……申し訳ありませぬ!
分割分中編です……まさかの3話構成。早く日記形式に戻りたーい。
それでは本編をどうぞ!
■<遺跡・浅層>【極光剣精 ラスリルビウム】
――なんだコレは?
――なんだコレは?
――なんだコレは?
【極光剣精 ラスリルビウム】という、一本の〈UBM〉がいる。
〈UBM〉となりて、
彼はその放浪の末、若干の予感と――その奥底に秘める莫大なる
入り口に屯していた人間を殺戮し、ガードロボットを破壊し尽くし、<遺跡>を奥へ奥へと進んでいく。
しかし……その莫大なリソースを秘めている筈の最深部へ辿り着く事はできない。
それはそうだろう。その<遺跡>は先々期文明時代より残されし古の遺跡。
経年劣化や元々解放されていたのも含めて中層までは現代の
その最奥へ繋がる扉のプロテクトは至極単純に――唯々通さぬ“錠”付きの扉である。
経年劣化を防ぐ魔術防護も掛けられているそれは、正式な“鍵”を用いぬ限り絶対に開かぬ様、先々期文明時代最大の天才が作成した仕掛けの一つだ。
魔術的・物理的・強度的・機械的・そしてスキルの仕掛けも含めて作られたそれは“鍵”を持たぬあらゆる者を阻む極悪の罠である。
何せ、この世界において単純な扉など単純な物理的な破壊、霊体によるすり抜け、一ミリメテルもない極小の隙間をスキルで特典武具であらゆる手段で通り抜ける物もいれば
……最も、扉は対“化身”用に作り上げた最新式の一つではあったが、果たして“化身”が本当に通り抜けられないのかというと定かではないのだが。
そして、当然ながらただの伝説級〈UBM〉の一体である【極光剣精 ラスリルビウム】にその扉を通り抜けられる道理は存在しない。
彼が獲得したスキルの一つである《極光変生》には自身を
それから数日も扉に対して攻撃を続けるも、扉はビクともしない。〈UBM〉である自身の攻撃を受けて傷一つ付かないのを見て、彼は扉を破壊する事を諦めるに至る。
ならば<遺跡>の最奥に眠るリソースを諦めるのかと言うと、それも選ばなかった。
それは、彼の……【ラスリルビウム】の歪な知性によるもの。
――扉に鍵が掛かっているなら、鍵を探せばいいのだろう。
……なるほど、確かに道理だ。
既に探索され尽くしている<遺跡>の中層までに“鍵”が残っている筈がなく、そもそもこの<遺跡>内に鍵が残っているのかも、そして……長い長い歴史の中で既に“鍵”が喪失している可能性も考慮できていないが。
しかし、憎悪に、怨念によって狂っている【ラスリルビウム】はその様な些事など気にしない。
意気揚々と<遺跡>内を気ままに徘徊しながら“鍵”を探している――そんな時だった。
“アレ”に出会ったのは。
それは、非常に小柄な人型だった。
金色の髪に整った顔立ちの少年。その手に長剣を携えてて自身に……人々を殺戮して回っていた伝説級〈UBM〉、【極光剣精 ラスリルビウム】に戦意を向けていたのだ。
また人間共が来たのか、と憎悪の怨念を爆発させようとして……気付く。
――コイツ、
そう、自身のスキル――《
◆
【極光剣精 ラスリルビウム】という、一本の〈UBM〉がいる。
伝説級〈UBM〉として……いや、伝説級〈UBM〉の中でも特に
〈UBM〉なのだから危険なのも当然なのではあるが……だがちょっと待って欲しい。
彼の、【ラスリルビウム】の
確かに純竜級を越えた高いステータスと言えるが、HP、MP、SP以外に10000を越えるステータスはなく、ステータスだけで見れば伝説級モンスターの基準にも届かない、純竜級に毛が生えた程度の物だ。
では、彼のスキルが脅威なのだろうか? と言えば……その通りだ。
《極光変換》は継戦能力こそ強化するが直接の戦闘力には寄与しないが、《極光変生》はその限りではない。
《極光変生》は自身を霊体に――いや、
触れる者は《極光剣》により強化された極光の餌食となる強力なスキル。疑似的に実体を霊体に置換しているとも言える為、単純な物理攻撃も無効化する、強力なスキルだろう。
……果たして、本当にそれだけだろうか?
