「いたぞ……総員、戦闘態勢!慎重に行動しろ!」
俺は3人に注意する。
カズマ、アクア、めぐみんと共に平原へとやって来た俺は討伐目標の巨大ガエル、ジャイアントトードを1匹発見した。
距離は10数メートル離れており、幸いなことに向こうはまだこちらに気付いていない。先制攻撃が可能だ。
このジャイアントトード、俺はクエストをこなす上で何回か倒してはいる。
しかしその姿、人や家畜を丸呑みにする生態などが忌々しいエイリアン共の幼体である有翼型エイリアンに酷似している為、俺は他のモンスターよりも一層注意して倒すようにしていた。
突然翼が生えて飛ぶのではないか?緑色の火炎を吐いてくるのではないか?と警戒しているが今の所それらしい兆候は見せてこない。
ここへ来る前にもカズマ、アクア、めぐみんに確認してみたのだが3人とも
「そんな強いモンスターがいたら誰も勝てないでしょ」
と、半分笑い、呆れながら口を揃えて言った。
……EDFはその大群と幾度となく戦ってきたから言っているんだがなぁ。
まぁ警戒するに越したことはない。
俺は足を止め、装備をリムペットスナイプガンへ変更し狙いをつける。
「よし、ここから狙撃する。皆は周囲を警戒」
「おっ?それが他の装備?ふーん、やっぱり出来はかなりの物ねぇ」
と、俺の言葉と射線を遮り目の前に出てきた女神アクアがスナイプガンをペタペタと触ってきた。
「ほら、カズマ見てよ。よくできてるでしょ?」
「おぉ……マジだな。てか本物じゃないのかこれ?」
アクアに続き、カズマもスナイプガンに興味を示したようで射線を完全に塞がれてしまった。
……これでは撃てないじゃないか。
仕方ない、と俺はため息をつき傍にいためぐみんに呼びかける。
「めぐみん、奴に攻撃できるか?出来そうならやってくれ」
「ふっ、お任せを」
めぐみんはマントをバサッと翻し杖を片手に腕をクロスさせポーズを決める。
「爆裂魔法は最強魔法。山をも崩し、岩をも砕く!あの程度のモンスターなら一撃です」
そう言うとめぐみんは目を閉じ、呪文のようなものを唱え始めた。
「おぉ、何かそれっぽいな」
「どうやら彼女は本物みたいねー」
めぐみんの姿を見てカズマとアクアは興味がそちらに移ったようでようやくスナイプガンから手を離した。
やれやれ、ようやくか。
俺も構えを解きめぐみんを見る。
詠唱が進むとめぐみんの周囲の空気がピリピリと震え始め、詠唱の声も大きくなりだした。
聞いた所どうやらめぐみんは爆裂魔法という、とにかく凄い最強の魔法を使うらしい。
どのように凄いのかは分からないが、この長い詠唱を見るに相当強力な魔法なのだろう。
「見ていてください、これこそが究極の攻撃魔法です!!」
めぐみんは杖の先端に光が灯ると同時に閉じていた目をカッと開き赤い瞳を輝かせた。
「『エクスプロージョン』ッ!!」
瞬間、一筋の閃光が杖より平原へと放たれる。
カエルがその声に気付きこちらを向いた時、既に閃光はカエルへと突き刺さっていた。
その直後、強烈な光と轟音を伴いカエルは爆散した。
「おぉっ……!!」
凄まじい爆風を受けながらも俺は無意識に感嘆の声を上げていた。
そして爆煙が晴れた後には20メートル以上のクレーターが見える。
この威力、恐らくテンペストミサイルに匹敵するのではないだろうか?
