無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:メインは回想だったのでは……?

〈UBM〉戦準備に何話掛けてるんだと怒られそうな今日この頃……!
それでは本編をどうぞ!


第十六話 友情!・努力!

□<群白森林・深部> 【光華武者】西白寺春香

 

 

 天地一の術師の都、大白宮の南方に位置する<群白森林>。

 自然豊かで魔力も豊富なこの森林は、動植物は勿論モンスターにとっても住み易い快適な森林。

 ……であったのは、私のご先祖様が大白宮の地を治める以前までだったと書物には残されています。

 

 優れた【陰陽頭】だったご先祖様は、この自然魔力溢れる土地が無造作に放っておかれていた現状を大層嘆かれていました。

 素材にも、モンスターにもを多く魔力を含むモノが満ち、まさに自然の宝物庫とまで呼べるこの森林を……ただのモンスターと戦う狩場の一つだという扱いは看過できない、とも。

 天地の大地は、昔から中央大陸の黄河や秘境レジェンダリアと違い、人里……セーブポイントがある場所の近くで自然魔力が豊富な土地は本当に限られていましたから。

 そして、それは天地に住まう者のジョブ適性にも現れていました……だから私のご先祖様に発見されるまでは放置されていたのかもしれません。

 ……それから暫くして、戦争を決意したご先祖様の土地の魔力まで利用した大魔術を以て、それまでこの周辺の土地を治めていた大名を駆逐し、長い年月を掛けてその土地に大白宮の都を造る事に成功しました。

 

 ご先祖様は都の南側を<群白森林>に接する程に伸ばし、その上で都の全域を覆う様に防備と魔物除けの結界を……セーブポイントの効果を増幅する様に仕掛けました。

 勿論、<群白森林>でモンスターにかかずらわせられぬ様、安全に、簡易に素材を入手出来る様にする為です。

 その結果、かつてはセーブポイントに近いながらもそこそこ強力なモンスターで溢れていた<群白森林>もセーブポイントと魔物除けの結界で多重に圧せられた事で浅部ではモンスターの質は著しく下がる事となり、深部でも亜竜級のモンスターが精々となりました。……たまにその豊富な魔力に引き寄せられた〈UBM〉が現れる事もありましたが。

 更には<群白森林>だけではなく、東方の小川と平坦な道の続く<桑川街道>、北方の山岳地帯にして鉱物等の素材が期待できる<犀合山岳地帯>と言った周辺の狩場で豊富に獲得できる魔力が多く含まれる素材を大量に採取、活用していく土台としました。

 そうして、天地には珍しい術師の治める都として、先任を駆逐し数多の術師を束ねる実力者として、大白宮の都と西白寺の家は発展してきたのです――

 

 

 

 

「――と、この辺りはそんな感じですけど、面白いですか?」

 

「うん、とっても!」

 

 

 笑顔が眩しいです……!

 非常に興味深げに私の話を聞きながら森を歩く少年――ジーニアス君と共に有用な素材を手早く集めながら進んでいきます。

 今の標的、ジョブクエストの対象である【双尾狐】(ツインテールフォックス)の位置をジーニアス君の《生体探査陣》で探りながらの道中。

 上級職相当の魔法まで行使する亜竜級のモンスター相手ですが、隠れて近付き、不意打ちするでもなく真正面から近付き、小細工抜きの戦闘を繰り返しているのは……ただ面倒にしているとかそういう訳ではなく、()()なのだとか。

 

 ……そう、練習。

 光の精霊(エレメンタル)を使役し、自身も強力な魔法を行使し、物理的な戦闘能力も、亜竜級のモンスターとは隔絶したステータスを誇る……()U()B()M()()と戦う、練習。

 

 

「……ふぅ」

 

 気が重い。

 視覚化できない重圧を確かに感じる。

 それも当然だと思います。〈UBM〉とは……それ程の強敵なのだから。

 

「……疲れた? 休もうか?」

「ああいえ、疲労は大丈夫ですよ。大丈夫です……ただ」

 

