家出娘と美形お兄さんの珍道中〜   作:藤涙

24 / 27
夏が始まって終わりましたね


Part23:トロイメライ

遅めの朝食を済ませてから、ヒマリはホテルに向かった。管理人さんからはすこし睨まれてしまったけれど、荷物はちゃんとあってほっとする。ちんけな小さいキャリーバッグでも、私にとっては全財産である。

なぜだかどっと───疲れてしまった。眠くて眠くて仕方がない。お腹がいっぱいだからだろうか。瞼が重くて、重くて。

気づけば寝入ってしまっていた。子供のように、丸くなって。

 

 

◆◆◆

 

 

目が覚めたら夜だった。

思考がぼやっともやけていてぶんぶんと頭を振る。ひさしぶりに寝入ってしまった…どれくらい寝ていたのだろう。真っ暗な窓に呆れて笑う。いろいろあったから、いろいろありすぎたから、ちっぽけな日本から飛び出してから。

飛行機に乗って、小さなキャリーバッグと一緒に、遠く遠く遠くへ。

 

突然ふっと思考が開けて、ベッド脇に誰かが立っているのを悟った。月明かりは差し込まない日照りの悪い部屋。真っ暗闇では気配を探ることしか出来なくて、一切の挙動を止めた。

その人影は動かない。誰だろう、扉の鍵は閉めたはずなのに。敵側の誰かだったらやだなあ、殺されちゃうなあ…と我ながら緩い思考をたらたらと続けながら、その名前を呼ぶ。

 

「…アタランテ?」

「…」

 

ピクリ、とその影が動いた気がして、息を呑む。ベッドが軋む音がして、陽鞠は身を縮こませた。

鼻先に髪が触れた。森の中にいるのかのようなこの香りは、紛れもなく“赤”のアーチャーのとの。ほっとして声をかける。

 

「アーチャー? どうしたの」

「…」

「何かあったの?」

 

その指が陽鞠の髪を掻き分けて頭に触れた。またぎしり、とベッドが軋む音がして、背中に手が回される。ぎゅうっと息が出来ないほど抱きしめられて、思わず「ん…っ」と声が出た。

 

「どうし、たの、アタ…ランテ…! くるっ」

 

彼女は私の髪を撫でながら無言のままだ。手が、サーヴァントの手が、人間の頭蓋など卵の殻のように握りつぶせる手が。わたしを押し潰さん如く撫で続ける。

 

「大丈夫、大丈夫だ」

「“アーチャー”…?!」

「お前達は、わたしが、絶対に、守ってみせる」

 

虚ろな声で、暗闇の中。相手の表情は見えないまま、なぜだか泣いているのだ。と思った。決意を滲ませる声に、未だ私の背を撫で続ける手を握って。私もそっと抱き返した。そうしないとこの人は狂ってしまう。あの日の父のように。何かに魅入られてとり殺されてしまう。そう感じて、私も目を瞑って大丈夫。大丈夫。と声に出した。

──もしかしたらもう、とっくに。それこそずっとずっと前に、歯車なんて狂いきって、どうしようもないほど壊れていたのかもしれないけれど。

 

大丈夫、と。そう願わずにはいられなかった。




お久しぶりです。
私の夏は褐色おっぱいに始まり、彼氏面、彼氏面(×2)、ヴィヴィアーンに終わりました。
ハワイループの旅、楽しかったですネ! びぃびぃちゃん欲しかったあ…XX…メイヴちゃん…

灼熱の夏が終わり、食欲の秋の始まり9月…! になりそうですが、残暑と台風がやばそうですね!(^q^)
皆様お気をつけくださいな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。