Fate/stay night ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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その10

 

 

とりあえず、全員揃って学校を休むことになった。マスターが増えたのが問題だったらしい。

けど、どうやら積極的に敵対する気はないようなので一安心……でいいのかね?

 

……まあ、いいや。面倒だし一安心ってことにしとこう。

 

「それじゃあ後は若い皆さんにお任せして、俺達は退出するとしようかね」

「えっ!? ちょ、ドリーマー!?」

 

なんだか必死な少女Aを無視して、全身青タイツのお兄さんと腹ペコさん、そしてついでに白少女を外に押し出す。特に意味はないこともない。

こういう時にはそれなり以上に親しい相手との会話が大切。俺達はその『それなり』に入ってない。そんな俺達は邪魔になるだけだからな。

 

「そんなわけで、各自中の三人の邪魔をしない程度に自由行動。白少女は一回帰って服を持ってくるなりなんなりしとくといい。全身青タイツのお兄さん。剣道場はあっち。できるだけ壊さないようにすれば事後承諾でも大丈夫なはずだから」

「そうね。それじゃあまたね、ドリーマー」

「ありがとよドリーマー。セイバー、ちょっくら手合わせ願えないか?」

「フッ……いいだろう。受けてたつ」

 

そんなわけで全員がいなくなったところで、俺は散歩に行く。行かないとギルさんが怖いし。ちょろいけど。

 

そんなわけで堂々玄関から出ていく。

 

「あ、こんにちは」

「はーい、こんにちはっ」

 

玄関先で見覚えの無い女性に会った。まあ、とりあえず挨拶したら普通に返してきたし、敵意もないから敵じゃないだろう。

 

「最近は寒くなってきましたね」

「そうですねー。でもその格好だと暖かいんでしょう?」

「ええ、とても。………そうそう、最近と言えば、この辺りでやけにガス漏れ事故が多いですね」

「そうですね」

「心配だったりしません?」

「士郎だったら大丈夫だって思ってますから」

「そうですか。……それでは」

「はーい」

 

ちょっとした世間話はこれでおしまいっと。

後ろで怒号が聞こえたが、それはとりあえずスルーしておくことにした。言い訳を頑張れ少年君。それと少女B。

 

 

 

シルバースキンに身を包み、のんびりのんびり歩く。場所は決めてなかったから適当に歩いていたら、急に帽子を取られて後ろから抱えられた。

 

「見付けたぞ、小僧」

 

……どうやら、目当ての人物に捕まったらしい。

俺は自分を抱き締める人に視線を向けるように上を向き、とりあえず言葉を紡ぐ。

 

「こんにちは、ギルさん」

「うむ」

 

ギルさんは満足そうな顔で笑った。

 

「行くぞドリーマー。我が庭の見物に王自らが付き合ってやろうと言うのだ。誇ってよいぞ?」

「ギルさんギルさん、あそこに美味しそうな雰囲気のたい焼きの屋台があるよ」

「全種三つずつ貰おうか」

 

わぁ速い。甘い物好きって豪語していただけはあるな。

かっこいい笑顔を浮かべながら、ギルさんはたい焼きが大量に入った袋を持って俺のところに歩いてくる。

 

「たい焼き、好きなんだ?」

「ああ。この菓子は気に入った。特にあの店主のたい焼きは、我が宝物庫に入れるだけの価値がある」

 

びっくりするくらい高評価だな。確かギルさんの宝物庫には至高の宝しかありえないって聞いてたんだけど……そこに入れるだけの価値があるたい焼きって凄いな。確かに美味いけど。

 

そんなわけで二人並んでたい焼きを食べる。俺が一つずつでギルさんが二つずつ。サーヴァントはいくら食っても太らないっていうのがいいよな。

まあ、俺は元々そんな感じだったけど。

 

「もきゅもきゅ」

「もぐもぐ」

「もきゅもきゅ」

「もぐもぐ」

 

……うん、やっぱり美味い。びっくりするほど美味い。

ちなみにもきゅもきゅが俺でもぐもぐがギルさんだ。逆だったら面白いよな。残念ながら逆じゃないけど。

 