 手を振りながら彼の気遣いに応えるも、やはり気は重いまま。

 彼の実力を疑う訳でも、私が今まで積み重ねてきた努力を疑う訳でもない――純然たる事実。

 〈UBM〉(ユニーク・ボス・モンスター)は――強いのだから。

 上級職になったばかりの二人掛かりで、様々な支援と事前情報と対策と練習……()()()()で勝てるのなら、本来〈UBM〉は〈UBM〉足り得ない。

 純竜級すら越える圧倒的なステータス、超級職のそれに匹敵……否、上回りすらする多彩で強力な固有スキル。

 

 曰く、最上位の武芸者(Lv500のカンスト)のパーティですら一蹴されるのすら極普通にあり得る。最下級である筈の逸話級であっても。

 曰く、人とは全く違う能力のシステムを備えている。

 曰く、二つの大国、その最強の戦士二人を相手取ってすら相打ちとなった事もある。

 曰く、相手の強さを等級で判断した結果、伝説級の〈UBM〉一体に滅ぼされた国すらある。

 曰く、神話級すら越える〈UBM〉同士の戦いすらあった……と言うのは正確な記録ではなかったですね。

 

 歴史に、伝承に残される様々な〈UBM〉との戦いの記録。

 犠牲者は多く、僅かな勝者は得られた名声と特典武具と共に、英雄譚として語られる事も珍しくはない。

 

「ただ――私達で本当に勝てるのか、少し不安になってしまっただけです」

 

 だから、ため息と共にそう弱音を吐いてしまうのも仕方がない事だと、そう思います。

 11歳。まだ成人すらしておらず、レベルも、技術も、知識だって未熟な子供なんです。

 そりゃ、今まで全力で取り組んできましたけど、だからと言って既に【高位巫女】と【大陰陽師】を併せ持ち、レベルも最大(カンスト)まで至っている姉様や超級職である【陰陽頭】の座に就くお父様や大白宮の客分として招聘されている武芸者の方々と比べては、足りていないという言葉ですら足りない程には劣っているでしょう。

 

 そんな私が、既に何人も、何十人も犠牲者を出している伝説級の〈UBM〉――【極光剣精 ラスリルビウム】と戦う羽目になったのは、お父様の出した依頼(クエスト)が原因です。

 お父様は、一体どの様なつもりでこの依頼を出したのでしょうか……暗い想像ばかり思い浮かべてしまいます。

 そのまま、思考もマイナス方面に――

 

「――大丈夫、僕らならまず間違いなく勝てるよ」

「……え?」

 

 自信満々のその声につい顔を上げ、彼の顔を見る。

 笑顔で話す彼は、確かにまるで負ける事など考えていないという自信に満ちている様に思える。

 

「相手の〈UBM〉の戦闘力も、戦法も、主な能力も……そして()()も、()()()も。ちゃんと計算して、勝機はもう見出せてる。後は作戦通りに動けば、僕らなら勝てる」

「そ、そうですか……?」

 

 ……確かに、彼は……ジーニアス君は、強い。

 今から大体二ヵ月前に急増し始めた<マスター>の中の一人、私が知る中でもかなり幼い<マスター>。

 しかし、その実力と才気は……少し前に行われた武闘大会で証明されている。

 いや、剣の技量だけなら決勝戦で彼と競ったカシミヤ君の方が上だったのだけど……それでも勝利出来たのは、時の運か、知識の差か、それとも……

 ……ともあれ、彼が優秀なのは間違いない。一度やり合っただけで詳しい情報を手に入れ、己の人脈(コネ)を使って期限内に可能な限り私と自分を鍛え上げているその手腕。

 そして、何かもが足りない私達でも勝てる(と、彼は言っている)作戦を練り上げ……

 

「――って、作戦での私への指示って『基本的に背中合わせで戦って【ライトエレメンタル】を抑える』だけじゃないですかっ!?」

 

 ――狩りを始めて何度目かも分からないその疑問に行き当たるのでした。

 

 

 そりゃ、私にできる事は確かに少ないですよ?

