無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:天災児(養殖)がデンドロにログインするようです。

今話は前話に増して捏造、独自設定が多い為、ご注意ください。


第二話 入口・キャラクターメイク

□◇

 

「――ようこそ、<Infinite Dendrogram>へ。新しき<マスター>を歓迎しよう」

 

 

 ヘルメット型のダイブ用ゲーム機を装着し、ゲームを起動した僕の意識は一瞬にして違う場所に移動していた。

 それはまるで過去に見た事がある研究所の様な――それでいて酷く広々とした矛盾したかのような部屋だ。

 遠く壁際の棚に見えるのは本、本、本と……よく分からない(ファンタジー的な)生物のホルマリン漬けがずらりと並んでいる。

 流石にプレイヤー達が来るような場所だから本物ではないのかもしれないけれど、持ち主の趣味が薄っすらと透けて見えるようだ。

 眼前には威圧感を伴った人影、あれが僕をここでチュートリアルをしてくれる管理AI、という奴なのだろう。

 そして――

 

 

「とりあえず、初めまして。君は僕を導いてくれる管理AIで、ここはゲームのチュートリアル用の空間、で間違いない?」

「その通り、私は管理AI四号、ジャバウォックだ。そして、二つ目の問いは誤りだ。この世界(ワールド)チュートリアル(操作説明)という物はなく、ここは謂わば君のゲーム内でのアバターを作る(キャラクターメイク)為の空間、と言った方が正しい。尤も、世界や君が動かすアバターについての簡単な説明も行われる為、チュートリアルと言う表現も間違ってはいないのだが」

 

 ……初手で失敗した。うん、あまり違いはなかったけれど掲示板で聞いた情報を鵜呑みにするんじゃなかった。

 赤面しそうになるが精神力で堪える。

 いや、それよりも先に確認すべき事があった。

 

「分かった。それじゃ――なんで、その管理AIが二人もいるの?」

 

 そう、眼前に立つ角や鱗が生えている怪人ともう一人、その後ろで微笑んでいる少女(・・・・・・・・・・・・・)に問い掛ける。

 

 

 

 

「あら、ごめんなさいねー。私は管理AI一号のアリスよー。よろしくね?」

「…………はぁ」

 

 いかにも胡散臭い。

 容姿はおよそ十代後半程度の少女の様に見えるけれど、それに見合わぬ温かな母性を感じさせる少女。……そもそも僕は本当の母親、という物を知らないから参考文献(マンガ)や明日香と比較しているだけではあるけれど。

 Webの掲示板で確認した情報では、この空間で応対してくれる管理AIは複数いる中から一人だけで、その内の誰に当たり、どの様に応対されたとか言うのも中々大きな話題として扱われていた筈だ。

 

「あ、本当にそんなに警戒しないでも良いのよ? 私はもしもの時(・・・・・)の為にここにいるだけで、基本的にはそこの四号に従って進んでくれると嬉しいわー?」

 

 …………? もしもの時の為、とは一体…………

 

「一号、それでは正確には伝わらないだろう。つまり、だ――君達の様なとある、特殊な人材(・・・・・)がこの<Infinite Dendrogram>にログインした際、万が一にも不具合が生じ得ぬ様、備えていると考えてくれ」

「…………えっ!?」

 

 

 ――え、何。もしかして僕の事がバレ――

 何時? 決まっている。

 あのゲーム機を装着した時だ。あのゲーム機で個人個人の脳波データを測定し登録していると事前に説明されていた。

 自分の身体に問題はなかった筈、ならばひょっとして本当に僕に何らかの処置(洗脳)が――?

