無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:メタられ過ぎて泣けた。

〈UBM〉戦、漸く分割分ラストです!
……分割分殆ど〈UBM〉の説明だったじゃねーか! って突っ込みは自分でしてますのでもう必要ないと思います(すっとぼけ
それでは本編をどうぞ!


第十九話 相性・作戦・勝利!

□<遺跡・浅層> 【剣鬼】ジーニアス

 

 そこは大白宮の領地にある<遺跡>、その浅層にある広間。

 不思議な光沢を放つ金属色に塗装された床や壁面や天井が垣間見える。

 今のこの世界の技術力ではあり得ないその光景を作り出したのは、先々期文明時代という一つの大きな時代なのだけど……それは今は関係ない事だ。

 

 重要なのは……僕らの相手が、その広間に陣取っている、という事。

 魔力探査の術で“そこ”に居る事を確認した僕と春香は、準備を万全に整えた上で――その広間に踏み込んだ。

 

 

 ――それとほぼ同時に、広間のやや奥の離れた場所から、激しい光が迸る。

 

 極光をその身に宿した長剣が、侵入者の人間を殺さんと迫り――

 

 

「――良し! 作戦通り、お願い!」

 

「……ええ、任せましたからね!」

 

 

 ――僕が春香の姿を〈UBM〉――【極光剣精 ラスリルビウム】から隠す様に前に出て、その長剣を迎撃する。

 

 呆れる程に愚直に僕らに向かって突き進んでくる敵手を、《斬魔剣》を以て打ち払う。

 以前と違って上級職となり、各種スキルによって強化されたその一撃は、〈UBM〉であっても無傷とは行かない。

 

 それも当然だ。彼が持つ下級職の一つ、【退魔師】には優秀な種族特攻スキルが揃っている。

 特定の種族にしか効果がない代わりに、他のスキルと比べて格段と高い効果を有するそのスキル群は、適切な相手に使用できれば他のどのスキルよりも効果的だ。

 

 

 ――更に、打ち払い、跳ね飛ばされた【ラスリルビウム】がその体勢と()()から立ち直る前に、《退魔封印》を仕掛け、更なる優位を保つ。

 

 (――掛かりが微妙に悪い。《退魔の教え》のスキルレベルは上がってるけど、これがモンスターの学習能力なのかなっ!?)

 

 内心で舌打ちしながらも眼前と左右に多重に複数の《簡易結界》を展開する。

 直後、再び刃をこちらに向けてきた【ラスリルビウム】が《レイ》を発射しながら僕に――いや、()()()()()向かって全速力で突撃して来る。

 

 

「――予想通り! 作戦は継続でっ!」

「了解! ……! エレメンタルが来たわっ!」

 

 背後の春香の声と同時に、周囲に複数の光球が出現し始まる。

 突撃して来た【ラスリルビウム】を初撃で勢いと速度を殺し、次撃で再び弾き飛ばす。

 

 ――作戦の都合上、()()()()()()()()()()()から、手が限られるね。

 とは言え、相手の攻撃も単調だから、そこは僕が頑張るしかないね。

 そう思考しながら――春香に合図を出す。

 

「――お願いしますっ!」

「アイ、サー!」

 

 

 事前に作戦で取り決めていた通りに……全速力で前身。

 ステータスでは僕にも劣る【ライトエレメンタル】達を振り切り、春香に背を任せ【ラスリルビウム】に肉薄する。

 

 〈UBM〉としては高いステータスを持たない【ラスリルビウム】ではあるが、それでも今の僕らと比べれば数倍のステータス差がある。

 ……だが、()()()()()()()()()()

 

 ――【ラスリルビウム】の混乱と困惑が今でも容易く感じ取れる。果たしてそれは以前感じた物よりも格段と大きい物。

 

 (混乱、困惑、茫然――意識の空白……反応は、想定以上かな?)

