この素晴らしい世界に空爆誘導兵を!   作:ゴブトツ

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mission10 『再来』

「お待たせしました。殺し屋グスタフの素材買取と討伐の報酬金合わせまして、200万エリスになります!この度手違いがありましたこと、改めて心よりお詫び申し上げます」

 

翌日の朝、ギルドの受付が深く頭を下げ、金貨がたんまり入った袋を2つ報酬として持ってきた。それを見たアクアは喜びの悲鳴を上げ報酬に飛びついた。

 

「ひゃあああー!!こ、これが全部私の物……!?」

 

 

 

昨日のミツルギとの一件の後、俺達がギルドに着くなり受付が大勢で俺達の元へ飛んできて巨大ワニについての説明をした。

 

どうやら元は近くの山の方に生息していたモンスターだったようで、水の流れに誘われてか湖まで下りてきて身を潜めていたらしい。

 

受付に連絡が入ったのは俺達が出発してしばらくだったのでそのままクエストを受注させてしまったという事のようだ。

 

それをまさか倒して帰ってくるとは思っていなかったのだろう。カードの討伐記録を見せると受付は皆、目を丸くして驚いていた。

 

 

 

 

そして皆と話し合った結果、今回は一番頑張ってくれたアクアに報酬を全て譲ろうという事になった。はっきり言って今の所、俺達は金には困ってないしな。

 

「壊れた檻の代金もギルドが持ってくれると言うし減額無しだ!良かったな、アクア」

 

ダクネスが喜ぶアクアの姿を見て、うんうんと頷いた。

 

……それでも命を賭けた報酬が200万と考えると、かなり安く見えるが本人が喜んでいるので良しとするか。

 

「じゃ、じゃあ早速!!ちょっと遊びに行ってくるわー!!」

 

アクアはかなり重いであろう報酬の袋2つを難なく持ち上げた。

 

「使いすぎるんじゃないぞー!」

 

カズマの忠告に耳を貸さず、アクアはギルドの出入口向かって走り出す。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

心配そうな目でアクアを見ているめぐみん。

 

「うーむ、まぁ大丈夫だろ」

 

豪遊すると言っても1日で200万使い果たすなんて流石にないだろ。そう考え俺は言った。

 

すると……。

 

「ここにいたのか!探したぞ、佐藤和真!ストーム1!!」

 

ギルドの出入口から昨日ぶりのミツルギ少年が取り巻きの少女2人を連れて現れた。

 

「邪魔!!」

 

「ぎゃあっ!?」

 

しかし外に出て豪遊する事しか頭にないアクアの進路を遮ったことによりミツルギは派手に跳ね飛ばされた。

 

「きゃああっ!キョウヤ!?」

 

「大丈夫?しっかりして!!」

 

取り巻きの少女2人が倒れこむミツルギを心配するが、アクアは気にも留めずギルドの外へと出て行った。

 

ミツルギは少女達の手を借りながら立ち上がると、よろよろとおぼつかない足取りのままこちらへ向かってくる。

 

おいおい、大丈夫なのか?

 

「ぐっ……君達の事はある盗賊の少女に教えてもらったよ!妙な武器を使って少女を脅し、粘液まみれにしたりパンツを脱がせたりする……変態ストーム1と鬼畜カズマの2人組だってね!!色々な人に噂されてるそうじゃないか!!」

 

「ちょっと待て!!誰がそれ広めたのか詳しく!!」

 

そういうカズマはともかくだが……。

 

おいおい、俺までそんな噂されてるのか?

