遊戯王王王   作:閃退 翔

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第9話 シロキ、ありがとう

「ただいま」

「おかえりー」

 

帰宅。

玄関で靴を脱ぎ、廊下に行く。手洗い場で、鏡を見ながら化粧をしている母さんを見かける。着てるコートから、買い物程度の外出をするのだろう。

伝えるなら、今か。

 

「あのさ。うちで今からシロキと遊んでいい?」

「っ、シロキ君が?」

 

母さんは、口紅を塗る途中で俺に振り向いて、柔らかく微笑む。

 

「いいよ。遊びな」

 

それだけ言うと、鏡を見て化粧を再開する。

なぜか、よく見えないのに、笑顔になってるのが、何となく感じた。

 

「それじゃあ、掃除しよっかな」

「しなくていい。俺がやる」

「そう? なら、お願いね。母さんは買い物に出かけるからー」

「おう。行ってらっしゃい」

 

 

 

遊戯王王王

第9話

シロキ、ありがとう

 

 

 

「ふむ。こんなもんか」

 

掃除機のスイッチを切り、自分の部屋を見渡す。よし、綺麗になった。掃除は終了。

そして、いつもなら洗濯を回したり干したり、晩飯の準備をしたり、宿題を進めたり…というのが日常なのだが、今日は後回しだ。

部屋の窓から、あいつが自転車に乗って来たのが見えたから。

 

---キンコン

 

呼び鈴が鳴る。俺は玄関に向かい、ドアを開ける。

 

「やぁ」

 

シロキ。相変わらず、爽やかに笑う奴だ。

 

「入っていいぞ」

「お邪魔しまーす」

 

シロキが、家に入るなり見渡している。嬉しそうだが、どこか陰りがある。

 

「どうした」

「ん? いやぁ、懐かしいなぁ…てね。ああ、ごめんごめん。今行くよ」

 

俺は、歩みを進めたシロキを連れて、二階にある自室へ招く。

廊下を歩きながら、少し話した。

 

「まさか、次の対戦相手が、シロキ本人とはな」

「サプライズ。驚いた?」

「超驚いた。まぁ、取り巻きの女子たちと比べたら…アレだけど」

「ふふ、確かに。おかげで、学校だとデュエルが静かに出来ないよ」

「そうだな」

 

だから、静かな場所である、俺の家で大会のデュエルをしようと誘った。俺が。久しぶりに。

 

「…」

「…」

 

話題が切れた。

そんな時に、俺の部屋に到着した。

 

「シロキ」

「何?」

「その…、久しぶりで、色々と話したいんだと思う。俺も言いたい事はある。だけど、そういうのは、デュエルしてからなら、話せると思う」

「…そうだね。分かった。デュエルしよう」

 

そして。俺たちはカーペットの上にあぐらで座り、デッキを置いて向かい合う。

 

「じゃ、始めよう」

「ああ」

 

「「デュエル」」

 

「僕のターン。まずは、スケール5の慧眼の魔術師と、スケール8の虹彩の魔術師をP(ペンデュラム)ゾーンに置く。慧眼の効果、自身を破壊してExデッキに送り、デッキからスケール2の賤竜の魔術師をP(ペンデュラム)ゾーンに置く。慧眼が破壊された事で、手札のアストログラフマジシャンの効果、自身を特殊召喚し、デッキから2体目の慧眼を手札に加える。慧眼を通常召喚。アストログラフと慧眼でL(リンク)召喚、ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム。その効果、デッキから調弦の魔術師をExに送る。エレクトラムの2つ目の効果、P(ペンデュラム)ゾーンの虹彩を破壊してExに送り、Exのアストログラフを手札に加える。虹彩が破壊された事で、エレクトラム、虹彩、アストログラフの効果を発動。まずは、アストログラフの効果で自身を特殊召喚し、デッキから2体目の虹彩を手札に加える。次に、虹彩の効果でデッキから時空のペンデュラムグラフを手札に加える。そしてエレクトラムの効果で1枚ドロー。虹彩をP(ペンデュラム)ゾーンに置く。賤竜の効果、Exの調弦を手札に加える。さてと…、そろそろP(ペンデュラム)召喚だ。まずは、Exから慧眼2体、手札から調弦を特殊召喚。調弦の効果でデッキから紫毒の魔術師を特殊召喚。調弦と慧眼でS(シンクロ)召喚、スターダスト・ドラゴン。慧眼と紫毒を素材にX(エクシーズ)召喚、星刻の魔術師。素材の紫毒を墓地に送って効果、デッキからトゥーン・ブラマジガールを手札に加える。カードを2枚伏せて、ターン終了だ」

