というか、アレです。仕事始めました→引っ越しました→新生活楽しいです!
そして三日でPCが壊れる。どういうことなの。
起動時間は30分。それ以上、もしくはそれ以内で電源が堕ちる。
イミワカンナイ……ダレカタスケテー!
そんな状態でしたが、私は元気です。健康診断で低血圧、貧血、痩せ過ぎ、と酷評された上に仕事の同僚に「体型だけなら貧乳女子」とまで言われました。
属性だけ抜き出すと、
ちびっ子低血圧貧血持ちです。なにこれ弱そう。
足りない。一歩……いや、もっと足りない。
眼前で太陽の黄金を纏うが如くの
人間と堕天使という時点で自力の違いが目立っていたのを、無理矢理差を縮めたのが
ムカつく。それこそ殺意が沸くレベルの怒りが胸中を占める。
Re:makeがドーナシークから発せられる光と太陽の波紋によって炙られるような感覚を伝える。
ニヤつく。波紋という技術を特等席で味わうという歓喜が魂を震わせる。
Re:makeがその感覚を細分化し、情報として処理し『理解』した内容を『記憶』とすりあわせていく。
一秒毎に少しづつだが、Re:makeを収めていた自分の器が深化していくッ!
心臓がドクドクと高鳴る。血液が全身を巡る。痛みが自分の輪郭を朧気にし、Re:makeと自分が少しずつ一体化していく。Re:makeの受けた痛みが俺に伝わり、俺の痛みによってRe:makeのポテンシャルは変化する。故に溶けていく。自分の傍らに立つその意志が、戦おうとするその姿が、自分の限界を超える可能性を作り出していく。
空から太陽が堕ちてくる。そんな錯覚さえ覚える黄金の宿敵の一撃は、自身の想いに負けず劣らずの殺意溢れる首への一閃だった。
牙を剥き出しにして声にならない叫びを上げながら、自分の首を引き裂く左の剣をRe:makeの腕を鋼へと変化させ受け流す。鋼へと変化させた腕の表面が僅かだが相手の熱量に敗北し、ジリジリとした痛みが己の肉体へとフィードバックしてくる。
しかし痛みに表情を歪める暇などない。
受け流すと読んでいたドーナシークは翼を折りたたみ空気抵抗を減らした上で、体を独楽のように回転させ左の剣を受け流した直後には既に右の剣が首元を狙ってきた。しかし、次の一撃がくることは此方とて予想済み。何度お互いにラッシュを打ち合ったと思っている。お前がバカみたいに力を求めたのは理解したし、バカみたいに正確な一撃を狙ってくることも読んでいる。
故に狙いは首だとわかっていた。
Re:makeの腕を鉤爪のように再構成し、ワザとその剣戟に引っ掛けて逸らす。そしてそのまま腕の構成をワイヤーへと変更。まるで釣りのように
伸びたワイヤーがドーナシークに触れる瞬間、折りたたまれた翼を大きく開きながら羽の先から波紋を放出し加速しながら真上へと急加速する。ワイヤーは空中でさ迷い、俺は至近距離での波紋の波動に体制を崩す。
仰向けに倒れるようとする自分の目には沈む夕日と宵闇の境界線で飛翔する宿敵。波紋と光力の輝きによって黄金の太陽と見紛う姿は実に神秘的だろう。しかし、そんなことはどうでもいい。問題なのは空から来るこの矢の如き一撃を、どれだけ上手く回避するかだろう。
あぁ、だがしかし。
『波紋』『理解』『記憶』
この三つが合わさった時点で、俺の中で取るべき選択は決まっていたと言える。
「ゼェアアアッ!」
烈哮と言っても差し支えなのない叫びとともに落ちてくる一撃は、何もしなければ間違いなく心臓を捉え脆弱な人間の肉体を死へと誘うのだろう。しかし、人の身ではこの状態から身動きを取ることは難しい。選択肢は回避一択であり、方法はRe:makeを使った方法に限られる。ならば、習おう。俺の『記憶』には、不可能を可能にしてきた者達の歴史があるのだから!
「Re:make!」
叫ぶと同時にRe:makeの蹴りを思いっきり『俺』に叩き込むッ!
