無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:相性の良い〈UBM〉! 勝ったな(油断大敵

今回から各話にサブタイトルなんか付けてみたりしちゃったりして。
洒落たサブタイはあまり付けれないと思うけど許して貰えれば!
それでは本編をどうぞ!


第十五話 ちょっとした回想・ちょっとしたレベリング

【剣鍛冶】(ソードスミス)コテツ/信国勝

 

 

 食事の時間に合わせてリアルに戻り(ログアウトして)、専用の端末から諸事の連絡や報告を済ませ、時にはあちら側からの指示を受け取る。

 明日香や理との多少の団欒の時間を過ごし、充足と安心を得ると共に今後の活力を養う。

 食事と入浴と排泄と言った必要最低限の作業を済ませ、明日香に幾らか言葉を交わして後の事を頼み、再び<Infinite Dendrogram>にログインする――

 

 文章にするとただそれだけの事がここ数ヶ月の――いや、二ヵ月も経っているのは体感時間であって、現実時間にすればまだ二十日と少しぐらいの短い時間なのだが――僕の生活パターンだった。

 既に第一線から退いて久しい僕が、こんなある種濃密な日々を送っているのには当然理由がある。

 

 

 最先端すら超越した新世代のダイブ型VRMMOゲーム――ゲーム内時間の三倍加速――過剰過ぎる管理AI達――■■――完全なる情報統制――明らかなオーバーテクノロジー――

 

 

 まぁ、平たく言ってしまえば今務めている部門の上役に話題の――全く事前に察知できなかったけれど――ゲームである<Infinite Dendrogram>の調査を依頼されたからだった。

 格差と言って良いのか分からぬ程のオーバーテクノロジーにより作成された、数多くの管理AIによって運営される意図不明のゲーム。

 時代が時代ならデスゲームか何かなんじゃないかと冗談交じりに言われそうな完成度を誇るそのゲームに……僕達は大々的に関わる事も、何かしらの根回しの結果、不可能であった。

 関わる事が出来ないのなら放置するしかない……とはならないのがこの激務の始まりだったのだが。

 

 そう、あろう事か、それを受けて上役が「それなら普通にゲームのプレイヤーとして潜り込めばいいじゃない」と言い出したのがきっかけだった。

 

 

 ――此れはオンラインゲーム。ゲーム内で情報の入手と他のプレイヤーや現地人(・・・)との接触も考えればある程度ゲームに慣れ親しんでいて、尚且つ実力もそれなりに……

 

 ――プレイヤーとして潜り込ませると言ったって、前線の人材にオンラインゲームを監視させるなんて余裕はないぞ!

 

 ――いやいや、後方の方が一人一人のタスクがより重要なんだからいきなり言われてもそんな余裕は……

 

 

 そう、つまり。

 平凡な学生時代を過ごしていて雑多なゲームにも理解があり、以前前線で働いていたことから実力もそれなりに評価されていて、且つとある事件が切っ掛けで現在は後方で雑務を担当させられるも前線の方が性に合っていたのか今の仕事の評価はまぁまぁな僕が、一番ベストだったと言う訳だ。

 

 ……別に、今のこの仕事に不満がある訳ではない。

 確かに人並みにゲームは好きだったし、諸々の事情で自分が担当するのが最も理に適っていると納得もしていたし、そもそも好悪で仕事の内容を選べるとも思っていない。

 

 

 ただ、心配事は残っていた……それは、つい数ヶ月前に引き取ったあの子――天野理の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 あの子、後に天野理と名付けられた子供の事を始めて知ったのは、僕自身も多少は参加していたとある研究所襲撃作戦により保護された唯一の子供だったという事が切っ掛けだった。

 

 上層部が掴んできた研究所の情報に基づき動けるメンバーで行われた電撃戦――後方で監視とバックアップを担当していた僕に分かった事は、襲撃は順調に成功したものの、相手側の対応も素早く、研究所はその中に残されていた筈の多くの情報やデータと共に突如吹き出した大火によって何もかもが焼失してしまったという事だ。

 情報隠蔽と敵手に打撃を与える為の常套的な手段だった。拙速を選んだ僕達の襲撃メンバーの中に被害者が出なかった事は幸運と言えばいいのか、それとも流石だと言えばいいのか……

