「キミオくん、私とデュエルしよう!」「あたしとデュエルだ!」「あちしが先よ!」
朝。俺こと遊戯王キミオは、約10人の見知らぬ女子生徒に囲まれながら学校に向かっている。俺とデュエルしたいらしいが、残念だな。
「断る。じゃあな」
俺はデュエルを拒否して、立ち去る。しかし…
「あっ! キミオ君、デュエルしようよー!」
その先にいる女子が俺に挑んでくる。
「断る。じゃあな」
俺はデュエルを拒否して、立ち去る。しかし…
「デュエルしましょう」
その先にいる女子が俺に挑んでくる。
…何なんだ、このループは。
遊戯王王王
第2話
笑顔が可愛い
「ふぅ」
どうにか教室に到着。自席で頬杖を突いて脱力する。入学から1週間経つが、ここ最近は疲れる登校ばかりだ。
「おはよー!」
タカラが教室に入り、クラスメイトに手を振る。自席に向かう途中、俺と目が合うと、手を振ってきた。
「おはよ!」
「…おはよう」
「元気無いね! デュエルして元気になろ!」
頭が頬杖から落ちる。お前もか…。
「断る」
「そっか。じゃ、またね! いつでも相手になるぜよ!」
と言って、タカラは自席に着く。
やれやれ。まだ朝早いのに、もう帰りたい気分だ。
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「キミオ、次って何だっけ?」
「美術だ」
朝礼が終わり、一限目の準備をする俺たち。今いる1年3組の教室が校舎の西側で、美術室は東側にある。
少し歩く必要がある訳で。
故に…
「キミオさん!」「おい、デュエルしろよ」「いざ、尋常に!」
通りかかる教室から、女子3人組が俺に話し掛けてくる。
「凄い人気だね。あ、待ってよー」
タカラに構わず、俺は歩きを速める。
「ちぇ、ダメか~」「噂通り、難しいか」「無念!」
…ん? 今、妙な事を言ったな。
「おい」
「わ、私か?」
女子3人組の真ん中に話し掛けた。
「噂って、何だ」
「知らないのか。遊戯王キミオは、デュエルに必ず勝てる、と」
「そうそう! 本当に勝ってるぜよ!」
「あとね、仲良しの野良猫がいたり、笑顔が可愛いだったり」
「何それっ! 想像できないぜよ!」
「バク転が可能と小耳に」
「おおおっ!」
「凄いじゃん、あたしの兄貴なんて前回りも出来ないよ?」
「うわ、しょぼ〜い」
女子4人が話に花を咲かせる中、俺は考える。どうやら、真偽が混ざった噂が広まって、それを確かめようとして俺にデュエルを挑んでいたのか。
…そして、今の会話で噂を広めた奴が分かった。居場所は1年1組。すぐ近くにいる。
俺は踵を返し、1年1組に向かう。すぐに到着。そこは、人が多くて混雑していた。廊下にいる女子2人に聞いてみよう。
「なぁ。シロキ、いるか?」
「シロキ様? そこでデュエルしてるわ」
⋯様?
「あなた、キミオ君よね。良かったら--」
無視して教室の中に入る。そこは、人集りが特に多い所で、デュエルの真っ最中だった。手前に赤毛のメガネの女子。その向かいに…
「これで決めるよ! 死者蘇生! トゥーン・ブラマジガールを蘇生して、直接攻撃! 僕の勝ちだ!」
勝敗が決まると、歓声が湧き上がる。
その勝者は、爽やかな笑顔で歓声に応えていた。緑色の髪をオールバックにして、丸い眼鏡をかけた奴。
…ふと、目が合う。
「やぁ、キミオ」
シロキが、爽やかに微笑んできた。
「お前」
文句を言う、その時だった。
「キミオくん!」「マジ!?」「こっち見てー!」
見ず知らずの女子共が騒ぎ出した。
「皆、静かに」
ぴたり。シロキの一言で静まる。
「へぷしっ!」
タカラのくしゃみが人混みの後ろから聞こえた。何故付いてきたのかは後で聞こう。
「キミオ、何か言いたそうだね」
「ああ。俺の笑顔が可愛い、と聞いてな。そんな言い方をするのは母さんとお前だけ。母さんが言いふらす筈がない。お前だろ?」
「そうだね。懐かしいなぁ。キミオの無垢な笑顔は本当に…」
「なぜ噂にして広めた」
「噂? 広めた? そんなつもりは無い。キミオの事に限らず、昔の僕のいろんな事を囁いていたのさ。僕の大好きな、天使たちにね」
「「「キャー!」」」
女子たちが歓喜の叫びをあげ、シロキLOVEと描かれたノートを大勢が掲げだした。
「シロキ」
俺は、女子たちを掻き分け、机に座るシロキの前に立ち、机を叩く。
「やめろ」
「どうして?」
「迷惑だ」
「そんな警戒しないでよ。皆、キミオと友達になりたいのさ」
「俺は、誰とも仲を深めるつもりは無い」
「…そっか」
一瞬、静かになり、シロキは微笑んで言ってきた。