 いや、もしそうなら僕は――

 

「はいストップ。ちょっと落ち着いてねー?」

 

 いつの間にか直ぐ近くまで接近していたアリスという管理AIに抱きしめられ、思考が一瞬止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――

 

 

 ――――

 

 

 ――――安心す

 

 

「わわっ!?」

「うん、落ち着いたみたいね。良かったわー」

 

 ……不意に抱きしめられて少し戸惑ってしまった。振り解いて距離を取る。

 そこまで力を入れていなかったのか、容易く振り解く事ができた。

 アリスはそれを気にせずに微笑みながら僕を見ていて、ジャバウォックは何故か首を傾げている。

 ……少し混乱して見当違いの事を考えてしまったかもしれない。猛省しなきゃ。

 

 

「四号……ジャバウォックのせいで余計に混乱させちゃってごめんなさいね? 私から、改めて少し説明させて貰うわー」

 

「……分かった。お願い」

「まず、私達管理AIも、貴方達の様な――特殊な人達がいる事は承知しているわー」

 

 うん、それはさっきの発言からしてもそうだろう。

 というより、そもそも管理AIとはたった一体存在するだけで小国一つの情報、ネットワークを完全に掌握できるとすら言われている程のスーパーコンピュータを越えたハイパーコンピュータなのだ。

 それが一つのゲームに十体以上ふんだんに使われているというその時点で彼や彼女の背後にその特殊の人か、それに類する何かがいる可能性が高い事が伺える。

 

「そして、私達はそんな特殊な人達にも他の人と同じ様にこの<Infinite Dendrogram>を楽しく遊んでもらいたいと思っているし、どの様な人でも問題なく遊べる様にしているわー。……それでも、特殊な人はやはり特殊(・・)であるから、その特殊性を発揮されて問題を起こされてしまうと……お互いに困った事になっちゃうのよー」

 

 

 なるほど。つまりその困った事にならないように、管理AIが二人体制で待機していた、と。

 彼らに特殊な人材、と呼ばれはしたものの、特に何も超常の力を持っていない僕はともかくそれ以外の……例えば、世間一般に考えられるようなファンタジックな妖怪や宇宙人といった超常を相手に応対する管理AIを一人増やす、という対応は妥当なのか、というのは難しい問題ではあるけれど。

 

 が、彼女達管理AIはそれで問題なし、としているのだからとりあえずそこに突っ込む必要はない。

 それよりも僕が聞きたいのは――

 

「話は分かったけど、それじゃあ、どうして僕がその特殊な人間だって分かったの?」

「――禁則事項、と言いたいところだけど君の場合は簡単よ?脳波と身体データを測定(スキャン)した時に判明したから、よ」

 

 やっぱり……!

 

「だけど、それは貴方が危惧する様な危ない物ではないわ。言うならばこの世界におけるエンブリオと同じ、ただの可能性(・・・)の様なものでしかないんだもの」

「うん?それってどういう……」

 

 と、そこまで説明してアリスは人差し指を口の前に立てる。

 ……どうやら開示できる情報はここまで、という事らしい。

 管理AIに安全を保障されても釈然としないけれども……そもそもその発端は後ろに控えているもう1人の管理AI(ジャバウォック)が口を滑らせた事が原因だった。

 ならばとりあえずはその彼ら(管理AI)の保障を信じるのが最善、かもしれない。

 

 

「――そろそろ続きを進めても良いかね?」

「ああ、ごめんなさいね。お願いするわー」

 

 

 そうだ。さっきまでの話の衝撃で忘れ掛けていたけれど、僕はここにチュートリアルに来たんだった。

 ……もしあの管理AI達に何らかの問題があったとしても、“組織”の意向で手は出せないのだし(そもそもこの世界の主とも言える彼ら相手に何かできる訳でもないが)、頭の片隅に入れておく程度で良いだろうか……?

 

「それじゃ、お願い、します」

「ウム。では、進めていこう。まずは描写選択だ。選択は三つ、リアル描写、CG描写、アニメーション描写となっている。私のお勧めは迫力と臨場感のあるリアル描写だ」

 

 ジャバウォックがそう言うと同時、周囲の景色が順番に差し変わっていく。

 視界を左右に動かしても全く違和感なくそれぞれの見え方で世界が描写されていく。

 これだけでいったいどれだけ膨大な演算が必要になるのか……世間の驚き様も致し方ないだろう。

 まさか管理AIのお勧めを提示されるとは思っていなかったけれど、僕の選択は既に決まっている。

 

「リアル描写にする」

「承知した。それでは次はプレイヤーネームの設定だ。既にプレイヤーネームとして使用されている場合のみ、警告を発する事になっている。ちなみに、ゲーム内で偽名を使用する事は可能だがここで設定した名前の変更は不可能だ」