 

あらぬ誤解に大きくショックを受ける。

 

すると、ダクネスが俺達の前に一歩出てミツルギを睨みつける。

 

「あぁその通りだ。それで?用件はそれだけか?」

 

いや、勝手に肯定しないでくれ。

 

ミツルギは平然と言うダクネスに一瞬戸惑った後、悔しそうに下を向いた。

 

「くっ……昨日の勝負。卑怯な手を使われたとはいえ、2回のチャンスで勝てなかった。負けは負けだ。何でも言うことを聞くといった手前、こんなことを頼むのは虫が良すぎる話なのは理解している。だが頼む!魔剣を返してくれ!!僕にはあの魔剣が必要なんだ!!あの剣は僕が使わないと意味がないし……ん?」

 

必死に頭を下げるミツルギの袖をめぐみんが引っ張り、カズマと俺を指さした。

 

「既にこの2人が魔剣を持ってない件について」

 

そう言われ気付いたミツルギは額に汗を浮かべ声を震わせた。

 

「き、君達……僕の、僕の魔剣をどこに……?」

 

俺は首をかしげる。

 

剣を奪ったのはカズマであって、俺はあの剣が今どこにあるのかを知らない。

 

カズマはどこにやったのだろう?

 

「売った」

 

「ちくしょおおおおおおおお!!!」

 

それを聞くとミツルギは取り巻きの少女と共に猛スピードでギルドを去っていった。

 

 

「なぁカズマ。もしかして昨夜、俺達に祝杯と言って奢ってくれた肉料理やら飲み物の金って……」

 

俺はカズマに尋ねる。

 

「あぁ、そうだ。まだあるけどな」

 

……ミツルギ少年に何か悪いことをしてしまったな。

 

知ってたら止めたんだがな。

 

「まだお金あるんですか。じゃあ朝ごはん奢ってください。お腹すきました」

 

「流石カズマだ!今日も鬼畜精神全開のようだな!!ストーム1も負けじと頑張ってくれ!!」

 

腹をさするめぐみんに続き、いつも通りに戻ったダクネスが身体をよじらせる。

 

だから何で俺を含めるんだ……。

 

その時だった。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!!』

 

突然、大声でアナウンスが響き渡った。

 

「最近多いな。今度は何だって言うんだ?」

 

俺はやれやれと肩を回す。

 

『……特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は直ちにお願いします!!』

 

……何?

 

俺は少し嫌な予感がした。

 

 

 

 

 

 

「さて……もうすぐだな」

 

俺は武装装甲車両グレイブを要請しダクネスを乗せ正門に向け走らせていた。

 

道にある噴水や樽何かは邪魔だがグレイブは悪路でも通れるので問題ない。

 

こうしているというのも、ダクネスが重装備で到着が遅れそうらしいのでビークルを呼ぶがてら皆には先に行ってもらい一緒に向かうことにしたのだ。

 

「ストーム1の魔道具は本当に凄いな!これがあれば馬車何ていらないじゃないか!!」

 

……そうだなと言いたいところだが、ビークルは基本的に運転手含めて4人までしか乗れない。つまり俺達パーティでは一人溢れるのだ。

 

これも後で説明しておくか。

 

「お、見えてきたぞ」

 

正門に集まる冒険者達が見えた。

 

冒険者達もこちらに気付くとぎょっと目を見開いてすぐさま道を開けた。

 

「やはりあいつか……」

 

冒険者達の前には予想通り例のデュラハンの姿が見えた。

 

「元騎士の俺から言わせれば、仲間を庇って呪いを受けた勇敢なあの男を見捨てるなど……うおおっ!?」

 

何やら喋っていたらしいデュラハンはグレイブに驚いたのか、抱えていた自らの頭を落としそうになっている。

 

俺は正門の少し前にグレイブを停車させ降りた。

 

「よしダクネス。到着だ」

 

「うむ、ありがとう。助かったぞ」

 

搭乗席のドアを開けてやり、ダクネスも降ろす。

 

デュラハンの方を見ると、俺はばっちりと視線が合った。

 

俺はビシッとデュラハンに向け人差し指を突き出した。

 

「来たかデュラハン!今度は容赦せんぞ!!」

 

「あ、あれぇーーーーーーー!?」

 

デュラハンは素っ頓狂な声を上げた。

 

何を驚いている……あれ、もしかして俺。呪いで死んだと思われてたのか?

