「お願いします……捨てないでください!」
「カズマ様ぁ、ストーム1様ぁ……」
ギルドへの帰り道、カエルの粘液に塗れたまま、めぐみんとアクアは街中にも関わらず目に涙を浮かべながら俺とカズマの足元に縋りついてくる。
周囲から、主に女性からの突き刺さるような視線が痛い。
ぐ……何なんだこれは。
事の発端は俺の装備について詳しく話した事から始まった。
当然といえば当然だが、流石に3人ともリムペットガンや空爆には驚いたようだ。
明らかに世界観が違うからな。めぐみんに至ってはフォボス……さっき要請した爆撃機を召喚獣だとか何とか言って騒いでいた。
この世界で初めて空爆を使った時は俺も驚いたものだ。まさか本物を要請できるとは思わなかった。
爆撃機やガンシップ、潜水母艦が普段どこにいるのか、どこから来てどこへ行くのか全くの謎だがこれも女神の力という奴なのだろう。気にしないことにした。
他にも色々と要請兵器は試したが今の所全て要請出来ている。攻撃班からの通信などもそのままだ。
まぁ通信に関しては向こうから一方的に喋るだけで会話をしてくれないのだが……。
話を戻して、俺が装備について話す中、カズマが他にどんな装備があるのかと聞いてきた。
そこで俺は所持している様々な装備を紹介した。
どうやらそれがまずかったようだ。
ライフベンダーやパワーポストなどのサポート装備を一通り紹介し終えたところで、カズマは急に俺の手を取り、これからよろしく!と力強く握手してきた。
そして突然アクアとめぐみんに他のパーティで頑張って、と事実上のクビを言い渡したのだ。
そして今に至るというわけである。
カズマ曰くアクアは戦闘面において完全に役に立たずでサポートを少しできる程度。なので俺のサポート装備があれば用無しということのようだ。めぐみんはさっき直接聞いたのだが爆裂魔法以外一切の魔法を使えないらしい。そして爆裂魔法は1回撃つと動けなくなってしまう。つまり彼女は完全な撃ち切り型のテンペストミサイルというわけだ……。
ま、まぁ確かに俺がこのパーティにいてしまうと活躍は難しくなるかも知れないが、そんなわざわざクビにしなくてもいいと思うのだが。
「何?あの子達泣いてるわよ?可哀想」
「見て、体中ヌルヌルじゃない。あの男達がやったの?それで捨てるだなんてサイテーね!」
「あの兜みたいなの被った男。見た目も明らかに変態だわ。一体何をしたのよ、クズ共!」
徐々に周囲のヒソヒソ声が大きくなっている。
可哀想というのには同意するが変態呼ばわりとは……。ぬぅ。
「カズマ、流石に2人が可哀想だ。別にこのままでも良いんじゃないか?」
俺はカズマに提案する。気のせいか足元に縋りつく2人の口角が上がったような気がした。
「ぐ……いや、でもなぁ」
カズマはかなり迷っているようだ。
「どんなプレイでも耐えて見せますから!お願いします!!」
「カズマ様!何でもします!!どうかご慈悲を!」
「よし!分かった!!2人とも、改めてよろしくな!!」
ここぞとばかりのタイミングで畳みかけてきた2人にカズマは素早く反応しクビは無くなった。
何だかんだで皆仲が良いようで俺は安心した。
「はい!ジャイアントトード18匹の買取とクエスト報酬合わせまして19万エリスになります!!ご確認くださいね!」
空爆で粉々になったと思ったがちぎれた足でも残っていたのだろうか?きっちり倒した数分の買取金額が貰えることになったようだ。
その金額が予想以上だったのだろう。カズマとアクアは受付で報酬を受け取り狂喜乱舞している。
俺はめぐみんと共に空いているテーブルに腰を掛けサラダを食べつつその様子を眺めている。
微笑ましい光景だ。見ていて心がほっこりする。だがなぁ……。
これからどうしたものか。
このパーティでは危険すぎるため、考えていた高難易度クエストに行くのは不可能になった。
魔王討伐に近づくため、他の方法を考えていかなければならないのだが……。
「どうしたんですか、ストーム1?具合悪いんですか?」
めぐみんが俺の奢りで頼んだハンバーグをフォークに突き刺しながら尋ねてきた。
「いや、何か良さそうなクエストは出ていないかと考えていただけだ」
「そうですか、なら良かったです」
俺がそういうとめぐみんはハンバーグを美味しそうに食べ始めた。あまり心配はかけないようにしないとな。
うむ、今一番手っ取り早いのがもう一人ぐらい、頼りになる仲間が加わってくれれば高難易度クエストも可能性は見えるんだが……。
ふと再びカズマ達の方へ眼をやるとカズマが見覚えのない金髪の騎士風の装備をした女性と話をしている。
