無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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※この小説は<Infinite Dendrogram>の二次創作小説です。
※この小説は<Infinite Dendrogram>の二次創作小説です。

小説の執筆、投稿は初めてです。
それでも精一杯自分のやりたい様に書いて行きたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。


序章 Infinite Dendrogramの始まり
第一話 はじまり・はじまり


□204■年■月■■日 某県某市、第6生体工学研究所

 

 

――■■■、■■■、■■■、■■■

 

 

 兄弟達の声が聞こえる。

 度重なる研究の最中、既に自我は希薄となり、生命の灯すら消えかけている筈の兄弟達(失敗作)の慟哭、いや

 

 

――■■■、■■■、■■■、■■■

 

――この苦しみ、苦痛を、無為にしないでくれ

 

――私達の末路を、犠牲を、遺志を、忘れないで

 

――どうか、君は、君だけでも……

 

 

 そう、故に

 

――もっと、もっと、もっと、もっと

――強く、高く、賢く、早く――至って(完成して)くれ――――!

 

 

 それは激励。実験動物(モルモット)としてこの暗く、恐ろしく、残酷な研究所で一生を終える同胞達のせめてもの祈り。

 自分達の命を無駄にしないでと、これ以上犠牲者を増やさないでくれと、せめて生き残ったお前だけは、と……今を生きる活力を自分に――僕に与えてくれた。

 

 勿論だとも。今だって忘れていない。兄弟達(みんな)がいなければ僕は間違いなく今ここに生きていない。

 

 皆が残してくれた足跡(研究資料)、皆が残してくれた(実験結果)、皆が残してくれた奇跡(■■■■)

 

 そして、皆が稼いでくれた時間。

 

 それがあったから、僕は――――

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

2043年3月5日(木)

 

 ようやく生活が落ち着いてきた為、今日から日々の生活の記録をこの日記に書き綴って行こうと思う。

 僕の名前は試験体■■■……と、言う名はあの日、研究所が壊滅した日(・・・・・・・・・)に研究データと共に焼失した。

 なので、僕の新しい名前は天野(あまの)(おさむ)という名前になった。名付けてくれたのは僕を“保護”してくれたとある組織のお偉いさんらしい。

 

 ……そう、僕は解放されたんだ。あの非人道的且つ、非社会的な研究を繰り返していた研究所から。

 

 その日、何があったかは僕も詳しくは知らない。ただ、正義の味方を擁する組織が、とある悪の研究所を壊滅させた、なんていうフィクション(空想)じみた現実だけだ。

 僕が蓄えてきた(インストールされた)知識の中ではそんな存在は御伽噺の様に語られていたけれど……ふと思えば僕自身がそのフィクションの様な研究の産物である為、恐らく蓄えてきた知識が誤っていたか、偏っていたかしていたのだろう。

 

 そう、僕は普通の人間ではなく、曰く、其の悪の研究所で作り出された人造人間なのだ――と。

 

 ……自分で書いておいて酷く現実味がない。だが、どうやらこれが事実らしい。

 人間が持てる最高峰の才能を併せ持つ新世代の人類だとか、古の時代の神の再現だとか、妖の異能を兼ね備えた初の人間に、だとかそんな与太話を研究所の人間がしていた様な気はするが、それでどの様な生命を産み落とすつもりだったのかは今となっては全てが闇の中だ。

 もしかしたら組織のお偉いさん達はその資料も回収したりしているのかもしれないが、既に放免されたも同然の僕がそれに関わる事はないだろう。

 

 何故なら、僕は身体の隅々まで調べても、人間として何ら異常性を見せなかったのだから。

 

 勿論、あの研究所で人工的に作られた僕が全く問題がなかった訳ではない。

 遺伝子には数え切れない程多くの加工を施され、脳髄の奥の奥まで弄られ、研究者達が持つ様々な知識を装置で学習(インストール)させられ、才能を極限まで高められた。

 

