「……む?ここはどこだ?」
目が覚めると、俺は一面真っ白な見知らぬ部屋にいた。
そして目の前には羽衣を付けた水色の髪の女性がスナック菓子片手に椅子に腰を掛け、こちらをきょとんとした顔で見つめている。
全く理解が追い付かない。どういうことだ?爆風の勢いで他人の家に入り込んでしまったか?
いや、それはないだろう。地球がこの状況でのんきにスナック菓子なんか食ってる者はいないだろう。
それに俺はさっきまで……。
「えーと、貴方は……んー?明らかに写真と違うし、おかしいわねぇ?」
女性はどこからともなく分厚い書類を取り出し、こちらの顔と必死に照らし合わせている。一体何をしているのだ?
「うーん、申し訳ないんだけれど貴方。名前教えてもらえるかしら?」
パタンと書類を閉じた女性は俺に尋ねてきた。
全く状況が呑み込めないが、とりあえず答えることにした。
「あぁ……、俺はEDF所属のエアレイダーだ。最近はストーム1と呼ばれている」
「いーでぃーえふ?え、えあれいだー?すとーむ…わん?ちょっと待っててね」
俺の名前を聞くと女性は再び分厚い書類を取り出し何かを調べ始めた。
「何よそれ……聞いたこともないわよ?容姿も名前も私のリストに載ってないしミスかしら?んー、でもなぁ……」
書類を見ながら何やらブツブツと呟きながら頭を抱える女性。
確かに俺は一般人からすれば珍しい名前かも知れないがEDF所属と言えば間違いなく伝わるはずだろう。
しばらくすると、女性が頭を掻きながら顔を上げた。
「あー、ごめんなさいね。ちょっと手違いがあったみたいだけど、やることは同じだと思うから私が対応しちゃうわ」
「対応?何をするんだ?」
俺は首を傾げた。女性はいいから、と俺を制し続ける。
「えー、こほん。ストーム1さん?でいいのよね?ようこそ、死後の世界へ。貴方は先程不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが貴方の生は終わってしまったのです」
亡く……?
「何!?」
お、俺が、死んだ!?そんな!?
「まぁ、驚くのも無理もないわね。皆大体そんな反応をするわ」
「待ってくれ!何故、何故俺は死んだんだ!?」
俺は今まで地球を守る戦の中で幾度となく死にかけた。ある時は巨大アリに喰われて、ある時は酸性の糸に巻かれて、ある時はエイリアン達の集中砲火を浴びて、
ある時は味方の空爆に巻き込まれて……。しかし、どのような状況にさらされても死にはしなかった。常に五体満足で勝利を掴み
生還してきた。この身体の丈夫さだけが取り柄だったのだが、その俺がまさか死ぬとは……一体どのような目に会ったのだろうか?
すると、女性は少し悩むようなポーズをとった後に口を開いた。
「ちょっと辛いかもしれないけど、よく思い出してみて。貴方ならわかるはずよ」
「何?俺はさっきまで……はっ!!」
そうだ、俺は何が起こったのか全て思い出した。
「おっ!何か思い出した?大体わかってはいるけど、ちょっともう少し話を聞きたいんだけど良いかしら?」
「……あぁ」
俺は話し始めた。
俺はつい先ほどまで、侵略者プライマーのコマンドシップより現れた統率者『かの者』との激戦を繰り広げていた。
奴の使う超能力にはかなり苦戦を強いられたが本部や補給半、戦友たちの力を借り、ついに奴に止めを刺した。
「思い知ったか……俺達の勝ちだ!!」
体がバラバラになっていく奴の姿を見て思わず俺は手に持っていたビーコンガンを上に掲げた。
「よくやったぞ!ストーム1!!」
「ついに、ついにやったんですね!!」
通信からも仲間たちの喜んでいる声が聞こえる。今まで犠牲になった者達の苦労も、これで報われた。
そう思った矢先だった。
「はっ!?敵から高エネルギー反応!ストーム1!気を付けてください!!」
「む!?」
奴は爆散する最中、俺に向かって青い球体飛ばしてきた。
「な、何だこれは!?か、体が!ぐ、ぐおおおお!?」
「ストーム1!どうした!?返事を……」
俺はそれに吸い込まれ……。
「気が付けば真っ白なこの部屋にいた。というわけだ。恐らく奴の飛ばした青い球体。あれが死因なのだろうな。流石はエイリアンの親玉だ。俺を道連れにするとは……ん?」
ふと女性を見ると、後ろを向き、口を押え肩を震わせている。
この女性……泣いてくれているのか。俺の為に。
「まぁ俺の命で地球が守れたと思えば安いものだ。……あの後、地球は平和を取り戻したのだろうか?」
俺が尋ねると女性は目元を拭いながらこちらを振り向いた。
