この素晴らしい世界に空爆誘導兵を!   作:ゴブトツ

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mission9 『招かれざる客』

「何々?マンティコアとグリフォン2匹の討伐……ってアホか!!」

 

カズマはそう叫ぶと、すぐさまダクネスの持ってきた張り紙を掲示板の元の場所に張りなおす。

 

 

アクアにデュラハンの呪いを解いて貰って1週間が経過した。

 

アクアが突然きつくてもいいからクエストを受けようと言い出したのだ。

 

カズマ、めぐみん、ダクネスの3人はキャベツ狩りの報酬で余裕がある為、無理してクエストを受ける必要は無いのだがアクアが泣いて頼むので仕方なく受けることになった。

 

俺達は今、良さそうなクエストが無いかとギルドの掲示板の前で張り紙を吟味している最中だ。

 

この間俺が受けようとした高難易度クエストは無くなってるな。誰かに受けられてしまったのか。

 

……俺としてはクエストよりも例のデュラハンにリベンジしに行きたいのだが、提案してもカズマはやめようと言うし、そもそも未だあの城の外壁の破壊手段が見つかっていない。

 

周囲に被害が出るかも知れないが、今度はバルガで叩き潰してみるか?それでも無理なら丘ごと削り落として……。

 

「ちょっと!これこれ!!これ見てよ!!」

 

そんなことを考えていると、アクアが興奮した様子で張り紙を持ってきた。何か良さそうなクエストがあったのだろうか。

 

それを受け取ったカズマが内容を読み始める。

 

「えーと?湖の浄化?……町の水源の1つの湖の水質が悪くなりブルータルアリゲーターが住み着き始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化が出来ればモンスターは住処を移すため討伐はしなくても良い。報酬30万エリス……ってお前湖の浄化なんてできるのか?」

 

カズマの問いに対しアクアは、水の女神なんだから当然でしょ!と胸を張って見せた。

 

カズマは疑惑の視線を向けているが、アンデッドモンスターを一瞬で消滅させたり、デュラハンの呪いを解いたりと、何だかんだ言ってアクアは優秀だ。流石は女神。

 

俺は信用できると考えている。

 

「あ、でもでも。私が浄化してる間モンスターが襲ってきたら危ないから、皆守ってね?」

 

アクアは少し心配そうに手を合わせ俺達にウインクした。

 

するとカズマが嫌そうな顔をして尋ねる。

 

「浄化って、どれくらいかかるんだよ?」

 

「えーと、半日くらい?」

 

「なげぇよ!!」

 

そこからカズマとアクアはいつものように言い争いを始める。

 

相変わらず仲がいいようで何よりだ。

 

ま、一般的なモンスターから守るのだったら大したことは無いだろう。

 

「それくらい守るのならお安い御用だ。任せてくれ」

 

俺はアクアに自分の胸をドンと叩いて見せた。

 

アクアはそれを聞くと嬉しそうにはしゃいだ。

 

「流石ストーム1ね!どこかの冒険者さんとは大違いで頼りがいがあるわー!」

 

「黙れクソ女神」

 

アクアはカズマの方を見てわざとらしく嘲笑うとカズマはすぐさま反応した。

 

 

「えぇ、本当に頼りになります。私もいざとなれば爆裂魔法で守りますよ」

 

「わ、私も、私も守るぞ!!」

 

俺に続くめぐみんとダクネスもやる気があるようで何よりだ。爆裂魔法はアクアを巻き込みそうだが。

 

「くそっ、アクアの態度は納得いかねぇが、確かにワニぐらいだったらストーム1がいれば安心か……。じゃあこれにするか。あ、一応準備はしっかりして行こうぜ」

 

渋々といった感じでカズマも了承したので早速俺達は準備をし、このクエストへ向かう事となった。

 

 

 

 

 

ストーム1一行、出発後しばらくして

 

「あの、ルナさん。掲示板にあった湖浄化のクエストの張り紙どこ行ったか知りません?」

 

受付の男が金髪ウェーブの受付、ルナに声をかけた。

 

「え?ここにあるわよ?さっきカズマさん一行がクエストを受けて出発したけど」

 

それを聞いた受付の男は顔を青くして慌て始めた。

 