 結局、その襲撃で得られた物は秘密研究所を一つ潰した、という事実と燃え尽きる前に回収できた僅かな資料、そして……大火に巻かれながらも救出された、その研究所での実験体の唯一の生存者だった子供一人だけだった。

 

 

 ……あの子の情報については、ある程度耳にしていた。しかし、反抗的な態度も見られず、むしろ此方に従順に協力してくれているという話も聞いていた僕は、それなら全く問題はないのだと考えていた。

 

 その考えが誤りだったと気付いたのは、彼と初めて顔を合わせた時……件の研究所襲撃の後、雑務で忙殺されていたのが多少は解消された頃、丁度担当していた検査士が他の用事で手一杯だからと、当時既に同居していた明日香と共に彼の簡単な検査を任された時だった。

 

 十歳にも満たない少年の筈なのに、全く子供らしさを感じさせない、達観したかのような雰囲気。

 無味乾燥なその視線、表情も多少程度にしか動く事はなく、我儘どころか要望の一つも出さないのは大人びているという言葉を通り越している様に感じられる。

 希望すれば可能な限り叶えられる筈だが、衣服もベッドの周りの殺風景さも相まって、床頭台に軽く積まれた娯楽書籍(漫画)が無ければ子供の部屋だとは思えない程だった。

 

 ()()()()()()()――それは、僕達のエゴなのだろう。

 子供は子供らしく、その青春を楽しく謳歌して欲しい。そんな身勝手な感想だったのだけど……ああ、組織柄同じ思いの人は存外多かったらしい。

 

 僕達に出来た事はそんなに大きな事ではない。毎日の検査や配食の際や、暇な時間等に積極的に彼と関わり合い、仲良くなろうとしただけだ。

 彼の言葉を表情の変化を引き出し、時には僕や明日香だけではなく医師や検査士、または見舞いに来た人と共に会話の輪を作っていく。

 そんな単純な事だけど……幸運にも、その効果はあったらしく、二ヵ月も経つ頃には初めの頃と比べれば彼の言葉数も表情も随分と増えてきていた。

 

 そして、時が経つに連れて検査も教育も粗方終えてしまい、病院から出る時期になったのだが……そこで問題が発生する。

 いや、問題とすら言えない基本的な事なのだが……彼には、帰る家などないという問題があった。

 かの研究所で造られた人造の天才(デザイナーベビー)である彼には、出迎えてくれる家族も、帰るべき場所もないのだから。

 

 身寄りのない、頼れる者の居ない、天涯孤独の身。

 その辛さを知る僕と明日香は……覚悟を決める事にした。

 

 

 

 

 

 

 結果として、彼――天野理は僕と明日香の家で引き取る事に決まり、上司や同僚等からも快く送り出して貰い、また理の戸籍や学校の編入についての課題も解決する事が出来た。

 引き取ったばかりの頃はまだ緊張していた様子だったけど、それも時間が解決してくれる事ではあった。

 

 ともあれ、そうして僕と明日香と理。血の繋がりのない三人家族がスタートする事になったとさ、めでたしめでたし……では終わらず、その後も続いていくのが現実と言う物。

 

 いや、特に重大な問題が起きたとかそういう事ではない。家族仲は良好だし理も更に子供らしさが増してきた様に思えるのは良い傾向である筈だ。

 では何があったのかと言えば……一言で言えば、理が学校でやらかしてしまった、と言えよう。

 学校で同じ年頃の子供と接し、共に学び、共に遊び、共に過ごす。それは彼の年齢的にも、情動的にも、境遇的にも、必須だと考えていた。

 それは明日香も、彼と関わっていた組織の人員も、彼自身ですらそうと考えていた。

 その筈だったのだけど……おそらくは、張り切り過ぎてしまっていたのだろう。

 人造の天才(デザイナーベビー)として学校でその才気を爆発させてしまい、遠巻きにされる事になってしまったのだ、と彼と担任の教師に言われた時は思わず明日香と顔を見合わせてしまった程だ。

 別に、その成績で他の生徒達を下に見たり、馬鹿にしたりとか、そういう事があった訳ではない。

 そういう訳ではないのだが……この時期の学童の精神状態と言うのは酷く不安定で不鮮明だ。

 どう対応すれば正解なのかも分からない学童達との関係。むしろ、時勢と運気が良ければ最初の理の行動だって尊敬と好感を集めていた可能性すらあった筈なのだが……ままならないものだ。