 そして、僕に施されたのはそこまでだった。

 

 完成された人造の天才(デザイナーベビー)である僕を基に、更に発展させた怪しげな呪いや術、見た事もないような異形妖怪達の力を掛け合わせ――るその前に、“組織”が研究所と、その母体となる結社を襲撃したそうだ。

 “組織”……彼らの事は詳しくは教えて貰っていない。少なくとも悪の研究所の一つや二つ、簡単に潰せるような武力と権力を持った、世の平穏の為に活動する、謂わば“正義の味方”の様な人達だった。

 彼らは試験体としての、唯一の生存者である僕を保護し、手厚く看護してくれた。

 助け出された後は自失していた僕も、“組織”が擁する病院での検査と療養生活を送っていく内に我を取り戻し、その後は積極的に“組織”に協力していた。

 

 

 あの研究所で生み出され、あの研究所にいる研究者達の知識を学習させられた僕が何故、研究所を悪だと、“組織”を正義だと定義したかは分からない。

 もしかしたら研究員の中には自らの行いを悪だと自覚していた者がそれなりにいたのかもしれないし、研究所での僕達の扱いへの反感から彼らを悪と定義していたのかもしれない。

 もしくは、彼らを悪と定義する、何らかの意識が学習装置の中に紛れ込んでいたのかも……というのは、少々妄想が過ぎるかな?

 

 ともかく、僕は“組織”の施設の中で極めて規範的に彼らに協力していた。

 

 抵抗せずに検査に協力し、新聞やニュース、娯楽書籍等から研究所にいた時には分からなかった一般常識を吸収していき(装置で入力された常識だけでは偏りがある可能性が高いから、らしい)、そして――一連の非日常的な事象の秘匿を約束した。

 学習させられた常識にも、新たにここで学んだ常識でも、やはりこの様な不可思議な事柄は公になっていない。

 何故、どの様にしてこれらを秘匿しているのかは分からない。が、少なくともこの世に混乱を齎す様な目的ではないだろうと思うのであまり気にしない事にする。

 

 そんな訳で、数か月にも及ぶ長い長い検査と教育の日々が終わり、即座にいざ日常へ――という訳にもいかない。

 

 何故なら僕の肉体年齢は凡そ9才程度であり、当然ながらいくら装置によって知識を詰め込まれていようとも、一人でこの世界を生きていける様な立場ではないからだ。

 

 帰る家もなく、日々を過ごす(資金)もなく、頼れる家族もいなければ勿論戸籍だってありはしない。当然ながらそんな浮浪児が生きていける程、世界というのは優しく出来てはいない。

 ならば僕が病院に入った時と同様に、“組織”の息の掛かった児童養護施設にでも入れられるのか、と思ったがそう単純な話でもないらしい。

 まず、僕の方の問題として、数々の検査の結果、身体的には異常は発見されなかった……が、その中身(精神面)についてはそれを保証しきれていない。

 つまりは、僕に施された処置の中に何らかの拍子に発動する洗脳等が仕掛けられていないか、未だに疑われているという訳だ。そして、“万が一”を考えた場合、疑いの晴れない僕を手放しで児童養護施設に任せる事もできないのだろう。

 そして、もう一つの問題として……現在、“組織”側にも余裕のある施設がない事。

 

 ……もしかしたら前者の問題は後付けで、後者の問題が本題なのかもしれない。僕が助け出された後には凄い人達なのだな、とぼんやりと考えていたのだけど、もしかしたら、いやもしかしなくても彼らも世間の世知辛い事情を抱えているのかもしれない……

 

 そんな事情で僕の所在が宙ぶらりんになり、このまま各所を盥回しにされるのかという所に口を出したのが、現在の保護者である信国(のぶくに)(まさる)斎藤(さいとう)明日香(あすか)である。