 

すると、後ろにいたカズマが俺の肩を叩いてきた。

 

「なぁ、ストーム1。さっきあいつが相変わらず爆撃とか炎とかが飛んでくるって言ってたんだが、お前。あの後もめぐみんと一緒に城に攻撃してたろ」

 

「……あぁ」

 

「なんでだよ!もう手を出すなって言っただろ!?」

 

カズマは俺の肩を掴みグラグラ揺らす。そういわれてもなぁ。

 

どうしても城の耐久度が気になった俺は、どうしてもあの小城に爆裂魔法が撃ちたいと言うめぐみんと共に、1週間毎日爆撃や砲撃を行っていた。

 

多数の空爆やビークル、タイタンのレクイエム砲の甲斐あってか、城を2回り程小さくさせるまでに至った。今日こそバルガを使おうと思っていたのだが……。

 

「し、しかしだなカズマ。こうして、再び俺の戦い易い平原に奴をおびき出すことに成功したのだ。なぁめぐみん?」

 

めぐみんの方を見ると、ハッと気付き激しく頷いた。

 

「そうです、そうなんですカズマ!これも私とストーム1によって綿密に組まれた作戦なのです……ひたたた!ごめんなさい、もうほっぺ引っ張らないでください!!」

 

カズマはめぐみんの頬を引っ張っている。

 

「そうか、なるほどな。貴様は上級冒険者だったな。どこか別の場所で呪いを解いてきたというわけか……!」

 

何かを納得したデュラハンは悔しそうな声を上げた。いや、上級でも何でもないんだが。

 

「別の場所というより、ここにいるアクアが……」

 

あれ?アクアがいない?

 

周囲を見渡してもアクアの姿がない。

 

「カズマ。アクアはどうした?」

 

「え?お前たちと一緒だと思ったんだけど」

 

カズマもめぐみんも知らないようだ。

 

……まさかとは思うが。

 

レーダーを起動して確認してみると、この正門の後ろ。

 

街中の離れた場所に1つ、ポツンとパーティメンバーの反応があった。

 

間違いない。アクアはアナウンスを無視して遊んでいる!

 

何て奴だ……。

 

カズマにもそれを伝えると、声にこそ出さなかったが怒りのあまりか彼は手をぶるぶると震わせていた。

 

俺達が呆れているとデュラハンが叫んだ。

 

「何をこそこそ話している!コケにするのもいい加減にしろ!俺がその気になれば、この街の者を皆殺しにするのだってわけないのだぞ!?疲れを知らぬこの不死の身体、ヒヨッ子冒険者では傷一つ」

 

「グレイブ榴弾砲、ファイア!」

 

「ぬわあああああ!?」

 

俺は素早くグレイブに乗り込み、榴弾砲をお見舞いした。榴弾はデュラハンに直撃し、爆発した。

 

それを見た周囲の冒険者の誰かが流石だ、と声を上げる。だが。

 

「話は最後まで聞かんか!卑怯者があああ!!」

 

デュラハンは相当強固なようでその身体から煙を上げながらもピンピンしていた。

 

おいおい……巨大なエイリアンの装甲ですら2、3発で破壊する威力だぞ?

 

「俺は魔王軍幹部のベルディア!魔王様から授かった特別な加護を受けたこの鎧と俺の力により、並大抵の冒険者の攻撃や魔法ではかすり傷もつかん!!……のだが、お前は一体レベルいくつだ!?そして何なのだその鉄の荷馬車は!?」

 

デュラハン改めベルディアは必死にグレイブを指さしている。

 

「答える必要は無いな」

 

説明しても分かってもらえないだろう。敢えて答えないことにした。

 

そんな俺に対し、デュラハンは続けた。

 

「ふん……まぁ良い、貴様、ストーム1と言ったか?その強さに免じてお前はこの俺が直々に相手をしてやろう!!だがこの街の奴らは俺が相手をするまでもない!!」

 

するとデュラハンは右手を振るう。

 

同時に地面に黒い魔方陣のような物が浮かび上がり、そこから大量のアンデッドモンスター達が出現した。

 

 

 

 

 

カズマ視点

 

「アンデッドナイト!!街の連中を皆殺しにしろ!!」

 

ベルディアの命令と同時にアンデッドナイト達が一斉にこちらを向かってくる。

 

「く、来るぞ!!」

 

「誰か、教会に行って聖水ありったけ貰って来てー!!」

 

冒険者たちも一斉に身構える。

 

「皆、下がるんだ!!」

 