「んなっ!?」
流石にこれは予想外だったのか、ドーナシークの動揺する声が聞こえたがこっちとしてはそれどころではない。何しろ『肺の中の空気を1ccも残らず吐き出す』ほどの深い一撃だったのだから。
吹き飛ぶ最中、次の工程を実行する。
自分にスタンドで攻撃して回避、肺の中の空気を1cc残らず吐き出す。そして次は無理矢理に呼吸を整える番だ。とは言っても、意志の力だけで呼吸を整えることなどできるはずもない。故にここも『記憶』を頼りにする。
俺を蹴ったRe:makeが定位置とも言える背後に回った瞬間に、両腕を体内へと沈みこませ肺を包み込むように再構成を行う。背筋が寒くなる感覚とはこういうことをいうのだろう。そう断言できるだけの恐怖が生まれようとするが、渦巻く感情がそれをねじ伏せる。恐怖を我が物とする、というよりも俺の意志の前に恐怖が生じる隙など存在しないというだけの話だ。
無理矢理に行う無茶苦茶な呼吸。肺を無理矢理に収縮させ、一秒間に十回の呼吸を行う。本来の修行ならばこの後の肯定は十分吸い続け十分吐き続けることだが、今回はそんな余裕が無いので別のやり方を――ドーナシークのやり方を習って行う。
高鳴る心臓の
自分の肉体の内側で生み出されるエネルギーを感じる。Re:makeが感じ取ったそのエネルギーこそが、俺の狙っていたもの。
目の前に最高の教師がいて、Re:makeによって『理解』した。
故にその知識を『記憶』と照らし合わせ、後は土壇場の賭けで勝てばいい!
地面に落ちると同時に受身をとって体制を整えドーナシークを見据える。内側で生まれた熱いエネルギーは出口を探して血液を巡り、肉体を震わせる。そしエネルギー作成の過程を再現したRe:makeの『理解』が更新される。
Re:makeを再構成し、自分の肉体と重ね合わせながら、自分自身とRe:makeの『二人掛り』でエネルギーを――『波紋』を練り上げていく。
体勢を立て直した後に見据えたドーナシークは既に動揺を振り払っていた。それどころか、両翼から燐光を飛ばしながら既に此方へと飛翔し接近してくる最中という。驚異的な状況把握と判断力だと感心してしまう。
目があった。
『死に晒せ』
『死に給え』
想いが通じ合った。
お互いに凶暴な笑みを浮かべた。
まるで以心伝心の親友のような刹那のやり取りの中、ドーナシークは剣の間合いの外で飛翔しながら前転。
黄金の暴風とでも呼べばいいのか、波紋と光力の混じった燐光が叩きつけられ思わず目をつぶってしまう。その上、飛翔速度から逆算できる接触までタイミングをズラすという、最高に面倒な小細工付きという実に
自分の瞳で見ることが叶わなくとも、まだ俺には見る方法がある。まるで背中から抱きしめるように存在する
回転の勢いを殺さずに振り下ろされたドーナシークの両剣に宿るのは光力と波紋という、本来ならば出逢うことのなかったであろう力が込められている。無論、人がその身に喰らえば無事では済まないことは違えようがない。しかし、本質的に剣とは刃が危険であり、そこ以外に注目すれば唯の鈍器である。
ならば、斬撃を見極める目があり、鈍器に止めるだけの力があるのなら!
指先へと波紋を集中し、小さな穴から圧縮して放出させるイメージ。それを自分とRe:makeを重ね合わせることで、自分だけで練り上げる波紋の倍近いエネルギーをひねり出す。そして、剣戟の筋を読めば――
「オラァッ!!!」
「なッ……にィ!?」
白羽取りくらいできないでどうするのだ!