 最近の狩りで随分とレベルアップしましたが、まだ合計レベルは130くらいしかないですし、戦闘技術だってジーニアス君に勝っているとは言い辛いですし、エンブリオだって持ってないただのティアンだから、もし……もし死んでしまったら、生き返る事はできないでしょう。

 しかし、この天地の、大名の娘として生まれ、剣の道を進むと決めたその日に()()()の為の覚悟は終わらせています。完璧に終了させているんです。

 友――友と呼んでくれた殿方と共に〈UBM〉との戦い――良いではないですか。まさしく、幼い頃より嗜んできた冒険活劇や英雄譚で見た様な場面ですねええ良いです。私も夢見る乙女としてそんな未来を妄想した事はありますともっ!

 私にできる全てを、命を賭してでも勝利を導きたいとそう思いますよ。それなのに一番攻撃が激しい〈UBM〉本体は完全にジーニアス君任せで私は取り巻きの相手をするのみって良い身分ですわね! いえ、確かに良い身分ですけど戦場ではそんな事関係ないでしょうっ!?

 確かにお父様からの依頼で私に配慮しなきゃならないという事情もあるかもしれませんが私がそれでは納得したくないですし納得できないです。それとも私には肩を並べて戦う実力もないのでしょうかっ!?」

 

「お、落ち着いて!? 春香さん多分興奮して色々駄々漏れだよ!」

「……はっ」

 

 ……ふぅ。

 つい、何度作戦を聞いてもはぐらかされてしまうから興奮してしまいました……

 それもこれも、何故か自信満々な癖に作戦の要点――一番重要な直接〈UBM〉と対峙する彼自身の事を教えてくれないジーニアス君が悪いです。

 信用されてない……という事は、無いと思うんですけど。

 

「そういう訳ですので、早く今作戦の詳細を教えて貰えませんか? 私にも、もっとやれる事があると思うのですが……」

「どういう事かは分からないけど、うーん……作戦はちょっとまだ教えられないし――どの道、作戦は変えられないんだよね」

「……?」

 

 教えられない、のはともかく、作戦が変えられないとは一体どういう……

 

 

「だって、今の春香さんの役目が一番重要で、一番危険になる可能性が高いからねー」

 

 

 ……はい!?

 【ライトエレメンタル】のステータスもスキルもそこまで危険ではない筈、なのに……

 

「それって、どういう……」

「とりあえず、今言えるのはそこまで……っと、【双尾狐】発見。行こう!」

「――はい、また後で聞かせて貰いますからねっ!?」

「それじゃ、今後は僕も違う話聞いてみたいね。他の〈UBM〉の話とか、過去の英雄の話とか」

 

 雑談に興じながらも、【双尾狐】を視界の端に捉え、【花一匁】を構える。

 昔話や英雄、〈UBM〉の話を楽しそうに聞きつつも、ジーニアス君は更に速度を上げてモンスターに向かう。

 森林の視界の悪さや足場の悪さを物ともしない、楽しげに笑みを浮かべながらも目線は【双尾狐】から離さない。

 その横顔も格好良い……のですが。

 

 

「……所で、この色眼鏡は何時まで付けてなきゃいけないのでしょうか?」

これ(【サングラス】)はあの〈UBM〉と戦うにあたって必須装備だから、とりあえずこのまま普段と同じ様に動ける様に頑張ってね!」

 

 し、締まらないです…………

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

8月10日(月)

 今日はまず手始めに、昨日までの狩りのお陰で【剣武者】のレベルが50になった為、早速ではあるけど転職――それも、初の上級職への転職をする事にした。

 ……ちなみに、以前の日記では直ぐに転職する者は少ないと書いた筈だけど、ティアンの人は上級職に就けるならばまず上級職に就くのが定石らしい。

 と言うのも、ティアンと僕達<マスター>では前提が色々と違う。全く違う。

 まずは転職条件――ずっとこの世界で生きてきたティアンの人にはまだこの世界に来て二ヵ月くらいしか経っていない<マスター>達と違い、その生の“積み重ね”がある。

 長い時間を掛けてコツコツとモンスターを討伐してきた者、ジョブクエストを達成して来た者、肉親や師匠、親友等の縁者から資金を借りる事もできれば組織内の人物の推薦だって取りやすいのは至極当然と言えると思う。