 そもそも、これは保護者が口出しして良い問題なのか、出した所で何とかなる問題でもないとも思えるが。

 

 ……理が出した結論は、現状維持だった。

 時は最良の薬なり。これ以上印象を悪くしない様に努め、時が解決してくれるのを待つ。

 絶対の正解を見出せない今を考えれば妥当な判断ではあると思う。が、そうと決めた後の彼は……学校の事を少々窮屈だと感じてる様に思えた。

 

 

 

 その後も、同年代の学童が好む様な娯楽書籍(マンガ)を読み耽ったり(これは普通に彼の趣味かもしれないが)、流行りのゲームを遊んで話題に乗れる様準備したりと、動機はともかく年相応に楽しく遊んでいる理だったけど、学校では不完全燃焼な日々を送っている事をたまに愚痴ったりもしていた。

 僕や偶にやってきた美零相手に全力で遊び倒して多少は発散できてはいる様だが、学校でのクラスメイト達との関係の改善は遅々として進んでいないらしい……

 

 

 そんな折、理が夏休みに入る直前に発表されたのが……オーバーテクノロジーの塊である、<Infinite Dendrogram>だ。

 ……オンラインゲームでもあるこのゲームを監視するのであれば、サポートがあったとしても多大な時間を費やす羽目になるだろう。

 理の問題も解決出来ていないのに、理や明日香との時間が減ってしまう……と、諦観と共に考えていた所に、上役からトンでもない発言があった。

 「実際にゲームに共に入るサポートメンバーを、理にしてはどうか」と……

 

 ……思わず食って掛かってしまったのも仕方のない事だと思う。

 しかし、どうやら何の考えもなしにそうと提案してきた訳ではないらしい。

 

 ゲームをする事自体の安全は既に確認されていたし、ゲームにおいて子供ならではの視点や気付きがあるだろうとの事、そしてゲームの仕様が年齢によって差異があるとの情報もある為、その詳細の確認という名目もある。

 そして何より……学校では不完全燃焼な理でも、このゲームでなら全力を出し尽くして楽しめるだろうし、きっとこれは友達を作る切っ掛けになると……

 ……確かに、理の悩みを相談した事もあったけれど、ここでその話が出てくるとは思わなかった。

 

「<Infinite Dendrogram>は、新世界と、あなただけの可能性(オンリーワン)を提供いたします」

 

 それが、あのゲームの謳い文句だったと思い出す。

 あのゲームは……理の可能性を引き出してくれるだろうか?

 

 ……結局、僕は上役の巧みな口車に乗る形で理と一緒に<Infinite Dendrogram>の世界に旅立つ事になった。

 その先にある可能性を求めて――――

 

 

 

 

 

 

 

 僕達が<Infinite Dendrogram>を始めてから現実時間で二十日余りが経過した。

 理――ジーニアスは、僕の想像以上にこのゲームを気に入り、この世界に馴染み、そして<マスター>として成長していった。

 今まで武器といった物など、娯楽書籍で見るか、料理の時に使う包丁ぐらいしか触った事などないだろうに、どんどん僕や、近くで戦闘していた人の技術を見るに従い巧みになっていく。

 先日の武闘大会に参加してからは、まず間違いなく僕と同等以上の剣術を身に着けたと言っても過言ではないだろう。

 切望していた友達だって、この世界内ではあるが同年代くらいの<マスター>と現地人(ティアン)両方に友が出来たのは素晴らしい成果だ。

 ゲームを始めて数日経てばすぐに別行動を始め、活き活きとして楽しそうに遊べているのが良く分かった。それでもその後もしきりに頼りにされる事を嬉しくも思いもしていた。

 

 しかし――彼は、僕の予想以上の速度で強くなっている。

 まさか、この世界におけるモンスターの最上位、〈UBM〉の討伐すら依頼(クエスト)で請ける程とは……

 

 

 ……僕は、ある程度のレベルを上げてからは各施設の図書を巡り、この世界における知識を、情報を、過去を収集する事に専念していた。

 それも仕事の内だ。当然続けていかなくてはならない……だが、このままでは遠くない未来、僕ではジーニアスを助ける事はできなくなるだろう。

 刀工信国の名を継ぐ者として、鍛冶の腕には自信があるが……それでも、この世界に合わせる為には相応に工夫しなければならない。

 時間が足らない。力が足りない。もっと効率的にやらなくては――

 