 

 しかし、それでも流石は〈UBM〉。

 追撃に放った《斬魔剣》を必死で回避しようと、咄嗟に光を爆発させる例の上級魔法を放たれて爆風によって剣の軌道が大幅にズレる。

 

 【ラスリルビウム】もそれに合わせて反撃しようとするが――《居合い》によってAGIが二倍となり、AGI差が縮まった今であれば、容易く弾き返せる。

 

 

 

 

 ――第二段階、完了……!

 

 

 【ラスリルビウム】を一度弾き飛ばし、【ライトエレメンタル】も突破して肉薄した僕と春香。

 【ラスリルビウム】と【ライトエレメンタル】が前後から挟み撃ちにして襲い掛かってくるのを、背中合わせになって互いの相手と戦い合う形勢。

 

 そう、()()()()()()()()()()()……!

 それを察した僕は、この時点でほぼ勝利を確信できる程に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その作戦を考え付いたのは、前回この<遺跡>に来た帰り道……【極光剣精 ラスリルビウム】から敗走した後だった。

 敗走、とは言っても当初の目的だった威力偵察は十分以上に上手く行った。

 今回の戦闘で手に入れた情報でどの様に戦うか、僕と敵手の相性は非常に好相性だった為、まともに期間内でレベルを上げスキルを技を鍛えて装備も対策をすれば、順当に勝てるのではないかと思っていた……のだが、ここで一つ問題とも言えない様な問題が浮上する。

 

 そう、それは春香さんの事だ。

 この依頼の依頼主は彼女の父親であり、大白宮の大名でもある西白寺泰央。

 武闘大会の夜の宴の席で、【陰陽師】ギルドで転職するにも何度か話した事のある大物。

 ……この世界、この国における世界観に彼の言動と、あの説明の席に春香さんを連れてきて同行させる様に言うのだから、組み合わせればその意図も自然と読めるという物。

 

 それはつまり――“娘に〈UBM〉との戦いを経験させてやって欲しい”という事。

 ……僕だって〈UBM〉との戦いは初めてだし、二人揃ってレベルも全然足りないのに本当に無茶を言うよね。

 ただ護衛したり見学させたりするだけじゃなく、経験させるとなると、今回の〈UBM〉は非常に難しい相手だ。

 ステータスも伝説級〈UBM〉の平均と比べれば低そうにも思えたが、それでも僕らとの差は歴然。

 その上で、回避も防御も許さぬ光速の魔法を使って相手を…………?

 

 

 

 何かが引っかかった。

 引っかかったのは、そう。あの〈UBM〉の戦い方。

 事前には非常に好戦的で、人を見かけては即座にその相手を惨殺する凶悪な〈UBM〉だと聞いていた。

 しかし……今しがた戦った〈UBM〉は、聞いていた印象からするとかなりイメージが異なる様に感じた。

 

 

 ――<遺跡>内で対峙してから数秒の硬直があり、その後焦る様にこちらを攻撃してきた事。

 

 ――カンストの耐久(END)型武芸者ですらも瞬殺されているというのに、幾ら《光天使の身体》で耐性があり、《退魔封印》により若干ステータスが落ちているとは言え光線が直撃しても僕のHPを半減()()にしかできない攻撃力。

 

 ――狂気と憎悪に塗れた様な、という形容すら使われていたのに、対峙し続けて感じられる敵手の感情は……疑問や困惑と混乱に溢れ、単調な攻撃は更に精彩を欠いている様に思えた。

 

 それらの要素と同時に先程の戦闘での様子を再度追憶して……相手の、【極光剣精 ラスリルビウム】の特性をある程度掴んだ。

 

 

 恐らく、先程の戦闘では何らかの制限が掛かっていた事。それは間違いない。

 僕に依頼を出される前後であの<遺跡>には暫く近付かない様に触れは出されていたし、新しい死体も見当たらなかったから、クールタイムやMP、SP等による問題ではなないだろう。

 では、その原因は……僕自身。

 

