ジョジョと轟音のガルパーティ!   作:苗根杏

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おひさ。


ときめきエクスペリエンスレクイエム!

わちきの名は、成琉。相生成琉。

「ハシゴくれえあってもいいと思うんだケド…ふにっ!ふに、ふにあっ!」

いくらジャンプしても、50メートルの壁に見えるお菓子の壁の天辺には、手が届かない。指の先の、わざと伸ばしている爪にすらカスらない。明日香より小さな背丈がイヤになる。

毎日、麻を飛び越える練習をすればジャンプ力が上がるんだとか。麻の成長速度は、種を植えて4ヶ月で普通の柵を越える、まさに度を越した速さなんだとか。今じゃコンプライアンスが危ないからヒマワリになってるらしいけど……えいっ!

「ふ、ふにゃっ!?」

ショッピングセンターのツルツルの床に足を滑らせ、何回か足掻いてみるも、スグにしりもちをつか………あれ?尾骶骨がリノリウム風の床につか……ない。

「…………………」

「なッ…!」

わちきの後ろには、顔を真っ赤にして背中を支える大学生くらいの女がいた。

横には転んだ時に落としたバッグを拾う女、そしてわちきの取ろうとしていたお菓子を軽々と取る黎斗さんも。

「ち、力仕事は黎斗がやってよぉ〜…」

「お前にこれは取れないだろう。適材適所が、この社会のルールだ」

「あはは!無理しちゃって!」

バッグを持った方と反対の手を取り、よっこらしょういちと立ち上がる。何だ?こいつ…。わちきとこの2人の女の間には、確か何もなかったハズなんだけど?

「あ、そういえば初対面だったっけ?黎斗から話は聞いてるけど、私は上原とまり!よろしくねっ!」

「私の方は上原きらり、タメでいいよー?」

「黎斗さん、上原って…」

「はぐみの友達に上原ひまりという奴がいてね。知っているのかい?」

「幼馴染、みたいっスよ?」

「マジで!?ジョジョくん、それは初耳!」

「初耳というか、ジョジョくんとは初見なんだけどね」

あいつらと同じだ…わちきの事を『ジョジョと呼ぶ』。

つか、え?ひまりの……姉?こっちこそ初耳だぞ、あいつら毎日わちきの家(弦巻邸)に来るくせに。

「そっちは何の用ふに」

「動画の買い出しだよ」

「……動画?っつーと、ゆーちゅーばー?ふに?」

「そう!登録者5万人の倶利伽羅チャンネルとは、私達のことなのでーす!」

「…なるほどふに」

って、え?黎斗さん、ゲーム以外にも動画配信やってんの?しかも結構人気そうだし。

後で調べたのだが、毎日投稿してやがった。スゴい。

………しかし、だ。許嫁がいて、蘭達みたいな女子高校生の幼馴染もいて、毎日話してくれる明日香みたいな同級生もいるわちきが言うのもなんだが、なんだか主人公みたいだな。

チート性能持ってるし。ヒロインいるし。個性あるし。

「……………………………」

「……………………………」

「…耳が、どうかしたふに?」

「いや……キミのことは聞いてるけど、さあ」

「ここまでネコだとは…ねえ?」

「ふふん、アイデンティティは目立ってなんぼのもんじゃいふに」

もはや猫を目指し、猫になる事は生きるための信念。哲学であり、道徳であり、倫理であり、心理、いや真理だ。世の中だ。世界だ。イデアだ。

「しかし成琉。何故このチョコクッキーを取ろうとしていたんだ?」

「こころんはゴディバよりこれがお好きなようで、わちきに買ってきてと言われたのですふに」

「ふむ、あの帝愛グループにいそうな妙な黒服にはナイショの買い物ということか?」

「いや一応、合意ふに」

「ねえねえ黎斗〜、これどう?マーブルチョコとかで擬似メントスコーラ」

「あらゆる調味料を混ぜた水を1リットル一気飲み!デスソースもあるョ!」

「よし、調味料と水と菓子とコーラを買おう」

「あとはアレだ!質問コーナー!」

「丁度1か月前だからねえ。やろっか」

「………それはいいんだが、二人とも?」

「んー?」

「…近いんだが……?」

なん…だと?

黎斗さん、もしかしてコレ…三角関係フラグ立ててる?えっ、ゲーム作るだけじゃなくてフラグも立てるの?おかしいよ。色々と。顔赤いし…。

「黎斗さん」

「な、なんだ…?」

「ギャルゲの参考になるふにね」

「貴様この猫がッ!」

「褒め言葉ふに♪」

「ほらほら黎斗!決めたんだからさっさとレジ行く!」

「じゃあね〜成琉くん☆」

「神はこんな事しないんだぞーッ!くそーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

ふにふにーっと店の中を周り、わちき用の夜食(チキンラーメンに限ってあの人達は許してくれる)を探していると、わちきはふと立ち止まり、ある1人の女を見た。

「あ、成琉くんだ。おーい」

同時に目が合った。

「……明日香?と、もう1人…ふに…」

「およ?明日香のお友達っ?」

こいつ…わちきと同じ『ネコ耳』か?しかし語尾やそれ以外の見た目はフツーだ……。

「あ、戸山香澄ですっ!明日香がお世話になってます〜♪」

「普段は私がお姉ちゃんの世話してるんだけどね」

「一回言ってみたかったの!えへへ」

あ…あざとい。かーなーり。あざといぞ。

人に甘える点では猫としてちょいと上だな…そういう『タイプ』の猫なのか。方向性こそ違えど、それは音楽やバンドのジャンルの違いのようなものだ。わちきがどうこう言うことはできない。