 組織でも雑務と事務を任されているらしい彼らは、僕の境遇に同情したのか、自分達の住居で預かり、監視・監督する、などと言い出したのだ。……自分で言うのも何だけれど、こんな可愛げのない子供相手に良く言ったものだと思う。その当時、僕と彼らの接点は検査の際に何度か話した事がある程度だったというのに。

 

 

 その後、“組織”では若干の話し合いの結果、結局僕は彼ら……勝と明日香の家に引き取られる事となった。

 病院から退院する際にはかなり長い注意事項を復唱させられたけれど、まぁ大体は社会道徳に反さず、2人の言う事をしっかり聞いて平和に日常を過ごす事、半年に一回は定期検査しに来る事、の2点をとっても長ったらしく説明された。一般常識については問題ない、と言われていた筈なのにこの扱いは解せない……

 そして、今後不意の事態が起こった時にも“組織”からの援助を受けられる代わりに、もし協力できる事があれば“組織”の協力者となってほしい、とも。

 どうやら、彼らの様な組織でも人手不足というのは深刻らしい。僕としても望む所ではある為、これも承知しておいた。

 そうそう、退院する際には有難い事に二人以外からも検査中によく話していた人達からも退院見舞いの品々を貰った。当然ながら無一文だった為、非常に助かる。

 一応、下記に貰った品を記載しておく。

 

 ・看護師の美代さん:私服の上下3セット。 病院では検査着と寝間着しか来ていなかったため、シンプルに助かります。

 ・検査士の阿部さん:娯楽書籍、段ボールで2箱分。 暇潰しに楽しんで読んでいたのは事実だけど、もしかしてこれ在庫処分じゃ……?

 ・美零さん:桃缶10個。 あの人は僕を何だと思っているのだろうか?物申したいけど、彼女が僕を直接研究所から助け出してくれた人らしいので強く言えない。

 ・医師の菅野氏:筆記具数セットとノートと日記帳を3冊ずつ。 美代さんと同じく実用性重視。この日記も渡された日記帳に書いてます。

 

 

 長々と書いてしまったけれど、一先ず今の僕の状況はこんな感じだ。今日から二人の親戚(仮)として、この家で世話になる。

 二人はこの家を本当の家だと思って寛いで欲しい、と言って精一杯歓迎してくれているが、やはり緊張は隠せない。何せ、僕は与えられた知識と娯楽書籍の中でしか、普通の家族の過ごし方、というのを知らないからだ。

 

 それでも、せめて、僕の為に組織の上司にも物怖じせずに直訴し、自ら負担を背負ってまでこの環境を整えてくれた二人に恥じない自分でありたい、と強く思う。

 

 ……うん、本当に長く書きすぎてしまった。今日はこの辺で筆を置こうと思う。本当に大変なのは明日からの新生活なのだから。

 

 

 

◇◇

 

 

4月5日(日)

 

 日記を書き始めて早一ヵ月。慌しく過ごした時間は本当にあっと言う間に過ぎ去ってしまう。

 今日は明日から通う学校……そう、小学校についての最終確認をしていた。

 最も、確認と言っても書類も手続きも制服も教科書も、既に全て準備は完了しているから……そう、今日行っていたのは僕自身の覚悟の確認だった。

 当然ながら(身体年齢上は)九才程度の児童である僕は義務教育として小学校に通っていく物である……が、僕の来歴と退院したのがほんの一ヵ月程前である為、学校に通うのは明日が最初となるのである。

 ……それはつまり、大人である勝や明日香、そして“組織”の人達ではない、同年齢の子と接する初めての機会となる、という事でもある。

 不安。不安が止めどなく溢れてくる。僕は普通の子供たちと同じように過ごせるだろうか? 何か変な事をしてしまい、二人の評判に傷を付けてしまわないだろうか? 今までは退院してからも何も問題は起こっていなかったけれど、二人と離された環境に身を置く事で不意の事態が発生してしまうのではないだろうか?

