早朝、とある島のとある研究所にて、人型の機械を見つつ二人の人間が立っていた。
「これがおそらく最終稼働実験となるよ……」
語る束の表情は暗く、口調は重い。
「これが無事に終わったら初任務、だったな」
答えるジェリドの顔もひきつっている。
「今回は武器も作ってみた……」
「すげぇ、けど……その、大丈夫か?」
違った。ジェリドは心配をしているだけ。ふらついている束のことを心配しているだけだ。
束は目の下に大きな隈を作り、頭をぐらつかせてフラフラしている。おそらく徹夜して頑張ったのだろう。
「ダイジョブ、ダイジョーブ……あ」
「っ!」
フラフラと前後左右に揺れていた束は、一際大きく頭を振り、反動で勢いよく後ろへと向かって、そのまま勢いよく床へと倒れていく。
束の正面にいたジェリドは咄嗟に彼女の背中へ手を回し、彼女が倒れていくのを防ぐ。
「大丈夫か?」
ジェリドが心配そうに束の顔を覗く。
「え、あ、え、えっと、だ、大丈夫…………」
そう言う束の顔は真っ赤だ。
「どうした?顔が赤いが、やっぱりきついのか?」
「その……近い……」
正面にいて向かい合っていた人物が後ろに倒れていくのを、背中に手を回して庇う。結果として、ジェリドが束を抱き上げたような状態となり、顔が物凄く近づいた状態になる。
「あ、あぁ、す、すまん……」
二人の間に奇妙な空気が流れた。
⬛
コホン、と大きく束が咳払いをして、奇妙な空気を追い払った。
「…で、これが徹夜して作ったハウンド・ラビットの武装だよ!」
そういって彼女がパチン、と指を鳴らすと、ラボの床が開き、何かが地面から上がってくる。
細長くて、赤い光を放つそれは、
「まさか……ビームサーベル、なのか…?」
「ご名答、と言いたいところだけど、これも贋作だよ」
「つまりは、アンタお得意の……」
ジェリドが軽く笑みを浮かべて呟く。
この数日、似たようなやり取りが何度行われたことだっただろうか。
「「束様特製ビームサーベル」」
二人の声が寸分の狂いもなく揃った。
⬛
「簡単に言えば、絶対防御の応用だよ。残念ながら、この世界ではミノフスキー粒子は発見すらされていないからね。絶対防御を剣の形にしてるような物さ」
赤い刀の柄の部分をいとおしそうに撫でながら束は語る。
「すげぇな。束博士、最高の機体をありがとよ」
たいしてジェリドは、その彼女の様子を見て、何かを決心したように頷いたあと、彼女に礼を言った。
「まだ稼働実験が終わってないよ。それに、礼を言われる筋合いは無いだろ?私は君を利用しているんだからさ」
束は首を横に振りながら、それは違う、と否定する。
「それでも、あの感覚を知っちまったからな。ISで空を駆ける感覚って奴をさ。改良される度に空が近づく感覚、自分とISと空の境界が無くなっていく感覚、これが味わえたのはアンタのお陰だよ。ありがとな」
「っ…!…………そ、そうかい。……精々、私のために身を粉にして働きたまえ!」
「へいへい……」
ところで、余談であるが、このラボには名前がある。『
「あ、それとね。言われていたハイパーセンサーについては、新システムを取り入れて最高の改良を施しておいたよ」
「へぇ、どんな改良だ?」
「それは今からの最終実験で発動するまでのお楽しみさ!」
「ソイツは一体どうして、と言いたいところだが、もういい加減馴れたぜ。さぁ、見せてもらおうじゃねぇか、その新システムとやらを!」
たった数日。だが、一つの島に二人きりで、一つの作品を造り上げようと力を合わせる。最早、束の性格など、ジェリドはよくわかっていた。
「うん。良い意気込みだ。じゃあ行ってみよー!」
⬛
一通りの動作確認が終わって、束が通信で休憩をしようと言ったので、ジェリドはISを繕ったまま、休憩をしていた。
『ところでジェリド君。君にはまだ初任務の内容は話していなかったよね?』
通信器を通して束の声がジェリドに届く。
「ん?…あぁ、そう言えばそうだな。一体どんな作戦なんだ?」
『泥棒だよ』
「は?」
『聞こえなかったかい?泥棒をするんだよ』
「寝不足で混乱してる訳じゃないよな?」
『問題ないよ。さっき、束様特製の“睡眠?なにそれ美味しいの?”ドリンクを飲んだから。飲めば、72時間眠れなくなる』
「絶対それ飲んだら駄目な奴だろ!」
『まぁ、冗談は程々にして…。君には、とある軍事基地を攻撃してもらう』
「ほう?」
『候補は幾つかあるんだけど、それらはいずれも、一国が誇る大規模な基地だ。そのうちの一つの基地を強襲し、そして保管された弾薬や兵器を盗む』
「だから“泥棒”か。で、目的は?」