「や、ヤバいです!!ついさっき、あの湖に凶悪なモンスターが移動した可能性が高いと連絡が……!!」

 

「えぇ!?」

 

ギルド受付は一時混乱状態に陥ったという。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ストーム1。本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

巨大な檻に入ったアクアが心配そうな顔で俺を見る。

 

「あぁ心配いらない。何かあればすぐ対処する」

 

そう言い、俺は少し離れた場所に要請したヘリ。エウロス・バルチャーにデコイをくっつけ、乗り込んだ。

 

 

俺達は街から少し離れた場所にある湖にやって来た。

 

依頼にあった通り、湖の水は茶色く濁り淀んでいる。

 

この水をアクアが浄化している間、俺が敵の近く上空でデコイによって注意を引きつつ護衛するというのが作戦だ。

 

そして今回はカズマの提案で最悪の事態が無いよう、念には念を入れアクアを頑丈な檻でガードし近くの岩に鎖で括り付け、水に漬ける事になっている。

 

まさに万全の体制。何も心配はいらないだろう。

 

1つ気になる事があるといえば、やけにレーダーに映る敵の数が少ない気がする。

 

湖がやたら深いのだろうか?レーダーには5体ほどしか映らない。

 

……これくらいの数だったら近づいてくるのを全て討伐するのもありかも知れないな。

 

そんな事を考えながら俺はヘリを離陸させる準備に入りながら無線装置に手をかけた。

 

「チェック、チェック。こちらストーム1!カズマ、聞こえるか?」

 

俺はカズマに予備の無線装置を渡しておいた。これで上空からも連絡ができるというわけだ。

 

『あー、あー、聞こえるぞー。大丈夫そうだ―』

 

無線からカズマの声が聞こえる。うむ。通信は問題なさそうだな。

 

「よし、これから離陸する。地上で何か異変があったらすぐ知らせてくれ」

 

『あぁ、分かった……てかストーム1本当にその風船効果あるの、って何だお前ら!?ぐわっ……』

 

『ストーム1!聞こえますかー!?めぐみんです!!』

 

『私もいるぞ!!すごいな!これで会話ができるのか!!』

 

めぐみんとダクネスのはしゃぎ声が鼓膜を突き破る勢いで突き刺さる。

 

「あー、聞こえるぞ。皆、アクアは任せたからな」

 

俺はそれだけ言うと、いよいよヘリを離陸させる。

 

「エウロス、発進する!!」

 

 

 

 

カズマ視点

 

「おおぉ!すごいです!!飛んでます!!カズマ!ストーム1はあれに乗って飛んでるんですよね!?」

 

「あー、そうだな」

 

檻に入れたアクアを水に漬け終わった後、人型の風船がくっついた武装ヘリコプターを見て大興奮のめぐみんに俺は適当に返事を返す。

 

本当、元の世界なら何の不思議もないんだけどなぁ……いや、風船くっ付いてるのは十分不思議か。

 

ストーム1曰く、あれが囮の効果を発揮してくれるというが……本当なのだろうか?

 

「アクア。どうだ?浄化は順調そうか?」

 

ダクネスが浄化をしているらしいアクアに話しかける。

 

「えぇ、順調よ!でもかなり汚れてるわねぇ……本当に半日位かかっちゃうわよこれ面倒くさいわねぇ。『ピュリフィケーション』、『ピュリフィケーション』……」

 

アクアは面倒くさそうに唸り声をあげながらスキルらしきものを使っている。

 

そもそもお前がこのクエスト持ってきたんだろうが。

 

『こちらストーム1、目標地点に到達。これより降下を開始する』

 

ストーム1から通信が入った。

 

湖を見ると、その中心付近の水面10メートル程上空にヘリが停滞していた。

 

あの風船は敵に近づかないと効果を発揮しないようなのでこれから水面ギリギリまで降下するらしい。

 

『敵は今俺の真下に1匹いるだけで後は散り散り。そっちには1匹も向かってない。アクアには安心して浄化を続けてくれと』

 

その時、突然ヘリの真下から水飛沫が上がった。

 

『何だ!?』

 

「な……」

 

俺は言葉を失った。

 

水飛沫から現れたのは全身赤茶色の皮膚で覆われた超巨大なワニだった。……恐らく全長20m近くあるだろうか?