彼の光属性魔法による攻撃は、《極光剣》による加算を入れても8000から9000前後と、超級職なら、或いは支援や耐性を万全にした上位の武芸者であれば《極光変生》の攻性防御を無視して攻撃できるし、遠距離から魔法の撃ち合いで勝てる者もいるのではないだろうか。
だが、現実にはそうはなっていない。
モンスター相手ならばそれも理解できる。耐性や連携を重視するモンスターなど早々いないし、【ラスリルビウム】は偶然にも他の〈UBM〉と遭遇する事が無かったから、その単純なステータス差を考えればそれも当然だろう。
しかし、人間は……ティアンはそうではない。
【ラスリルビウム】が殺戮して来たティアンの中には合計レベルをカンストした最上位の武芸者によるパーティも、事前情報から耐性を重視して来た者も、超級職間近な達人だって存在していたのだ。
それを成した要因は……【ラスリルビウム】が〈UBM〉になる前から所持していた二つのスキル。
固有スキルですらない、モンスターの汎用的なスキルである《
《人間殺し》LvEX:パッシブスキル。
種族:人間に対して行なう物理攻撃・魔法攻撃によるダメージを10倍に増加させる。
人間に対して恨みや憎しみを持つモンスターが習得する汎用スキル。
《殺人魔剣》:パッシブスキル。
種族:人間に対して行なう物理攻撃・魔法攻撃によるダメージを相手の防御力・耐久力・耐性を無視した攻撃にする。
人間を殺す為の/殺して来た武器型モンスターが習得する汎用スキル。
【退魔師】や【神殿騎士】、【漁師】なども習得する、特定の種族に対する攻撃のダメージや攻撃力に補正を掛けるスキル群だ。
それは特定の種族ばかりが出没する狩場であったり、強力な〈UBM〉等ボスモンスターに対するピンポイントの戦力には最適なスキルだが、一転他の種族を相手にする場合は何の効果も発生しない……評価の分かれるスキルでもある。
当然ながら人間範疇生物と同様にモンスターも習得するのだが、ジョブを持たないモンスターでは生来のスキルであったり、天敵関係の種族に対する特攻スキルを持っていたり……或いは、激しい憎悪や憤怒の念より習得する事もあるのが、人間との大きな違いだろう。
その点で言えば【極光剣精 ラスリルビウム】は、
最終奥義を模した、最期のオリジナルスキルによって、その剣身の礎に備わった、鍛冶師の青年の長年の怨念。
その怨念に長く長く浸かりきり、総身を狂気と憎悪に支配された、殺人の剣。
それは、本来鍛冶師の青年が設計した物ではあり得ない。
恨みと憎しみこそあれど、彼が目指した物にはそんな“余分”が入る余裕など無かったから。
彼のすべてを捧げて造ろうとしたのは、彼が目指したのは……限界まで、いや限界を越えて鍛え上げられた至上の武器。
彼の技量を、彼の経験を、彼の適性を、彼の才能を……すべてを賭して、それを少しでも強くしようとしたのだ。
しかし、彼の願いは歪んだ
捧げられた怨念は極光の剣を染め上げ、殺戮の魔剣へと変性した。
彼の剣に秘められていた能力を糧に、生まれ変わって力を得て、モンスターに成ったその剣が、生まれ変わったその時点で《殺人魔剣》のスキルを持っていたのも当然だろう。
こうして、凶悪な種族特攻スキルである《人間殺し》と《殺人魔剣》が揃ったのだが……この二つだけでは、その実そこまで脅威という訳ではなかった。
確かに、ダメージが爆発的に増加し、あらゆる防御も耐性も無視する、最上にして最悪の攻撃用パッシブスキルと言えよう。
だが、それは……ダメージを与えられればの事で、更に言うならば
事実、今までの歴史の中でこの二つのスキルを所持したモンスターは何度も現れているが、大して活躍もせずに葬り去られている。
それも当然。この世界において近接戦闘職として隆盛を誇っているのは
熟達したAGI型の戦闘職であるならばAGIで勝るモンスター相手であれば一度も被弾せずに勝利する事など造作もない。
しかし……しかしだ。
この魔剣の〈UBM〉、【極光剣精 ラスリルビウム】の得手とする攻撃手段は……
――絶対不可避の、耐性も魔法防御力も無視する、一発に付き80000から90000もの特大ダメージの光線。
――耐久型の超級職でなければ一発でHPを全損する絶大の攻撃力に、《極光変生》による防御能力も同様。
――それだけでもどうしようもない程に厄介なのに、怨念を基にしているからか、自身に向けられる念に非常に敏感だ。
――不意打ちも超級職でないと難しいだろう。しかしその隠密に優れた超級職が〈UBM〉相手に一撃で相手を斃せる訳がない……
――一撃で決められなければ、人間相手だと発狂したかの様に光線を乱射され、打つ手は無くなるだろう――
そう、それこそが戦闘力を伝説級――いや、
典型的な条件特化型に分類されるであろう【極光剣精 ラスリルビウム】の脅威であった――
◆
対人特攻スキル――反応しない。
剣身による攻撃――当たらない。
相手からの反撃――避け切れない。
常勝だった光線――倒し切れない。
取り巻きの
――なんだコレは?
疑問と困惑で思考を埋め尽くしながらも再び《レイ》による攻撃をしても――小さな結界により阻まれ、致命傷にはならない。
――いや、この時点でおかしい。初撃は直撃したのに、何故次撃で既に対応できているのだ?
二つの特攻スキルが反応しないのならば、相手は種族が人間ではないのだろう。天地であるならば【鬼武者】を始めとしたジョブならば効果がないという事は知識では知っていた。
――否。相手の
相手のレベルであれば、仮に対人特攻スキルがなくても十分に致死に至るダメージを与えられる筈なのだ。なのに何故?