 

シロキが、笑って白い歯を見せてくる。やりきった、とでも言ってるようだ。確かに、見てみれば、エレクトラムとアストログラフとスターダストと星刻が場に並び、魔法&罠ゾーンには表側の虹彩と賤竜、伏せ2枚で、どうせ時空のペンデュラムグラフを伏せてるだろう。そして3枚ある手札の1つが、トゥーンブラマジガール。魔術師ペンデュラムで万全の体制を整えて、油断すればトゥーン…か。今のシロキは、今までに無く強い。ここまで相当に特訓したんだろう。

…だが、特訓したのは俺も同じ。

 

「行くぜ、俺のターン、ドロー! エレクトラムをリリースして、多次元怪獣ラディアンを特殊召喚!」

「くっ! やられた!」

「さらに、簡易融合(インスタント・フュージョン)を発動! サウサンドアイズ・サクリファイスを特殊召喚!

その効果で…」

「そうはさせない! 永続罠、時空のペンデュラムグラフ! 虹彩と、サクリファイスを破壊する! そして、虹彩が破壊された事で、虹彩の効果、デッキから星霜のペンデュラムグラフを手札に加える!」

「やるな! だが俺も行くぜ! 魔法カード、カップ・オブ・エース発動! コイントス! 表! 俺は2枚ドロー! 2枚目のカップ・オブ・エース発動! 表! 2枚ドロー! 3枚目のカップ・オブ・エース発動! 表! 2枚ドロー!」

 

これで、俺の手札は6枚。

 

「相変わらずだね!」

「ああ! 全力で行くぞ!」

「来い!」

「トレジャーパンダーを通常召喚! 効果で、墓地から魔法カードを除外して発動!」

「その時! カウンター罠、神の通告! トレジャーパンダーの効果を無効にして破壊!」

「ならば死者蘇生! 蘇れ、トレジャーパンダー!」

「なっ!?」

「トレジャーパンダーの効果! 墓地から魔法カード4枚を除外し、デッキからエクゾディアの手足4体を特殊召喚! 右腕と左腕を素材にL(リンク)召喚、アカシック・マジシャン! 効果で、ラディアンを俺の手札に戻す! さらに、右脚を素材にL(リンク)召喚、リンクリボー! そしてアカシックの効果を発動、カード名を宣言する。俺は、召喚神エクゾディアを宣言。デッキトップをめくる。召喚神エクゾディアだ! よって、手札に加える!」

「何だとっ!」

「アカシックとトレジャーパンダーとリンクリボーでL(リンク)召喚、ヴァレルロード・ドラゴン! そして、左脚をリリースして、召喚神エクゾディアを特殊召喚! バトルだ、ヴァレルロードでスターダストを攻撃! ヴァレルロードの効果、スターダストのコントロールを得る!」

「くっ!」

「スターダストで星刻を攻撃! そのダメージステップにヴァレルロードの効果、星刻の攻撃力を500下げる! 戦闘破壊! さらに、召喚神でアストログラフを攻撃! 戦闘破壊だ!」

「…全滅」

「2枚伏せて、エンド時に召喚神の効果で墓地から左脚を手札に戻す。ターン終了。さぁ、来い!」

 

ドクン。高ぶる俺の鼓動。

それは、あいつも同じのようだ。

一呼吸を整えて、デッキに手を添える。

 

「負けない! ドロー! ⋯キミオ。面白い物を見せてあげる。カップ・オブ・エース発動!」

 

何だとっ!? お前もか!

 

「コイントス! 結果は⋯表! 2枚ドロー! さらに、2枚目のカップ・オブ・エース発動!」

「2枚目だと!?」

「表! 2枚ドロー! ⋯3枚目!カップ・オブ・エース発動!」

「っ!?」

「表! 2枚ドロー!」

 

もはや、声にならない驚きだった。何なんだ、シロキの奴。

3連続、成功させやがった。

 

「すごい」

 

と。驚いたのは、シロキ本人だった。

 

「くくっ、あっはっはっは! 予想通りだっ!」

「そんな運任せなカードを……お前らしくないぞ」

「そんな事、無いよ」

 

シロキは、落ち着いた笑顔で、言ってきた。

 

「確信したんだ。キミオは、デュエルの運が良い。けれど、それは、対戦相手も同じように運が良くなるのさ」

 

⋯は? 対戦相手も?