 勿論、懸念してた情報だって多くのティアンの犠牲と歴史の下に集めてきた膨大な資料とデータが残っているし、伝えられてきているのは間違いない。

 ……僕も少し、いや結構教えて貰ったしね。

 

 そして、何より――これは僕がこの早い段階で上級職に転職する理由でもあるけど、上級職は下級職と比べてステータスの伸びが非常に良い。

 例え死んでも蘇生できる<マスター>と違い、ティアンの命は一つしかない。そして、ステータスという物は身体に内包する生命力(HP)であり、魔力(MP)であり、力強さ(STR)であり、頑強さ(END)であり、他にも種々様々、兎角この世界で生きていくのに重要なモノである。

 その上、ティアンにとっては自分が就いているメインジョブは自身の身分や所属を表す物の一つとして扱われる為、上級職を得る事は社会的にも大きな意味がある事なんだとか。

 ……その慣習は<マスター>にも適応されるのだろうかとふと疑問に思うけど、どうなのだろうね。この世界を遊戯と思っている<マスター>なら抵抗なくドンドンジョブを変えて行く事もあるだろうけど……上級職への転職は推薦やジョブクエスト関連の条件があるから大丈夫なのかな?

 

 他にも才能だとか適性だとか、色々細かい事情はあるみたいだったけど、日記に書くには長くなるから後で勝に報告しておけばいいかな。

 ……前置きが少し長くなってしまったけど、そんな僕が転職した上級職は【剣武者】の上級職である【剣鬼】だ。

 【剣鬼】に転職する為の条件としては

 ①下級職である【剣武者】のレベルが50である。

 ②亜竜級以上のボスモンスターを自分で30%以上のHPを削って討伐する。

 ③合計討伐カウント500以上。

 の三つで、既に条件を達成していた僕は問題なく【剣鬼】に転職する事が出来た。

 

 【剣鬼】は特にSTRとAGIが良く伸び、それ以外の物理ステータスも多少は上がる典型的なAGI型物理戦闘職。

 上級職のステータスの上がりには期待が持てる。早めにレベルを上げて仕上げないとね?

 

 そんな訳で、転職して早速だけど再度【武士】ギルドで春香さんと一緒にジョブクエストを斡旋して貰い、レベル上げに勤しむ事に。

 とは言え、今回は先日みたいに効率の良い依頼を片っ端から……という訳ではない。

 【討伐――【小鬼祭祀】 難易度:四】

 【討伐――【双尾狐】(ツインテールフォックス) 難易度:四】

 【討伐――【大怨火】 難易度:五】

 と言った――所謂、“魔法使い”系統のスキルや特殊能力を持ったモンスターを相手にしたクエストを受ける事にした。この類のモンスターは普通のモンスターと比べて生息数も少ないから依頼が複数見つかるのは幸運だった……

 彼らの様な魔法やそれに類する特殊能力を持ったモンスターとの戦闘。それは――対象のUBM、【極光剣精 ラスリルビウム】自身も、勿論その取り巻きである【ライトエレメンタル】も光属性魔法を行使するエレメンタル――それらに十全に対応出来る様にする為の練習台として最適だったから。

 ついでと言っては何だけど、《フラッシュ・バン》による【盲目】対策にと揃って購入した【サングラス】を掛けたまま戦闘する練習も兼ねて行う。

 慣れないとこの暗い視界が致命傷になる可能性もあったからなぁ。事前に気付いて良かったよ。

 欲を言えば光属性の攻撃をしてくるモンスターが居れば良かったんだけど、野生のモンスターで光属性攻撃するのなんてこの天地には殆どいないらしい。確かにあまり想像できないものではあるけど、残念。

 

 ……僕だけなら一度戦った経験からある程度イメトレもできなくはないし、春香さんだって多少はその対処法等の知識はあるのだろうけど、やはり実際に戦う二人でパーティを組んでこういう練習をしておいて損はない筈だからね。

 特に、予定している作戦では春香さんには大量の【ライトエレメンタル】を相手にして貰う手筈だし、魔法攻撃には慣れて貰わなきゃね。

 その内魔力を感知して回避とか、出来る様になればいいんだけど……出来るかな?