「香澄さん。アンタは立派に生きたふに」

「え?うん、よく分かんないけどありがとー!」

「ほんと上から目線だよね、成琉くんって」

「自覚がないから仕方ないふに」

「せめて持とうとしなよ…」

「今持てるのは、自分への自信とお前の荷物だけふに」

「は、はあっ!?ちょ、意味わかんないし…」

「優しいねえ、成琉くん!」

「……………ふにっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「たけのこふに」

「いや、きのこ」

「二人とも何してるのー?ライドウォッチ?」

「違うふに。エボルト買うけど」

「違うよお姉ちゃん。あ、エボルトで」

「ぴ、ピッタリ…じゃあ何なのっ?こんなとこで立ち止まって」

「きのこたけのこ戦争ふに」

「そう、あたしは絶対きのこだとおもうんだよね」

「はァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ???ナニソレ、イミワカンナイ!」

「うわうっざその言い方」

「ビスケットとチョコレートのベストマッチ!たけのこの里が一番に決まってるふに!」

「いやいやいや、それならたけのこである必要なくない!?きのこはチョコ多いしクラッカー美味しいもん!」

「トッポでいいんじゃあないの?」

「「だったら極細ポッキーがいい!」」

「そ、そこもピッタリなんだね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまふにー」

「おかえりなさい、成琉!先に帰ってたのね!」

「ちょっと早めに帰って、これ買ってきたふに」

「これは…時計、かしら?」

「ああ、それは宇宙人の力を封じ込めたパワーアップアイテムみたいなモンで…じゃあなくって!ライドウォッチはわちきの!こころんが頼んだのはこっちふに!」

「あー!ハーヴェストね!」

実際わちきも好きだし、買いに行くのは満更でもなかった。

こころん自身を外に出させると黒服さん達が苦労するらしいからな…そんならパシリでもなんでも、わちきが行こうって話ふに。

「そうだわ成琉!学校で聞いてから気になっていたの!」

「ふに?」

「成琉!子供ってどうすればできるのかしら!」

「ぶ───────ッ」

地雷だァァァァァァァッ!!

何がとは言わんが……クソっ!誰が教えた!?急すぎて頭が追いつかない!

これはわちきがこの身体を使って直々に教え込むしか…!

「子供は笑顔がいっぱいで素敵だわ!ぜひ作りたいわね!」

「……反論はしないふにけど、同調もできないふに…」

待て成琉…この身体ではまんk、ま、満足にこころんとフュージョンできないッ!保健体育でやったし、明日香が照れながら女の子の日の事を相談してきたから余計にやりづらい…!

「知りたいふに?」

「ええ!あたし、子供が欲しいの!」

「…誰との?」

「?」

「いや、子供っていうのは、ミカヅキモやゾウリムシなんかじゃあない限り……そ、その、好きな人同士の…男女がペアになって、初めて出来るものふに」

「そうなのね!なら、成琉としたいわ!」

「ぶふぅぅうゥッ!!……な、何を言い出すふに、アンタ…」

「だって、子供を作るのは悪いことじゃあないんでしょう?憲法にも、法律にも引っかからないわ!」

「少なくとも校則(不純異性交遊)には引っかかるふによ!?」

「意味の無いルールには従わないっ!」

逃げ場が無いなあ!

「………よし」

「わくわく!」

「あのな?こころん。わちきとこころんが仲良くしていると、こころんのお腹には、いつか赤ちゃんが出来るふに。その期間は約10ヶ月、そしてわちきと一緒にその赤ちゃんをお腹の中で育てるふに」

「……仲良くすれば、いいの?」

「ふに!」

これで満足か。

と、思うやん?

「なら仲良くしましょう、成琉!」

「え"っ」

「むぎゅー♡」

わちきに抱きつくと、そのまま身体ごと床へ押し倒す。こころがわちきに乗っている状態だ。

……………頬を赤らめている。確信犯なのかは知らんが、これはこころが本当にしたい事なのだろうか…?

分かってる…こころがやれって言うなら…これが、本当にやりたい事なんだよな……?こころ…。

「……ん。成琉も、ぎゅーって、して?」

「勘弁してくれふに…」

ごろん、と互いが90度傾き、りっとうのように並んで寝転んだ状態に。

 

綺麗だ。

 

二つの目に、それぞれ太陽が宿っているようで、眩しい。でも、目を瞑りたくない。逸らしたくない。ここにいて、ずっと見ていたい。

髪を払い、微笑む姿は、可愛い…というより、美しい。美術館にあるような、彫刻のようだ。

生きているのか、よく作られた機械なのか。

笑顔だけを求めるロボットなのか。

違う。

わちきを、求めてくれている。

まだおやつも食ってないのに、その甘い匂いのする唇に惹かれ、わちきはカブトムシのように…誘われる。

「……〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「んっ」

あと一センチもないところで、わちきは唇の軌道を少しだけズラし、熱い頬に口づけをする。耳まで真っ赤になるのを誤魔化して、小さく、細い肩に、頭ごと埋めてしまう。

「ふふ。嬉しいわ…成琉」

「な、何がふに」

「あたしの事を、見てくれてる…」

「………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす。こころー、新譜できたんだけどー?」

「あっ」

「美咲!もうできたのね!」

「…あー、そのー。成琉さん?」

「ふに…」

「バンド活動に支障がない程度に、ね?」

「違うのよ美咲!これは赤ちゃんを作っていただけよ!」

「キミ何教えてんの!?」

「いやこっちから言い出したふに!わちきはやんわりとやり方を教えてただけふに!」

「ヤり方…っ!!」

「マジでやめろふに!」




文字数少なめだけど勘弁してちょ。サクサク読めるおやつとかおつまみみたいな感覚で。
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