まさか……な。
まぁそんな都合の良いことは起こらないだろう。その内何か良い案が浮かぶのを待つとしよう。
俺は残っていたサラダを片付けようとフォークをとった。
「ん?サラダがない……」
元あった場所にサラダがない。そう思ったとき、すでにめぐみんが俺のサラダを勝手に食べていることに気が付いた。
俺とばっちり目が合っためぐみんはあっ、と小さく呟き皿を俺の前に差し出してきた。
「ご、ごめんなさい。もう食べないのかと思ったので。ちょっと食べちゃいましたけど、返します」
皿にはちぎれたレタスの葉が一枚張り付いていた。俺は大丈夫だと皿をめぐみんの方へと寄せた。
めぐみんは一礼するとそのレタスの葉もしっかりと食べた。
「ごちそうさまです。……そうだストーム1。さっきストーム1のいた場所の話少し聞かせてもらいましたけど、そこにはあの召喚獣みたいなのがたくさんいるんですか?」
俺は自分が他の世界からやってきたとは言わないように決めていた。
ちょっと前にカズマから言われたのだが、あまり周囲に他の世界の人間だの、女神アクアなどと言っても信じてもらえないどころか危ない人間扱いされるからやめてほしいとの事だ。
それもそうだと俺は了承し、内容はそのままに、ただこの世界の遠い地方からやって来たことにしていた。
めぐみんにもさっき少しだけ話をしてやったのだが……。
で、えっと?何?召喚獣?……あぁ、フォボスの事か。
「あぁ、爆撃機なら他にもあるぞ。カムイだったり、ウェスタ、KM6……」
「そうですか、じゃあふぉぼすを呼んでください」
……ん?
「えっと?何を言ってるんだめぐみん」
「ふぉぼすをここに呼んでください。直々に契約して力を貰います」
契約って……この世界では召喚獣とやらと契約すると力が貰えるのか?
それにしたって無茶なことを言う娘っ子だ。
フォボスじゃなくとも万が一、爆撃機のどれか1つを間違えてここに要請したら町が無くなりかねない。
しかし説明しても無駄な気がしたので俺は適当に嘘をついてごまかすことにした。
「あー、残念だがそれはできない。今はその、呼び出すだけの力が足りていないんだ」
「嘘ですね、分かりますよ。ならば力づくで!」
ガタッと席を立ちあがっためぐみんは俺の背負っている通信装置や無線装置を勝手にいじり始めた。
エアレイダーにとって通信の設定は生命線ともいえる。これが狂えば目標の位置情報もレーダーも何もかもが狂ってしまうからだ。
「何をするんだ!やめろ!!」
「さっき呼び出す時チラッと機械をいじってるのが見えましたよ。一体どれでしょう……」
俺も立ち上がりめぐみんを引きはがそうとするがガッシリと装備を掴まれ中々はがれない。
「私の魔法にはあの力が必要なんです!ストーム1は地元に行ってまた契約すればいいじゃないですか!!さぁ、召喚獣ふぉぼす!我と契約を!!」
「や、やめろー!設定が……通信設定が狂う!!」
その後、しばらくして何処かへ出かけていたカズマとアクアが帰って来て何とかめぐみんを落ち着かせてもらった。
しかし滅茶苦茶になった通信設定を直すのに半日近くかかった。
ダクネス視点
「あの男……またやっている!今度はどんなプレイを……はぁはぁ」
カズマという男にパーティ加入を断られてしまった後、私は彼の仲間と思しき兜で顔を隠した男をギルド内にて発見した。
男は自身に抱き着いている魔法使いの少女を必死に引きはがそうとしている。少女は先程ヌルヌルになっていた少女だ。
恐らく、またひどい仕打ちをした後に捨てようとして少女が必死に捨てないでと懇願しているのだろう。
この冒険者が多く集まるギルド内でも平気であのようなプレイができるとは……。
くっ、あのカズマという男に負けず劣らず鬼畜な男だ!!
これは絶対に諦められないな!!
私は何としてでも、このパーティには加えてもらおうと決心した。
アクア視点
「いやー!やっぱお金があるっていいわー!!」
私は受け取った報酬の一部をもって町の外へ遊びに出ていた。
やっぱり異世界に来ちゃった以上は楽しまなきゃ損よね!
……それにしても、まさかあのストーム1。まさか本当の兵士だったなんて。
でも地球がエイリアンに襲われてるなんて話聞いたこともないし、一体どうなってるのよ。
……ま、いっか!おかげで報酬もいっぱいもらえてるし!!
ちょっと強い特典与えちゃったのは私のミスだけど、そもそもあいつを私の所に送ってきたのは誰かのミス!全部悪いのはそいつなんだから!!
さ、今度は何を買おうかしら!!
私はルンルン気分で鼻歌交じりに歩き出した。