家出娘と美形お兄さんの珍道中〜   作:藤涙

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Part.17:い、胃が痛い…

「まあ、世界を見てみるのも悪かねぇさ」

 

「せかい?」

 

「そうだよ、馬鹿。お前もずーーっとここにいるつもりはねーだろ?」

 

「ここにいなきゃいけないんじゃないの?」

 

「んなわけあるか。俺と違ってまだ若ぇんだから、どこにでも行けるしその権利はある」

 

「ふーん…」

 

「気の抜けた返事だなあお前。どっか行くってんなら、それを止める権利は俺にはねえし。兄さん…お前の父親と母親の遺産持って、世界一周でもしてこいや」

 

「でも、だって、おはなしできないよ?」

 

「おっ、乗り気だな? まあ、なんとかなるさ。お前豪運持ち出しな」

 

「ごう…?」

 

「とんでもなくラッキーってことだ。どんなことがあっても持ち前も運でなんとかするだろ」

 

「なんか、テキトーだね…おじさま…」

 

「そりゃあ関係ないですしおすし。お前の行く道なんが知らねえよ、自分で決めろど阿呆」

 

「…」

 

「はいはいぶちゃくれるなブスになるぞ。まあ、そうさな。あとのことは何とかしとくから…お前はそとに逃げ出しちまえ」

 

「…そと、か」

 

「こんなしみったれたとこよりも、余程大きいものがこの世界に広がってるんだ。見ないと損だろ?」

 

「楽しい?」

 

「もちろんだ」

 

「行けるかなあ…」

 

「お前は…頭はちょっとあれだが、まあ根性あるしうん……」

 

「えっ」

 

「我が義娘だがらあれだな、お前。いいところ幸運ぐらいしかない…?」

 

「ええっ」

 

「まあほら、適当に頑張ってこい」

 

「えええー!」

 

「──俺がお前を守るから、お前は自由に、幼いままに、羽ばたいていけばいいんだよ」

 

 

────────

 

あ、やばい。

怒ってる。

 

意識が覚醒して、頭がずきりと痛んだ。懐かしい、夢を見ていた気がする。叔父と春の縁側で語らった、幼いあの日。あの日以降、殆ど話すことはなかったのだけれど。

 

私をだき抱えている人は、まあ言わずもがなライダーで。薄目を開けて見ると前方を睨み据えていて怖い───あ、バレた。

 

「おはようございます、吉備津 陽鞠さん」

「…おはよーございまぁす…?」

 

ピリピリしている中でも、私に声をかけてきた人物は恐ろしいほど穏やかだ。

微笑を浮かべるシロウに、ライダーが睨んで牽制する。その──マスターである私が思わず震える威圧感にも──困ったように首を竦めて見せる彼はなんなのだろうか。

 

「…立てるか」

「うん」

 

ライダーの手を借りて立ち上がれば、そこは爆発間近の戦場で。思わず硬直してライダーの後ろに素早く隠れた。

なにこの一触即発の状況。

 

少し腰が引けるが────だめだ。この場は、この場だけは、私は毅然と立っていなければならない。そうしなければ飲み込まれる…。

 

「怪我は?」

「大丈夫」

「目眩や嘔吐感は?」

「今は、平気。ごめんなさい、ライダー」

「アンタを責める気は無い…“敵”はあっちだ、マスター」

 

倒れる前の微かな記憶。「殺しはしない」というのは本当だったらしい。未だ命があることに震えるほど感謝しつつ、酩酊感を押し殺して自分の足で立った。

場は混沌と言っていい状況、サーヴァント同士が言い争い、武器を持つまでに至っている。

 

「シロウさん!! あの人達は、あの部屋にいた方達は、誰…!!」

「それはもう、お分かりなのでは? ライダーのマスターになる方だった魔術師に、なぜ貴方が狙われなかったのか。いくら世俗に触れなかったとは言え、察しが悪いにも程があります」

「う…なら、あの人達は、やっぱり…」

「ええ。“赤”の側で戦うはずだった5人のマスターです…ふふ、そんな顔をしないでください。心配しなくとも、生きていますよ。彼らには平和的にマスターの権利を譲っていただきました。夢現のまま、聖杯大戦に勝利したと信じているのです。可哀想ですから起こさないであげてください」

 

その瞬間、ぐい、と襟首が引っ張られて「えう」と喉の鳴る声がした。ものすごい勢いで引っ張られたから1秒間息が止まり混乱する。後方に放り出され、そのままどこかに激突するかと思いきや───誰かに抱き留められていた。