 

 注意事項まで併せて説明される。

 ……ちなみに、担当する管理AIによってはこの様な注意事項は説明されないらしい。

 ゲームらしい変てこな名前にする事もできるし、掲示板では注意事項を説明されずにネタで名前を付けて後悔した人もいるんだって。

 勿論僕はそんな愚は犯さない。事前に決めておいた名は――

 

「――ジーニアス、で」

 

「ホゥ、良い名だ……次だ。キャラクターのアバターの容姿を作成する」

 

 

 直後、先程と同様に周囲の景色が――いや、周囲が画像で埋め尽くされる。

 そして目の前に現れるマネキン(アバター)

 ジャバウォックが続けてアバター作成について説明する。所謂亜人みたいなのも作成できるが……あれ、どう考えてもデッドウェイトが増えているだけだよね?

 作成するのは視界を埋めるウインドゥに映る身長、体重、体型体格腕足胴首髪頭目鼻口にエトセトラエトセトラ。

 ……必要項目が多すぎる。これを一つずつ手動で作成していったらどれくらい時間がかかるのだろうか?

 ゲーム内では勝との待ち合わせもしているのにそんなに時間をかける訳にはいかない。

 そもそも、折角のVRMMOなのだから、できるのならば自分の身体を模して全力で遊びたいものだ。

 

 

 ……と思っていたら、やはり大体の人が現実の己の姿を基に多少変化させる程度で完成させているらしい。

 どう考えてもその方が手間も少なく、完成度も高くなるだろうから当然だと思う。

 

 僕も先人達に倣い、現実の自分の姿をベースにする事にした。体格や顔付きはそのままでも良いとして……最低限、髪色と瞳の色を変えれば十分だろう。

 折角なので娯楽書籍(マンガ)などでありがちな金髪碧眼にして完成させる。

 

 

「完成したようだな。次は初期装備と初期アイテムの配布だ。まずはカタログの中から初期装備を選択してもらおう」

「……分厚いね」

 

 ジャバウォックから渡されたカタログには和洋折衷どころか世界中の伝統的な衣装や武具、装飾品がずらりと並んでいる。

 サイズや色は伝えれば微調整してくれるらしいが、これも全て確認するのは一仕事になりそう。

 また、基本的には性能に差はないらしいが……それは本当に基本的に(・・・・)でしかないらしく、武器防具の当て方振り方防ぎ方食らい方等、それらの使い方次第では数字上全く同じ性能ではあっても結果は全く違ってしまう為、自分に合ったものを選択するべきだろう、と注意される。

 

 ちなみに、今までのマスターに一番選択された武器と防具を教えて貰ったが、最初のページの初っ端に載っている布服とナイフのセットらしい。

 多分、選ぶのが面倒くさくなったんだと思う…………

 

 僕は動きやすさを重視して布服を選択し、武器には模擬剣を選ぶ。

 続いて初期アイテム――アイテムボックスと初期所持金である5000リルを受け取り、説明を受ける。

 そして<エンブリオ>を移植し終え……最後に、僕が所属する国を選ぶ段になった。

 公式ホームページでも大きく取り扱われ、解説されていた七つの大国。

 

 謹厳実直なる騎士の国。一人の偉大なる王を祖とする白亜の国、『アルター王国』

 血風吹き荒れる刃の国。数々の大名が相争う戦乱止まぬ修羅の離島、『天地』

 雅なる国風と広大なる領土。古龍を祖に持つ古龍人が統治せし大国、『黄河帝国』

 機械の申し子たる歯車の国。科学技術の継承者にして鉄と魔素を力とする国、『ドライフ皇国』

 砂漠に残された欲望のオアシス。金と品の匂いが深く香る都市国家群、『カルディナ』

 数多の船とそれが浮かぶ海洋の国。世界の海の支配者である国、『グランバロア』

 幻想と伝説で彩られた古き国。自然と魔力に満ちた神秘の妖精郷、『レジェンダリア』

 