 僕に出来たんだから、春香さんの境遇的にもできそうな気はするけど……

 

 

 

 

 

 

 

8月11日(火)

 今日も引き続きジョブクエストを斡旋して貰い、モンスター相手に戦闘練習とレベル上げの日々を送る。

 ……クエスト達成の為ではあるのだけど、随分と偏った日々を送っている気がする!

 

 代り映えしない日々だと日記に書く内容が少なくなりがち……だけどまぁ、お陰で僕も春香さんも大分レベルも上がってきて連携も上手になってきている。

 〈UBM〉討伐の依頼を請けた当初から既に上級職であった春香さんに至っては後数日すれば【光華武者】のレベルがカンストするだろうと思う。……期限的に、明後日に決行の予定だからちょっと間に合わないかな?

 その成果として元々の彼女の技量も併せて二人で連携すれば並の亜竜級モンスターであれば大した負傷も消費もなく狩れる程度になってきていた。

 とは言え、亜竜級以上の上位のモンスターになってくるとただそのモンスターのレベルやステータス以上にそのモンスターが持っている特殊能力、スキルの方が重要になってくるのだけど。

 その点で言えば彼女――春香さんはエンブリオのお陰でステータスでは勝っている筈の僕より何倍も貢献していたと言えると思う。

 何故なら、少なくとも今まで一緒に戦ってきたモンスター、すべてのスキルやステータスの傾向、ある程度の生態までも熟知している様子だったから。

 

 それは勿論、彼女の、幼い頃からの英才教育と彼女自身の努力の成果らしい。

 やっぱり、こういう世界に生まれたティアンならモンスターやスキルについても勉学として教え込まれるんだね。春香さんの家が大名家なのも理由の一つではあるのだろうけど。

 ちなみに、春香さんが学んだ事はモンスターやスキルの事だけではなく、この世界での歴史――過去に世に現れ猛威を振るったUBMや過去に起こった戦争、そしてそこで活躍した英雄達の悲劇や英雄譚、伝記や戦記や冒険活劇等も嗜んでいるらしい……戦いに偏ってるのはここが天地の国だからなのか、それとも春香さんの趣味なのかどっちだろうね。

 まぁ、僕的にはどちらでも構わないんだけどね。何て言っても僕もソッチの方面の話は大好きだからね!

 狩りの間に雑談として幾らか語ってもらったけど、本当に興味深かった……

 

 特に、今僕達が対峙しようとしている〈UBM〉との戦いに参考になるんじゃないかと記録として残っている伝説級の〈UBM〉について聞かせて貰ったのは楽しかった。

 伝説級――〈UBM〉の等級としては下から二つ目に位置しているけど、そもそも上に行けば行くほど少なくなっていくからむしろバリエーションとしてはこの辺りが一番多くて人気(?)があるらしい。

 そもそも最上位と言われている神話級の〈UBM〉なんて歴史上で十数体前後しか討伐されていないらしいしね。……記録されている限りでは、だけど。

 

 しかし、神話級ではなくても――話を聞いた伝説級ですら侮る事は出来ないと、そう思う。

 山よりも巨大な鬼族の巨人の〈UBM〉が、町一つを飲み込む業火の精霊(エレメンタル)が、無限の食欲で山脈一つを食い尽くした化け兎が、伝説級の等級を持つ〈UBM〉一体が国家に壊滅的な被害を与えた例などいくらでもあるらしい。

 酷い例では毒に特化した伝説級の〈UBM〉が国の水源まで辿り着いた結果、国一つを完全に死滅させたという事例もあるのだとか。

 ……その様な強大なモンスターとの戦いを乗り越え、むしろそれらを忘れずに生態系の調査・調整や巨体を誇るモンスターとの戦法を編み出すに至ったり、火元や水源を確認するマジックアイテムを作り出したりする教訓にしているんだから、本当にこの世界の人々(ティアン)は逞しいよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

8月12日(水)

