あといつものクセで番号振っちゃったんで、訂正しました。メンゴ。
「この度、花咲川に転校する事になりました。相生成琉です。できれば仲良くしてください、ふn…で、です」
普通の喋り方が出来ないなんて、人間としておかしいぞ。そんな言葉を言われるのは今に始まったことではなく、ダイエットする気が湧かないヤツのように、自分のコンプレックスを受け入れていた。が、それ以上に、これはわちきにとっての誇りなのであった。『猫として生きる』このわちきにとっての。
ここに来て何日か経ち、とうとうわちきは花咲川女子学院に転校した。中等部1年生。こころんも1つ進級し、高校2年生になったらしい。
「はーい、よろしくお願いしますね成琉くん。とりあえずあそこに」
「あ、どーも…」
隣には『無愛想』の3文字が似合いそうな奴が座っている。苗字は…『丸山』。へんなの。
周りは女女女。当たり前だケド、慣れないっつーか、なんつーかよォ〜〜。
なんとか学活の授業、自己紹介も終えて、放課後になった。早く帰ってしまわなければ、と思っていたその時。
「ねえねえ、ちょっと空いてる?」
「……空いてないように見えるふに?」
「う、うーん?ふに?あ、私は戸山明日香。よろしくね、転校生くん」
「ご紹介に預かりました、転校生の相生成琉ふに。在校生さん、よろしくお願いしますふに。で、何しに来たふに?よっぽどの世間話やビッグニュースじゃあないと、わざわざ興味もない男子に話しかけないふによね?」
「あははっ、君ってなんか面白いねえ。いや、君の言う通り、よっぽどの世間話やビッグニュースだよ。女子校にネコ系男子が来た、って話なんだけどね」
「ネコ系じゃなくてネコふに。この耳は飾りじゃあないふに」
「あ、これ髪の毛で出来てるっ!?ワックスは校則で禁止なんだけどなあ…」
あいにく、わちきは意味の無いルールに従えとは教わってないんでね。相生家ではワックスはOKされてるし。
「……で、このネコ転校生の席まで来たふに?」
「そうそう!……まあ、本人だけどね…でも気になっちゃって!」
「ふーに」
「…『ふーん』って言うにしては無理があるよ!?今気づいたんだけどさあ!」
突如。それは、獰猛と言うべきだった。爆発するかのように消え、消える時は嵐のように立ち去る。まさにその性格を象徴したような奴だった。
机にあぐらをかくわちきと、何故かわちきの席に座っている明日香の間に、パステル調の黄色い頭が飛び出す。
「ふにっ!?」
「お邪魔しますよ」
「ん?ああ、白鷺……恒河沙ちゃん?」
「恒河沙ァ?」
「これはこれは、成琉くんじゃあないの」
「わちきはお前の事を知らないふに」
「……あ、忘れてた」
「ちょちょちょ、待って待って!え?どゆこと?」
忘れてたァ?っつーこんは……コイツは本当に、わちきの『友達』か。
これを説明するには、明日香との関係さえ、かなりややこしくしてしまうが………仕方ないというものだ。ま、話すだけ話してみるか。
「久しぶりと言った方がいいのか、恒河沙ちゃん」
「幼稚園で転校して以来ですな。もちろん覚えていないことかと」
「ん、まあね。幼稚園とか何年前だよ」
「だーかーら!どういうこと!?」
「……一週間で、友達との記憶を忘れてしまう少女がいた」
「へ?」
…。
その女の子は、2泊3日の修学旅行に行こうと、ラッキースケベにあったとしても。たとえ、恋をしようと、一週間で忘れてしまう。
過去にストレスや過度なダメージがあった際、健忘症などにかかる可能性がある。
一週間だけの仲。
なんて切ないラブコメだろう。
そう、ラブコメなんだ。
転居、許嫁、女子校、そして健忘症。なんて都合の良い人間なのだろう。わちきが神から与えられた役割は、こんな下らないモノなのか?
まっ、それこそ神のみぞ知るってヤツなんだろーが。
「わちきはそこまで酷くないが…1度だけ、車に轢かれた事があるふに。一瞬、躰が裂け、首が捻れて、足がガウォークみたいになったふに」
「な、なんで後遺症ないの!?」
「ふに〜〜…分からんふに。とにかく今持っている記憶は、わちきの内面に関してのコトだけ。周りの人間関係なんて殆ど覚えていないふに」
「………なんでそうなったの?」
「いきなり核心を突いてくるふにね…それも分からない」
聞いても誰も答えちゃくれねーふに。あの優しい両親(ただ例の件については一生許さない)でさえ。魔女さんに奪われた、とか?……なんて。我ながら笑えねー冗談ふに。千尋が千になる、みたいな感じ?