 ジョブ、は【陰陽師】だから違う。ならば〈マスター〉である事、光耐性が一定以上ある事、種族が天使である事、性別や年齢等々……

 ……情報から色々除外していった結果、多分、〈マスター〉である事か天使である事、そのどちらかが原因だろうと思う。

 後々大白宮に帰って調べた結果、〈マスター〉かどうかで反応が変わる〈UBM〉や、天使……いや、人間に対して特攻的な反応、スキルを持つ〈UBM〉は一定数居たらしいから、間違いない。

 

 だから、この時点で既にその()()は決めていた。

 春香さんと一緒に戦い、〈UBM〉との戦いに()()もできるであろう作戦を。

 

 うん! これなら依頼を完璧にこなせるし、僕も動きがかなり楽になるし、一緒に鍛錬とか連携とかもしてみたかったし、丁度良いね!

 

 

 

 

 

 ――その作戦は、一言で言えば……春香で相手の敵愾心(ヘイト)を煽る、という事だった。

 

 常にジーニアスが【ラスリルビウム】と春香の間に陣取り、春香への直接攻撃を防ぎつつ相手取る。

 今回の様子から、そして予め得ていた情報からすれば、最悪でも標的である筈の春香への執拗的な敵愾心により更に行動が単調になるだろうし、運が良ければ今回以上の精神的な動揺を狙えると考えた。

 実質的に春香を庇いながらの戦闘、という事になるかもしれないが――今回の戦闘の様子からすれば、レベル上げと対策を怠らなければ問題はないだろう。

 それまでの期間で春香と連携の練習もすれば尚良し。更に配置によっては【ライトエレメンタル】を任せるつもりだから頑張りたい所だ。

 

 

 ――やれる。

 

 苦戦していた問題を綺麗に解けた様な達成感。

 無意識に微笑を浮かべつつ、それを感じ取ったジーニアスは、早速行動を始める。

 解答の為のピースを揃える為に――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それからは前述の通り。

 

 物理ステータスを上げる為に【剣武者】に、【剣鬼】に転職した。

 

 ジョブを更新して新たに習得したスキルの使い心地を確かめた。特に《居合い》と《閃》は相手を春香に近付けぬ対処の為には間違いなく重宝するだろうから、その速度に慣れる為に。

 

 スキルレベルを上げる為に様々な戦闘を繰り返した。

 光線を減衰させ、一発で破壊されるとしても相手の行動を阻害できる《簡易結界》や、単純に攻撃力を上げる為に《退魔の教え》《剣修練》《剣速徹し》もこの期間で上げられるだけ上げた。

 

 二人で連携の練習をし、仮想敵として遠距離攻撃や魔法攻撃、特殊攻撃を行う敵との戦闘もやってみた。

 その過程で更に親密になれたのは、うん、予想外の嬉しさだった。

 

 更に、【盲目】耐性や炎熱耐性、光耐性と言った直裁的な対策の装備を揃え――

 

 そして、今全ての準備を終えここに至る。

 

 相手の行動も事前の想定通りに、理想の隊形で僕は【ラスリルビウム】と対峙している。

 

 

 

 

 

「★▽@、@◎∠☆? 〇Σ≪*Л@――――!」

 

「残念だけど、流石に僕も《魔物言語》は習得してなくてねっ!」

 

 軽口を叩きながら、《斬魔剣》と《閃》を織り交ぜた追撃を怠らない。

 〈UBM〉のSTRを相手に鍔迫り合いはやってられない為、攻撃を攻撃に合わせるしかないが、それで十分。

 前回と違って、新たに習得したスキルや鍛え上げたスキルによってダメージは更に加速している。

 

 定期的に《治癒符》と《簡易結界》を張り替え、状況を膠着させていく。

 相手は三条の光芒……《デルタレイ》も使って来た。更に火力を上げ、障害である僕を殺す腹積もりなのだろう。

 しかし、その内の一つは《簡易結界》に減衰させられ、残る二本が直撃しても……合計で、HPは二割も減少しない。

 