「賭けには勝ったぞドーナシーク!貴様の見せつけてくれた人の技術、確かに学ばせてもらった。礼だ受け取れェ!」
掴んでいた両剣から俺は手を離し、Re:makeには渾身の力でドーナシークの剣を掴んでもらう。ギヂィと剣を握り締めたRe:makeの掌から音が鳴り、フィードバックによって自らの掌から血液が溢れる。流れ出る血液すら力の糧として、空条譲治は今持てる最高の勇気と、過去最高の殺意を持って、叫ぶ。
「
血濡れの拳が山吹色に輝く。血に濡れた拳に放出される波紋は、血液を通して増幅されていく。ある種、人間の技術の集大成である波紋。その神秘の核たる人間という可能性。そして人の体内を巡りゆく、生命のエネルギーを運び続ける血液を利用した一撃。
それは本来の一撃よりも紅く、宵闇に沈もうとする太陽を掌中に収めたかのような、爆発的エネルギーを誇っていた。
「
どこまでも光たるドーナシークの波紋とは違う。生きる意志。勝つための覚悟。ありったけの殺意。それを成す悪魔的発想。
どこまでも人間らしい。美しく、それでいて見苦しい。そんな一撃が眼前の太陽を砕かんと振り抜かれる。
「ぐぅッ……ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
拳が相手の腹部にぶつかった瞬間に感じたのは、鋼のように鍛えられた腹筋の強度であった。鍛えに鍛えたのだとそれだけでもわかる。コイツの口ぶりだと、俺を潰すために鍛えたのだろう。何という馬鹿だろう。そして、何となくそれを予想していてずっと鍛え続けてきた自分もなんて馬鹿なんだろうか。
馬鹿馬鹿しいほどに愚直な一撃。しかし、そこに至るまでに成された過程は彼だけの持つ『記憶』から生まれた奇跡の連続。『記憶』に従って言うならば、四部の自滅回避、一部の横隔膜強打、三部の内臓掌握、二部の波紋修行、そして最後に一部の波紋の正しい知識。総巻数にして百巻を超える冒険譚の記憶は、今尚彼の中で輝き続けている。
――それは彼がこちら側へと持ち越した、彼を成す根幹。
意味も分からず、訳も分からず、何故だか死んで、ここで生き始めて、堕天使なんて邪魔が入って、苛立ちだけで立ち向かった。姉が出来た。自分にはもったいないほどに、泣きたいほどに良い姉ができた。学校にまで通った。戸籍とか色々と迷惑をかけたはずだ。それでも今は幸せだと断言できる。あぁ、なんて恵まれているんだろうか。
しかし、それでも。幸せに浸りながらも、何時かこうなる気がしていた。コイツが目の前に出てくる気がしていた。だから鍛えていたし、隠れていたし、こうして目の前にすれば黒い殺意を瞳に燃やすことができる。ドーナシークと戦った時のことは昨日のことのように思い出せる。だからこそ、こうして立ち向かうことができるのだ。
――過去の『記憶』は、この瞬間へと続いていく。
ならばこそ、記憶の侮辱は許されない。それは俺が俺であるための、個人が個人として有り続けるための砦だ。俺がこうして此処にいる理由であり、幸せである理由であり、立ち向かえる理由であるのだから。故に断言できる。全ての理由が『記憶』のままであるのなら、今に至る『記憶』はこの瞬間の為にある。
――そして『瞬間』でさえも、『記憶』となって過去へと至る。
過去も含めて、この戦いには因縁がある。因縁というか、至極くだらないことで、こうしてこの瞬間に至るまで気づいてもいなかった感情ではあるのだが。
「お、ォオオおおおおおおっ!」
拳がぶつかった地点がバヂバヂと放電のような音を鳴らす。俺の練り上げた波紋とドーナシークの練り上げた波紋が反発しているのだ。武器を封じてなお、練り上げた波紋だけで抵抗するかドーナシークッ!
波紋の練り上げが弱い。土壇場でやったにしては最高の出来だが、練度の高さでドーナシークには及ばないのだろう。それでも、この一撃にだけ限定して言えばRe:makeを自分に重ねれば勝てるだろうが、それをするには全力で捉えている剣を手放す必要がある。それは無理だ。だからこそ、二本ある腕を使う。
Re:makeで体を地面に固定するわけでもなく、Re:make自身で殴るわけでもなく。意味があるかもわからないままに、無駄に鍛えた自分の肉体こそが最後の一撃だ。
波紋自体に破壊の性質はなくとも、空条譲治が行ったのは相手を潰すという意志を持った一撃だ。意識的ではないにせよ、波紋はただしくそれを叶えるために彼の肉体を支えていた。