 今日はリアルの時間で午前中までで狩りを打ち切り、〈UBM〉――【極光剣精 ラスリルビウム】と戦う準備の仕上げとする。

 時間を忘れて狩りをするのも楽しかったけど、何気にもう依頼の三十日の期限までデンドロ内時間で五日程しか残ってなかったからね……

 春香と二人して大白宮の露店を回って、光耐性や炎熱耐性の付いた装備や消耗品を購入し、装備の手入れも万全にする。

 春香は西白寺の家に戻ってしてたみたいだけど、僕はコテツと一緒に装備の手入れをする事に。……なのだけど。

 ……いつの間にかコテツが<デンドログラム・インフォメーション・ネットワーク>……通称<DIN>の腕章を付けていた。

 いやうん、あの組織自体は僕も春香やコテツ自身から聞いた事がある。

 中央大陸から離れた天地を含む世界中の大きな都市ほぼすべてに支部を有し、世界中のありとあらゆる情報を収集・発信する新聞屋……兼、情報屋だとか。誰が呼んだか国境なき情報屋集団なんて言われてた筈。

 家庭で役立つちょっとした情報からジョブやスキルやモンスターの事など実用的な物も、果ては世界情勢や国家機密に値する情報まで手にしているとか噂されているけれど真偽は不明。

 最近は急増した<マスター>の情報を求めて活発に動いているみたいだと、春香には聞いていたのだけど……

 

 どう考えても僕達の仕事としてこの世界の最新の情報を手に入れる為、だよね……?

 つい普通に遊んで楽しんでた僕としてはその仕事をコテツに任せっきりになってたのが凄く申し訳ないのだけど……!

 そう口に出す前に察せられたのか、コテツは笑って<DIN>に所属した経緯を説明してくれた。

 役割分担だとか、適材適所だとか、色々言われたけど……うん、本当に甘いなぁ……

 とりあえず、今後何かしら取材に行く時には手伝ったり、戦闘力をあてにして貰って少しずつ返して行かなきゃね。……【記者】のジョブもあってますます戦闘力の差は開いちゃっただろうし。

 本当は〈UBM〉との戦いという、特上のネタを提供しちゃいたい所ではあったのだけど、今回の相手だとそれはちょっと無理があるだろうからね……残念。

 

 ともあれ、最後の準備も終えて泰央氏に出発の報告をして春香と一緒に<遺跡>に行く事にした。

 ――決戦は明日。準備は万端、だけど細心の注意を払って、依頼を完遂しなきゃね!

 

 

 追記:

 仕上げの狩りの最中、カシミヤとまた戦った時の事を話したら、「友達なんだから、私も名前を呼び捨てで呼んで欲しい」って言われた!

 そういえば、カシミヤの事は自然と呼び捨てにしてたよね……という事で春香の事も呼び捨てで呼ぶ様にしてみた。

 意識してなかったけど、勝や明日香との関係とは違う、凄い新鮮な気持ち……うん、これが友達かぁ。 

 

 

To Be Continued…………




 なお、毒に特化して国を滅ぼした〈UBM〉は百万人単位のティアンのリソースを吸収して一瞬有頂天になったものの、濃縮されまくった毒が希釈され切れず海まで流れ込んで【海竜王】の怒りを買って瞬殺されたというオチまで伝えられているとか。

ステータスが更新されました――――

【剣鬼】:典型的なAGI型物理戦闘型上級職。
 スキルは下級職である【剣武者】の発展形や申し訳程度の抜刀術による遠距離攻撃スキルである《火走り》や範囲攻撃スキルである《満月斬り》を持つ。
 強力なスキルはそんなにないが、そもそも《居合い》《剣速徹し》が十分完成されたコンボなのでそれを上級職の高いステータスで行うだけで脅威ではある。

【サングラス】
『頭防具』
 日差しや強い光から目を守る機能を持った保護防具。
 若干の視界制限効果を持つ。

・装備補正
 【盲目】耐性+150%
 視覚に影響を与える状態異常耐性+50%

・装備スキル
 なし

・装備制限
 なし


 漸く次回より〈UBM〉戦です!
 ……分割で2話に分ける可能性濃厚です!
 ジーニアスの作戦とは一体、危険なポジションとは……
 それでは、次話もよろしくお願いします!
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