 《護符》のスキルレベルの強化や、各種物理ステータスと共にHPも強化、更には《光天使の身体》だけではなく、装備による耐性スキルも複数付与されている。

 既に、その〈UBM〉のメインウェポンは絶対の脅威には成り得ない。

 

 それを察しているのかいないのか、不格好な突撃を繰り返す【ラスリルビウム】。

 

 

 (――実は、属性耐性の効かない物理攻撃の方が対処が難しいんだよね)

 

 内心でそう呟きながらも、《閃》で剣身の側面を叩き、《斬魔剣》で追撃を掛ける。

 既に背後の数メテル先は広間の壁まで追い詰められている【ラスリルビウム】に逃げ場は、ない。

 

 《フラッシュ・バン》で視界を奪うのも、光の爆発魔法でノックバックさせるのも。

 勿論、即座に敵を排除する方法も……ないだろう。

 

 

「Φ×Νд∀∀∀――!!!」

 

 激情、激発。

 

 【ラスリルビウム】は切り札である《極光変生》も発動させて窮地を脱しようと足掻く。

 しかし

 

 

 

「――甘いね」

 

 

 極光と化しても、霊体と化しても……エレメンタルの本領を発揮した所で、窮地を脱するには至らない。

 そもそも霊体などの《物理攻撃無効》の相手にだって攻撃を行う【退魔師】のスキルを使用しているし、既に逃げ道は《簡易結界》によって魔法的に塞がれている。

 簡単に破壊できるとは言え、一手間必要なそれを行う為に背中を見せ、隙を見せればどうなるかなど新人でも分かるという物だ。

 ステータスは多少は上がる。だが……それは極端な上がり方ではない、オマケ的な物だ。

 

 (――それでも、ステータスで僕らが劣っているのは事実だったから……もっと技量があれば、違ったかな)

 

 そう思って惜しみつつも、攻撃の手を緩めない。

 高くなったステータスは相応に侮れないし、何よりも

 

 

 

「Νд∀∀∀――!!」

 

 

 狂った様に光線を四方八方に乱射する【ラスリルビウム】。

 その光線の太さは――先程の物よりも確実に太くなっている。

 

 (あの状態って、やっぱり光属性魔法の威力、跳ね上がってるよね。《護符》の張り替えと《簡易結界》を――)

 

 

 

 その時だった。

 

 

 ()()()()()()()が、全身に広がっていく。

 

 

 

「……やっぱり、お誂え向きだね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

■【極光剣精 ラスリルビウム】

 

 

 ――殺す

 ――殺す

 ――殺すううぅぅぅぅ!!

 

 

 その()()を意識の端に捉えた瞬間、いつもの様に思考は憎悪へと塗り潰された。

 沸きあがる殺意の念。

 抹殺せよ、殺戮せよ、鏖殺せよ、虐殺せよ、と内側から声が響くのが、何故か自覚できる。

 

 気が抜けていたからか、何故だか常の様に一緒に殺意の念に染まるのではなく、まるで衝立でもあるのではないかと思う程別々の思考を紡ぎ出している。

 だが、だからと言ってやる事は変わらない。

 殺意の衝動に突き動かされるままに殺すのだ。

 私を認めなかった者を、私を笑い者にした者を、私を蔑ろにした者を、私の邪魔をする者を。

 

 ……しかし、それはどうやら難しいらしい、と混乱した思考は珍しく正答を紡ぐ。

 

 相手は二人。片方は以前戦った少年、もう片方は素早い動きの人間の少女。

 

 ――殺す。殺して、強くなる。

 

 強い。

 かの二人の剣士は……自分よりも強いと、自覚できてしまうのは何故だ。

 否。ステータスは圧倒的に自分が上なのは間違いない。

 多彩なスキルを用い、スキルの効果を受けてもいるが、それでも自分の固有スキルの方が強力なのも紛れもない事実の筈だ。

 それなのに、それなのに……何故?

