愛すべきバカが世界を変える   作:夢泉

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意思の狭間

 ベッドで仰向けになり、灰色の無機質な天井を見つめる。

 部屋に戻ったジェリドは色々と考え込んでいた。

 まずはあの戦闘はどうなったか、である。

 先程は束に反射的に尋ねてしまったが、実際、結果はわかっていたようなものだ。

 あの戦闘は短期決戦となることは間違いなく、さらに言えば、おそらく、決戦はエゥーゴの勝利となっただろう。だが、その上であの破廉恥な女率いるアクシズが何かしら暗躍し、漁夫の利を得ているのではないだろうか。

 それは、ティターンズの兵士として一線で戦い続け、エゥーゴの戦力(より詳しく言えばエースであるカミーユの力量)の成長を見て、ハマーン・カーンとも実際に出会ったジェリドだからこそ解ることでもあった。

 最早、自分は勿論、ティターンズの誰であっても、あのシロッコでさえ、Zガンダムに乗ったカミーユには勝てない。ましてや、エゥーゴにはシャア・アズナブルもいる。カラバにはアムロ・レイがいる。ティターンズに勝ち目など無いだろう。

 最も、そういったエースの事など関係なく、ヒルダ・ビダン殺害といった作戦を決行する組織にどうあれ未来は無い。あの作戦にだけは、ジェリドはどうしても納得できてはいないのであった。

 そのまま、ジェリドの思考は、カミーユのことに移る。

 何をどう言い訳してもカミーユの母親を殺したのは俺だ。知らなかった、騙されていた、だからどうした。結局俺が殺したんじゃないか。

 これが戦争だ。いつか自分が言った言葉が頭に響き、俺の思考が黒い感情で埋められていく。

 ーーーーーーアイツの方が人を殺していたじゃないか。

 まるで自分に言い聞かせるように。

 ーーーーーーアイツは俺の大事な人を殺したじゃないか。

 まるで自分を鼓舞するように。

 ーーーーーー憎い。憎い。アイツが、憎い。

 それは、この前までジェリドを動かしていた最大にして唯一の感情だった。

 ーーーーーー俺はエリートだ。ティターンズだ。

 それは彼のプライドであり、

 ーーーーーーアイツを越えないと俺は先には進めない。

 いつからか抱いた劣等感でもあった。

 ーーー憎い。ーーー悔しい。

 ーーー殺したい。ーーー越えたい。

 それらの感情は、エリートの誇りを汚され、大切な人を全て失ったジェリドに残った唯一の感情だった。

 だというのに、今のジェリドにはその感情が自分の感情に思えなかった。 

「なんでだ……」

 思いがけず零れた言葉は、灰色の部屋に吸い込まれるように消えていく。

「はっ…‼俺は何を考えているんだ!」

 ジェリドはかぶりを振って、自らの頭に沸いた疑問を打ち消す。

 カクリコン、ライラ、マウアー。皆の仇をうつことが間違いである筈がない。

 先程までのは一時の気の迷い。異世界に来るなんて馬鹿げたことになって混乱しているだけ。そう自分に言い聞かせる。

 束は先程、元の世界へ帰れるように最善を尽くすと言った。つまり復讐のチャンスがもう一度与えられるのだ。

「上等だ。待ってろよカミーユ。俺が今度こそ殺してやる」

 ジェリドは拳を天井に向かってに突き上げ、誓いをたてる。

 だが、彼は両腕が妙な温もりを帯び、まるで誰かが引き留めようと引っ張っている、そんな感覚に襲われていた。

 

 

 

 

 





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