「じゃ、デュエルで決めよう。 僕が勝てば、思い出話を続ける。キミオが勝てば、思い出話をやめる。どう?」
「絶対だな」
「うん! 男に二言は無い!」
白い歯を見せてシロキが微笑むと、女子たちは耳がつんざくほど発狂した。
耳栓が欲しい。
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「ルールは、ワンパンチデュエル! いいかな?」
「ああ」
俺はポケットからデッキを取り出し、机越しに向かい合う。じゃんけんの結果、シロキの先攻でデュエルが始まった。
初手の5枚を取る。その5枚は…
封印されし者の左脚。
封印されし者の右脚。
封印されし者の左腕。
封印されし者の右腕。
…惜しい。
「始めるよ! ベリー・マジシャンガールを召喚! ベリマジの効果で、デッキからトゥーン・ブラマジガールを手札に加える。さらにフィールド魔法、トゥーン・キングダムを発動! これが場にある事で、このモンスターを出せる! ベリマジを墓地に送り、トゥーン・ブラックマジシャンガールを特殊召喚! カードを1枚伏せて、ターン終了!」
シロキの奴、初手から全開で来たな。トゥーンブラマジガールは直接攻撃を可能とし、トゥーン・キングダムはブラマジガールを効果対象と破壊から守る。この、ワンパンチデュエルでは恐ろしい戦術だ。
しかし、弱点はある。
「俺のターン、ドロー。手札から、封印されし者の右腕を召喚。右腕をリリースして、召喚神エクゾディアを特殊召喚する」
「出たー! やったれキミオ!」
タカラが応援してくる。そうしたいが、今は突破できない。
「バトルだ。召喚神で、トゥーン・ブラマジガールを攻撃」
「だけど、今は攻撃力1000。こっちは2000。返り討ちだ!」
そう。封印されしと名のつくモンスターが墓地に溜まってないから、攻撃力はザコ同然。
「エクゾディア、負けちゃったぜよ!」
「これでいい。召喚神が戦闘破壊された時の効果を発動。封印されしと名のつくモンスターを手札から3体見せる事で、3枚ドローする」
よし、いいカードが来た。
「ふふっ。なるほど」
シロキが微笑んでくる。
「エクゾディアパーツ、4枚も手札に来てたなんて、アンラッキーだね」
「いいや、お陰でこのカードが来た。魔法カード、カップ・オブ・エース。コイントスだ。結果は…、表。2枚ドローする。2枚目のカップ・オブ・エース。コイントス…表。2枚ドロー。3枚目のカップ・オブ・エース。コイントス…表。2枚ドロー」
これで、俺の手札は10枚。
「いつ見ても凄い。コイントスを3連続で当てるなんて! 神に愛されているね!」
シロキが、声を高らかにして言ってくる。そして、周りの女子たちは憧憬の眼差しを俺に向ける。
…何のつもりだ、シロキの奴。分かってる事を大袈裟に表現して、周りの女子の視線を俺に向けさせて。……分からん。しかし、今はデュエルに集中するまでだ。
「俺はカードを4枚伏せて、ターン終了」
「僕のターン、ドロー! 通常魔法、ナイトショット! そこの伏せカードを破壊!」
破壊されたのは、波紋のバリア ウェーブフォース。対抗札の一つを潰された。
「さらに、2体目のベリマジを召喚。その効果で、デッキからチョコ・マジシャンガールを手札に加える。バトルに入るよ、トゥーン・ブラマジガールで直接攻撃!」
「永続罠、光の護封霊剣。ライフを1000払い攻撃を止める」
「ベリマジも攻撃!」
「もう一度、1000払って無効」
「やるね! ターン終了!」
いくぜ、反撃だ。
「俺のターン、ドロー。ハーピィの羽帚。キングダムと伏せカードを破壊」
「させないよ! 伏せカード、オープン! ブラック・イリュージョン! トゥーン・ブラマジガールはこのターン効果を受けず破壊されない! よって、キングダムが破壊されると一緒に破壊されるデメリットを回避する!」
上手い。しかし、俺はその上を行く。
「俺は、トゥーン・ブラマジガールをリリースして、多次元怪獣ラディアンを特殊召喚」
「何だって!?」
「ちょっと待ってよ!」
そこへ、赤毛メガネの女子が文句を言ってくる。たしか、さっきシロキとデュエルしていた奴か。
「ブラック・イリュージョンを忘れたの? 効果を受けないのよ!」
「ホノリ、いいんだ」
シロキが席を立ち、赤毛メガネの頭を撫でる。
…何だ? この、甘ったるい雰囲気は。
「ラディアンの特殊召喚は効果ではなく召喚方法。ブラック・イリュージョンでは防げない。分かった?」
「…うん」
「いい子だ」
シロキは微笑み、席に着く。赤毛メガネは顔を真っ赤にして倒れ、周りの女子は保健室保健室と言って運んでいった。
……………………………………。