ダクネスが剣を構え、前に出た。

 

「めぐみん、爆裂魔法であいつら何とかならないのか!?」

 

俺はめぐみんに確認するが、めぐみんはフルフルと首を横に振った。

 

「む、無理です。あぁも纏まりが無いと……」

 

なんてこった。やるしかないのか。

 

「おい、カズマ」

 

と、装甲車から降りたストーム1がこちらに何かを投げてきた。

 

それは巨大ワニ討伐の時も使った無線機だった。

 

「通信は任せたぞ」

 

そう言うと、ストーム1は再び装甲車に乗り込んだ。

 

『うおおおぉぉぉ!!!』

 

雄叫びを上げ、榴弾を撃ちまくり、アンデッドナイト達の前を横切るように進んでいく。

 

何体かが爆風で吹き飛ぶが、残りはかなり多い。

 

「や、やばいぞ……」

 

ベルディアに関してはストーム1が相手しくれるから何とかなるかもしれないが、あの数のアンデッドナイトに突っ込んでこられたら俺達で太刀打ちできるだろうか。

 

ベルディアは剣で爆風を振り払い笑い声をあげた。

 

「クハハハ!その程度の攻撃で守り切れると思うな……ん?」

 

「あれ……?あ」

 

その時異常に気付いた。

 

アンデッドナイトが皆、ストーム1の装甲車を追っている。

 

「お、おい!お前ら!命令が聞こえんのか!?そいつは強いから俺が相手をする!!他の奴らをやれ!!」

 

ベルディアが焦ったような声で命令するが、全く聞く様子は無い。

 

それもそのはずだろう。

 

いつの間にかストーム1の装甲車の上には例の風船。デコイがくっついていた。

 

ストーム1はアンデッドナイト達を引き連れたまま、ベルディアの方へ方向転換した。

 

『カズマ、俺はこのまま奴に突っ込む!めぐみんに奴目掛けて爆裂魔法を使わせろ!』

 

突然ストーム1からとんでもない通信が入った。

 

「何言ってんだ!お前も巻き込まれるぞ!?」

 

『心配するな!ビークルは破壊されたとしても搭乗者は確実に守るように設計されている!構わずやれ!!』

 

なんだそりゃ……本当かよ?

 

だが確かに今はあいつらをまとめて倒すチャンスだ。ここはストーム1を信じよう。

 

俺はすぐにめぐみんに指示を出した。

 

「めぐみん!爆裂魔法の準備だ!!ストーム1は心配いらないから準備できたらあいつ目掛けてすぐに撃て!!」

 

「えぇ!?……ほ、本当に大丈夫なんですね?分かりました」

 

めぐみんはすぐさま詠唱を始めた。

 

ストーム1はというと、ベルディアに向かって前進しながら榴弾を撃ちまくっている。

 

「ちぃっ!この程度……防げないとでも思ったか!!」

 

流石魔王軍幹部というべきか。ベルディアは持っている大剣できっちり榴弾と爆風を防いでいる。

 

『なら、これはどうだ!!』

 

ストーム1はそのまま装甲車で体当たりを仕掛けた。

 

「ぬぅ!?」

 

装甲車は結構な大きさだ。そのまま轢けるのではないかとも思ったが……。

 

「ククク……。悪くはないが、不死者の力を甘く見すぎたな!!」

 

何とベルディアは剣を地面に突き刺し、装甲車の前進を抑え込み踏みとどまっていた。

 

アンデッドナイト達も装甲車に追いつき、その周囲を囲み始める。

 

「このままアンデッドナイト達と共に鉄の外面を引きはがし、貴様を引き摺り出してくれる!」

 

『それはどうかな?』

 

「何!?」

 

『カズマ、めぐみん。そろそろ行けるか?』

 

めぐみんの方を見るともう準備は万端のようだった。

 

「あぁ、いけるみたいだ!」

 

「感謝します、ストーム1!無事だって信じてますからね!!」

 

めぐみんは瞳を赤く輝かせ杖を高々と掲げた。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!魔王軍幹部、ベルディアよ!我が力見るがいい!!『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