他の魔法がどういうものかは知らないが、流石最強の攻撃魔法というだけの事はある。それほどの迫力だった。
何よりもそれを扱えるめぐみん。彼女も相当な魔術師なのだ。人は見かけによらないというが、まさにその通りだと痛感した。
「すっげー、これが魔法か……」
「うひょー!木っ端微塵じゃない!!」
カズマとアクアも感動している。まぁ無理もない。
その時だった。
「む!敵の反応!!全員注意しろ!!」
俺のヘルメットに映るレーダーが前方に敵を感知した。
見ればカエルが一匹、クレーターの出来た地面から這い出てきているではないか。
「これは、まずいな……皆、一旦距離を」
「あららー、さっきの衝撃で起きちゃったのかしらね?まぁ1匹ならどうってことないでしょ!私に任せなさい!!」
と、アクアは俺の話も聞かずに腕を振り回しながら単身突撃していった。
「な!?無茶だ!!戻ってくるんだ!!」
俺が制止するも遅すぎた。
アクアが突っ込んで行ったその先、更にカエルが地面から顔を覗かせていたからだ。
そう、俺のレーダーに映ったのは1体ではなく複数。約15体の敵反応があった。
アクアの後ろにも、その横にも。次々とカエルが地面から姿を現してきており、彼女は完全に囲まれ孤立していた。
「え?」
アクアは一瞬フリーズした後すぐさまその内の1匹に捕食されてしまった。
「まずい!カズマ、彼女は射撃武器か何かは持ってないのか!?」
巨大生物に捕食された際は2通りの対処法がある。
1つが自爆する恐れのない武器を使い自力で脱出する事。もう1つが助けを祈る事だ。後者は助かる確率が極めて低いため、出来るなら前者の方法が望ましいのだが……。
「あいつがそんな物持ってるわけないだろ。魔法だってまともなのを使え無いし、ありゃもう駄目かな」
カズマは遠い目をしながら諦めの言葉を口にする。
おいおい、それでも仲間か……。
「仕方ない!!」
俺はこちらに向かってきているカエル達へスナイプガンを構える。
幸いアクアが捕食されたのは一番俺達に近い手前のカエルだ。しっかりと狙いを定めれば……。
「そこだ!!」
俺はカエルの前足の付け根に狙いを定め2発、弾を発射した。
狙い通りの場所に吸着したのを確認し俺は起爆スイッチを押す。
同時に炸裂音と共にカエルの肉が吹き飛んだ。カエルは溜まらず口を大きく開き捕食中のアクアをこちらへ吐き出し、地面に倒れこんだ。
吐き出されたアクアは人形のようにクルクルと回転しながら俺の足元の地面へ、ベチャッと音を立て落ちてきた。
「無事か?」
見た感じ、粘液まみれではあるが目立った外傷は無いようだ。
「うぅ、気持ち悪い。何で私ばかりこんな目に会うの……あれっ?私助かったの?」
アクアはへたり込みキョロキョロ辺りを見回している。まぁこの調子なら大丈夫だろう。
とりあえず、アクアを軽く慰めながら立ち上がらせる。
「え、えっと?ストーム1。今一体何が起こったんだ?カエルが突然……」
カズマが何故か目を点にして尋ねてくる。
ん?何を言ってるんだ?
「何が起こったって、君達はさっきこの武器をじっくりと……」
そう思ったとき、俺のレーダーには更に新たな敵の反応があった。
「はっ!?真下からも反応だ!!全員下がれ!!」
「うおっ!?」
「ひゃあっ!?」
俺は咄嗟に傍にいたカズマとアクアを後ろへやり、自身もローリングして下がる。
ほぼ同時に俺達の居た場所の下から土を掻き上げカエルが姿を現した。
「大丈夫か?」
「あ、あぶねー。ありがとう」
「何なのよ一体……」
尻もちを付きながら礼を言うカズマとアクアに手を貸し助け起こす。
「礼は後だ。さて」
アクアは助けた。後は簡単な話だ。
このカエル共はそれほど機敏ではない。大群には距離があり、近場にいるのは1匹だけ。こいつは俺が処理して大群はめぐみんに先程の魔法でまとめて吹き飛ばしてもらうとしよう。
俺は武器を構え、めぐみんに話しかける。
「めぐみん、後は頼める……か?」
ふと構えを解き、辺りを見回すがめぐみんがいない。
そう言えば、先程から全く姿を見てないような気がする。
どこだ?どこへ行った?