目の前に踊る金の髪、それが気にならないほど私は怯えている。放り出されるその刹那、私を後ろに下がらせたアキレウスの顔は───マスターである私が震え上がるほどの敵意と殺意に満ちていたから。

 

「…感謝する、ルーラー」

 

「平気ですか、貴女」

「…」

 

ルーラーの少女の言葉に、必死で頷く。少し首が締まった程度だ。なんともない…。

 

「…貴方はもちろんお怒りでしょうね、ライダー。あの時、あの教会でヒマリさんが獅子劫さんと共に行かなければ、彼女もあの部屋にいたでしょうから」

「…」

「セイバーもそうですが…貴方も、マスターとの相性が良かったのは予想外でした。生前の誰かに面影を重ねましたか? 貴方が悔恨するのは…ミュケナイの姫や親友でしょうか」

「…ッ!!」

 

“赤”のアーチャーとライダーの攻撃は、シロウの頭や喉、心の臓を狙うもの。歴戦の勇士が同時に放つそれを、“赤”のアサシンとランサーが同時に防いだ。

ランサーは音速にも達する矢を素手で掴み、アサシンは左で展開した鎧で槍を防ぐ。ライダーの槍はその装甲を木っ端微塵に叩き割ったものの、そこで押しとどめた。

 

「──ふむ。神魚の鱗を至極当然のように貫くか。さすがはアキレウス、つくづく神の子よな、お主は」

 

血の滴る左手を擦りながらアサシンは顔を顰める。

 

「…」

「今のは自殺行為ですよ、ライダー。あの時間で私達がヒマリさんになにもしていない…とは考えないでしょう?」

「…そうだな、毒やら呪いやら、姑息なモンでも仕込まれてたら敵いやしねえ」

 

自分の体に毒を仕込まれているかもしれない、それを聞いて一応探ってみるも──全然わからない、サーヴァントの技術には流石に勝てない。

アキレウスは殺意がこもった視線をシロウに投げて、こちらに来る。「すまない、痛かったろう」と声をかけてくれて、私は差し出された手を取った。大丈夫、痛くないよ。人より体は丈夫だから。

 

「(どうする?)」

「(静観、しかねえだろうな。現状アンタを人質に取られてる状態だ。はっきり言ってどちらにもつけねえ)」

「(うう…ごめんなさい…)」

「(マスターは悪かねえよ。人間がサーヴァント相手になんとかするのは難しいさ)」

 

不器用な手でガシガシと撫でられる。どうやら慰めてくれているらしい。途端に涙が溢れそうになるけど、我慢する。さすがに今日は死にかけすぎだと思う。この後の人生──無事にこの大戦を終えられるのかは分からないけれど──二度とないと思いたい。

 

アキレウスの後ろにいて聞こえてくる、サーヴァント同士の睨み合い。

“黒”のキャスターは“黒”の側を裏切り、“赤”へ。どよめき揺れる場に、何も出来ないことが歯がゆい。

 

シロウさんに呼びかけられてもアキレウスは動かないから、彼はシロウさんに従うつもりはないのだろう。彼はずっと私を背に庇っていて、情報は耳からしか入ってこない。

 

「下がるぞ」

「えっ」

 

突如、ピカリと赤い稲妻が轟いた。何かが崩れる騒音と雷──飛び散るそれをライダーが庇う。キーーーーンと耳鳴り、きゃあ! と思わず蹲った。

 

「“赤”のセイバーは貴女でしたか。栄光に輝くアーサー王伝説を終わらせる者───叛逆の騎士、モードレッド」

「ハッ!! 気安くオレの名を呼ぶんじゃねぇよ!」

 

「…セイバー?!」

 

呵呵大笑しながらゴーレムをぶった斬るセイバー…モードレッド───後で図書館に行きます───は思う存分大剣を振り回し暴れ回る。

 

 

───目が合った。

モードレッドは忌々しそうに舌打ちをする。彼女に声をかけようと叫ぼうとした瞬間、辺りに白煙が立ち込めた。

煙が目に染みて咳をしていれば、もうこの場に“黒”のサーヴァントとルーラーと“赤”のセイバーはいなかった。

 

「…ど、どうしましょう」

「…」

 

「さて…」

 

“黒”のキャスターが彼らを追って消え、場には私とライダーと───シロウさんとサーヴァント達。

ビクリ、と肩を震わせる私に対して、シロウさんは何事も無かったかのように微笑む。

 

「少しお話しましょうか、陽鞠さん」

 

 




Apocryphaコラボきた…来てしまった…

シロセミ引きたい…ひき…ひきた…

ア゛キ゛レ゛ウ゛ス゛ーーーーーーー!!!!!!
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