めぐみんの爆裂魔法がストーム1の乗る装甲車とベルディアを中心に炸裂し、周囲のアンデッドナイトも巻き込み大爆発を引き起こす。

 

「ギャアアアアアアア!?」

 

ベルディアの悲鳴が爆発音とともに響き渡った。

 

 

「はぁ……気持ちよかったです」

 

めぐみんがパタリとその場に倒れ、誰もがその威力にシンと静まり返る。

 

「ど、どうなったんだ?ストーム1!?大丈夫か!?」

 

爆発地点から黒煙が上がる中、俺はすぐに通信を入れる。

 

見た所、アンデッドナイトは全滅したみたいだけど……。

 

 

 

 

『こちらストーム1!何とか無事だ!!』

 

良かった。

 

少し遅れて通信が入った。見ると、黒煙の中からローリングをしながらストーム1がこちらに向かってきている。

 

それを見て、冒険者達から歓声が沸き上がった。

 

「うおおお!あいつ無事だぞ!!」

 

「あの頭のおかしい小娘もやるじゃねぇか!!

 

「見事な連携だったわー!!」

 

そんな声を聞きながら、俺はめぐみんをおぶりストーム1と合流した。

 

確かにストーム1の身体には傷一つない。

 

「本当に無事だな……」

 

「だから言ったろう?心配いらないと。……正直言うと爆発する直前、少しだけ身の危険を感じたがな」

 

そう言いストーム1は苦笑する。

 

「無事でよかったですストーム1……ぐぅ」

 

めぐみんはそう言うと眠ってしまったようだ。子供か、こいつは。

 

「見事だったぞストーム1!あぁ、羨ましい!!」

 

ダクネスも合流した。いつも通りのドMモードだが。

 

やれやれ、これで一件落着か……。

 

 

「ク……クハハハハハ!!面白い、面白いぞ!!」

 

爆発地点から笑い声がした。

 

「何!?」

 

その声にストーム1が素早く反応した。

 

「ストーム1とやらが囮になったとはいえ、まさかこの街の冒険者の魔法で部下が全滅させられ……俺もダメージを負うことになるとは。見くびっていたようだ」

 

おいおいおい、嘘だろ?爆裂魔法の直撃を食らったんだぞ!?

 

「良いだろう!貴様らも、この俺が相手をしてやる!!」

 

身体から煙を上げながらもベルディアが剣を構え、こちらに向かってきた。

 

「くそっなんて奴だ!スプライトフォール、スタンバ……」

 

「うおおおおおお!!」

 

ストーム1が誘導装置を取り出すと同時に、後ろにいる1人の冒険者の掛け声と共に数人の冒険者が一斉にベルディアの方へと駆けて行った。

 

「な、何だ!?」

 

「むっ!?」

 

ストーム1はすぐさま誘導装置をしまう。

 

ストーム1の爆撃は味方が前方にいるときは使えないからな……。

 

「馬鹿!下がれ!!相手は榴弾砲と爆裂魔法の直撃を耐え、衛星兵器を剣で受け止める奴だぞ!?通常の武器で勝てるわけがない!!」

 

ストーム1の最もな意見を無視して駆けて行った冒険者達はベルディアを取り囲む。

 

「へへっ、いくら魔王軍幹部と言えどこの数で一斉にかかりゃどうってこたぁねぇだろ!!」

 

「あいつらばっかに良い恰好させてたまるかよ!!」

 

「後ろにゃあ目はねぇ!容赦なくやらせてもらうぜ!!」

 

とてつもなくフラグに聞こえるセリフを吐きつつ、それぞれが武器を構えじりじりと距離を詰めていく。

 

ベルディアはそれを見て鼻で笑った。

 

「奴は攻めてこないのか……ふっ。あの男と連携ならまだしも、貴様ら雑魚だけではいくら束になって掛かって来ても相手にならん!」

 

「へっ、時間稼ぎができりゃあ十分さ!緊急放送を聞いて、すぐさまこの街の切り札がやってくるからな!!全員かかれー!!」

 

切り札?……そもそもストーム1より強い奴がこの街にいるのか?

