私こと間桐桜は『シンデレラ』が大好きだ。
まだ私が今より小さかったころ。まだ私が“遠坂桜”だったころ。まだ私がお父様とお母様とお姉様の“家族”だったころ。1日が終わり、寝る前にお母様によく絵本の『シンデレラ』を読んでもらった。その中でも『魔法使い』が私は大好きだった。その事を一緒に読んでもらっていたお姉様とお母様に言うとなぜ魔法使いが大好きなのか聞かれた。
「だって人を幸せにできるって凄いことだよ?私も将来皆を幸せにできる『魔法使い』になりたい!」
そう私が言うとお姉様は「私もなる!」と言いお母様は私の頭を撫でながら微笑んでくれた。私はとても嬉しかった。
だから気づかなかった…お母様の笑みが哀しみに染まっていたのを…
暗い…ジメジメする…臭い…恐い…
その“場所”を端的に言葉で表現するなら幼い私にはこれが限界だった。私が遠坂桜から間桐桜に…“あの人達”の家族ではなくなった日から2日目。私は間桐家の地下の“蟲蔵”と呼ばれる場所に裸で両腕に鎖で拘束されて逃げられないようにされていた。
「カッカッカ…では桜、これよりお主に“教育”を施す」カッ
私の目の前にいる老人…この間桐家の主、おじい様こと『間桐臓硯』はそう言いながら手に持った杖の先でで床を叩く。
ゾルゾル…ジュルジュル…
すると何処からかわいて出来た吐き気を催す大量の異形達。幼いながらも本能で危険を感じ取った私は逃れようと必死にもがくが非力な子供である私では両腕の鎖はジャラジャラと音をたてるだけでどうすることもできなかった。
異形達が私の足を登ってきた。私はそれでパニックになって頭の中がグチャグチャになった。
「いや!いやああああぁ!?」
ただ泣き叫ぶことしかできない。そうしている間にも異形たちは私の太股まで登ってきた。
(助けて!お願い!誰か!…誰か助けて!!)
心の中でも助けを求めるが私はもう既に心の何処かで諦めはじめていた。こんな私を助けてくれる人なんて…『魔法使い』なんて…
もう異形たちは私の足の間…お母様に教えてもらった女の子の“とても大事な場所”に届きそうな所まで来ていた。
「誰か…助けて……」
その言葉と共に涙が頬を伝い地面に落ちる。
私はきつく瞼を閉じ認めたくないと…みっともなく今まで以上の声で叫ぶ。
「助けて!!」
するとどうだろう、私の周りから突風が吹き上がり始め、私の足に付いていた異形たちが風で引っ剥がされる感覚を感じる。私は恐る恐るきつく閉じていた瞼をゆっくりと開ける
「キャスター召喚に応じ参上しました」
「君が…僕のマスターですか?」
そこにいたのは左目に眼帯をつけた少年だった。
また会えると良いですね(おい!(゜Д゜)