 ……まずは上役に掛け合って協力者を増やさなければ。何人か関係者が安全を確認されているからと個人的にこのゲームをプレイしているのは掴んでいるんだ。菅野さんとか、美代さんとか、椋鳥さんとか、他にも何人か、遊んでいるのは知っている。

 そもそも実際に始めてから判明した事ではあるが、この世界を調べるのに僕一人では手に余るという物だ。今まで得られた情報を共にそこを突けば恐らくはなんとかなるだろう。

 そして<Infinite Dendrogram>内でも、やはり深く、手広く、正確な情報を迅速に手に入れるには相応の物が必要になる。

 

「――やっぱりあそこが最適、だろうな」

 

 僕は決意し、手土産を確認して、この都にもあるとある施設に向かう。

 世界中の情報を集め、発信している国境なき情報屋集団。

 いち早く増加し始めたばかりの<マスター>を特派員として雇い入れる先見の明……とも言い切れないか。

 ともかく、そこがこの世界で最も多くの情報を握っている、とは周知の事実。

 ならば利用しない手はない。

 

 そう考え、<デンドログラム・インフォメーション・ネットワーク>――通称<DIN>の門戸を叩くのだった――――

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

8月7日(金)

 何とか昨日【武士】ギルドで斡旋して貰った数多のジョブクエストを達成し終える事が出来た。

 僕達の事を思ってだろうけど、コテツも本当に無茶するよねー。

 ちなみに、ジョブクエストの内容は【武士】ギルド故か討伐依頼ばかりだった。

 【討伐――【大鬼】 難易度:三】

 【討伐――【ホワイト・ビッグベア】 難易度:四】

 【討伐――【バイオレンス・ファング・ボア】 難易度:四】

 等々、難易度三~五の討伐依頼の中でも()()()()()()効率が良いのばかり回される事になってたね。

 ……相手はステータスは全体的に高いけどどちらかと言うとEND(耐久)型で、厄介な特殊能力を持ってない物理戦闘に特化したモンスターばかりだったんだから、本当分かりやすい。

 確かに、戦法はどちらかと言えばAGI(敏捷)型の僕達からすればカモの様な相手だった。むしろ春香さんの視線の方が気になる程だったね……

 実際にギルド員の人と交渉したのはコテツがメインだったけど、このジョブクエストの選出は泰央氏の思惑等もある気がするけど……さてはて。

 

 ともあれ、デンドロ内では五日程度のジョブクエスト巡りだったけど経験値もクエスト達成の報奨金も戦利品も中々の稼ぎになったのは素直に喜ばしい事だと思う。

 ……経験値だけで考えるならカシミヤと一緒にやった間引きクエストの方が若干高かった様にも思えるけど、うん。あの時はかなりテンション上がってたからねぇ。

 それに、ただ戦ってモンスターを狩るだけではなく、【ラスリルビウム】戦に向けて連携の練習も同時にしなければならない。こればかりは経験豊富なコテツがいて助かった……

 まだ完璧には程遠いけど、足掛かりは掴めたと思う。この調子でクエストを続けていけば……と思っていたのだけど。

 

 春香さんが連続して効率の良いジョブクエストを斡旋してもらうのは気が引ける、との事なのでならば、と次は冒険者ギルドへクエストを探しに行く事にした。

 まぁ、【武士】ギルドでは明らかに泰央氏の息が掛かってたから、仕方ないね。

 

 少し上にも書いてあるけど、経験値だけを考えるならば間引きクエスト、と思って軽く探してみたのだけど、つい先日請けたばかりだからか残念ながら間引きクエストは残っていなかった。

 また、次に目的を鑑みてモンスターとの戦闘を前提とした依頼を探すも、中々丁度良い依頼は見つからない。

 さてどうしようか、と春香さんと二人で悩んでいた所で――冒険者ギルドにやってきた烏丸達の四人パーティに声を掛けられた。

 また前みたいにパーティを組んでクエストをやらないか、と――

 

 ……うん、たまにはこういう縁も良いよね。

 

 

 

 

 

 

 

8月8日(土)

 今日、早朝から依頼を請けて出発したのは僕と春香さん、そして烏丸達……烏丸、弥生、エリーシア、レインと合計六人と言う基本的なパーティの最大人数だった。テイムモンスターを連れている人がいなくて幸いだったかな?