 

そんな疑問が浮かんだが、冒険者達は一斉にベルディア向けて襲い掛かる。

 

するとベルディアは抱えていた自らの首を空高くに放り投げた。

 

「む、何だ!?」

 

ストーム1も驚いているようだ。

 

その首が地上を見下ろすのを見た時、俺は何かヤバいと感じ取った。

 

「や、やめろ!!行くな!!」

 

名も知らない冒険者達に声をかけた時にはもう遅かった。

 

四方から迫る攻撃をベルディアはあっさり躱し、両手で握りなおした大剣の一振りで周囲の冒険者全員を切り伏せた。

 

男たちは全員音を立てその場に崩れ落ちた。

 

ベルディアは血を払うように剣を一振りすると、落下してきた自らの頭を片手で受け止めた。

 

「次は誰だ?」

 

その言葉に、居合わせた冒険者が皆怯んだが、1人の女の子が叫ぶ。

 

「あ、あんたなんかストーム1さんがすぐにやっつけてくれるわ!それに、きっともうすぐミツルギさんも来てくれるんだから!!」

 

ストーム1は分かるけど、ミツルギ!?もしかして街の切り札ってあいつか!?

 

「あぁ!あの魔剣使いの兄ちゃんも来れば絶対勝てる!!それまであの兜の兄ちゃんを援護するぞ!!」

 

「ベルディアとか言ったな!もう1人いるんだぜ!!この街の切り札って呼ばれる凄い奴がよ!!」

 

あれ……俺もしかして結構まずいことした?

 

「ほぅ?ではその切り札が来るまで、楽しませてもらうとしよう。いくぞ!ストーム1!!」

 

ベルディアが剣を片手で振り上げながらこちらに向かって走り出す。

 

あぁ、ミツルギは絶対に来ない。そして今、アンデッドだけには強い駄女神もいない。こうなったら、もうストーム1に何とかしてもらうしかない。

 

「ストーム1、頼む!何とかしてくれー!!」

 

俺はめぐみんを安全な場所において来ようと1歩下がる。

 

「任せろ!次はこいつで……」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ストーム1が何か装備を取り出した時、ダクネスがベルディアに向かっていった。

 

「な……」

 

ストーム1は驚きで固まった。

 

ダクネスとベルディアの剣がぶつかる。

 

「何だ貴様、邪魔をするな!!」

 

「よくも……よくも皆を!!」

 

ベルディアに対しダクネスは倒れている冒険者達を見て叫んだ。

 

恐らく知り合いだったのだろう。それを思うと悔しくなる気持ちもわかるけど……。

 

「ダクネス!お前の剣じゃ無理だ!!ここはストーム1に……」

 

「いや、あの決意に満ちた表情……何か策があるのだろう。もしかしたらダクネスならやってくれるかも知れん。少し任せてみよう」

 

突然ストーム1がそんなことを言い出した。

 

え?何言ってんだストーム1?

 

……あぁ、そうか。ストーム1はまだあいつがまともに戦ってるところを見たことないから妙に期待しちゃってるんだな。

 

ヤバくなったら何か策があるみたいだし、任せてみるか。

 

俺はとりあえずこの隙にめぐみんを後ろの安全な場所に寝かせることにした。

 

「貴様、聖騎士か……是非も無し。だがな!!」

 

ベルディアは素早い剣さばきでダクネスの剣を弾き、がら空きになったダクネスの身体に強烈な一太刀を浴びせた。

 

「ダクネス!!」

 

俺は思わず声を上げる。

 

ベルディアは不満足そうにため息をつく。

 

「所詮は駆け出し冒険者だな!力の差は歴然!!邪魔者は消えた。ストーム1!勝負……は?」

 

ベルディアは完全に討ち取ったと思ったのだろうが、その攻撃はダクネスの鎧を少し傷つけただけでダクネスは未だ立っていた。

 

「くっ、切り損ねたか!?このっ、このっ!!」

 

ベルディアは続けて2撃、3撃とダクネスを斬りつけていく。

 

が、先程と同じように鎧を少しずつ傷つけていくだけだ。

 

流石はセントリーガンをシャワー感覚で浴びるだけのことはある。

 

