ゴジラ vs ポプ子   作:外清内ダク

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2.復讐の誓い

 ポプ子は、動物園のオリの中のゴリラだ。

 隣にはゴリラ(ピピ美)もいる。

 

 オリの前には、つぎつぎに客がやってきて、キャアキャア言う。

 

「あ! ポプテピピックだー!」

「かわいー!」

 

「ゴリラかよ」

「なにこの急展開www」

「さすがにこれは草」

 

 ゴリラ(ポプ子)は(うるせえな)と思って、ダルい動きで客の方に顔を向けた。

 よけいに騒ぎが大きくなる。

 

「きゃー!! こっち向いたー!!」

「かわいー!!」

「シュールwwww」

 

(……………)

 

 バシ!!

 ポプ子は観客(あなた)に中指を勃てた。巨木のような雄々しさだ。

 

「「きゃあ――――っ!!!!」」

 

 ますますうるさくなった。

 

 

 

POP TEAM EPIC

 

作:闇鴉慎

 

 

 

 東京上空、380,000km――月軌道上。

 

 無数の岩石が浮遊する中に、ゴジラがただよっている。

 

 ゴジラはとまどっていた。

 

 ゴジラは、自分を傷つけようとする敵に対して、なかば本能的に放射火炎を吐き、周囲の地盤ごと敵を粉砕しようとした。

 しかし必殺の一撃を放つ直前、理解不能のなんらかの力によって、突然月にワープさせられたのだ。

 

 その結果、ゴジラの放射火炎は、月と、竹書房と――そして、ピピ美のみを打ち砕いたのだった。

 

 少しの間、静かに思考を巡らせて、ゴジラは自分が目的地から遠く離れてしまったことを認識した。

 そして遥か遠くに見える巨大な青い球体こそが、自分の向かうべきところであると理解した。

 

 なんとかして、あの場所に届かせたい。

 

 その一心で、ゴジラは口を大きく開いた。

 放射火炎の青い光が、その喉の奥からあふれ出た。

 

 一直線に、地球へ向かって。

 

 

 

   *

 

 

 

 同時刻、東京。

 千代田区北の丸公園――ビッグ武道館。

 

 ここは今、避難所になっていた。

 ゴジラの火炎から生きのびた人々が、武道館いっぱいにつめこまれ、不安な夜を過ごしていた。

 

 あちこちから、すすり泣きや、恐怖の叫び声が聞こえる。

 ひとつひとつは小さな声だが、万単位の人々が集まると、耳がおかしくなりそうなほどの騒音になる。

 

 みんな、それぞれに、家を失ったり、家族や友達を失ったりしたのだろう。

 大やけどを負い、これから命を失おうとしているひともいる……

 

 

 ビッグ武道館のかたすみで、膝をつき、がっくりとうなだれる男がいた。

 

 彼は――ミュージシャン、ヘルシェイク矢野。

 

「くっそう!

 こんな大変なときだってのに、オレには何もできないぜェ……!

 

 オレは無力なのか……」

 

 だが、そのとき。

 絶望のどん底で、ヘルシェイク矢野の目が、逆に熱く燃えはじめた!

 

「いいや!

 まだだ! オレにはまだ、やれることがある!

 

 それは……ここにいる人たちを、元気づけることだぜ!!

 このオレの音楽でな!!」

 

 

 すっく、と立ち上がったヘルシェイク矢野。

 その背後に、別の男の声がかかった。

 

「よく言った!!」

 

「なにぃ!?

 ま……まさか、お前は!

 

 マグマミキサー村田!!!」

 

 暗闇の中から姿を現したのは、ミュージシャン、マグマミキサー村田だった。

 マグマミキサー村田が、ニヤリと笑う。

 

「キサマひとりでは頼りない。

 このオレが力を貸そう」

 

「マグマミキサー村田ァ!」

 

「おっと、勘違いするなよ。

 お前を倒すのはこの俺だ。それだけのことだ」

 

「フッ……分かったぜ!」

 

 

 ヘルシェイク矢野。

 マグマミキサー村田。

 夢の最強タッグが、今、ここに誕生した!

 

「行くズェ! マグマミキサー村田!!」

「いいズェ! ヘルシェイク矢野!!」

 

「「(ユウ)ーゥ(ゴウ)! ハッ!!」」

 

 並んだふたりの体がアーチを作り、その指先が合わさったとたん、閃光がほとばしった。

 ふたりの身体が! ひとつに合わさる!

 

 爆誕!! ヘグマシェキサー村野!!

 

 

 そしてさらに。

 

「待ちな! 俺もいるぜ!」

『ユーロビートの神様!』

 

「私もお手伝いしますよ」

『ジャズの神様!』

 

「ワシはパス」

『サボ神!!!』

 

 

『みんな……みんなありがとう!

 さあ行くぜ!

 最初で最後で最高の!!

 俺たちのスーパーセッションだぜ!!!!』

 

 

 ヘグマシェキサー村野の、4本腕をフル活用した超高速ギターソロ!

 ユーロビートの神様の、魂を揺さぶるテクノサウンド!!

 ジャズの神様の、胸を打つ哀愁のメロディ!!

 

 

 その熱い演奏を耳にした避難者たちが、ひとり、またひとりと顔を上げる。

 暗く沈んでいた避難者たちの表情に、ヘグマシェキサー村野の燃えるような情熱が乗りうつっていく!