「おい!何やってるんだめぐみん!?」
カズマがめぐみんを見つけたようだ。俺もカズマの向いている方を向く。
そこは先程俺達がいた場所、カエルの目の前にうつ伏せで倒れているめぐみんの姿があった。
本当に何をしているんだあの子は。
「ふっ……気付かなかったのですか?先程からずっとこの状態ですよ。我が爆裂魔法は威力も絶大ですが消費魔力もまた絶大。魔力の限界を超えたので身動き一つとれなくなったというわけです。すぐ傍にカエルが出てきたんでしたよね?お願いします、誰か助けてください。あっ」
当然の如く、めぐみんは捕食された。
はっ、いかんいかん。何を言っていたのかよく意味が分からなかったが助けなければ。
「やれやれ」
俺は再びスナイプガンを構えなおし、先程と同様のやり方でめぐみんを吐き出させた。
「ぐふっ……」
こちらも外傷はないようだ。しかし本当に身動き一つとれないようだな。
「さて」
後はあのカエルどもの始末だ。一旦逃げるのも手だが、この数を放置すれば他所に被害が出るかも知れない。
自分で蒔いた種は自分で処理せなばな。
俺はすぐに装備を切り替え手に取ったマップが映る装置と通信機器を操作し始めた。
カズマ視点
「ま、まただ。アクア!お前も見たろ今の!?やっぱり本物だぞあれ!!」
一体どういうことなんだ。
何とアクアとめぐみんを助けようとした、ストーム1のコスプレ武器から、赤く点滅する弾丸の様なものが発射され爆発したのだ。
さっき見せてもらってコスプレにしちゃ出来すぎてると思ったが、やはり彼が持っているのは本物の銃だ。
それも俺の見たことがないような近未来の物だ。
当のストーム1は何やら機械の様なものを操作し始めているが……。
俺に問われたアクアはというと少し小刻みに震えながら顔を青くしている。
「いや、いやいやいや!本物のわけないじゃない!?あれよ、そう!エアガン!魔改造エアガンよ!!」
「どんな魔改造したら弾が爆発するんだよ!お前間違えて強い特典つけたんじゃないのか!?」
「私を疑うわけ!?私は女神アクアよ!そんなミスするわけないじゃない!!」
アクアは顔を真っ赤にしながらそう言うが正直信用ならない。
すぐに本人に確認を……。
「よし、2人とも。ここを離れるぞ!」
ストーム1は操作していた機械の様なものをどこかにしまいこみ、倒れているめぐみんを抱き上げると後方へ走り出した。
そうだ、今俺達の前方からはカエルの大群が迫ってきているのだった。
「お、おう」
「え、ちょっと!待ちなさいよ!!」
俺とアクアもそれを聞いてすぐに後を追う。
一応カードを確認してみるが、やはりストーム1が攻撃したカエルは倒せていなかったようでクエストクリアになっていない。
一時撤退するという意味なのだろうか。確かに、この状況ではそれが最善だ。現状カエル達とまともにやり合えるのは恐らくストーム1だけだ。しかし荷物が2人もいて数も圧倒的不利のこの状況では勝ち目がないだろう。少々くやしいが仕方がないな。
と思ったのも束の間。20メートル程走ったところでストーム1は立ち止まりカエルの方を向いた。
「え?どうしたんだ?」
逃げるのなら早く逃げようと言おうとした時。
『こちらフォボス、攻撃目標を確認!これより空爆する!!』
ストーム1の無線機器の様なものから知らない人の声が聞こえた。
「え、え?今の声何よ?その機械よね?そ、それもよく出来た玩具なのよね?」
アクアは意地でも彼の装備が本物だと認めたくないようだ。
いや、まぁそれはいいとして。え?今なんて言った?
「来たか」
ストーム1が空を見上げた。
俺もそれにつられて首を上げる。
その視線の先、この世界の空にはあまりにも似つかわしくない物があった。
「飛行……機……?」
黒く、平たいマンタのような形状の飛行機がカエル達を横切るような進路で向かってきていた。
あぁいうのステルス戦闘機って言うんじゃあ……。
そもそもどこから飛んできたんだ!?
と、飛行機がカエルの真上を通過しようという時。白く光る何かを投下し始めた。
カエル達の真上を一直線に横切る飛行機から次々と投下されていく光は放物線を描きながら地上目掛けて落下していく。
……マジで嫌な予感がする。
その予感通り、光が地面にぶつかったと思った直後、再び凄まじい炸裂音と共に大爆発が起こった。
地震かと錯覚するほどの衝撃、踏ん張らなければ吹き飛ばされかねない暴風のような爆風、火山の噴火のような爆炎を巻き上げた爆発の範囲、威力は先程のめぐみんの魔法を遥かに上回っていた。この威力、もはやカエル達の跡形すらも残っていないだろう。
「す、すごい……」
ストーム1に抱き上げられているめぐみんが未だに晴れない爆煙を見ながら思わず声を漏らす。
確かにこれは凄いとしか言いようがない。
というより、もう訳が分からない。
『こちらフォボス、攻撃を完了した!一時作戦エリアより離脱する!』
ストーム1の装置から再び声が聞こえる。
「よし、レーダーに敵影無し。もう大丈夫だな」
問題のストーム1はそう言うと俺の方を向き力強く頷いた。
俺は軽く相槌を打って、すぐに元凶であろうアクアを問いただすことにした。
「おい、駄女神。やっぱりお前のミス……」
アクアは立ったまま魂が抜けたように気絶していた。