「いいぞ、ダクネス!奴との力量は互角だ!!」

 

ストーム1は善戦してると勘違いしてるみたいだが、あれでは徐々に体力を削られているだけだ。

 

「はぁ、はぁ……くそっ!!何だお前は!?どんだけ防御力あるんだ!?さっきの爆裂魔法の小娘と言い、この街は本当に駆け出しが集まる街なのか!?」

 

いくら斬りつけても沈まないダクネスに対しベルディアの方が疲れ始めているようにも見えた。

 

しかし、流石にダクネスも限界が来たのか。地に膝をつき息を切らしている。

 

「ダクネス!もう良い!あとはストーム1に任せろ!」

 

「あぁ、お前のおかげで大分敵は消耗した!後は俺が……」

 

「カズマ、ストーム1……」

 

俺とストーム1の方を見たダクネスは声を震わせた。

 

「こいつ私をこのまま公衆の面前でゆっくり痛めつけてから気絶させ、拠点に連れ去り、辱めを受けさせるつもりだぞ!!どうしよう!?」

 

どうしよう、じゃねぇよ!!全然平気なのかよ!!状況を考えろ!!

 

「んなことするか!?誤解されるからやめろ!!もう良い、茶番は終わりだ!!」

 

ベルディアはそう言うと再び抱えていた自らの頭を空中に放り投げ、両手で大剣を持った。

 

ついに全力で斬りに来たか。

 

ダクネスなら耐えられるような気がしないでもないが……。

 

「む、流石にこれは援護させてもらうぞ!!」

 

それを見たストーム1はそう言うと、すぐさま持っていた缶のような物を地面に放り投げた。

 

缶がボフンと白い煙を上げたかと思えば突然、3~4メートル程の蜘蛛型のロボットが姿を現した。

 

もうあまり驚きはしないが、本当に彼の装備はどういう仕組みなのだろうか。

 

「え、ちょ、貴様!?どっからそれだした!?そもそも何だそれは!?」

 

空中に放られているベルディアの頭が驚きで慌てふためいている。

 

「アクアには禁止されていたが……丁度アクアもいない。使わせてもらおう!」

 

ストーム1はロボットに何やら装置を取り付けると素早く乗り込み、ロボットを起動させた。

 

『システム正常。デプスクロウラー、発進する!!』

 

ストーム1の声とともにロボットはピョンと前方へ飛び跳ね、ダクネスの傍に降り立った。

 

『ダクネス、こいつの傍にいればすぐ元気になる!もう大丈夫だ!!連携して奴を倒すぞ!!』

 

ダクネスは膝をつきながら目を丸くしている。

 

「あ、あぁ……。分かった!」

 

ダクネスはゆっくり立ち上がった。

 

しかし連携も何も、ダクネスは攻撃が当たらないから連携のしようがないと思うが……。

 

2人の前にいるベルディアは一瞬怯んだようだが落下してきた頭を抱えると、すぐに態勢を整えた。

 

「ク、ククク……面白い。面白いぞ!ストーム1!!良いだろう、存分にかかってこい……痛て」

 

痛て?

 

何だ?痛てって。

 

「な、何だ?痛て!痛て!!痛てててて!?か、体が焼けるように痛い!?己、何をしたストーム1!!」

 

「え?いや、俺は何もしてないが……」

 

突然ベルディアが地面を転がり痛がり始めた。急にどうしたんだ?

 

ストーム1も理解してないようだし……。

 

あれ、今気づいたがストーム1がロボットに乗っけていた装置から緑色の線みたいなのが出ている。

 

線はダクネスとベルディアにくっついているが、あれは……。

 

その時、俺は前にストーム1から話してもらった装備について思い出した。

 

「ストーム1!回復だ!!そいつの弱点は回復だ!!」

 

俺はすぐに通信を入れる。

 

『何!?という事は、奴はライフベンダーでダメージを受けているというのか!?』

 

「そうだ!!その装備は確か一定範囲内の奴を回復させるんだよな!?奴に近づいてそのままダメージを与えてくれ!!」

 

『え、あぁ。了解した!!』

 

ストーム1はベルディアに接近していく。

 

「こ、これは回復か!この緑の光だな!?ぐ……その鉄の塊から出ているのか!ならばそいつを破壊してくれる!!」

 

ベルディアは苦しみながらも剣を持ち立ち上がるとロボット上部の装置を破壊しようと駆けた。

 

「させるか!!」

 

しかし、ダクネスがすぐさま前に出てベルディアの接近を許さない。

 

「邪魔だああ、どけええぇ!!痛たたたたたた!??」

 

ダメージを受けているせいか、ベルディアはダクネスを跳ね除けられずにいる。

 

良い感じだ、このままいけば……!