手が止まっていた。続けよう。
「俺はカードを1枚伏せ、モンスターをセット。ターン終了」
「僕のターン、ドロー! チョコ・マジシャンガールを召喚! バトルだよ、ラディアンでセットモンスターを攻撃!」
「その瞬間、永続罠、
「上手いね! チョコマジとベリマジで攻撃!」
「護封霊剣で、どちらも止める」
「っ…、ターン終了!」
「俺のターン、ドロー。チョコマジをリリースして、ラディアンを特殊召喚。さらに
「よっしゃー! やったれキミオ!」
タカラの言う通り。今度こそやってやる。
「バトルだ。クリバンデッドでベリマジを攻撃」
「ベリマジの効果! デッキからチョコマジを特殊召喚! 守備表示!」
「だが、ベリマジは戦闘破壊。続けて、召喚神でチョコマジを攻撃。攻撃力は5000だ」
「チョコマジの効果! 墓地からベリマジを特殊召喚! 守備表示!」
「だが、チョコマジを戦闘破壊」
バトル終了。結果、チョコマジが1体残ったか。しぶとい。
ならば、戦闘による勝利ではなく……
「ターン終了時、召喚神の強制効果により墓地から封印されしエクゾディアを手札に加える。そして、クリバンデッドをリリースして効果発動。デッキトップの5枚から、補充要員を手札に加え、残りを墓地に送る。ターンエンドだ」
「補充要員…」
「そう。墓地の通常モンスター3体を手札に戻す通常罠カード。俺の墓地には、エクゾディアパーツが4体。フィールドには召喚神。この意味、分かるよな、シロキ」
「くっ…、エクゾディアが手札に揃ってしまう…、どうすれば…」
項垂れるシロキ。
そこへ、
「シロキ様、頑張って!」「まだ行けますよ!」「シロキ様ーー!」
女子たちが声援を送る。シロキは、ゆっくりと前を向き、瞳に闘志を滾らせた。
「皆、ありがとう。最後まで戦うよ! 僕のターン、ドロー! ………これなら! 僕は手札からチョコマジを召喚! 2体で
「その時、
そうして、場には効果を受けない召喚神を残して全てが消えた。
「行くよキミオ! 通常魔法、黒魔術のヴェールを発動! 蘇れ、トゥーン・ブラマジガール! 行け、キミオに直接攻撃だ!」
「ならば、護封霊剣を墓地から除外。その効果で直接攻撃を…」
「やらせない! 僕は手札を1枚捨てて、速攻魔法、墓地封印を発動! 護封霊剣を無効にする!」
「なっ…」
「どうだ! これが僕の全力だ!」
「…」
全力…か。
言われてみれば納得がいく。噂を流したり、クラスメイトを俺に向かわせたり…今回だけじゃない、昔からそうだった。俺がどれだけ繋がりを斬っても、お前は全力で諦めなかった。
…けど。俺も諦めるつもりは無い。次こそ、お前との繋がりを斬ってみせる。
「俺の負けだ」
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「「「シロキ様ーーー!」」」
「ありがとう皆!」
女子たちはシロキに近寄り、シロキは満面の笑みで共に喜んだ。
「負けちゃったねー」
一人、タカラが俺の所に来る。
「まぁまぁ、元気出すぜよ! 噂なんてすぐ忘れるぜよ、うちは!」
そう、噂だ。俺がデュエルに負けた事で、約束通り、シロキは思い出話という名の噂を言いふらし続ける。
「タカラさん、忘れないような秘密を見せてあげる」
早速、シロキが女子たちを鎮めて、俺を見ながら語り出す。何を言う---
ん? 見せる?
そう思っているのも束の間。シロキは、懐から1枚の写真を出し、タカラに手渡す。
それを周りの女子たちが覗き込む。
すると…
「「「「「可愛いぃぃぃー!」」」」」
絶叫が響き渡る。
…ああ、もうダメだ。
女子たちが、キラキラと輝く眼差しで詰め寄ってきた。
「可愛いね!」「ちょっと笑ってみて!」
…っ。
四方八方から話しかけられて、頭がどうにかなりそうだ。
シロキ。お前が良かれと思ってしやがる事が、俺にとって嫌な事なんだと、分かるはずが無いよな。そうやって嬉しそうに微笑みやがって……………
シロキ。全力でデュエルして、勝利を掴んで、好きなだけ思い出話ができるのに、何故そんな悲しげな瞳なんだ。
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次回予告
「シロキとのデュエルに負けちゃった事で、もっと噂が広まったキミオ。人気者になりすぎて、ついにキミオは廊下を走って逃げる! 走ったら危ないぜよ! っと、あ〜あ転んじゃったぜよ。そんな訳で保健室に行くと、生徒と先生の2人しか居なくって、ほのぼのした雰囲気。キミオ、ここなら休めるね!
次回。デュエルしませんか? デュエル・スタンバイぜよ!」