 

 ……勿論、これらの不安は既に二人に打ち明けてある。しかし、

「理が本当に行きたくないのならば、行かなくても良い。それでも、君にも僕達だけじゃなくて同世代の子達とも触れ合って、笑い合っていって欲しい」 と

「大丈夫。この一ヵ月ずっと一緒にいた私達は君がとても優しい子だって分かってるから。もし何かあっても責任は全部取ってあげるから」 と

 そんな事を言われてやはり学校には行きたくない、と言える程性根は腐ってない……と自分でも思いたい。

 折角なので、今日は半日使って学園ものの娯楽書籍を読み耽って予習をしていたら勝に笑われてしまった。いいじゃないか、これくらいしか予習出来るものがないのだから!

 

 今日の夕食はちょっぴり豪華。テンションが上がった。

 

 

 

◇◇

 

 

5月6日(火)

 

 今日はゴールデンウィークの最終日。つまりは、明日からまた学校が始まる、という事である。

 ……結局、ゴールデンウィーク中に「友達を作ろう」作戦は完成しなかった。然もありなん。

 

 あの僕が小学校に編入した始業式の日、あの日はそう問題はなかったと思う。

 他の子達と同じように、緊張しながらではあるものの挨拶と自己紹介を終え、周囲の席の子達と軽く会話を交わす。

 まさに娯楽書籍で読んだ通りの展開で胸を撫で下ろしていたのだが、問題はその次だった。

 

 そう、学生の本分である勉強――授業だ。

 

 ……そもそも、一般には公開されていないような怪しげな学習装置で様々な知識を学習(インストール)されてきた僕に、小学生程度の授業は楽勝なのは当然だった。

 だが、それを失念していた、初めての学校で緊張していた僕は一通りの科目の授業が終わるまで、その蓄えてきた知識を、叡智を発揮し続けていたのだ。

 

 理科や算数は言うに及ばず、それは社会でも、国語でも。そして作られた天才(デザイナーベビー)である僕の身体と才知を以て、体育すらも。

 全ての授業を終えた後に僕に向けられたクラスメイトの目は……控えめに言ってもドン引きされていた。その目を見た時、自分が失敗した事にようやく気付いたのだから笑えない。

 

 その日から、僕はクラスで遠巻きにされる存在になってしまった。

 そもそも、小学四年生になってから編入して来た、注目される身であるのだ。今ではその注目は完全に別の意味になってしまっている。

 こうなってしまっては無理矢理一緒に遊びに入れてもらったとしても周囲の空気を悪くしてしまうだろう。せめてこれ以上評価を下げまいとしたかったのだけれど、教師達の目もある。不自然に成績を下げる事も憚られた。

 僕に出来るのは取りあえずの現状維持。クラスメイト達が僕に慣れてくれるのを待つ事だけだった……

 

 

 

◇◇

 

 

6月14日(日)

 

 今日は久しぶりに美零さんが遊びに来た。以前にこの家に来たのは僕が入学する前だったか。

 明日香の友人であり、“組織”の外部協力者でもある彼女は度々この家に勝と明日香の仲を冷やかしにやってくる。多分、自分も良い年齢なのに相手がいない事を妬んで……いるのかは彼女の快活な様子からは分からない。どの道こんな風に思われていると知られたら、間違いなくボコボコにされるから言わないけれど。

 

 そんな美零さんであるが、今日はなんと僕に、と大量のゲームを持ってきてくれたのだ。

 ソフトからハードまで、すべて数えれば合計で100点以上持ってきてくれていた。当分は空いた時間をこれで遊び尽くせるだろう。

 最近は小学校でも休み時間など、暇な時間には娯楽書籍(マンガ)を読み耽って暇を潰していた為、この唐突な贈り物は非常に有難い。

 

 しかし、どうしてこんなに多くのゲームを? と聞いたら、

 「弟が受験勉強で娯楽断ちするって言うから私が預かってやった」そうだ。

 