ぶっちゃけ、こころの記憶は、少しだけ残ってる。まあ、見た目とか声しか覚えてないケド。何処で会い、どうやって仲良くなったかなんて覚えていない。
「ま、そんなとこふに。じゃ。玄関でバク転しながら嫁が待ってるんで。アイツめ…」
「ちょっと待って!」
「アイツが待ってるふに!」
「ほんとにあと1問だけ!神に誓うからっ!」
「あ、ほんとだ」
「…嫁?バク転?って、あれのコト?」
「そうふによ?それがどうしたふに?」
「………覚えてないんじゃあ…」
「ある程度は聞いてるふによ。ただつい最近の話も忘れちゃうだけで」
「人間関係を忘れちゃう、って事だったような気がしますぞ」
「ふに。ま、家族とかは平気ふに。突然変異だから?言うても1ヶ月が精一杯ふに」
「私の事も……忘れるの?」
「さあ。家族みたいな関係にならない限りは」
「私も忘れちゃってたみたいだし」
「ああ。すまん、ふに」
「いいっていいってー。小学校の途中から記憶力悪くなったのはビックリしたけど」
白鷺恒河沙。どうやら転校でもしたのか、小学校までは一緒だったらしい。
瞬間、目の前一杯に、さっきまで静かにわちき達を見ていた明日香の顔が映る。匂いが広がる、声が響く、潰れる、流れる、溢れ出る、割れる、食われる、砕け散る。最大、無限、極地、高揚、動乱、熱狂、激情、過熱、陶酔。力が漲る、魂が燃える、心はどこだとポケットを探しても見つかるのはわちきのマグマが迸るだけHEY we live in armour zone。
要約、わちきは明日香が急接近して動揺していたのだった。
「わーお大胆」
言っとる場合か恒河沙!
「アナタに近づけば、私のこと…忘れない?」
「いや、物理的距離じゃなくってふにね…」
「じゃあエッチなの、する?」
「ぶふっ」
「…冗談だよ。まだ会ったばっかでしょ?」
会ったばっかじゃなかった時のことは、考えたくない。
うーむ、大人しい子だとばかり…この子、油断ならないふに。それとも前やってたアニメの女の子みたいに、からかうのが好きなのか?男の子を。
……脈は、流石に無いよな。わちきに惚れた女は1人としていないッ!…作れないんじゃなくて作らないの!別にえっちなのが苦手とか、そーゆーの無いから!
「じゃ、愛するハニーのもとへ行ってらっしゃーい」
「う、うーん…行ってくるふに。また明日」
こっちでも、フツーには過ごせなさそうだな。
「お待たせ、こころん」
「成琉!やっと来たわ!退屈して体を動かしていたら人が集まってきたのだけど、どうしたのかしら?……あっ!銀貨が飛んできたわ!」
「ちょ、それ50円玉!そこまで高価じゃないふに!(高価と硬貨をかけたわけじゃあないふに)」
この許嫁は、わちきの頭をはるかに上回る花畑を持っている。とてもじゃあないが、わちきには真似できない。
そして。
「それより、みんな笑顔になってるわ!あたしが校門で動けば笑顔になるのね!」
やはり何かを履き違えているようだが、わちきにはとても出来ないことパート2。
『人の笑顔のために動ける』。
動くといってもロンダードからのバク転だったり高速側転10連続だったりだが。それにしても、こいつは笑顔に異様なこだわりを見せるのだ。
この前だって、わちきがため息をついた時、それを拾うようなフリをしてそこから飴を出した。幸せが逃げちまうんだってよ。
「笑顔の奴隷ふに」
「ん?なんの事かしら!もしかして新しい絵本?」
「なんでもありませんーっ、ふに」
「じゃあ帰りましょう?私の使命はもう終わったわ!あとは成琉と帰るだけ!」
「それならわちきの使命は、こころ姫を紳士的にエスコートする事ふに?」
「ふふっ、それなら黒服さんがやってくれるわ!」
「………なら、そばに居る事しかできないふにね」
「それで十分よ!」
…もっと甘えていいのによ、お姫様。
←to be continued
成琉くんの結構深刻な設定が出てきましたね。1ヶ月おきに記憶を喪失してしまう。なんてラブコメちっくなのでしょう。砂糖と花を吐きそうです。
あと明日香ちゃんのキャラが掴みにくいので、たまーに私好みに喋らせちゃう時があります。ごめんね。