「え、えぇ。平和になったんじゃない?多分。ププッ……」
「そうか。なら良かった」
ならば一安心だ。あとは皆が何とかしてくれるはずだ。
さて、問題は俺のこれからだが。
「所で、君は天使か?これから俺はどうすればいい?」
「はー、面白かった…え?あぁ。まだ自己紹介してなかったわね。初めまして。私は女神アクア。日本において若くして死んだ人間を導く女神よ」
何と、この女性。女神なんて大層な身分だったのか。何が面白かったのか少し気になったがまぁいい。
「本来なら天国的なところに行くか、生まれ変わるかなんだけどー。……貴方、地球を救った英雄さんなのよね?」
英雄……か。一部の者は確かに俺をそう呼んでいたが。
「英雄だなんて大それたものじゃないがな」
「またまたぁ。それで、今度は別の世界を救ってみる気はない?」
女神アクアはニヤリと笑みを浮かべ俺に問いかけてきた。
女神アクアの話によると、どうやら異世界では魔王軍とやらの侵攻により世界が危機に瀕しているらしい。
なので俺にその異世界へ行き、魔王を倒し再び世界を救ってみないかという提案だった。
俺にとってはまたとない提案だったので二つ返事で了承した。
世界を脅かすものがいるのならば見過ごすわけには行かない。
例えそれが異世界でもだ。俺はもう生前の地球のような悲惨な世界は見たくないのだ。
「よし、決まりねー。話が早くて助かるわ!それじゃあここから特典として一つ好きな物を選んでね」
しかも、1つ何でも好きな物や能力を授けて転送してくれるようだ。
女神アクアは大きなカタログを事務机の上に広げた。
カタログの中には『エクスカリバー』やら『高速移動』など様々な伝説の武器や能力の名前、絵がびっしりと描いてあった。
「本当に何でもいいのか?」
「えぇ、何でもいいわよ。何ならこのカタログ外選んでもいいし、貴方の好きな、その…ププッ。エイリアンやっつけた
光線銃でもライトセーバーでも何でも…プフッ!」
光線銃?ウイングダイバー兵装のことを言っているのだろうか?生憎、男である俺には使えない武器だ……。
ライトセーバーというのはダイナモブレードのことだろうか?
いや、それより俺は自分が使い慣れた武器の方が良い。
「ふむ……ならば、俺が持っている装備を自由に使える能力。何ていうのはどうだ?」
「装備?貴方が持っている装備って何よ?」
「まぁ、例えば、現に俺が手に持っているこのビーコンガンだな。あとは身に着けているこの装備なんかもそうだ」
と、俺は持っていた機関砲のビーコンガンと、身に着けているヘルメットや無線装置、ジャケットなどの装備を示して見せた。
女神アクアは少し見たり触ったりしてふーん、と鼻を鳴らした。
「へー、触ってみて分かったけどよくできてるわねぇ。いくらしたのよこれ……自分で作ったの?」
作った?何を言ってるんだこの女神は?
「EDFの技術力がなければこの兵装は作れないぞ。あと、本部には他にも様々な装備があってな……」
「あーはいはい、もういい分かったわ。それでいいわよ。全部自由に使えるようにしとくわ」
「本当か!?」
よし。もはや異世界での戦に心配は無くなった。
「それじゃあ、異世界に送るからじっとしててね」
女神アクアがそういうと俺の足元に魔方陣が現れた。
これで異世界に行くのか……。
「あ、そうだ。貴方の装備は念じれば好きな物出し入れできるようにしといたからね。あと向こうで試してね」
おぉ、何と便利な。今までは一旦本部へ帰らなければ3つまでしか武器は持てなかったからな。非常に助かる。
「ありがとう、女神アクア!俺は必ず異世界を魔王より救って見せる!!見ていてくれ!!」
俺は女神アクアにビシッとサムズアップを決め異世界へと旅立った。
視界から女神アクアが消える瞬間、何故か大爆笑していたのは気のせいだろうか。
アクア視点
「プッ……アハハハハハハ!!!何よあいつ!!アハハハ!!!」
私はさっきの変な男を異世界へ送った後、あまりの面白さに床を転げまわって大笑いした。
ち、地球をエイリアンから救った……もう傑作すぎるわ!
しかもあの変なコスプレしたまんまここに来たってことはその姿のまま亡くなったってことよね?
一体どんな死に方をしたのよ……あー、面白い。
それにしても、あいつの言ってた他の装備ってどんな物なのかしら?
まぁ、どうせ見た目だけごついエアガンみたいな奴でしょう。
そんな物いくらあっても無駄なのに、ププ。
はぁ、久々に笑い転げたらまた小腹がすいちゃったわ。またお菓子食べよっと