痛みへの鈍化。波紋によって本来の限界以上に酷使された肉体の悲鳴を、波紋が一時的に忘れさせている。譲治の使った波紋はRe:makeを利用して体内を動かした結果である以上、鈍化はこの一時だけしかない夢のようなものだと言える。
弓を放つ直前のように引き絞られた拳。力みすぎて掌の傷口に指がめり込んで出血が増すが、そんなことは些事だと言わんばかりに更に拳を固く握り締める。出血と同時に溢れ出る波紋を拳で握り固め、固め抜いた波紋に更に溢れ出す血液のビートを伝える。そうすれば、まるで拳の中に心臓があるかのように脈動が生まれる。
ここが正念場だとドーナシークも感じ取ったのか、武器から手を離し腕をクロスして防御の構えを取った。攻撃性のエネルギーを剣に注いでいた以上、相殺が間に合わないと判断したのだろう。
だが、この戦いにおいて初めてと言っていいドーナシークの
逃げるドーナシークと追う空条譲治。
しかし、もしもここで捕まえられなければ敗北するのは空条譲治であり、ドーナシークは勝利を得るだろう。
『そんなものが認められるか』
お互いに目指すのが、勝利である以上。この一撃はそれこそ死に物狂いである。
拳の中の心臓が鼓動する。握り締めた指の隙間から山吹色の光が鮮血を蒸発させるほどの熱量を生み出し、とうとう撃鉄が下ろされるときがきた。
「もういっぱぁああああああっつぅうううううううううッ!!」
叩き込まれた拳は防御を打ち抜くことはできなかった。しかし、波紋疾走の連撃はドーナシークに確かに届いたのだ。ドーナシークの波紋と拮抗していた譲治の波紋。それが新たな波紋によって増幅されていく。振り抜かれた拳が脈動するたびに、新たな波紋が生み出されドーナシークへと流れ込む。
内側で暴れ狂う波紋がドーナシーク練り上げる波紋をかき乱し、同時に乱された波紋すら飲み込んで空条譲治の波紋は増幅していく。
「く…ぅううじょおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
このままでは不味い。
そう判断したドーナシークの行動は早かった。
体内の波紋を拮抗から反発へと変化させる。波紋の性質を磁石のN極からS極へと変化させるとでもいえばわかりやすい。当然、体内はズタズタになるが自らの許容量以上となって爆発するのは押さえ込むことができた。
拳の威力ではなく、波紋の反発によって吹き飛ぶドーナシーク。Re:makeを使って足場を固定していた訳でもない譲治も同様に逆側へと吹き飛ばされてしまう。
全身全霊の一撃の後に受身が取れるわけもなく、受身すら取れないような状態で吹き飛ばされる譲治。
しかし、対するドーナシークには翼がある。内側がズタズタになろうが、闘う意思がある。動かそうとしても動こうとしない翼だが、体内で暴れ狂う波紋を羽から放出してやれば姿勢の制御くらいはできる。
「俺は……勝つのだ!」
無理やり捻り出された波紋が翼を傷つけ、放出された黄金に混じって鮮血が飛び散る。だが、ドーナシークは翼を広げ姿勢を立て直してみせた。着地したドーナシークの周囲に血塗れの羽が舞い散る。右腕を突き出し手を広げ波紋を集中。性質を再び逆転させることで、舞い散った羽はドーナシークの掌へと集う。
「
本来ならばこのようなボロボロの状態で使うべきではない奥の手。
自らの羽に流した波紋を対となる波紋によって集め、形なき波紋に核を与える。そして、堕天使の持つ光力の槍との併用によって作り出す鴉羽色の芯のある
先ほど作り上げた光力と波紋の合わせ技の剣とは比べ物にならない密度。何しろこの槍の核は自分自身なのだから。人の指紋が個人によって違うように、この羽とて堕天使一人一人違いがある。つまり、この槍の芯は彼自身によって成り立っている。
『ならば、折れるはずもない』
それがドーナシークの覚悟だった。
二度と負けぬと誓い、二度と負けぬと決意し、二度目の邂逅を経た。
だからこそ、最善ではなくとも最高の一手を打ちたかった。
光力で生み出した槍でも殺せたかもしれない。しかし、もしかしたら負けるかも知れない。空条譲治とはドーナシークにとってそんな男だった。
現に受身も取れずに落下し倒れ伏す空条譲治を庇うように奴の武器が、Re:makeが立ってこちらを油断なく見据えていた。既に虫の息なのか、時々その姿が霞むのが見て取れたが、だからこそ油断はしない。人間とは追い詰めたときが一番恐ろしいと知っているがゆえに。
「俺の勝ちだ譲治ィイイイイイイッ!!」
悲鳴を上げる肉体を無視して彼は槍を放つ。鴉羽の芯を持つ太陽が大気を切り裂き、空条譲治を屠らんと牙をむく。
