超えてきた?誰が?俺が?

 

この場所の事実と俺の異常に数秒の情報整理の時間を必要としたが、ソイツは無言のまま待っていた。この場所が起源兼終焉ってのはよくわからない。何となくわかることばかりのこの場所でわからないって事が、どれだけの信憑性かなど語るまでもない。

 

「マジか」

 

『マジだ。理解できねぇだろうが、それは全ての世界を以てしてもこの場所は規格外だからだ。この場所にいる限りはお前は全知全能にも等しいが……どうする、留まるかい?』

 

全知全能。その響きは甘い。

 

この場所にいる限り確かに俺はなんでも分かるのだろう。この場所だって調べ続ければ分かるかもしれない。知識欲なんてさしてある方ではないが、それでも惹かれるだけの甘さがある。

 

「いや、やめておくよ」

 

それでも留まろうとは思えなかった。

 

『そうかい。そりゃ残念だ』

 

ソイツも留めようとはしなかった。

 

「なんか悪いな。ここまで説明してもらったのに」

 

『いやいや気にするな。こんな場所にいるとな暇で仕方ないんだ。年数も日数も時間も分も秒も分からないからな、俺もついさっきこの場所でこうなった気がするし、永劫を生きたような気もする』

 

「……辛いのか?」

 

『いいや、満足してるのさ。俺はこの選択に後悔してない。ただ時折迷い込んでくる奴に同じようなことを聞いて、自分の意思を確認してるのさ。あの時の私は間違っていたのか、ってな』

 

俺、と自称したソイツは最後には私と称した。元々は違ったのか、それとも既に分からないのか。

 

『まぁ、俺のことはいい。とりあえず転生するといいぜ。この場所に記録込みでいられるってことは、それ自体が奇跡みたいなもんだ。スターゲイザーだってワイズマンだってマギだって出来る可能性が無いことだぜ。誇って行くといい』

 

それと、と前置きしてからソイツは両の掌を合わせてから数秒だけ理解出来ない音を呟いていた。この場所で理解できないということは、やはりそういうことなのだろう。

 

『選別だ、持って行ってくれ』

 

掌をゆっくりと離せば、そこには宙に浮いたままの液体が浮いていた。白いソイツと対を成すように真っ黒なソレは、ソイツの右手の動きに合わせるようにふよふよと宙を漂う。まるで世界に穴を開けたような真っ黒な液体だが、持っていくとはどういうことだろうか。

 

「それをどうする――!?」

 

顎を掴まれた。それこそ万力を思わせるような力で。

 

いつの間に立ち上がった!?なんて言葉を返す余裕もない。ギリギリギシギシと顎の骨格が歪む音が聞こえるなか、ソイツはのっぺらぼうのまま最初と同じように確かな笑みを浮かべて、

 

『はい、アーンして』

 

むりやりこじ開けた口の中へと黒いソレを流し込んだ。

 

反射的に吐き出そうとするも黒いソレは先程まで液体であったはずなのに、歯の裏側に()()()()()()()()もがきながら喉の奥へと流れ込んでくる。

 

死闘数分。結果から言えばソレは胃の中に収まった。

 

『おめでとう!これで君はどこでだって生きていける……っておい、大丈夫かい?』

 

「ッざけんな!?何だ今の謎の変質物体Xは!!」

 

『何だと言われても、君でも知っている言葉を使うならアレだ。禁断の果実か、賢者の石、森羅万象。まぁ、意味はその内にわかるさ』

 

どういうことだ?

 

そう言葉にしようとした瞬間に襲ってきた目眩でふらついた。

 

視界が歪み、正視できなくなってくると眼球の外側から黒い何かが視界を蝕み始める。気のせいでなければ、これはさっきの変質物体X。

 

『それでは次の人生を楽しんでおいで。僕からの選別はきっと役に立つ』

 

全身を包む妙な高揚感と全能感、それがこの場所の影響なのか変質物体Xなのかは分からない。ただ、

 

『さよなら、二度と会うことが無い事を祈っているよ。神様なんていないけれど、確約はできないからね』

 

祈るだけならタダだろう?

 

その言葉を返す余裕もないままに視界は黒に染まり、思考はブレーカーの様に唐突に落ちた。

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