 依頼内容は……以前も烏丸達とパーティ狩りをした大白宮の都北方の<犀合山岳地帯>、その深部で採取、採掘、狩猟できる多種多様な素材の収集依頼だ。

 これが何らかのゲーム的な細工か、それとも管理AI達が細工しているのかは分からないが、基本的に街や村……否、街や村にあるセーブポイントから離れれば離れた土地である程自然魔力が色濃く土地に漂っており、その影響を受けて希少な素材も増える一方、その周辺に生息するモンスターも強力な物が多くなるとか。

 ちなみに、掲示板で聞けば例外は幾らでもあるんだとか。海とか、魔境(レジェンダリア)とか、不毛の砂漠とか、神造ダンジョンとか。

 ……神造ダンジョンとか、少なくとも僕の知ってる天地の神造ダンジョンってまだ<マスター>は一人も入った事ない筈なんだけど、他国ではそうでもないのかな……羨ましいなぁ。

 と、まぁそれはさておき、人里から離れたモンスターの領域には斯様に街や村の近くでは入手できない素材が多数存在するので、希少な鉱物や植物は勿論、魔力が多く含まれた土や砂、石なども買い取って貰えるという比較的美味しい依頼らしい。

 それ故に、少しでも持ち帰れる素材の量を増やす為に人数を増やすのも――そんな場所だからこそ以前挑んだ<犀合山岳地帯>の浅部とは違い、頻繁に表れる亜竜級のモンスターと戦う為に実力者を増やすのも当然の方策だと言える。

 

 ところで、春香さんが持ってるアイテムボックス、高性能過ぎるんだけど。僕や烏丸達が未だに使ってる初期配布のアイテムボックスの数百倍……いや、千倍は容量がある上に《破損耐性》あり、更に普通の鞄程度には嵩張る僕らのアイテムボックスと違って腕輪型って……格差社会っ!

 ……ちなみに、春香さんはそのアイテムボックスの他にも糧食を入れる為の物と水を入れる為の内部経過時間を遅くしたアイテムボックス、戦闘時に使用する目的のポーションやジェムを入れた指輪型アイテムボックス、重要な宝物や装備等を入れた盗難対策効果が付与されたアイテムボックスなど、用途に応じて多数のアイテムボックスを分けて所持しているらしい。

 まぁ、それができれば最善だよねと僕も思う、本当に。

 ……なお、僕達が持つ初期配布アイテムボックス内部は縦横約八メテル――ジャバウォック曰く、およそ教室一個分の広さで、およそ数万リル程度。

 それが特殊効果を付与したり容量を増やしたりアイテムボックス自体のサイズをコンパクトにしたりすると軽く数十万、数百万、数千万リルという値段が跳ね上がっていくのだから恐ろしい。

 盗難対策は自衛できるとしても、最低でも安心して戦闘出来る様に破損耐性付きのアイテムボックスで揃えたいとは思っているのだけど、さていつになる事やら……

 

 ……随分脇道に逸れた気がするけど、そんな訳で大多数のマスターと同様、二つ目のジョブを手に入れ、エンブリオの固有スキルにも粗方慣れて来た彼らもレベル上げと資金稼ぎに依頼に乗り出し、しかしその依頼の特性上できれば人数を増やしておきたい……という所で僕らと再会したようだ。

 最終的な報酬も人数割りで等分してくれると言うし、春香さん共々知らぬ仲ではないからと嬉々として誘いを受けて行動を共にして準備した後<犀合山岳地帯>に向かう……のだけど。

 どうも春香さんと烏丸の間の雰囲気が微妙にぎこちないんだよね……

 春香さんに聞いてみた所、先日の武闘大会での出来事が原因らしい。……隙を見て詳細を双方に聞いてみたけど、然もあらんと言った所だね。

 可能であれば働きで印象を払拭したい、と烏丸が気合いを入れているので……うん、エリーシアと二人で《生体探査陣》で張り切ってモンスターを索敵する事にした。

 【小鬼英雄】以外にも【亜竜炎虎】や【亜竜鬼熊】と言った複数の亜竜級モンスターとの戦い、だけど……

 六人フルのパーティ、前衛に後衛に補助に回復とバランス良く、エンブリオの力や上級職もいるから、負ける要素はなかった、ね。

 

 

 

 

 

 

 

8月9日(日)

 なんとか予定(?)通り、昨日と今日をフルに使って依頼を完遂する事ができた。

 進化した【エレクテイオン】のお陰で野宿もせずに快適に狩りを続けられたのは本当に助かった。

 春香さんが大容量のアイテムボックスを持っていなかったらこの【エレクテイオン】を倉庫代わりに使おうとすらしていたみたいだけどね……とんでもないよね。

 と、思ったら内部気温調節可能内部時間調節可能な空間拡張効果もある倉庫機能のオプションも追加されているらしい。健気な……!