 

 ――殺す。殺せ。殺そう。殺して。

 

 それは……()()()()

 至上の剣を目指した自分だからだろうか。いや、以前だってそんな知識は全くなかったのだから、そんな事はない筈だ。

 だが……分かってしまう。理解してしまうのだ。

 理を凝縮したかのようなその動き、共に僅かの乱れもなく自分とその同属のエレメンタルを攻め立てるその鋭い剣気。

 剣の身だと言うのに……まだそんな事も理解していなかったとは。

 

 ――許さぬ。認めぬ。やらせぬ。諦めぬ――! こんな事では、こんな所では――!!

 

 嚇怒と憎悪と失望が吹き出す。

 何故だ? 世界にはこんなにも強き担い手が居るのに、何故――!!

 

 過ぎ去った過去に対する恨みが、妬みが、怒りが、悔いが、憎しみが――【ラスリルビウム】の核から……いや。

 全身から湧き上がってくる。それは捧げられた怨念ではなく――【ラスリルビウム】という一体の〈UBM〉が発する激情だった。

 

 

 

 ――こんな事なら、思考なんていらなかった。唯々怨念で動くだけの呪いであるのなら、自分は……!

 

 ……最後の時に、窮地の時に兼ねてよりの曇りを晴らした【ラスリルビウム】は、何らかの枷を一つ外した。

 出力が増加する。《極光変生》を発動させる……消耗が激しかったソレは、随分と消費が少なくなっている様に感じられた。

 

 

 ――これなら、この力でなら――!!

 

 もはやHPは四割を切り、レッドゾーンに突入しようとしている。

 《自動再生》はあっても、逃がす気は欠片も無いであろう相手を前にして活路を見出す余裕はない。

 

 

 ――ならば、差し違える覚悟を以て、剣として敵を斬り伏せるまで!

 

 強化された《極光変生》の副作用により、更に強化された光線を乱射して、眼前の少年を全力で刺し貫かんと吶喊を。

 

 

 

 

 

Σ、ε……!?(な、に……!?)

 

 

 更に強化されたステータスによって、今まで以上の速度で行った不意を突いた筈の攻撃は。

 

 全身を光輝かせた少年の、()()()()()()()()()()()()を以て防ぎ切られた。

 

 

 

 〈UBM〉にそれは理解できない。理解できたとしても……そんな理不尽を、認めたくはない。

 彼の、〈マスター〉が持つ〈エンブリオ〉が、今まさに進化した事、などは。

 

 

 

■■■、■■(反撃、だよ)!」

 

 呆けている間に、強烈な一撃(斬魔剣)を直撃して食らってしまう。

 

 ――貴様は、貴様はァ……!

 

 再び激情が燃え上がるが、衝撃で《極光変生》は既に解けてしまった。

 しかし闘志は消えず、むしろ更に光量(MP)と怨念を増やし、なれば削り切らんとばかりに光の乱舞を見舞わせる。

 

 

 そして、それも進化した〈エンブリオ〉の耐性で強化以上に軽減されてしまう。複数の防御スキルで更にダメージを抑えられてしまう。

 

 万策尽きた。そう言っても過言では、ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それでも、それでもォオォ――!!!

 

 

 そう、それでも【ラスリルビウム】は最期のその瞬間まで全力を出し尽くした。

 

 その様子は、彼の製作者の様でもあったが……その最期の輝きが何だったのか。絶体絶命の状況の中、何故そこまで足掻いたのか。何を想って……

 

 それを知る者は、特典武具の(リソース)へと消えて行った【ラスリルビウム】本剣以外、誰も分からない…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇

 

□<遺跡・浅層> 【剣鬼】ジーニアス

 

 

 

 【〈UBM〉【極光剣精 ラスリルビウム】が討伐されました】

 

 【MVPを選出します】

 

 【【ジーニアス】がMVPに選出されました】

 