 ……どれも異なる魅力のある国々だ。

 叶うなら全世界を旅歩きしてみたいとも思うけれど……それは後々に取っておく。ゲームを始めて直ぐにできる事でもないだろうしね。

 それでも、最初に選ぶ国はもう決まっている。それは

 

 

「所属国家は――天地でお願いします」

「了解した。フム……これは全員に聞いている軽いアンケートなのだが、その国を選んだ理由を聞いても?」

「天地には……強い人達(ティアン)が沢山いる、って聞いたから」

 

 そう。

 他にも、いずれ世界中を旅するのなら、まずは唯一の島国からスタートした方が良い、だとか。

 日本で暮らしているからとりあえず似通った国風である天地から、だとか。

 表向きの理由ならいくらでも挙げられるがこの国を選んだ一番の決め手はやはりそれだった。

 

 

 公式ホームページで知る事ができたのは各々の国のただ一側面だったのだろう。

 きっと各国を探せばどの国にでも強者がいくらでもいるのだろう。

 だが、それでも憧れてしまうのは仕方ない。

 あんなにも命を輝かせていたのだから(・・・・・・・・・・・・)、憧れるなと言うのも無理があるというものだ。

 

 

 

 

「それでは、これでキャラクターメイクは完了だ。早速、君を天地の――」

「あ、ちょっと待って」

 

 呼び止めるとジャバウォックが怪訝な顔をする。だけどこれだけは、答えがどうであれ聞いておかないといけない。

 

 ――このゲームは何を目的として遊べば良いの?

 

 自由度が高過ぎるゲーム。裏が見えない不可思議な運営(管理AI)。簡単に答えが得られるとも思わない問いだった、が

 

「なんでもやっていいのよー?」

「……なんでも?」

 

 問いに答えたアリスの曖昧な言葉に、つい鸚鵡返しにしてしまう。

 

「そう、なんでも――善行を積み重ねても、悪逆の限りを尽くしても。魔物(モンスター)を狩り尽くしても、人々を助けて回っても。何をするのも、しないのも、すべて己の為したいように為すと良いわー」

「……」

 

 それは答えになっているような、答えになっていないような。

 それでも、アリスと、その後ろで僕を観察しているジャバウォックの表情は、今までになく真剣だ。

 

 

「――此れより始まるのは、無限の世界と、無限の可能性だ」

 

「「――<Infinite Dendrogram>へようこそ。“私達”は君の来訪を心より歓迎しよう」」

 

 謳う様な2人のその言葉の直後、研究所が、空間が消失し

 

 僕は<Infinite Dendrogram>の世界へと落下していった――

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

□■???

 

 

 ――先の少年は中々に面白い人材だった。願わくば、彼の様な才持つ者(ハイエンド)が<超級>に辿り着いてくれると嬉しいのだが。

 

 一人の少年が退出した空間でジャバウォックは、先程まで相対していた少年について分析する。

 

 ――人間に造られし人間。その才知は数多に、そしてアレは……フフ、妖、怪物でも混ぜ合わせるつもりだったのか、“遊び”が目立つ。奇しくも私に似通っている所があるのがまた面白い。

 

 ――最も、この世界の中ではアバターの性能は全て同じであるし、既にアバターの身となった以上は基本的に関与する事はないだろうが。だがあの彼がどの様なエンブリオを開花させるのかは気になるな。ウム、丁度天地を選んだのだし、暇があれば注視しておくのも悪くないか……?

 

 そこまで少年について思考していき――ふとその思考の中で最も大事な事を確認していなかった事に思い当たった。

 

「そういえば一号――アバターの方に問題は?」

無論、問題ナシ、よ(・・・・・・・・・)。聞くのが遅かったわねー?」

 

 そう。それはこの空間に二人もの管理AIが待機していた理由の一つ。

 規定外能力保有者用の特殊アバターの設定、作成だ。

 

 規定外能力保有者、世間一般では超能力者や妖怪、あるいは……いや、詳細について語ると長くなりすぎる為、ここでは省略するが、その中では意思や精神一つで異能を発露する者も存在する。

