空中庭園は既に動き出していた。大聖杯をその腹部に取り込み、黎明の空を飛び続けている。
「少し、お話しましょうか。ヒマリさん」
「いいや、それはさせねえ。何かを話すなら俺達の前でやれ」
少女は困惑したように眉を下げている。小さな、小さな娘。この時代、シロウからすれば約400年後の未来の子。
穏やかな笑みを向ければ怯えたように身を竦ませて、ライダーの後ろに隠れてしまった。
ある意味、彼女も犠牲者だ。この悲劇を生み出し続ける世界の。
「ええ、もちろん。彼女のサーヴァントたる貴方にも、彼女の話を聞く権利はあるでしょう。いいですよね、ヒマリさん」
「…なんの話をするのか、知らないんだけど」
「貴女のお話ですよ、吉備津陽鞠さん」
アキレウスの睨みが一段と強くなった。殺意、殺気、そんな言葉で形容される視線を真正面から受けてもシロウは涼やかな顔だ。
「吉備津陽鞠。吉備津という名字は母方のもののようですね。本名は大江陽鞠。京都出身の魔術師。現在は家出中で、国際空港から乗り継いでここに来たとか」
「…」
こくり、と不思議そうに頷いた少女。なぜ知ってるのみたいなことを言いたそうな顔だが、当たり前だろう。共闘相手のことは調べるものだ、たとえその対象が嫌がろうが。
「吉備津、というと珍しい名字ですよね。お母様は何処出身でしょう」
「…? 確か、岡山」
「でしょうね」
そう言えば、また不思議そうに眉をしかめた。なんでそんなこと聞くの、と言いたそうな顔だ。本に、顔に出やすい素直なことか。彼女に将来があるのなら、ものすごく心配になってくる。
「それがなに…?」
「そうですね…確か貴方と同じような名の、その地域にいたと云われる、とある英雄の名を思い出していただけです」
ああ、なんて嘆かわしい。その血を穢されたばかりか、本人はそのことを知らないらしい。日ノ本で最も名の知られた英雄、勧善懲悪の象徴。
だけれど───血なら最初の時点で穢れていたか。彼の物語のめでたしめでたしの後、英雄と敵の悲恋話。彼女がその血を脈絡を継ぐのなら、彼女は“鬼”でありそれを倒す“人間”なのだから。
「…吉備津彦命、という名前に聞き覚えは?」
「きびつひこのみこと? えっと、お母様の生家も神社だったから、どこかで見たような名前だけれど」
きょっとーんととぼけた顔をするヒマリに、シロウはすっと笑みを消した。
「吉備津彦命、日本書紀に登場する皇子。鬼ヶ島へ3人の共を連れ鬼退治に行った──つまり、現代で言う桃太郎ですよ」
端的に言うと来てくれました。
学生身分では高いお買い物しました…お疲れ様でした。ゆっくりスキルマにして聖杯捧げようと思います。先に来ていたケイローン先生にはもう捧げちゃってます、先生の顔と声がいい。
今日絞り出した20連はドッカーンして、悲しみにくれつつ単発ぽいぽいしていたら最後の単発でどっかーんでした。今日から君の名はサプラウスだ。
もう本当、アキレウス、アキレウス…
今回短くて本当にごめんなさい…数時間粘ったんだけど彼が来ないショックでここ数日全然書けなかったの…