 

恐竜とも思えるそのワニは水面から顔を出しながら口を大きく開き、ヘリに食らいつこうとしている。

 

『何だ何が……!?う、うおおぉぉぉっ!!?』

 

ストーム1はすぐさまヘリを傾ける。

 

ワニが口を閉じるとほぼ同時にヘリについていた風船が噛みつぶされるが、間一髪で回避するとヘリは素早く上昇した。

 

獲物を逃したワニはそのまま水中へと大きな波をたて戻っていった。

 

「な、なんだあいつは!?すごく強そうだ!!はぁ、はぁ……是非噛まれてみたい!!」

 

「何だよあれ……めぐみん?あれがブルータルアリゲーターか?」

 

身体をクネクネ捩じらせるダクネスを無視し、俺は震える手で湖を指さしながら隣で腰を抜かしているめぐみんに尋ねた。

 

「い、いえ。ブルータルアリゲーターはあそこまで巨大にはなりませんし、何より姿がまるで違います……」

 

じゃああいつは一体何なんだ!?あんな奴がいるなんて……。

 

「むっ、2人とも、話している場合じゃないみたいだぞ!!」

 

『聞こえるか!?カズマ、作戦は中止だ!!さっきの奴がとんでもないスピードでそっちへ向かった!!早くアクアを水から引っ張り上げろ!!』

 

ダクネスとストーム1の声で気付く。やべぇ、アクアの事をすっかり忘れてた。

 

アクアを見ると檻の隙間から手を伸ばし必死に助けを求めている。

 

「誰かー!!は、早く助けてー!!すっごく怖いんですけどー!!」

 

俺達はすぐさまアクアの檻へと向かう。

 

だが、俺達が檻へと到着するよりも早く、奴が再び姿を現した。

 

「い、いやあああぁぁぁぁ!!」

 

「うおっ!!?」

 

あまりの大きさ、恐ろしい見た目に俺達は思わず一歩後ずさりする。その赤茶色の皮膚は傷だらけでよく見れば左目もつぶれている。近くで見るととんでもない迫力だ。

 

ワニはアクアのいる浅瀬まで飛び出してくると檻を飲み込まんばかりの巨大な顎を広げ、檻を咥え込むとすぐさま水中に引きずり込もうと引っ張り始めた。

 

その見た目通り、力は相当な物のようで一瞬で繋いである鎖が限界まで引っ張られ、今にも括り付けてある岩まですっぽ抜けそうだ。

 

「マジでヤバいぞ!!皆、鎖を引っ張れ!!」

 

俺達は3人がかりで鎖を引っ張るが、全く効果を感じられない。

 

「嫌よおお!!ワニのご飯になるなんて嫌ああああぁ!!『ピュリフィケーション』ッ!」

 

命の危機を間近に感じているアクアは混乱しているのか、スキルを使いつつ鉄格子を掴みがたがたと揺らしながら死に物狂いで助けを求めている。

 

「2人とも!ちょっと鎖を抑えててくれ!!すぐに鍵を……うおっ!?」

 

俺は檻のカギを開けるために近づこうとしたが、失敗だった。来るなと言わんばかりにワニがすぐさま首を横に振りぬいた。

 

つまり、要だった岩がすっぽ抜けたのだ。同時に鎖を引いていたダクネスとめぐみんも突然引かれる力が強くなったことで一気に湖の方へと引き寄せられた。

 

「あっ……」

 

「これは、もう、駄目ですかね」

 

「皆諦めるな!踏ん張れ!!早くカズマも鎖を引くんだ!!」

 

突然真面目に戻り鎖を引いているダクネスが諦め半分な俺とめぐみんに喝を入れる。

 

しかし、3人で鎖を引いてもズルズルと湖の方へ引かれていく。

 

マジでどうしよう。

 

『アクア、待ってろ!バルチャー照射!!』

 

と、ワニ後方の上空にいるストーム1がヘリから緑色のレーザーを5発発射した。

 

肉を焦がすような音と共にレーザーは全て見事ワニの背中に命中すると、その動きが止まった。

 

「やった!!流石ストーム1……だ」

 