 ……いや、普通自分で預かったゲームを更に他人に預けるか? 彼女の弟さんには同情を禁じ得ない。

 せめて僕に出来る事はこのゲーム達を大事に扱い、そしてこのゲームを目一杯楽しむ事だ。

 

 その後は僕と美零さんと勝とで、突発的プチゲーム大会と相成った。

 対戦が可能であるパズルゲーム、レースゲーム、格闘ゲーム等々……と、順にそれぞれ遊んでいったが、勝ち越したのは意外?にも美零さんだった。

 あの反射神経と瞬間判断力は間違いなく僕以上だった。……造られた天才である所の僕を圧倒して上回って見せるとか、本当に彼女は人類なのだろうか? ゲームの知識自体はクラスメイトの話に耳を傾けて知っていたけれど、やはり実際にやるのは違うという事らしい……

 クイズゲームだけは僕と勝の圧勝だった。彼女から一種目は勝てた、という事を明日香に言ったら何とも言えない顔をされた。ぐぬぬ。

 それと、実は勝もゲームは好きだったらしい。“組織”に属した後は殆どやっていなかったらしいけど。

 何か訳ありなのだろうか……深く聞ける雰囲気ではなかった。

 

 ゲーム大会の後、明日香の作った夕食に舌鼓を打った後、美零さんは帰っていった。

 本当に羨ましいくらい自由な人だ。見習い……はしない方が良いかもしれないけれど。

 

 

 

◇◇

 

 

7月13日(月)

 

 週の始まり、月曜日。

 今日もクラス中の僕に対する態度は変わらず。

 先日行われたテストが追い打ちになってしまったようだ。今週末が終業式となるが、夏休み前に友達を作る計画は失敗に終わったと言っても良いだろう……

 

 大丈夫。そんなには気にしていない。もはや学校での立場も慣れたものだ。気にしていない。

 

 最近は勝や明日香が忙しそうにしている。もしかしたら、僕の時の様に、何らかの事件でも起こったのだろうか?

 

 ……実は、最近何かの予感(・・)を感じるのだ。

 何か大きな事が起こる様な、嵐の前触れの様な、漠然とした予感を少し前から感じている。

 

 もしかしたら、僕に施された処置が、実験が、今になって何らかの萌芽を見せようとしているのかもしれない。

 

 勝と明日香に話したら、真剣な顔で相談に乗ってくれた。本当に二人の所に来て良かったと思う。

 ……二人には言わないけど。流石に恥ずかしいし。

 

 

 

 

 

7月14日(火)

 

 今日は何事もなく一日が終わった。

 

 ……昨日あれだけ覚悟していたというのに、何もなかったとなると、凄く拍子抜けで恥ずかしく思う。穴があれば入りたいくらいだ。

 学校から帰ってきた後、部屋に籠って不貞寝をする。少しだけ悪い子になったみたいでテンションが上がった。

 夕食を食べた後は学校で渡された夏休みの課題に取り掛かる。

 特に夏休みに予定もないけれど、こういうものは早めに片付けておいた方が良い……と、娯楽書籍(マンガ)に書いてあった。

 夏季になれば勝と明日香も多少は休みが増える筈。何処かに連れて行ってもらえたりはしないだろうか?

 

 

 

 

 

7月15日(水)

 

 朝起きたら勝と明日香は既に出掛けていた。テーブルの上に書き置きが置いてあった。どうやら緊急の要件が発生したらしい。

 ……あの二人が朝食を用意する手間すら惜しむ程の緊急事態、という事だ。一体何があったのだろうか。

 心配で学校での先生の話も右から左に抜けていく。以前と違い、現在は後方勤務の二人が荒事に巻き込まれるとは思っていないけど、どうか何事もなければ良いのだけど。

 

 

 そう思い、学校から帰宅した僕を迎えたのは深刻な顔をした勝だった。曰く、

 「理、君に……僕と一緒にあるゲームをして欲しい」

 

 