 

 誰もが、生きる希望を取り戻しているのだ!!

 

 その光景を見て、マネージャーのおっちゃんは、脂汗まみれで拳を握りしめる。

 

「なんてえこった。

 やつらはこの地獄の中でさえ、観客の心のマグマを沸き立たせてやがるっ!

 

 ヘルシェイクにしてマグマミキサー!

 ヘグマシェキサー村野じゃあ!!」

 

 

  またたくまに、ビッグ武道館は割れんばかりの歓声に包まれた。

 まるで武道館が、いや、日本列島全体が震えているようだ。

 

 ヘグマシェキ!

 ヘグマシェキ!!

 ヘグマシェキ!!!

 へ……

 

 

   *

 

 

 ――そのとき。

 

 月軌道からの放射火炎が、ビッグ武道館を直撃した!!

 

 

 建物の屋根が融ける。

 蒸発する。

 中の人々が炭化し気化する。

 

 最後の一瞬まで途切れぬサウンドに包まれたまま――

 

 ビッグ武道館、消滅。

 

 

   *

 

 

ツイッターで物申すマン@twitter_de_mono

悪質なデマが出回っているようです。騙されないように! 特に支援要請にTwitterを用いることは混乱をまね

 

 ツイッターで物申すマン、消滅。

 

 

   *

 

 

「この小説は面白くない! クソ!!

 なんでオレが死ななきゃいけないんだ! クソ! クソ!! ク……」

 

 アンチ、消滅。

 

 

   *

 

 

 

「ぼくベーコンムシャムシャくん!

 ベーコン食べるの大好きさ!

 ベーコン……」

 

 ベーコンムシャムシャくんは、目の前の光景をぼんやりとながめ見た。

 

 だが、そこに広がっているのは、見渡すかぎりの――焼き払われた荒野のみだ。

 

「ベーコン……どこ?」

 

 ベーコンムシャムシャくん、消滅。

 

 

   *

 

 

 

 月軌道上のゴジラは、熱線の放射を止めた。

 

 エネルギーが枯渇したのだ。

 それに、この位置からでは、せいぜい日本の地上を全て焼きはらう()()()のことしかできない、と分かった。

 

 ゴジラは目を閉じた。

 

 今のままでは、宇宙空間に投げ出されて、これ以上どうすることもできない。

 

 だから、しばし休息を取りながら、考えてみることにしたのだ。

 あの青い球体――地球に戻る方法を。

 

 

   *

 

 

 ポプ子は目覚めた。

 

「ピピ美ちゃんーッ!!」

 

 そこは、ボロボロになった民家の中だった。

 そばには、老人がひとりいる。

 

「ム……気がつかれたか。

 ずいぶんと、うなされておった……」

 

「ピピ美ちゃん!

 ピピ美ちゃんは!?」

 

 老人は首を横に振る。

 

「倒れていたのは、あんただけじゃった……」

 

 

 ポプ子は、それを聞いて、家から飛び出した。

 

 外には、一面の荒野が広がっていた。

 月軌道から降りそそいだ熱線によって、東京の街はあとかたもなく崩壊してしまった。

 ガレキ以外何もなくなってしまった街に、ねじ曲がった東京タワーだけがポツンと残っている。

 スカイツリーは、ない。完全に蒸発してしまったからだ。

 

 

 ポプ子は、膝をついた。

 拳の中に、地面の灰を握りしめた。

 

 ゴジラに負け、ピピ美が死んだ、あのできごとは……

 

「夢じゃ……

 なかったんだ……」

 

 

 その背後に、一台の車が止まった。

 中から飛び出してきたのは、スーツ姿の男だった。

 彼のスーツは汚れだらけで、顔にもケガがあり、疲れ果てていたが、まだ気力だけは残っているようだった。

 

「そこの人!

 ここは危険だ! 一緒に避難しましょう」

 

 車の中から、部下が声をかける。

 

「急ぎましょう! いつまた攻撃があるか……」

「少し待て」

「矢口さん!」

 

 部下の制止をふりきって、男はポプ子の後ろに駆け寄った。

 

 彼の名は、矢口蘭堂。

 巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)事務局長。

 衆議院議員、矢口蘭堂である。

 

「車に載ってください。避難所まで送ります。

 さあ!」

 

 矢口蘭堂につかまれた手を、ポプ子は、力まかせに振りほどいた。

 

 ポプ子は両手の拳を地面に叩きつけ、叫ぶ。

 

「ゴジラゥアア゛ーッ!」

 

 涙をぬぐい捨て。

 怒りを目に宿し。

 ポプ子はふたたび、立ち上がった。

 

「覚えてろよゴジラ……

 地べたを這い

 ドロ水すすってでも」

 

 頭上の白い影を見上げ、野獣のように中指勃てる。

 

「お前の前にもどってきてやる!!」

 

 

(つづく)

 

 

 

■次回予告■

 

 私、星降そそぐ!

 

 今度のステージは地下都市アンバークラウン!

 はりきって現地入りした私たちを待っていたのは、やる気のない現地スタッフさん。

 

 ちょっとお、マジメにやってよおー(汗)

 

 もう! こうなったら、私たちの歌でスタッフのみんなを動かすしかない!

 

 

次回、

 

“星色ガールドロップ project-P”

第3星「めんどうは、お嫌い?」

 

 来週も、恋にオーバードロップ!

 

 

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