しかしワニは一瞬動きを止めたが、またすぐに檻を引っ張り始めた。

 

「あっ!ふんぬ……!」

 

すぐに気付いためぐみんが顔を真っ赤にして鎖を引っ張る。

 

俺とダクネスもすぐに鎖に手をかけた。

 

すでに足が水に着くところまで引っ張られている。

 

「お、おいストーム1!!全然効いてないみたいだぞ!?」

 

『何だと!?くそっ!!狙いを変える!ミサイルも喰らえ!!』

 

すると今度はレーザーと同時にミサイルを発射した。

 

ミサイルは同じくアクアから離れた胴体付近に命中し爆発するが皮膚の一部を吹き飛ばしたくらいで大したダメージにはなっていないようだ。

 

しかし、レーザーの1発がワニの右目を貫いた。

 

流石にこれは効いたようで右目からドス黒い血を噴出しながら痛がるように首を左右に振った。

 

「や、やった!これでアクアを離すぞ!!そうしたら私の番だ!!」

 

いつもの調子に戻ったダクネスが安堵したのも束の間。

 

ワニはアクアを離すどころか檻を咥えたままその場で横に回転し始めた。

 

『化け物め……!!要請兵器でなければすぐに仕留められんか!!』

 

凄まじい水飛沫が飛び散り、俺達の方にも飛んでくる。

 

「うわっ!?」

 

溜まらず鎖から手を離し思わず顔を覆う。くそっ、これがテレビとかで聞いたことがあるデスロールってやつか!?

 

ワニが後退をやめたのはいいが、回転しながら激しく暴れているせいで鎖を持っていられない。

 

「わぷっ……いやあああああぁぁ!!ま、回る!『ピュリフィケーション』!!回ってるわあああ!!っていうか、何か檻が狭くなってきてるんですけど!!これ潰れちゃいそうなんですけど!?『ピュリフィケーション』!!!」

 

それにアクアの言う通り、檻が徐々に潰れてきている。

 

流石にワニの顎の力に耐えられなくなってきたのだろう。

 

「ストーム1!このままじゃ檻が壊れちまう!!何とかしてくれー!!」

 

『下は湖、陸に降りる時間は無い……かと言ってもう少し上昇しないと要請までの時間が足りん!!カズマ、いや誰でもいい!あと少しでいいから時間を稼いでくれ!!』

 

と、ストーム1からの通信が返ってくる。

 

いや、そんなこと言われても……。

 

「仕方ありません!こうなったら爆裂魔法で吹っ飛ばします!!皆さん下がってください!!」

 

突然めぐみんが杖を取り出し構える。

 

しかしそれをすぐにダクネスが制した。

 

「待つんだめぐみん!アクアを巻き込むぞ!!」

 

「でも、これじゃあアクアが食べられちゃいます!」

 

爆裂魔法か、そうだよな。それが使える状況なら……。

 

魔法……魔法?

 

「そうだ!魔法だよ!!」

 

俺はすぐに鎖から手を離し、一歩前に出た。

 

「か、カズマ?」

 

「どうしたんだ、急に……」

 

めぐみんとダクネスが心配そうに俺を見つめる。

 

俺は呼吸を整え集中する。

 

「はぁ……『フリーズ』!!」

 

そしてありったけの魔力を込め初級の氷魔法、『フリーズ』をワニのいる方向目掛けて放った。

 

ピキピキと音を立て湖の表面が凍っていき、ワニもその凍結に飲み込まれ動きが止まった。

 

突然のことに困惑したのか、顎の力も弱まったようで檻が潰れるのも止まった。

 

「おぉ!?」

 

「何と……!!」

 

めぐみん、ダクネスが感嘆の声を上げる。

 

「ふぅ。すぐ動き出すだろうけど、これでどうだ!?ストーム1!!」

 

すぐさまストーム1に通信を入れた。ワニもバリバリと簡単に氷を割り動き始める。

 

すると、先程ヘリがいた場所の空高くから一筋の見慣れた光線がワニの背中目掛けて伸びてきているのに気付いた。

 

『グッジョブだ、カズマ!助かったぞ!!』

 

その先にはヘリを乗り捨て、落下しながら誘導装置を照射するストーム1の姿が見えた。

 

『スプライトフォール射撃モード、シュート!!』

 