ギルさんはたい焼きには満足しても緑茶や焙じ茶には満足していないようだから飲み物は無い。酒はあるけど……俺は一応未成年だぞ? 飲めるずがない。

 

「なに、王が許そう」

「許されちゃった。じゃあ飲もう」

 

そんなわけでこの場に出された酒を飲む。美味しいけどなんでか酔えない。そう言えば健康状態が強制的に維持されるんだったっけな。俺がそれを望んだんだけど。

まあ、酔えはしなくても美味いってのはわかるからそれはそれで。

それにしても、妙に気に入られたな? なんでだろ?

 

……まあ、いいか。なんら悪いことはないし、色々奢ってもらってるし。気にするなって言われてるからあんまり気にしてないけど、一応なんかあったら少しだけ味方をしようと思ってるくらいには恩があるし。

聞かれたくないこともあるだろうし、こんなところでする話でもないし。

今はシリアスな話よりたい焼きを美味しく食べる方が大事だ。

 

「おい、小僧」

「ん?」

「頬に餡がついているぞ」

 

ギルさんがそう言うのとほぼ同時にギルさんの指が俺の頬についていたらしい餡を掬い取っていた。行動が早いなぁ。流石王様。

そして掬い取られた餡はあっという間に指先ごとギルさんの口の中に消えていった。

 

「一応言っておくと、俺男だよ?」

「知っている。前にも聞いただろう。我《オレ》を愚弄するか?」

「growする?」

「成長してどうする。…………はぁ。お前はそういうやつだったな」

「俺だからねー」

「そうだな。お前はお前らしくあればいい」

 

ちー姉さんや弾にも同じことを言われたことがある。俺は俺らしく、って。

 

「そう言えば、なんで一人称が我《オレ》なんだ?」

「気分だ」

 

気分か。なら仕方無い。当人の気分は重要だしな。

 

「………それでは、我は帰る。ドリーマーも、気をつけて帰るのだぞ」

「サーヴァントだから巻き込まれても大体平気だよ」

「そうだったな」

 

ギルさんは『ふっ』とかっこよく笑っい、俺に背中を向けて歩き去っていった。

 

……それじゃあ俺も帰ろうか。帰ったらさっさと寝よう。暇だし。

 

 

 

 

 

side ギルガメッシュ

 

「遅かったな。どこに行っていたのだ?」

「貴様には関係なかろう。雑種が王の動向を逐一知っている必要はない」

 

言峰の言葉にそう返すギルガメッシュの表情に、先程までドリーマーに向けていた柔らかいものは幻のように無くなっていた。

その代わりに、この世界全てを支配した王に相応しい傲慢さと覇気が満ち溢れている。

 

聖堂教会の神父であり、自らのマスターでもあった男を一瞥し、ギルガメッシュは自分の物だと勝手に決めている部屋に入る。

王の部屋に相応しい家具や調度品で満ちているその部屋のベッドに座り込み、ギルガメッシュはドリーマーの笑顔を

 

「…………不味い……。これは本格的に不味い……………」

 

……思い出した瞬間に血の海に沈みかけた。受肉しているとは言えサーヴァントでなければ確実に死んでいるだろう量の血を鼻から流しながら、ギルガメッシュは思い出すことを

 

 

『ギルさん!』

 

尻尾がついていたら確実にぶんぶんと振られているだろう笑顔でギルガメッシュの名を呼ぶドリーマー。

 

『ギルさーんっ』

 

別れの時に大きく手を振っていたドリーマー。

 

『……ギルさん?』

 

頬にクリームをつけていることに気付かず、ギルガメッシュを上目遣いで見つめるドリーマー。

 

 

「…………ぐふっ………………」

 

思考停止に失敗したギルガメッシュは、ばったりとベッドに倒れた。

 

「……次こそは……ドリーマーの笑顔に騙されずに………ドリーマーを……おもち……かえ………り………………」

 

合掌。と言うか、この英雄王はもう駄目かもしれない。

 

 

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