――そもそも、相手の
そのステータスの強化も、特異なる種族変化も、〈エンブリオ〉の賜物であるなどとは……遥か昔の知識を基に活動するその〈UBM〉は気付かない。
――ああ疎ましい、煩わしい。精霊達は何をしているのか……!
種族特攻スキルを使ってきた自身が、種族特攻スキルである《退魔封印》に縛られてステータスが鈍る。召集した精霊達に当たるも状況は全く改善しない。
――そもそも、何故このステータス差で当てられぬ? 避けられぬ? ――なんだコレは、
武芸者と深く接する鍛冶師だった青年、その記憶を薄らとであっても持つ【ラスリルビウム】であっても……天地の武芸者達の“技”の理解など鍛冶師である身で出来る筈がない。
自分達にステータスで圧倒的に勝る純竜級モンスターや、〈UBM〉と戦う為の、修練を鍛錬を訓練を、モンスターを学び技を研ぎ澄まし身体を鍛え心を燃やし覚悟を秘めた武芸者達の技巧など、知る由もなかったのだ。
今まで遭遇した武芸者は即座に光線で殺してきた。人間を殺した昏い喜びと共に糧として吸収しながらも……技巧は吸収できるモノではない。
訳の分からぬ感情を感じながらも、【ラスリルビウム】は《極光変生》をも使って敵手の少年を攻め立てる。
――しかし、それすらも咄嗟に回避されてしまう。今まで以上の速度だったと言うのに。
それどころか――笑みすら浮かべて此方を見ているではないか。
――なんだコレは! なんなのだお前は!?
万感の想いを乗せてそう叫びたかったが、声帯のない長剣の身ではそれも無理という物。
【ラスリルビウム】は間違いなく格下である眼前の少年を撃退する為に……全力を尽くした。
それから更に数分が経ち、何とか少年を撃退する事に成功する物の……【ラスリルビウム】の心は晴れない。
晴れないのは確かであるのだが……ここまで激しく心をかき乱される事のなかった【ラスリルビウム】は、今の自身の心境すらも、正確には把握できていなかった。
確かに、先程の戦いは珍しくも苦戦した。
だが、苦戦したとは言っても此方はまともに傷を負う事はなく、相手は回復も追い付かない状況での敗走……殺せなかった事は残念ではあるが、完勝と言っても過言ではない筈だった。
なのに何故……?
“鍵”を探す事も忘れ、<遺跡>内をふらふらしながらも思索に浸る。
しかし、怨念によって歪み凝り固まった【ラスリルビウム】では、その答えは見つからない。
見つけたガードロボットを潰しついでに暇を潰す日々だが、人間が現れない事もあってやはりどうにも気は晴れない……
――そういえば、自分は何故この<遺跡>に来たのだったか……?
混乱し続けていく思考は乱れ飛び、そんな初歩的な事も思い返してみたりもする。
一瞬、自分で自分にしたその問いに呆けてしまう。
しかし、扉を……“錠”を見れば、流石にそんな状態の彼でも思い出す事が出来た。
――ああ、この先に莫大な
そう、この<遺跡>の最奥には莫大な量のエネルギーが眠っている。
――そう、そのエネルギーを使って、もっと強くなって…………
――力を蓄えて、強くなって……どうしたいんだろう?
【極光剣精 ラスリルビウム】が、そうやって何かに思い至ろうとしたその時。
自身の方へ向かってくる、何者かの気配を察知した。
あの少年が、再びここへやってきたのだ。
……運命は、そうして結実する。
To Be Continued…………
ステータスが更新されました――――
【極光剣精 ラスリルビウム】
種族:エレメンタル
主な能力:極光変換
最終到達レベル:??
発生:認定型
作成者:岡久正忠
備考:典型的にして極まっている程に条件特化型。
相手が種族:人間であれば戦闘型の〈超級〉でも敗北が見えるが、従属モンスターを使用する系統のジョブなら準〈超級〉どころか普通のカンスト<マスター>でもまともに勝ちの目が見える程の偏ったバランスのモンスター。
疑似《極竜光牙剣》とも言える《極光変生》のスキルも持つが威力が足りないので実は人間であってもあそこまで脅威ではない。
むしろ、触れた相手が一瞬で蒸発する(恐らくダメージにして数百万~数千万)威力を持つ【グローリア】の極光ブレスが色々と規格外過ぎると言えなくもない。
ちなみに、莫大なリソースを狙って<遺跡>にやってきたが、実は素質的に伝説級が限界なので入手してもステータスや細々としたスキルレベルが多少上がる程度。
疑似最終奥義とは言え上級職が作った物なのでそこが限界だった様だ。
……まさか本番直前でストップとは、おのれジーニアス!
まぁ、多少短いですがここで切るのが美味いかなと思ったので、後編に続きます!
【ラスリルビウム】は割烹で多少言及されていた、「UBMの中に割と居るらしい対「人間」特効なスキル持ち」というコンセプトでした。
……わりといるってどれくらいいるんでしょうね。UBMの全体の中で1割くらいはいるのかな?
それでは、次回こそ決着です。
次回も多分短めになるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします……!