そう叫ぶなりストーム1は湖に落下した。

 

同時に、天から見覚えのある極太のレーザーが1発照射されワニの身体を貫通し風穴を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーム1視点

 

 

「いやー、良くやってくれたなカズマ!俺は水中では武器が一切使えんからな……本当に助かった!」

 

湖からの帰り道の街中で俺はポンポンとカズマの肩を叩く。

 

あの怪物ワニを仕留めた俺達は湖の浄化はせずに、その存在を知らせる為にギルドへ報告しに帰る事となった。

 

それというのも……。

 

「ぴゅ、ぴゅりふぃけーしょ……ぴゅり……」

 

「アクア?大丈夫ですか?」

 

「カズマとストーム1があのワニを倒してくれたんだぞ?もう心配いらないから檻から出てこい」

 

めぐみんとダクネスに心配されているアクアは馬車の荷台に乗っている潰れかけの檻の中で寝転んだまま廃人のように何かをぶつぶつ呟いていた。

 

街の人々のただならぬ視線を感じながら俺達はギルドを目指している。

 

唯一水を浄化できるアクアがこのありさまじゃ仕方ない。まぁ、あんな目に会ったんだから当然といえば当然だが……。

 

「あー、その、すまなかったなアクア……俺がヘリ何かに乗ったばかりに……コンバットフレームの方がよかったな」

 

俺は申し訳無く思い、アクアの方を見て謝罪する。

 

「あー、こわいーわにがー。すとーむ1、まもってくれるんでしょー、たすけてー」

 

相変わらずの反応だ。……参ったな。相当心をやられてしまったみたいだ。

 

「おい、アクア。もう街なんだぞ?ぐしゃぐしゃの檻に入って滅茶苦茶に注目集めてるんだから?いい加減でてこいって」

 

「女神様!?女神様じゃないですか!?何をしているのですか!?」

 

突然カズマの言葉を遮り現れた男。彼は潰れかけている檻を、あろうことか縦にこじ開けると更に鉄格子を横に広げた。。

 

「う、嘘だろ?なんて奴だ……」

 

流石に俺も本気で驚いた。

 

あの巨大ワニでさえ簡単に噛み潰しきれなかった檻をいともたやすく捻じ曲げたのだ。男は一見年はカズマと同じくらいでかなり華奢に見えるが、その身体にどれだけの怪力を秘めているのだろう。

 

カズマとめぐみんも唖然としている中、その男は寝ころんでいるアクアの手を取ろうとする。

 

「おい馴れ馴れしく私の仲間に触るな!貴様、何者だ?」

 

すぐさまその男にダクネスが詰め寄った。

 

その姿は仲間を守るまごうことなき騎士。流石はクルセイダーだ。

 

男はダクネスを一瞥するとやれやれと首を振りため息をつく。

 

するとカズマが檻の入口からアクアに耳打ちしているのが少し聞こえた。

 

「おい、アクア。あれ知り合いなんだろ?女神とか言ってるし、何とかしろよ」

 

それを聞いたアクアは一瞬フリーズした後、突然息を吹き返したように飛び起きた。

 

「そう、そうよ!私は女神よ!!この女神に何か用があるのね!?言ってみなさい!!」

 

いつもの調子に戻ったアクアは檻から出てきた。が、その男の顔を見るなり首を傾げた。

 

「あんた誰?」

 

「僕ですよ、御剣響夜です!!貴方に魔剣グラムを頂いた……」

 

魔剣?もしや、こいつも俺やカズマと同じくここに送られてきた奴なのか?

 

ミツルギ少年の後ろには戦士風の少女と、盗賊風の少女が付いて来ていた。

 

彼のパーティメンバーだろうか?

 

「あぁ!いたわね、そんな人も!!ごめんなさいね!何せ結構な数の人を送ったから、覚えてなくっても仕方ないわよね!!」

 

それにしては俺の事はしっかりと覚えてなかったか?