 アバター(仮の肉体)に囚われず、あの世界へ、ティアンへ、そして他の<マスター>へ異能を振り撒く事が可能な存在。

 当然ながらそんな台無しな真似(・・・・・・)を認める訳にもいかない――が、それはそれとして彼ら、管理AI達は少年にそう伝えたように、彼らを拒むどころかむしろ歓迎すらしているのである。

 その理由については後述するが、ならばどのようにして彼らの異能を封じるのか。

 

 その答えは当然、ついさっきまでジャバウォックと共に少年を担当していた管理AI1号アリス(アバター管理担当)である。

 

 規定外能力保有者専用の異能の発露を封じる特殊アバターを作成し、更に特殊アバターのログイン中は全特殊アバターを常に監視(モニター)、前例のない異能の発露の兆候を感じた時点でアバターを強制格納(ログアウト)させる。

 また、アバタースペースにも特殊アバター専用のスペースを一定数確保し、スペース間を管理AIの手による特殊な隔壁で隔てる事により、格納中の規定外の不正アクセスにも対応する。

 ……最も、不正アクセスを試みようとした時点で、潰される(・・・・)のだが。

 

 

「本当に、今の子みたいに素直にこの世界を楽しもうとしてくれる子が多いと嬉しいのだけど。ままならないものね」

「仕方のない事だ。確かに、折角正規の入り口を開け放っているのだから、せめて此方から入ってくれれば良いのだがな」

 

 

 ――そう、それはこの空間に二人もの管理AIが待機していた理由の二つ目。

 仮に規定外能力保有者が正規に、ゲーム機を通してこの空間に来た後に特殊アバターに移る前に、異能を行使される困った事態に陥ったとしても――管理AI10号バンダースナッチ(容赦ないセキュリティ担当)磨り潰される(・・・・・・)前に対象を緊急ログアウトさせる為だ。

 

 昨日、発売の当日だけでも7件の規定外能力保有者による不正アクセス、51件の一般企業によるハッキング、そして4桁を越える経路から行われたサイバー攻撃――その全てがバンダースナッチによって再起不能なまでに叩き潰されていた。

 

 それ自体は事前に予想されていた事であり、管理AI達も問題にしていない(尤も、後処理(・・・)の為に並列処理能力に特化した管理AI13号チェシャ(雑用担当)が悲鳴を上げていたが)。

 しかし、正しくこの世界を楽しもうとしている規定外能力保有者が特殊アバターを作成する前に、ふと異能を行使してしまえば――あの融通の利かない同僚はあらゆる斟酌を考慮せず、即座に、確実に、容赦なく潰す(・・)だろう。例えそれが有力なマスター候補の一人であろうとも。

 

 そうさせない為に、二人はここで待機していたのだ。

 

 せめて救いなのは現状正規の入り口(ゲーム機)からこの世界に入ってきてくれた規定外能力保有者は全員物分かりが良く、彼の手を煩わす者が現れていない事だった。

 

 

 

「――さて、それじゃ次の<マスター>の所へ行ってくるわー。暫くはやる事が増えて嬉しいわねー」

「ウム。私も<マスター>の為の<UBM>を増やさねばならない。次の<マスター>にもよろしく頼むぞ」

 

 だが、確認が済めば何時までもこんなところにいる理由はない。

 アリスとジャバウォックは――管理AI達はまた自らの為すべき業務へ戻っていく。

 <Infinite Dendrogram>が始まり、<マスター>が増え、世界は慌しく運命の輪を加速させて己達のやるべき事も目まぐるしく変わっていく。

 

 それでも彼らは少年を、特異なる超常の<マスター>達を歓迎する。

 彼らのその特異なる異能を孕んだ個性(パーソナリティ)が、常ならぬ生命の歩みに培われた叡智が、アバターの身体では行使ならぬともその異能の痕跡(リアルスキル)が――無限へ至る階への一助となる事を祈って。

 

 

 

To Be Continued…………




チュートリアル回でした。
主人公は知識は植え付けられていても経験が乏しい為、若干ちょr……母性に弱い面があるかもしれないですね。
それでは、次回からまた日記形式での投稿になる予定です。
天災児(養殖)は修羅の国でどうなっていくのか……!?
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