 

「思い出してごらんよ。皆、キミオとデュエルして、いつも、笑顔だっただろ? ここぞという時に望んだカードをドローしてきただろう?」

「⋯」

 

思い当たる節は、確かにある。じゃあ、本当に⋯。

 

「僕は、あの時から、そんな予感がしてたのさ」

 

 

----

----

 

 

そう、最初に出会った、あの時から。

あの頃は、負けてばかりだった。やりたいコンボはあるけれど、それを見過ごしてくれるほどデュエルは甘くない。どうすれば⋯、と悩んでいた時に、君と出会い、デュエルしたんだ。

まぁ、最初は恐かった。とんでもない運の強さで有名な人だったから。

 

「僕のターン」

 

でも。その手札は、いわゆる事故。ブラマジ3枚、マジシャンオブ・ブラックカオス3枚。勝てる気がしなかった。

⋯でも。

 

「俺は、手札抹殺を発動! バトルだ! 魔導戦士ブレイカーで攻撃する時、マジシャンズ・サークル発動! カイクウを出すぜ! さぁ、お前も何か出せよ」

「えっと…」

「攻撃力2000以下で、魔法使い族だ!」

「あっ、それなら」

 

泣き虫だった僕の涙が、止まった。

光が、見えた。

 

「トゥーンブラマジガールを召喚!」

「なっ!? やべぇ! 墓地に師匠たちが6体いる!」

「攻撃力3800だ!」

「くっそー! ダメだ! ターン終了!」

「僕のターン! 行け、トゥーンブラマジガール! 攻撃だ!」

 

ふふ。

懐かしいな。いつだって、中々出来ないコンボが、キミオとのデュエルで出来てしまう。

 

「おい待てよ」

 

僕たちのデュエルを見ていた年上の男の子が、怒り口調で言ってきた。

 

「トゥーン・ブラマジガールは、そんな方法で特殊召喚できねぇぞ!」

「え?」

「それ、古いテキストだから書いてないけど、新しいカードだと書かれてあんだよ! 知らなかったのかよ?」

「そ、そうなんだ」

「バッカじゃねーの? よく調べろよ!」

 

一気に泣きそうになった。

けれど、そんな時。

 

「別に、良いんじゃね? そんな細かい事気にしないでさ」

「はぁ? 何言ってんだよ! ルール守れよ!」

「うるせぇな! 大会じゃあるまいし、それに、こっちには秘策が--」

「てめ! 教えてやったのに、何だその態度! こんにゃろ!」

「何しやがる!? このっ!」

「や、やめてよ二人とも!」

 

それから取っ組み合いになって、デュエル所では無くなった。

でも、僕にとっては、思い出に残る瞬間だったよ。

君の、他の誰にも無かった輝きが、本当に温かく感じたんだ。

君だから、デュエルを思いっきり楽しむ事が出来た。

僕は、君に救われた。

ーーけれど。

あの日、僕は、君を救えなかった。

 

「いつか離ればなれになるじゃん。そしたら、あの頃に戻りたいなって思えて、悲しくなる。もう…こんな気持ちになる位なら、最初から楽しい事なんかしたくない」

 

って。お父さんが亡くなってから、人との繋がりを避けていたね。学校に来れるようになっても、誰とも話さず本ばかり読んでたね。

それが君の望みなら…、なんて納得して、君に話しかけず、遠目から後ろ姿を見る位しかしなかった。

そんな君を放っておいてデュエルなんて楽しめなくて。

それを見かねたのか、母さんが勝手に声優のオーディションに僕を行かせて、合格して、それに没頭してる時は君の事を忘れる事が出来てから、僕は、君から離れることが出来た。

でも。中学に入って、君がクラスメイトとデュエルしてる光景を廊下で見掛けた。

ーーなぜ、僕がそこに居ない? 僕は何をしているんだ?

純粋に、激しく、嫉妬した。

僕も君と全力で楽しい時間を過ごしたい。過ごしたかった。

それから、僕は動き出した。

君がクラスメイトに、デュエルに勝てば話しかけるな、と口にした事を参考にした。君の噂を広めてひと時の人気者にしたら、君はそれを止めさせる為にデュエルを挑むだろう。

 

…ごめんよ。迷惑をかけただろう。悪い事をしているのは分かってる。

嫌ってくれていい。

それでも、僕は…

 

 

----

----

 

 

シロキは、ふっと笑うと、目を開けて、手札を構え直した。

 