 

疑問に思ったがあえて黙っておくことにした。

 

ミツルギは一瞬顔をひきつらせたが、すぐに笑顔に切り替えた。

 

「あ、あはは……。お久しぶりです、アクア様。貴方に選ばれた勇者として日々頑張ってますよ!職業はソードマスター、レベルは37まで上がりました!……ところで、アクア様はなぜここに?何故こんな潰れかけの牢屋に閉じ込められていたのですか?」

 

閉じ込めていたわけではないんだがな。

 

ミツルギの問いにカズマがこれまでの経緯などを始めた。

 

 

 

「はぁ!?女神さまをこの世界に引きずり込んで、挙句の果てに檻に閉じ込めて湖に漬けた!?しかも馬小屋に寝泊まりさせているなんて、君達は頭がおかしいのか!?男として恥ずかしくないのか!?」

 

話を聞き、激昂したミツルギ少年は俺とカズマの胸ぐらを思い切り掴み上げた。

 

「お、落ち着け、ミツルギ君。アクアも見た感じこの世界では楽しくやってるようだし……」

 

「そ、そうよ!ストーム1の言う通り、何だかんだ毎日楽しくやってるし、危なくなっても皆が守ってくれるし、カズマにここへ連れてこられた事ももう気にしてないから!」

 

アクアの言葉も空しく、ミツルギは手を離そうとしない。

 

カズマも痛そうなのでそろそろ離してほしいところだが……。

 

すると、その手を横からダクネスがつかんだ。

 

「おい、いい加減2人から手を離せ。礼儀知らずにもほどがあるだろう!」

 

珍しくダクネスが怒っている。

 

めぐみんは何故か爆裂魔法を詠唱しようとしている。おいおい、ここで撃ったら自分も巻き込まれるだろうに……。

 

ミツルギはようやく手を離すと興味深そうにめぐみんとダクネスを見つめた。

 

「へぇ、クルセイダーにアークウィザード……それに随分綺麗な人達だ。女神様までいて、君達はパーティメンバーには恵まれているんだね。それだというのに、恥ずかしくないのかい?ヘルメットの君は聞いたこともないようなボマーとかいう良く分からない上級職みたいだし、もう一人のパッとしない君は最弱職の冒険者らしいじゃないか」

 

えっ、ボマーってそんなに知名度の低い職業だったのか?受付にお勧めされたから選んだのに……。

 

俺は少しショックを受ける。

 

隣のカズマを見ると、ミツルギの話を聞いてかなり腹が立っているように見える。

 

喧嘩になってはいけない、と俺はすぐにカズマをなだめる。

 

「お、落ち着けカズマ。何も気にすることは無いぞ。お前はお前だ。俺達はお前の良さを良く知っているからな?」

 

「あぁ……分かってるけどさ」

 

俺の言葉を聞いても表情はぴくついたままだ。どうやら怒りは収まらないようだ。

 

俺が必死になだめていると、ミツルギはアクアやめぐみん、ダクネスに笑いかける。

 

「君達、今まで苦労したろう?これからは僕のパーティに来るといい。好きな装備を買いそろえるし、馬小屋なんかでは寝泊まりさせないよ。そうだ!これからこの近くの湖に危険なワニ型モンスターの討伐に行くんだ。そこで僕の力を見せてあげるよ!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

パーティ全員の声が重なる。

 

危険な、ワニ型モンスター?

 

その言葉に俺達パーティ全員は思い当たるフシがあった。

 

「もしかしてそのワニ型モンスターって、とんでもなく大きくて赤茶色で傷だらけの奴ですか?」

 

めぐみんが尋ねるとミツルギは得意げに答える。

 

「お、君も聞いたことがあるんだね?そう、あの殺し屋グスタフと名高い伝説級の巨大ワニだよ!!あいつがこの近くの湖に住処を移したっていう情報がさっき入ったらしくって」

 

「それならもう俺とストーム1が倒したぞ?ほら」

 

「え?」

 

カズマがポツリと呟きカードに映る巨大ワニの討伐情報を見せると、ミツルギは硬直した。

 

「ま、まさか、君達が女神さまを漬けた湖って……」

 

その姿を見て、アクア達が噴き出す。

 

「プークスクス!もう倒されてるモンスターとも知らずに、僕の力を見せてあげるよ、だって!!アハハハ!!!」

 

「く……くくく、やめて下さいアクア。お腹が痛いです……」

 

「はははは!はぁ、これは流石に傑作だな」

 