その一撃が直撃すれば間違いなく空条譲治は死んでいた。Re:makeで防いだとしても、恐らくは結果は変わらなかっただろう。既に抵抗するだけの力は残っている訳ではなく、ただ負けないという意思だけでRe:makeはそこに立っているのだから。
お互いがお互いしか見ていなかった。
空条譲治の五感は全てドーナシークへと注がれていた。ドーナシークにしても然り。
故にその槍を横から飛び込むようにして掴んだ白い影など、その瞬間まで完全に埒外の存在だったのだ。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」
甲高い叫び声が公園に響く。
必殺の一撃を掴んだ白い影、塔城小猫は練り上げられた波紋と光力によって自身の『悪魔』の部分が重症を負っていくのがわかった。直撃を逸した瞬間には手を離していたが、既に真っ赤に腫れあがり重度の火傷のように腫れ上がっている。
「塔城!?」
「部外者だと!?ッカラワーナ!」
空条譲治は塔城小猫を見た。
痛みのあまりに膝をついて苦悶の表情を浮かべる彼女の姿を。
ドーナシークはカラワーナを見た。
二対一という劣勢のなか、決して此方に攻撃を通さなかった相棒の姿を。
「―――ッ!!ぉおおおおおおおおおおお!この勝負預けるぞ、空条譲治ィ!」
怒号とも悲鳴とも言える叫びを上げ、ドーナシークは意識を完全に空条譲治から切り離した。
体内に残っている波紋と光力を一瞬で掌握し、それを二本の短槍へと構築。そして同時にグレモリーと姫島へと投擲した。迫り来る天敵のエネルギーに直前で気づいたのかその一撃を回避する二人だが、その間にカラワーナはドーナシークの元へと駆けつけていた。
「ごめんなさい、ドーナシーク」
「謝罪は後だ……退くぞカラワーナ」
合流した二人の足元に魔法陣が展開される。一秒にも満たない速度で構築された転移用の魔法陣に、魔術を扱う姫島はその技量に驚かされる。グレモリーは驚きつつも、指先に生み出した『消滅の魔力』を魔法陣へと放つ。本人を狙っても今までは回避されていたが故に、逃げるというなら足を潰す算段であった。
「逃がさないわ!」
「いいや、私は退くと言ったのだ。妨げることは許さん!」
打ち込まれた消滅の一撃を自身の手に作り上げた槍の一閃を持って相殺する。槍は砕けたが、時間は稼いだ。魔法陣が輝き、一瞬の内に彼らの姿をかき消した。
「朱乃追える?」
「……申し訳ありません」
沈痛な表情で謝罪する女王に王たる彼女はため息一つで許した。どうやら手強い相手がこの街にいるようだ、と自らの領土の外敵を思って一瞬目つきが鋭くなるが、直ぐにその表情は心配そうなモノに変わる。
「小猫……無茶をして」
未だに痛みを堪える眷属の元に駆けつけ、傷の具合を見る。
思ったよりも酷くはない。表面上は重度のやけどのようになっているが、内側にまで浸透はしていないようだ。光力というのは悪魔にとって毒である。それこそ、浸透性と即効性を持つ最悪の部類の毒だ。触れれば火傷、傷つけば全身を巡ろうとする。悪魔が悪魔である限り、光というのは天敵であり続けるのだ。
自らの女王へと視線を向ければ、わかっているとばかりに小猫の元へと駆け寄り治療を開始してくれた。光力は悪魔にとっての毒ではあるが、多少なりに姫島朱乃には耐性がある。そして治療するだけの魔術の腕前もあるのだ。
しかし思い返すのも憚られるほどに、ドーナシークという堕天使の放った一撃には冷や汗が出た。
自らの羽を芯として構成した光り輝く槍。あれに貫かれれば即死はしなくとも、痛みで全く動けなくなっていただろう。消滅の魔力をどれだけ集めれば相殺できたのだろうか。全力とまではいかなくても、小手調べ程度の威力では間違いなく押し負けるだろう。
何よりも恐ろしいのが、パッと見でわかるくらいにあの堕天使が弱っていたということだ。ならば全力で構成された槍ならば全力でもどうなるか……いや、その考えは今はおいておこう。
それよりも問題なのは今ここで倒れている男――空条譲治だ。
確かに何らかしらの能力を持っていることは把握していたが、あれほど強力な堕天使と対等に戦えるとは思ってもいなかった。賭け事での土壇場強さは魅せられていたが、こうして実戦でも強いとなると是非にでも眷属に欲しい。
そんな考えが表情にも現れていたのか、小猫の治療をする女王には苦笑され、痛みを堪えながらも戦車には非難の視線を向けられてしまう。やらないわよ、と一言口にすれば不満はありそうだが視線が外れた。内心で今はね、とだけ呟いて視線を空へ向ける。
空は既に宵闇に沈み、陽のあたる場所などなくなっていた。