ジェリド散る
宇宙世紀0088年2月22日。戦争の終わりが、刻一刻と近づいていた。
ーーーーグリプス戦役ーーーー
そう呼ばれるようになる一連の戦いは、ティターンズとエゥーゴによる地球連邦軍の内部戦争であった。
余りにも大きな犠牲を出した一年戦争。その爪痕は深く深く残っており、グリプス戦役もまた一年戦争の余波によるものであった。
戦いはサイド1、サイド2、サイド7、地球、月面都市、ゼダンの門といった多くの場所に広がり、アクシズも介入した三つ巴の大規模な戦争に発展した。
地球に住む者と宇宙に住む者。ニュータイプとそうでない者。一年戦争が浮き彫りにした対立が、グリプス戦役の原動力となっていた。
しかし、その戦いも直に終わる。この戦いを最後として終わる。
それは、その戦いに赴く全ての者がどこかで感じていたことであった。
それは、ティターンズのパイロット、ジェリド・メサも例外ではない。しかし、そんなことは彼にとってはどうでもいいことであった。
(殺された)
多くの同胞が殺された。部下も殺された。
(カクリコン、ライラ……)
友も殺され、師匠と慕っていた女性も殺された。
(マウアー……)
愛した女性も殺された。
本来の彼は仲間思いで情に厚い男だ。しかし今は、いや、そうだからこそ、今の彼の心には憎悪しかなかった。
(許せない。アイツは俺が……)
操縦幹を握る両手が痛い。口の中で鉄の味がする。
(俺が絶対にこの手で殺してやる……)
カミーユ・ビダン。因縁深いその標的を抹殺するために、ジェリドは出撃する。
「ジェリド・メサ、バウンド・ドック、出る‼」
⬛
標的はすぐに見つかった。Zガンダム。一年戦争にて、敵には白い悪魔と恐れられ、味方には反抗の象徴とされた機体の名を継ぐ機体。
「見つけたぞ!俺がこの手で殺してやる!」
ビームライフルを撃つZガンダム。幾筋もの光線が向かってくるが、どれもこのMAバウンド・ドックの堅い装甲には傷一つつけることは出来なかった。
「そんな事で、このバウンド・ドックは落ちないぜ!!」
「貴様のようなのがいるから、戦いは終わらないんだ! 消えろ!!」
因縁の相手、カミーユ・ビダンが吼える。
「俺を戦いに駆り立てたのは貴様だ!そんなこと言えるのかよ‼ 俺は貴様ほど、人を殺してはいない!!」
「俺は人殺しじゃない‼」
「俺がこの手で殺してやる!そしたら戦わずに済むだろう‼」
宇宙空間を、宿敵目掛けて突き進む。
「うわああああああああ!!!!」
カミーユの咆哮。
何発目かのビームライフルが機体を直撃する。相変わらず機体には傷一つつかない。だが……
「っ!」
ビームライフルの直撃で機体のバランスが崩れ、後方へと吹き飛ばされる。背後では撃墜されたラーディッシュが火を吹いていた。
「カミーユ!貴様はオレの・・・!!」
全てを奪った・・・!!という言葉は爆発に飲まれて自分ですら聞こえない。
不思議と熱さや痛みは感じなかった。ただ、目の前が異常なほど白くなっている。
ふと、幾つかの手が自分の方に向かってきていることに気づく。
太く、力強い男の腕。男性と比べれば細いが、筋肉質で頼もしい女性の腕。女性らしい細い輪郭だが、強い意思を持ち、自分を支え、護ってくれた腕。
ふと、自分の腕が引っ張られ、体が浮き上がる感覚に襲われる。どうやら俺の悪運もここまでらしい。お迎えがこいつらで良かったな、なんて思ってしまう。
それは、戦争中のありふれたワンシーン。ある一機のMAが爆発の中へと消えていった。
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