『さっき君に武器としてビームサーベルを与えたよね?銃器や遠距離用の武器がなかったのは、何も意地悪をしているわけではなくてね。例えば弾薬ならば、弾薬を専門で大量生産する、それ相応の施設が必要だが、流石にこの島でそれは無理さ。だったら……』
「盗んでしまえ、か。フッ…アンタらしいな。嫌いじゃないぜそういうの。
………だが、そんなに弾薬が必要とは、戦争でもやるってのか?」
『…………』
「図星か?」
『だとしたら私を止めるかい?それとも協力しない?』
「戦争は恐ろしい」
『そう……じゃあ君は……』
「だが、協力しない、なんて一言も言ってねぇぜ?」
『……え?…………それは、元の世界に戻るため?』
「はっ、そんなの関係ねぇ!戦争なんて恐ろしいものに、女一人で向かわせられるかよ!」
『…っ!』
「束。アンタが何を抱えているか、俺は詳しくは知らない。だがな、俺はアンタと数日過ごして、アンタが悪人じゃ無いって確信したんだよ」
『そんなのは表向きだけかもよ?人間、自分の本性なんて簡単に……』
「俺が元いた世界じゃあ、裏切りからの暗殺なんてのは日常茶飯事だった。加えて俺が最後に経験していたのは三つ巴の大戦争だ。裏切りは腐るほどあった。普通の人間よりは本性を見抜くのも上手いさ」
『私は天才だよ?例え君がどんなに…』
「アンタがISを語るときの顔」
『…え?』
「アンタ見たことあるか?眼がキラキラと輝いて、それでいてさらに遠くを目指す意思の炎みたいのも燃えててよ。綺麗だった。俺はあんな眼は見たことがない。少なくとも、“
『そう………』
「さて、そろそろ再開といきますか。例のハイパーセンサーの新システム、まだ試してないよな?」
『そうだね。じゃ、いくよ?覚悟はいいかい?』
「覚悟?…………おい、覚悟って?」
『ポチっとな♪ 頑張ってジェリド君♪』
「何言って……、おいおい、まじかよ……。アンタやっぱり頭おかしいな‼」
ISのヘルメット内に映る映像。その中に、複数の黒い異物を見つけたジェリドは叫ぶ。
『誉め言葉として受け取っておくよ』
空を駆ける黒い輝き。それは研究所から放たれていた。
「ミサイルとか聞いてねぇよ‼どうすんだよあれ‼」
それはミサイル。研究所から上空へ向けて放たれた幾つものミサイルは、どれも島を目指して落ちてくる。
『一発でも落ちたら島が吹っ飛ぶかも』
「おい!!全部で何発だ!?どこに落ちる!?何もわからねぇぞ!?」
1つとして同じ軌道はなく、どれもがバラバラに地表を目指す。ジェリドは一体幾つのミサイルがあるかすらわかってはいなかった。
すると、
ppppppppppppppppppppppppppppppppーーーーーーーー
奇妙な機械音が響いた。
「何の音だ?」
『さぁ、ハウンド・ラビット!首輪を外す時だ‼』
ーーーーーーーーーーーーーーーーUnleash
“unleash”。猟兎の首輪が外される。
ーーーーーーーーNT System
その日、悪魔が目を覚ました。
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シャア「さて、やっと私の出番だな」
アムロ「僕もいるぞ、シャア!」
シャア「前回のアンケートの結果だが、募集した結果を踏まえて、作者が以下の四つのカラーリングのパターンを造った」
二つ名:爪兎 提供:新健
1.
二つ名:噛兎 提供:新健
2.
二つ名:空を駆ける狩兎 提供:ELSトーリスリッターとクロエちゃん
3.
二つ名:不明 提供:作者の友達
4.
アムロ「そして、ごめんなさい。二つ名も募集したんだけれど、一人で二つのカラーリングと二つ名を決めてくれた人もいたし、カラーリングだけの人もいたし、よくよく考えたらカラーリングを決めた上で二つ名を決めないといけないと気づいたんだ」
シャア「そうだな。二つ名は、見た目や性能からつけた方がいいからな」
アムロ「だから、上には一応、二つ名もいれてあるけれど、それは考えずに投票してほしい」
シャア「考えてくれた者達には本当に申し訳ないことをした」
アムロ「投票の仕方は、アンケート欄に、1~4の番号を書いてくれるだけでOKだ」
シャア「皆、投票をしてくれたまえ」
という訳です。新健様、ELSトーリスリッターとクロエちゃん様、本当にすみません。お二人のご意見には本当に感謝しています。ありがとうございました。
新しいアンケート(名前はアンケート2)では、1~4の番号を記入して頂きます。二つ名に関しては一旦保留とします。
アンケートは活動報告欄にあります。
私がアンケートというものに慣れていないがために、本当に申し訳ございませんでした。