 コテツやカシミヤや春香さん等と少人数で狩るのも良いけど、今回みたいに役割分担して依頼をこなすのもたまには悪くないと思う。

 少人数だとどうしても常時気を張り続ける事になるからあまり長い時間狩り続けられないからね。前回カシミヤと時間を忘れて狩り回った事もあるのも楽しかったと言えば楽しかったけどね!

 

 ……それはそれとして、後の祭りではあるんだけどピッケルとか鶴橋とか、採取依頼でもあるのに忘れていたのは失敗したなぁ。今までは僕が使う分はコテツが渡してくれてたからつい忘れてたなぁ。だからこそ、コテツに一声でもかければ沢山持ってた筈だから、借りるでも買うでも調達できた筈なのに。

 採掘では力になれなかった分、採掘中の警戒や採取にはそれまで以上に力を入れて取り組んだつもりだけど、やぱりそれでも採掘を任せるのみにしてしまったのは非常に残念。反省。

 

 ――まぁ、それを除けば今回のパーティでの依頼(クエスト)は概ね成功した、と言っても問題はなかった筈!

 亜竜級モンスターも順調に倒せたし、大容量のアイテムボックスを埋める程……ではないけど、大量に素材を採取できたし、総合的に見て稼ぎは申し分ないかなって思う。

 所々で烏丸と春香さんのフォローはしたけどね。……二人共前衛だから雰囲気が悪いとまずい、とは思ったけど、互いの技量を見て自然とぎこちなさも解消されてたから、あまり必要なかったかもしれないけど。

 ただ、春香さんとももうそこそこの付き合いだから分かるんだけど、既に内心で烏丸の技量を認めてるのに、葛藤があるのかチラチラ見ながらも微妙にツレない態度で……そこでツンデレみたいになられると近くで橋渡し役をしてる僕が面倒だからやめていただきたいっ。烏丸も変な所で鈍感力を発揮しないで……!

 もしかしたら、春香さんの年齢ではそうおかしな事ではないのかもしれないけれど……この場合、僕がもっと気楽に考えた方が良いんだろうか?

 

 ちなみに、余談だけど烏丸との仲が修復されてからはむしろ残り三人との会話の方が多かったのは微妙に新鮮だった。非常に姦しい。

 相手が大白宮の大名の娘だからと術の話とか、弥生は剣の話とかが主だったけど……うん、春香も節々で気にしてたみたいだけど、やっぱりあの三人、現実(リアル)では女性じゃないかなぁ。

 後日春香さんにも一応教えておこうと思う。……驚いてくれるかな?

 

 依頼を終えた後は打ち上げ? として春香さん、というか西白寺家贔屓の人気の団子屋で皆で賞味する事に。

 味は――現実でもまた食べたくなる程だった、と書くに留めておこうと思う。

 ……泰央氏の依頼終わったらまた食べに行こうかなぁ。

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

《剣修練》:パッシブスキル
 種別:剣の武器を使用時の攻撃力をスキルレベルに応じて上昇させる。
 【剣武者】【剣士】他多数の剣を主武装とするジョブで得られる武器種特化型汎用スキル。

《心眼》:パッシブスキル
 視力に若干のボーナスを得る。偽装・隠蔽・幻系統に対する看破判定にスキルレベルに応じてボーナスを得る。
 そこそこの数のジョブで得られる汎用スキル。天地の上位武芸者なら大体持ってる。

《精神統一》:パッシブスキル
 精神系状態異常に対する抵抗に大きなスキルレベルに応じたボーナスを得る。精神に関する判定に若干のボーナスを得る。
 そこそこの数のジョブで得られる汎用スキル。天地の上位武芸者なら大体持ってる。


 今話も閲覧いただきありがとうございます!
 着々とコミュ+レベリングを続けております。
 次々回には〈UBM〉との決戦に移れるだろうか……?
 それでは、次話もよろしくお願いします!
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