 

 

「あれぇー?カズマさーん?皆で何してんのー?」

 

突然後ろから肩を掴まれ、ものすごいムカつく口調で話しかけられた。

 

振り返れば酒瓶片手に顔を真っ赤にしているアクアがいた。

 

……落ち着け、俺。今は怒りを抑えろ。

 

「もしもし?聞いてますかー?やけに騒がしいから来てみたんだけど?」

 

「クソ女神。今はお前に構ってる暇はないんだよ。失せろ」

 

俺は最大限に心を落ち着かせアクアに言った。

 

アクアはそれを聞くと顔をしかめた。

 

「何ー?その態度は?私は女神よ?女神に対して……」

 

言い掛けたアクアは前方で戦うストーム1とダクネス、そしてベルディアの姿を捉えた。

 

「あー!!こないだのデュラハン!!また性懲りもなく来たのね!?いいわよ!私に任せなさい!!」

 

こいつはアンデッドを見ると浄化したくなる病気なのだろうか?

 

そう言うとアクアは俺が止める間もなく千鳥足のままストーム1達の方へ向かっていった。

 

「待たせたわね!さぁ、覚悟はいい!?」

 

『ようやくか!遅いぞ!!』

 

「アクア、来てくれたのか!」

 

アクアの登場に気付いたストーム1とダクネスは声を明るくさせた。

 

「ふっふっふ、主役は遅れてくるものだから……って、ストーム1!その回復装備は使わないって約束だったでしょ!?」

 

『状況が状況だったから仕方ないだろう!いや、それよりも早くこいつをやっつけてくれ!』

 

全くぶれないアクアにストーム1は焦りながら言った。

 

ベルディアはダクネスと距離を置きアクアを見ると表情を曇らせた。

 

「ちっ……アークプリーストか。駆け出しとはいえ、状況が最悪だ!痛っ!ここは……」

 

ベルディアは素早く方向転換し、逃げようとしている。

 

ここで逃がすわけには行かない。

 

「させるか!『クリエイトウォーター』!!」

 

俺はすぐにベルディアの逃げる先に水を降らせる。

 

当然ベルディアには当たらない。

 

「ふん!狙いが甘かったな!!一時撤退させてもらう!!」

 

「いや狙い通りさ!『フリーズ』!」

 

ベルディアの足が濡れた地面に着いた時、俺は地面ごと足を凍結させた。

 

「し、しまった!?」

 

『ナイスだ、カズマ!逃がしはしないぞ!喰らえ!!』

 

ストーム1はロボットから降りると、銃を構えベルディアに向かって弾を数発発射した。

 

弾はベルディアの剣や鎧にピタリとくっ着く。あれはリムペットガンというやつか?

 

「ちぃ、何だこれは……って痛あああああああ!?」

 

いや、違う。更にベルディアが苦しみだした。

 

見ればくっ着いた弾からも装置と同じように緑の線が出ている。

 

あれも回復なのか。

 

ストーム1はアクアの方を向き合図する。

 

「よし、後は頼むぞアクア!!」

 

「ヒック……任されたわ!!」

 

そして身動きが取れず、今までのダメージにより相当弱体化しているであろうベルディアに向けてアクアの右手が向けられた。

 

「ちょ、ま、待て……!」

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!!』

 

「ギィアアアアアアアア!?」

 

酔っぱらいながら撃った魔法にも関わらず効果はあったようで、ベルディアは悲鳴を上げながら白い光に包まれ消えていった。

 

こうして、ベルディアとの長い闘いは終わりを告げた。

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