ドサ ドサァッ
空から豚の丸焼きが2つ降ってきた
「な、なによこれ?」
「うわぁ、美味しそうな匂い!」
驚くメンチを他所にブハラはよだれを垂らす
シュタッ シュタッ
そこへ悟空とべジータが降り立つ
「ふっ、どうやら間に合ったようだな」
「あぁ…!そうかぁ!試験中だったなオラたち!」
「ちっ、緊張感のないやつめ」
「…!だからかぁ!丸焼き2つ投げてくれたのはオラの分もってことか!ありがとなべジータ!」
メンチが間に割って入る
「あ、あなたたち…いま飛んでこなかった…?」
(ま、マジぃ…)
焦る悟空
「じゃ、ジャンプだ!…建物の上から降りてきただけだっ!」
べジータが取り繕う
「まぁいいわ…。それに試験はもう終了してるわよ!あなたたちは不合格!ブハラもお腹いっぱいで食べられないわ」
「ふんっ、それはどうかな。貴様の後ろのやつはそんなことなさそうだぜ?」
「メンチ、この匂い嗅いでたらまだ入りそう…」
「でも終了の合図は出しちゃったわよ」
「美食家ハンターならそんなことより美味しさで合否を決めるべきだとおもうなぁ」
ブハラの意見にしぶしぶ納得して丸焼きを食べる許可を出すメンチ
「うまいっ!メンチこれは美味しいよ!!」
「ん、本当!ただの丸焼きじゃないわ!」
「当たり前だ!このオレ様が作ったんだからな!」
「文句なく合格よあんたたち!」
追加2名、合計72名合格!
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「心配したよ悟空」
ゴンが安心顔で話しかけてくる
「いやー、すっかり食べるのに夢中になっちまって」
「そういやもう一人のおっさんは誰?」
キルアが尋ねてくる
「あぁ、こっちはべジータだ。ゴンにクラピカとレオリオはもう紹介済ませてたからな」
(あの下痢の、か…)
キルアが汚いものを見る目でべジータを見る
「小僧、よほどぶっ飛ばされたいらしいな」
べジータが視線を感じて凄む
「べ、べジータ!子供にまでからむなよぉ」
ドォオオン
注目を集めるように銅鑼の鐘が鳴り、メンチが宣言する
「だいぶ残ったわね…次はあたし番よ!お題は"寿司"!」
ざわざわ
「寿司と言っても握り寿司しか認めないわよ!さぁ、スタート!」
困惑する参加者
「おい、ゴンわかるか?」
「ううん、レオリオこそ知らない?」
「キルア、君は?」
「いや、こういうのはクラピカのが得意なんじゃない?」
「私が過去に見た文献によると、新鮮な魚と酢飯を合わせたものだと…」
「さかなぁあああ!?ここは森ん中だぜ!」
「バカ者!声が大きい!」
(魚!)
それを盗み聞きしていた参加者全員が川へ向けて飛び出していった
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ビスカの森、沼泥の川
「うひぃ、気持ち悪ぃ魚ばっかり」
「まともなネタは手に入らんな…あの女、わかってやってやがるぜ」
泥臭い臭いのする魚を持って会場へと帰る悟空とべジータ
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会場では
「あんたも403番並み!」
ガビーン
うちひしがれるクラピカ
というやり取りがなされていた
(魚そのままを米に突っ込むなどどんな神経してやがるんだこいつら…)
あまりの神経にべジータですら引く
「おいべジータぁ、どうやって作んだ?」
「寿司も握れないのか貴様!悟飯や悟天に作ってやったりせんのか!?」
「そういやオラ、飯作ったことねぇや。べジータはトランクスたちに作ってあげてるんけ?」
「当たり前だ!寿司は男の料理だからな!見ておけ!」
べジータが料理をはじめる
「お前らも見ておけ!気持ちの悪いもの作りやがって!食欲が失せやがるぜ!」
大声で怒鳴り、参加者全員を集める
(なんだこれは…?いいのか…?これがハンター試験なのか!?)
クラピカは愕然とその状況を見ていた
「先ずは水洗いだ!鱗についた泥、ぬめり、菌を取る!」
ザァアアアア
「そして次は鱗を丁寧に剥がす!皮を傷つけるなよ!後で剥ぎにくくなる!」
ゴリゴリゴリゴリ
「ここまで来たら基本の三枚下ろしだ!先ずはエラを取ってそのあと頭、いわゆるカマの部分だな。ここから落とす。そして背骨に沿って包丁を滑らす!」
あっという間に三枚下ろしが出来上がる
「ここで気を抜くなよ!綺麗に血を洗い流すんだ!一番臭みがあるのは血だからな!」
そして皮を綺麗に剥いで冊の状態にまでもってきたべジータは、料理酒と塩を取り出す
「今回の魚は泥のなかにいたやつだからな!臭みは流すだけでは取れん!一度料理酒に漬け込み塩を揉み込む!」
塩を洗い流してキッチンペーパーで水気を取る
「この魚の身は弾力がある!フグのように薄く削ぎ切りにするのが基本だ!」
透き通る程の薄さで切り身を作る
「握りは左手で酢飯を取り、右手に持ったネタで形を整える!この時の握りの強さが重要だ!逆さまにしてもネタが剥がれない程の強さかつ、口のなかで米粒がほどける程の強さで握る!」
そして最後に何かを上に乗せる
「これは生姜をすりおろしたものにかぼすの汁を垂らしたものだ!臭みを取り、サッパリと仕上がる!…これがっ!寿司だ!」
おおおおおおおおおお!!!
べジータを囲む参加者から大歓声が起こる
「どうだ?食べてみたくなったか?」ニヤリ
べジータがメンチに不敵な笑みを投げる
(なぜだ!?おかしい!立場が逆転するなどあり得るのか!?)
熱気立った群衆を他所にクラピカだけは冷静に状況を見ていた
「た、食べてやらんでもないわ!」
「ふんっ、素直になれんやつだ!うちのブルマとそっくりだぜ」
ぱくっ
「………。お…、美味しいっ!!!」
「フハハハハハハ!!そうだろう!!」
「407番!文句なしの合格よ!!!!」
べジータ、二次試験 後半 一番合格
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「ふひぃー、むじぃなぁ!身がぼろぼろに崩れちまう」
三枚下ろしに苦戦する悟空
手先が器用な他の参加者も、べジータ程は上手く作れずメンチからダメ出しをくらっていた
「メンチ、ちょっと厳しすぎるよ…」
「仕方ないじゃない。一番最初にあんなもの食べさせられたら嫌でも比べちゃうわよ。あの変態、美食ハンターの私以上よ」
そして……
終了ーーーー!
「ワリ!お腹いっぱいになっちゃった!」
メンチの満腹宣言と共に二次試験終了
合格者1名 べジータ