「お、おい皆、笑ってやるな。ミツルギ君が可哀想だろうに」

 

俺はすぐ3人に笑うのをやめるように言うが、止めるのが遅かったらしく、ミツルギは下を向きプルプルと肩を震わせている。

 

「ま、そういう事で。ウチのパーティは満場一致でダサい奴のとこには行きたいないみたいだから。それじゃ。さ、皆行こうぜ」

 

追い打ちをかけるようにカズマがそう言い捨てると、ミツルギを残して先へ行こうとする。

 

俺達もそれに続く。

 

まぁしかし、一応謝っておいた方が良いか。ちょっと可哀想だしな。

 

「あー、ミツルギ君?何かすまんな」

 

「待て!」

 

話し掛けたのがいけなかったか。ミツルギは去り際の俺の肩を掴み止めた。

 

「やはり、君達のような男のパーティに女神さまを置いておくわけには行かない!僕と勝負しろ!!」

 

「え?」

 

 

 

 

 

そのまま断ることができず……何故か俺はミツルギと決闘をすることになってしまった。

 

「ミツルギ君、もう一度ルールを確認するぞ?」

 

ここは街中だ、機関砲や銃を使うと街に迷惑がかかる恐れがあるので簡単に決闘が出来るルールを設けることにした。

 

「俺は君に一切攻撃しない。君は3分間その魔剣で俺に攻撃していい。ここは街中だからな、君の魔法や飛び道具は一切禁止だ。魔剣も迷惑の掛からない範囲で頼む。1発でも俺に攻撃を与えられたら君の勝ち。もし攻撃を与えられなかったら、俺の勝ち。もしも降参したくなったら剣を投げるなり地面に捨てるなり手放してくれ。良いかな?」

 

「あぁ。良いよ。その代わり、負けても後で絶対に文句は言わないでくれよ?」

 

あぁ、いいとも。

 

俺は頷き、ミツルギを俺が指定した建物の壁際まで移動させる。

 

脇ではカズマ達が心配そうに見守っている。

 

俺はグッと親指を立てて見せた。

 

まぁ、受けた以上。皆の為にも絶対に負けるわけには行かないからな。

 

全力で行かせてもらおう。

 

ミツルギから少し距離を置いた後、俺は開始の合図を告げる。

 

「よし、準備はいいか?行くぞ?よーい、スタートだ!!」

 

同時に俺は準備していたデコイランチャーからデコイ弾をミツルギの背後の建物の屋根付近に発射し、起動させる。

 

「な!?攻撃しないと言っていただろう!?」

 

ミツルギは俺が銃を発射してきたのを見て驚いたようだ。

 

「君には攻撃していないぞ。それにもう武器は使わない。約束しよう」

 

それを聞いたミツルギは頭に来たのか。俺を睨みつけると魔剣を構え、俺に向かって真っすぐ駆け出した。

 

「卑怯者め、覚悟し……ろ!?」

 

かと思えば、グルンと体を180°回転させ、スタート地点の建物の方を向いた。

 

「な……体が勝手に!?って何だあの風船は!?」

 

ミツルギが向いている建物の屋根では先程俺が撃ったデコイ弾が膨らみ、可愛らしい金髪ツインテールの女の子の風船が踊っていた。

 

「さぁ1分経つぞ。あと2分だ」

 

俺が告げると、ミツルギは絶対に届かないデコイに向かってピョンピョンと飛び跳ねながら闇雲に剣を振り始めた。

 

傍から見ればとても惨めな姿だが、今は決闘の最中だ。

 

気にしないことにした。

 

「くそっ……届かない!!あれが壊せれば!!仕方ない、剣を投げて……」

 

と、剣を投げようとした時ミツルギは、ハッと何かに気付いた。

 

「どうした?降参しないのか?」

 

あらかじめルールで飛び道具や剣を投げることを禁止しておいてよかった。

 

デコイを破壊される恐れのある行為さえ禁止しておけば絶対負けることは無いからな。

 

「ひ……卑怯者おぉぉぉぉぉ!!」

 

そのまま3分はあっという間に経過した。

 

 

……その後、納得がいかないミツルギは続けてカズマに勝負を挑むや否や即、魔剣を奪われ気絶させられてしまった。

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