 【【ジーニアス】にMVP特典【極光天輪 ラスリルビウム】を贈与します】

 

 【クエスト【討伐――【極光剣精 ラスリルビウム】】を達成しました】

 

 

 

「勝ったー!」

 

「おめでとうございますっ。……だから、少しはこちらも手伝ってくださいませ!?」

 

 依頼対象の〈UBM〉を討伐し、背後で未だ【ライトエレメンタル】と戦闘を続けている春香の方を振り向く、と。

 

 

 

「……うわぁ」

 

 そこには、50体を越える数の【ライトエレメンタル】とそれに集られる春香の姿が!

 【サングラス】をしているのに、何だか若干眩しい気すらしてくるよ。

 

「ちょっと、これどうしたの!? ――《満月斬り》!」

 

 範囲攻撃スキルで一斉に攻撃しながら、春香に聞く。

 ああ、《斬魔剣》じゃないから《退魔の教え》あっても微妙に威力足りないっ。

 

「《春嵐の舞》――! 大体、一分くらい前から凄く増えたんですっ! あ、ちょ、きゃぁっ!?」

「春香ー!?」

 

 春香が【ライトエレメンタル】の群れに飲み込まれたっ!?

 【陰陽頭】謹製の《護符》を使ってた筈だから、死にはしない筈だけれど、救助しなきゃ!

 

 それにしても、一分前って、僕のエンブリオが進化する直前……相手が切り札のスキルを発動させたその時だろうか。

 前回威力偵察した時はこんな事にはなってなかった筈なのに……或いは、その後の強化も何か関係あるのかな?

 

 ……と、考えてる場合じゃなかった。まずは【ライトエレメンタル】を――ん?

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

□ 【光華武者】西白寺春香

 

 

「春香ー? 起きてるー?」

 

「ん……起きます、起きてます……」

 

 頬に何かが当たる感触がする。

 意識が覚醒する。

 ふと目を覚ますと……最後に見たのと同じ、<遺跡>の広間でした。

 しかし、そこには魔剣の〈UBM〉と、広間の大半を埋め尽くしていた【ライトエレメンタル】の姿は周囲に大量の戦利品(ドロップアイテム)を残すのみで何処にも――って。

 

「まだ残ってるじゃないですかぁ――!」

「わ!? 春香、ストップ、ストップ! 止めて!」

 

 何故か止められてしまいました。何故でしょう。

 ジーニアス君の右手にある見慣れない“指輪”に擦り寄る様にして接触している【ライトエレメンタル】が……

 

「あ……そうでした。〈UBM〉は、倒せたんですね。……倒せた、んですね」

 

「勿論、僕の作戦がバッチリ嵌ったからね!」

 

 ……得意気にしてますが、流石の私も囮に近い扱いだったって気付きますよ?

 ええはい、ちゃんと守ってくれるとは、思ってましたけど。

 

 一応、私も大量の敵愾心を稼いだ様ですが、埋もれるウィンドゥの中でチラリと見ただけですが、やはりジーニアス君が討伐MVP(最大貢献者)だったみたいです。

 敵愾心だけで討伐MVPになったという例も、歴史を紐解けばいくつかありましたが今回の場合は色々とジーニアス君のお陰だったから、無事にジーニアス君がMVPになって少し安心です。

 

「ええ、その話はあとでじっくりするとして……本当に倒せたんですね」

 

 ――絶対強者である、〈UBM〉との戦い、そして……勝利。

 全力で【ライトエレメンタル】と戦っていた時は思考から除いていましたが……今になって、実感が湧き上がってきます。

 ……影で、口さがない連中に術師の都の娘に相応しくない、落ちこぼれだって言われていた私が、です。

 本当、信じがたいですが現実なんですよね……

 

「そう! 依頼(クエスト)も完全に終わって大団円って所だよ……春香も、お疲れ様!」

「はい……ジーニアス君こそ、お疲れさまでした」

 

 ――本当に。

 相性が良かったとは聞いていましたが、ステータス差は歴然。

 期限を付けられ、足手まとい()を付けられ。

 本当に、凄いですね。ジーニアス君は……

 

 戦闘を終えて楽しそうに戦利品を回収している彼を見ていると、私も戦いで高揚していた気分が更に上向きそうです。

 これで依頼が終わって、一緒に行動する理由も無くなってしまいますが、……………………どうしましょう。

 こんなに頑張ったのですから、お父様にちょっとした我儘を言っても大丈夫でしょうかね?

