「どうしたカズマ?何かあるのか?」
ベルディア討伐の翌日、俺とカズマはギルドへと向かっていた。
ギルドが魔王軍幹部討伐の祝いとして宴会を開いてくれているらしいのだが……。
俺はカズマが何やら浮かない顔をしているので尋ねてみた。
結局、ベルディア討伐は死者0人というこれ以上無い戦果で幕を閉じた。
というのも、斬られた冒険者達をアクアが魔法であっさり蘇生させたからだ。
性格は難ありだが本当にアクアは優秀だなと改めて感じた。
特に思い悩むようなこともないと思うが、どうしたのだろうか?
「え、いや。ちょっとこれからの事を考えてただけだ」
カズマは少し笑みを作り、何でもないと俺に手を振った。
これからの事、か。
魔王軍幹部を討伐したのだ。当初の目的であった功績も間違いなく上昇した。
これからは本格的に魔王軍討伐に向け動くことになるはずだし、カズマもそれについて考えているのだろう。
俺も討伐作戦を考えていかなければならないな。
「確かに、これからは色々大変になるだろうしな。……おっと」
俺達の脇を大きな建材などを抱えた男達が通り過ぎていく。
昨日の午後辺りから大規模な改修工事をやっているようで、今日もこの石畳の街道を中心に土木作業員が多く見られる。
「昨日からやってるけど、この街道どうしたんだ?石畳が割れたりしてるな」
「老朽化が進んで危険だから作り直すんだろう。……む、カズマ。言ってる間に着いたぞ」
俺達はギルドの前に着き、入口の扉に手をかけた。
「おぉ、大盛況だな」
ギルド内はすでに多くの冒険者で賑わい、酒や料理が振舞われている。
「あぁー!ちょっと2人とも、遅いじゃないのよ!!もう皆出来上がってるわよ!!」
ギルド内に足を踏み入れた俺達に気付いたアクアが上機嫌で近付いてきた。
「ほらほら、これ見てよ!あのデュラハン討伐の報奨金だってー!早く貰ってきなさいよ!!もうギルド内の冒険者は皆貰ってるわよ?」
でも私はもう結構飲んで使っちゃったんだけどね!とアクアは報奨金の入った袋を自慢げに俺達の前に見せ、楽しそうに笑う。
「ふーん、そうなのか……ってお前酒臭いな!やめろ、近づくな駄女神!!」
カズマがくっついてくるアクアを引きはがす。
かなり酔っぱらっているな。昨日もそうだったが、よくそんなに酒が飲めるものだ。
見れば他の冒険者達もフラフラしている者がほとんどだ。
俺達はそんな酔っぱらいを尻目に受付へと向かった。
受付には既にダクネスとめぐみんの姿があり、すぐに俺達に気付いた。
「来たか。2人も早く報酬を受け取るといい」
ダクネスとめぐみんはすでに報奨金を受け取ったようでアクアの持っていたのと同じ袋を俺達に見せた。
「待ってましたよ。カズマ、ストーム1。聞いてください!ダクネスが私にはお酒はまだ早いと……」
「いや、ダクネスが正しいだろ」
カズマがそう言うとめぐみんがカズマに引っ付きいつものようにワイワイと仲良さそうに喧嘩を始めたので、俺はその間に受付に話しかけた。
「すまない、報奨金が貰えると聞いたのだが」
すると俺の顔を見たいつもの金髪ウェーブの受付が微妙な表情を浮かべた。
「あっ、えっと。ストーム1さんと……そちらがサトウカズマさんですよね?」
「そうだが……何だ?」
俺が尋ねると受付は何か言い辛そうに間をあけた後、口を開いた。
「あの、今回サトウカズマさんのパーティには特別報酬が出ています……ストーム1さんとカズマさんの報酬もそちらと合わせた物という事で……」
何?特別報酬?
その言葉にカズマが驚く。
「え、何で俺達だけが!?」
その言葉に、周囲の冒険者達が答える。
「おいおい、お前達が居なけりゃデュラハンなんか倒せるわけないだろ?」
「あんな奴が攻めてきたらこの街なんて一瞬で壊滅だったよ!!」
「お前達は命の恩人だ!」
次々にそうだそうだと騒ぎだす冒険者達。
ふむ。俺達は最前線で戦っていたし、連携し止めを刺したのも俺達だ。当然と言えば当然か。
「じゃあカズマ。リーダーとして金を受け取ってくれ」
俺はカズマに代表として金を受け取ってもらうことにした。
カズマは少し戸惑いながらも受付の前に出た。
「コホン、えー、サトウカズマさんのパーティには魔王軍幹部ベルディアを討ち取った功績を称えて、ここに金3億エリスを与えます」
その言葉に俺達は思わず言葉を失った。
騒がしかった周囲の冒険者もシンと静まり返る。
「おいおいおい、3億だと!?何だよそりゃ!?」
「カズマ様ー!奢ってー!!」
冒険者達全員の奢れコールが始まった。
ふむ、3億か……それだけあれば簡単な基地を作ることもできるだろう。
俺はダクネス、めぐみんと何かを話しているカズマの方を向いた。
「カズマ。これからは情報も貰えるだろうし、魔王軍討伐に向け本格的に動いていこう。まずは簡単な軍事拠点を作るぞ!」
「へ?」
俺の言葉にカズマはポカンと口を開けている。詳細については後で説明してやるか。
「流石ストーム1!私の見込んだ通りの男だ!!」
「軍事拠点……何だかカッコいい響きですね」
ダクネスとめぐみんはかなり乗り気なようだ。
「今までは魔王軍が好き放題やっていたかも知れんが、これからは俺達の番だ!魔王軍に俺達の力を思い知らせるぞ!!EDFッ!EDFッ!!」
俺は右手を天に突き上げ、叫ぶ。
「「い、いーでぃーえふ!いーでぃーえふ!!」」
俺の雄叫びにダクネス、めぐみんが続いてくれる。
それにつられてか。他の冒険者達も続き、ギルド内にEDFコールの大合唱が響き渡った。
あぁ、懐かしい。元の世界にいた頃を思い出す。
あの時もこうして良く士気を高め合ったものだ……。
その時、俺の肩を誰かが軽く叩いた。
振り返ると先程の受付が申し訳なさそうな顔をしながら何やら小さな紙のような物を2枚差し出してきた。
それに気付いたカズマ、ダクネス、めぐみんと合流したアクアも俺の持つ紙を覗き込む。
「申し訳ないのですが、ストーム1さんが呼び出した鉄の荷車が街を走ったせいで街道や噴水などが多々破壊されておりまして。全額とは言いませんが、その修理工事の一部を払って頂きたいと……あ、もう1枚はアクアさんが酔っぱらって壊したという貴重な壺やお酒の弁償額です……」
それを聞くや否や、めぐみんがササっと何処かへ逃げた。
冒険者達も何かを察したようで一斉に黙り込んだ。
そういえば、グレイブで走行している時気にはしていなかったが、邪魔な障害物を壊して進んだ気もする……。
もしや……街道の土木工事というのは俺のせいか?
「おい、ストーム1。お前も逃げるなよ?」
そういうカズマを見ると、ジタバタと暴れるアクアの襟首を掴んでいる。
「街道の修理が2億8千万……壺や酒の弁償が7千万……、合計3億5千万か。やれやれ、魔王軍との戦いはもう少し先になりそうだな」
ダクネスがそんなことを言いながら少し残念そうに俺の肩をポンと叩く。
俺は深くため息をつき、肩を落とした。