空飛ぶ庭園の花畑の中で、ヒマリは独り佇んでいる。流れ落ちる水は上へ、さかしまの流れをぼんやりと眺めていると、花の間を縫うように飛ぶ蝶はヒマリの鼻で羽休めする。
息をする。
生きている。
うーん…。難しい…。
自分が鬼だとか家の事とかだいさんまほーによる世界の救済で頭がパンクしそうだった。考えても考えても思考の着地点は見えずに迷走するばかり。
「というか、角がないのに鬼と言われても…。鬼といえば角だよねぇ?」
桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな。
キビツヒコノミコト…だったか。現代で言う桃太郎のモデルと呼ばれるその人の家系と言われてもピンと来ない。
うーん、だめだ。八方塞がり。
こんな状況になるなら、家出する前におじ様にいろいろ聞いておけばよかったな。と後悔する。
「鬼…鬼、ううむ。が、がおー…?」
「なにをしているのだ、汝」
「うひゃっ?!」
突然声をかけられて、思わず肩がビクリと震える。自分でも大げさだと感じたその仕草に目を丸くしたその人は、穏やかに口元を緩ませた。
「“赤”のアーチャー、さん…」
「アタランテで良い。こんな状況で真名もなにもあるまい…それに私の真名ならライダーに聞いているだろう?」
「えへへ…」
鮮やかな森のような少女はそう言って私の頭を撫でた。アタランテ、という狩人の彼女の目には私は子供に映っているらしい。抗議しようと思ったものの諦めた。ケイローンさんやアキレウスやアタランテを見る限りギリシャの人は身長が高いのだ。日本人の気持ちなんてわかるはずがない…。
「アタランテさんはなにをしてたの?」
「見回りだ。まああの女帝の目が届くのだから、意味の無いことだが。習慣のようなものだな。汝はなにをしていたのだ」
「うーん…ぼんやりしていただけよー? いい天気…というか雲の上だから天気関係ないか…」
酸素の薄い空の上だというのにこの体が平気なのはそういうことなのかなあ…と考えて首を振る。まあこれは今考えても仕方あるまい。
わからないわ、わからないの。わからないなら考えても無駄かもしれない。それならば考えずに、呑気に気ままに歩きましょう。
「…そうか」
「うん?」
「いや、なんでもないさ」
アタランテは私の横に腰を下ろすと、私と同じように辺りを見回す。深緑の美しい瞳は鮮やかな花々を映して、長い睫毛が瞬きをしたその一連の流れにほうっと感嘆の息をついた。野性味があるが粗野ではない、研磨されていない宝石のような、ありのままの美しさ。
「どうした。そんなに私の顔をじっと見つめて」
「ううん。なんでもない!」
挙動不審な私の様子にアタランテは顔をくしゃっとさせて笑う。まるでその笑顔は子を守る親のようで───なんだか少し、恥ずかしくなった。
「汝はこれからどうする? サーヴァント同士の争いには参加はすまい」
「そう、だね…私じゃ足でまといだもんなあ…。とりあえず下にトゥリファスに荷物取りに行きたいけどこの城引き返してはくれないよね…?」
「足蹴にされるだろうな…大事な荷物なのか?」
「うーん…家出してきたから、あれが私の荷物全部で…大事っちゃ大事かな」
「ふむ」
アタランテは少し考え込むと、頬を緩めて優しく笑う。
「なら、私とともに来るか? 実はマスター…天草四郎から斥候を命じられている。街には出られるだろう」
「本当?!」
「ああ。もちろん、ライダーや天草四郎から了解を得て、からだが」
「…言ってくる!」
すぐさま立ち上がって、ぱたぱたとかけて行ったヒマリにアタランテは微笑ましそうに尻尾を揺らした。
彼女もまた、迷子になるからと城の中を歩き回ることはライダーから遠慮するようにと言い聞かされていたし、眺める景色はほとんど空、蔵書室はあるもののキャスターはいるわ字は読めないわで暇を大いに持て余していたのだろう。
街に出るにはいい機会かもしれぬ。彼女にとって、気分転換にはなるだろう。
そうライダーには言い訳を作って、アタランテも立ち上がった。
バイトが忙しくて何も書けない…!
びっくりするほどばーにんぐ!
茶々ちゃん可愛い〜!!!
ノッブも復刻しないかなあ…欲しいなあ…