「さぁ、キミオ! 楽しいデュエルをしよう!」

「来い!」

「僕は、星霜のペンデュラムグラフを発動! さらに、時空のペンデュラムグラフの効果! 賤竜とキミオの伏せた真ん中を破壊する!」

「スターダストをリリース! 無効にして破壊だ!」

「ならば今度は! スケール8の黒牙をP(ペンデュラム)ゾーンに置く! 賤竜の効果、Exから調弦を手札に!」

「待った! その効果を発動した時、速攻魔法、コズミック・サイクロンを発動!」

「何っ!?」

「ライフを1000払い、賤竜を除外!」

「くっ…、だけど除外された事で、星霜の効果を使わせてもらう! デッキからスケール1の紫毒の魔術師を手札に加える! 紫毒をP(ペンデュラム)ゾーンに置く! P(ペンデュラム)召喚! Exから、アストログラフを特殊召喚する! まだだ! 黒牙のP(ペンデュラム)効果! 召喚神の攻撃力を半分にして自身を破壊! 召喚神は効果を受けないけど、黒牙は破壊された事で更なる効果を発動する! 墓地から紫毒を特殊召喚! フィールド魔法、トゥーン・キングダム! 紫毒をリリースして、現れろ、トゥーンブラマジガール!」

 

ここで、勝負に出たか。

 

「トゥーンブラマジガール! 直接攻撃だ!」

「罠発動! 光の護封霊剣! ライフを1000払い、攻撃を止める!」

「アストログラフで攻撃!」

「1000払い、止める!」

「やるね! カードを3枚伏せて、ターン終了!」

 

…よし。凌いだ。

手に汗を握る、って感じだ。ついさっきモンスターを全滅させたのに、不意を突くように仕掛けてくる。

確かに、運が良いのは、俺だけでなく、対戦相手も同じ⋯だな。

 

「ふっ」

 

面白い。

それでこそ、デュエルだ。

 

「行くぜシロキ! 俺のターン!」

 

 

-----

 

 

…そうして。

俺とシロキは、一歩も譲らない激闘を繰り広げた。

飛び交う攻撃、交差する魔法、不意打ちの罠。

優勢と劣勢が何度も逆転する。

そんな激しいデュエルだった。

 

…しかし、激しく燃える炎は、必ず燃え尽きる。

激闘は、確実に終わりに近付いていた。

 

「ターン…終了」

「ふぅ」

 

互いの場にモンスターは、ゼロ。伏せカードは少しあるが、ブラフなんだろうな、俺もシロキも。

ちと、疲れた。シロキの奴、本当に強い。まさか、マスクチェンジ・セカンドでダークロウを出すとか、攻撃力5000もある召喚神をホープ・ザ・ライトニングで相打ち覚悟で殴り倒すとか……やれやれ。良い意味で裏切ってくれる。

 

「キミオ。楽しい?」

 

シロキが俺を見て言う。いつしか、俺は笑っていたようだ。

 

「…楽しいさ。楽しくて、笑っちまう」

「ふぅん。そうか。でもさ。本当に、楽しんでいいの?」

 

「っ…」

 

シロキの、瞳の奥が、濁るような感じがする。

 

「覚えてるよね、お父さんとの思い出。いつもデュエルをしてくれて。でも、思い出はさ、深いほど、死に別れた時の悲しみも深くなるでしょ。覚えてるよね」

「…覚えてる」

「そして、キミオは言ったよね。楽しい事なんかしたくないって………言ってた。言ってたじゃんか! なのに! 今の君は何だ! あの苦しみを繰り返すのか!」

 

シロキは、息を荒らげて俺を睨む。

…。

何も、弁解できない。紛れもなく、俺自身がシロキに言った言葉だから。

楽しい事なんかしたくない。

あの頃、それが正解だと信じていた。

それが、シロキの気持ちを踏みにじっていたとは知らずに。

俺は、本当に、自分勝手だ。

 

「シロキ」

「…何?」

「すまなかった。俺が、勝手に決めつけていた。シロキが、そんなに思い詰めているとは知らずに、関わりを避けてしまっていた」

「っ、今更、何を言うんだ! 関わりを避ける事が、キミオの平常心を保つ方法なんだ! キミオは、自分自身の心配をしろよ! 僕の心配なんか、するな!」

「それだと、シロキが苦しいままだ!」

「な、何っ?」

「俺は、シロキに、そんな風になってほしくない! だから、もう、関わりを避けるような弱い自分は、捨てる!」

「っ」

 

シロキが押し黙る。

信じてくれ。俺は、もうお前を悲しませる事は、しないから。

 

「…いいの? それで」

「ああ」

「そっか」

 

シロキは微笑む---直後、瞳の奥が濁った

 

「ふざけるな! 今だから落ち着いてそんな愚かな考えになれるんだ! 死別なんてのは突然だ! もしも、新しく作った友達の誰かが明日死んだら? 泣くだろう! また辛い思いをするだろう!」