 要検討、ですっ。

 

 そして、それはそれとしまして……

 

 

「……それで、そこの【ライトエレメンタル】は結局何なんです?」

 

「うーん、そうだね。一言で言えば――」

 

 

 

「『ティンと来た!』って言うんだっけ?」

「…………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………まさか。

 大白宮に帰ったジーニアス君が、達成の報告に行く前に【従魔師】に転職して、その【ライトエレメンタル】をテイムするなんて。

 この時は全く考えていなかったのです…………

 

 

 

 To Be Continued…………

 




えらいひと(未来の“最強”)は言いました。メタゲームの把握……対戦相手への対策は当たり前だよ……と。

ステータスが更新されました――――

《フォトン》:魔法スキル
 【光術師】で習得する基本魔法スキル。
 光を生み出し、操作するスキル。調節は各自でやる。
 下級職では光の色を変えて仲間に合図として使ったり、長時間自身の傍で維持させて光源にするくらいしか使い道はないが、上級職になって熟練した術者だとイルミネーションみたいにして舞台演出に使ったり疑似的な光学迷彩の真似事も出来る。
 ……上級職の【光輝術師】なら普通に単体で光学迷彩スキルとかもあるけど、そもそもこのスキルが光属性魔法の基礎なのでそれもしょうがない。

《デルタレイ》:魔法スキル
 【光輝術師】で習得する攻撃魔法スキル。
 下級職で習得する《レイ》の強化版で、複数の光芒で敵を撃ち抜くスキル。
 一本一本の威力も《レイ》より増加している。

《ラスターバースト》:魔法スキル
 【光輝術師】で習得する攻撃魔法スキル。
 光エネルギーによる爆発を発生させる範囲攻撃魔法スキル。敵味方識別? 何の事だから分かりません。
 威力はそこそこなのに消費が滅茶高い。ついでに範囲攻撃魔法なのに半径10メテル程度という評価し辛い範囲。

従属契約(テイム)》:アクティブスキル
 【従魔師】系統の基本スキル。
 モンスターと従属契約を結ぶ。契約成功には彼我のレベル差ステータス差スキルレベル、好感度敵愾心モンスターのHP状態異常他のスキルの影響等々複数の要素が影響してくる。
 モンスター側からの自由意志で好感度が高い場合はレベルの低い【従魔師】との契約に応じる事も。
 〈マスター〉の間では「弱らせた上で状態異常にすると成功するぞ」と言われているが、それはシステム的な問題なのかそれとも瀕死の状態で命惜しさに屈服して契約しているのかは定かではない。定かではないったらない。


 ……はい、ここまでご覧いただきありがとうございます!
 漸く〈UBM〉編、一章の山場が終わりました……
 実は初期のプロットでは一七話~一九話は一話に収める予定だったとか、序章のラストもそうだったけどこういう所での予測が拙いからすーぐgdgdになりますね!
 ……ヒロイン(仮)を囮にする様な作戦を立てて躊躇いなく実行する主人公がいるらしい。酷い奴だ!

 一章の山場はこれで終わりましたが、一章はむしろここから後編と言った所です。……一章は日常回、日常回メインです!(自己暗示
 そんな感じで次話以降も読んでくれると嬉しいと思います、はい。

 進化と特典武具の詳細については次話で! ……すみません、進化の方は詳細は出ないかもしれません。
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