 ……流石にそれだけではよく分からなかったけれど、その後の説明でようやく理解できた。

 つまりは

 ・完全なオーバーテクノロジーで作られたVRMMOゲームが発売された。

 ・そのゲームは明らかに調査、規制が必要だと思われたが、上層部からストップが掛かった。どうやら何らかの根回しが行われているらしい。

 ・その為、正式に捜査する事はできない。が、それでも万が一が起きた時の為に”組織”の人間をゲーム内に配置しておきたい。

 

 ……そして、その人員の一人として白羽の矢が立てられたのが、正式に組織の人間という訳ではないが、組織に恩があり、その能力も十分であり、何よりもゲームにハマっても何らおかしくない年齢である、そう、僕の事だ。

 うん、僕も以前“組織”に協力できるならば協力する、とは言った覚えがあるけど……それがこんな形になるとは思わなかった。

 二人はしきりに僕に謝っていたけれど、むしろこんな事で勝と明日香に恩を返せるならば願ったり叶ったり、と言ったところである。

 話を聞くに、そのゲームをプレイして悪影響が生じることはないと確認されているようだし、むしろ勝と一緒にゲームができるのが楽しみですらある。

 

 夕食の後にはその件のゲーム――<Infinite(インフィニット)Dendrogram(デンドログラム)>――の公式ホームページと、Web掲示板を見て情報を確認していく。

 簡単にこのゲームの情報――完全なるリアリティを誇るダイブ型VRMMOである事、単一サーバーで億以上のプレイヤーを収容可能である事、NPC(ゲーム内ではティアン、と言うらしい)に超高度なAIが搭載されている事。

 それだけでも信じがたいのに、ゲーム内では現実(リアル)の三倍の速度で時間が進む事、プレイヤー一人一人のパーソナリティ(個性)を基に自分だけの固有スキルが得られること等――

 

 なるほど、これらが全て真実なら間違いなくオーバーテクノロジーだろう。そして情報を精査した後に……“組織”に一言言いたい。

 

 

 僕と、勝と、明日香。

 三人家族(仮)なのに、ゲームのハードが二つしかないというのは少し酷くないかな……?

 

 

 

 

 

7月16日(木)

 

 今日、インフィニット・デンドログラムの開発責任者を名乗るルイス・キャロル氏からの発表が行われ、昨日からの口コミも併せて世間では大騒ぎになっていた……らしい。

 流石に今日、当日の小学校では全く話題になっていなかった。話題になるとしたら、明日の終業式か夏休み中だろう。

 

 学校から帰宅し、この後僕もインフィニット・デンドログラムにログインする。

 

 三つ目のハードは組織に申請しているのだが……既に各地で大騒ぎになっており、品物自体が品薄である事から時間が掛かる事、そしてゲーム内では三倍の速度で時間が進む事になるとは言え、プレイヤーの現実の身体だって定期的に食事や排泄の必要がある事から世話役が必要になる為、暫くは必要ない、との返答があった。

 健康を害さずゲームを続ける為には正論だと理解はできるものの、素直に納得はしたくない。

 一先ず、これについては今後も申請を続けていく事にしたいと思う。

 

 前置きが少し長くなってしまった。折角のプレイ時間が削れてしまう。

 現在時刻は16時。三倍時間を考えれば――明日の登校時間前にゲーム内部で丸二日はログインできる計算だ。

 

 それでは、<Infinite(インフィニット)Dendrogram(デンドログラム)>を楽しんでいこう――

 

 

 

To Be Continued…………




……原作を既読しているであろう皆様には言うまでもない事かもしれませんが、原作にはこんな怪しげな“組織”など欠片も登場しません。
しかし、節々や原作割烹での作者様のコメントから察するにこういう事もありえるのかもしれない……と考えて妄想が溢れ出してしまいました。
それでも良いという剛の方々、是非次話以降もよろしくお願いします!

※妖怪とか超能力者の超常能力によるチート的な展開は今後も予定しておりません。ご了承ください。

次回、天災児(養殖)のチュートリアル回です。
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