「ああ! 泣くさ! でも、それでいいんだ!」

「っ!?」

「泣きたいなら思いっきり泣く! デュエルしてる時は思いっきり楽しむ! どっちも妥協しない!」

「っ…」

 

シロキが、歯を噛みしめ、何も言えずに俯く。

そんなシロキに、俺は右手を差し出す。

 

「もう一度だけ、信じてくれ」

 

--バシッ

 

シロキは俺の手を払いのけ、俺を睨み………手札を構える。

その瞳には、濁りと、闘志が篭っていた。

 

「なら、この場で証明してみろ! やってみろよォ!」

「ああ! 行くぞ! 俺のターン、ドロー!」

 

見る。

ふと、笑みがこぼれる。

 

「カードを伏せる。ターン終了」

「僕のターン! 黒牙を召喚! 直接攻撃!」

「罠発動! マジシャンズサークル!」

「…そ、そのカードは」

 

マジシャンズ・サークル。

通常罠。

自分または相手の魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動できる。お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

「俺は、これを召喚する」

「…」

 

シロキは、決めあぐねている。

この選択が、勝敗を決めるに値する。

勝敗と、そして……

 

「決めた」

「せーので出そう」

「「せー…のっ!」」

 

俺の出したカードは、ものマネ幻想師。

シロキの出したカードは、トゥーン・ブラマジガール。

 

「っ!」

「なんてね、嘘嘘。トゥーンブラマジガールはデッキから出せない。トゥーンヂェミナイエルフを出すね」

 

と言って、ブラマジガールを退けると、ヂェミナイエルフのカードがそこにあった。重ねていたらしい。

 

「昔は、トゥーンブラマジガールを出してたね。出せない事に気付かないで…」

「そうだな。でも…」

 

俺は、変な事を承知で言った。

 

「トゥーンブラマジガール、出していいぞ」

「え?」

「大会じゃあるまいし、それに…」

 

その時。

俺は、幼い頃の笑顔を、少しだけ思い出した。

 

「それに、こっちには秘策がある」

 

かつて、同じような事を言っていたっけな。

…そう。昔は、もっともっと、自由な発想でデュエルしてたな。

 

「…分かった! トゥーンブラマジガールを特殊召喚!」

「だが、ものマネ幻想師はトゥーンブラマジガールと同じ攻撃力になる! さらに、墓地から仁王立ちを除外して発動! シロキの攻撃対象はものマネ幻想師だけになる!」

「直接攻撃は出来ない訳か! ならば、ものマネ幻想師と相討ちだ!」

 

相討ち。本来なら。

だが…

 

「…フハハハハ! シロキ! 相討ちではない! ものマネ幻想師は調子が良い! 攻撃力は気分的に100上がってる!」

「!?」

 

…シロキが、一時停止して驚いている。

どうだ、バカな事を言っているだろう?

だが、シロキは、覚えているだろうか…

 

「…ふふっ。でも、大丈夫! ブラマジガールには師匠から譲り受けた強化呪文がある! 攻撃力を200アップ! どうだい?」

 

シロキが、怪しく笑う。いつもの微笑みとは違う、あざ笑うような、悪い笑顔だ。

…覚えている様だな。

 

「やるな! だが、ものマネ幻想師にも師匠がいる! 攻撃力300アップ!」

「何っ!? ならば、ブラマジガールは隠し持っていたのさ、ブラックポーションを!」

「それは!」

「攻撃力を倍にする! どうだ!」

「やるな! だが、分身魔法を使う! 2体に分身! 攻撃力は倍だ!」

「何っ!?」

「フハハハ! どうだ!」

「こうなったら、僕の魔力を……ぷふっ!」

 

真剣な表情から一転。シロキは、ブラマジガールのカードに両手をかざして、失笑。

 

「ぶははっ!」

 

俺も、つられて笑った。

 

「「あっはっはっはっはっはっは!!」」

 

ああ、懐かしい。やってたなぁ、こんな変な遊び。テキストそっちのけで、ノリだけでデュエルしてた。

頬が痛い。久しく忘れていた、笑うと、こんなに気持ちいいんだな。

 

「シロキ! やっぱお前とのデュエルは最高だ!」

「僕も同じだ! キミオとは最高に楽しめるよ! 」

「ああ! 最高に、バカになれるぜ!」

「あはははははっ!」

 

 

シロキ、ありがとう。

そして、待たせて悪かった。

これからは、こんなバカ笑いが、いつまでも続くといいな。

-------




「…あれ? どっちのターンだったっけ?」
「忘れた」
「じゃあ、もう一回、仕切り直しだね!」
「望む所だ!」

「「デュエル!」」
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