無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:作戦と相性差と対策によるゴリ押し。普通はどうしようもない。

一週間空いてしまい申し訳ないです……!
それでは本編をどうぞ!


第二十話 新たな力・新たな仲間

□<桑川街道> 【光術師】(ライトメイジ)ジーニアス

 

 

 天地一の術師の都である大白宮と天地の中枢の一つでもあり、不可侵領域でもある中立領の慶都を繋ぐフィールド、それが今僕達が進んでいる<桑川街道>だった。

 背の低い草木に、近くを流れる川に魔力を多く含んだ自然豊かなこのフィールドでは生息しているモンスターも相応にレベルが低い物だ。

 <桑川街道>の先の慶都に隣接する<白庭街道>もその影響を強く受けているのか特にモンスターのレベルが低かったりするのは、もしかしたら先日春香に聞いた大白宮で張っているという結界が何らかの影響を及ぼしているのかもしれない。

 

 そう、それ程にこのフィールドに出没するモンスターのレベルは低いのだ。……突然の〈UBM〉でも遭遇しなければ。

 馬車の御者席に座っている僕と春香は勿論、僕達の護衛でありながら馬車の中で寛いでいる、馬車の持ち主である竜胆直寿さんだって当然。

 いや、それどころか僕が立てている指の先を回りながら遊んでいるリン――【ライトエレメンタル】の僕のテイムモンスターだ――だってここに出没するモンスター相手に手傷は負わないくらいにはステータス差という物がある。

 

 ……だから、そんな<桑川街道>を進むのに亜竜級モンスターである【疾風駿馬】(ゲイル・スウィフトホース)が駆る馬車に乗っていくのは戦力過剰じゃないかなって思うんだよね。

 

 

「――という事なんだよ。僕は歩いて進むのも風情があって好きなんだけどねー」

「分からなくはないですけれど、体力は温存した方が良いと思いますよ?」

 

 そんな雑談をしながら景色を眺めつつも道を進んでいく。

 手慰みにと馬車が出発した時から指先に《フォトン》で白光を出し、その白光の形をぐねぐね色んな形に変形させて遊んでいたりする。

 一見MP(魔力)の無駄遣いにも見えるけど、これはこれで魔法の精密操作の練習にもなるし、この光を浴びる事がリンの餌にもなるし、ついでに先日手に入れた特典武具に光を蓄える事も出来るので一石三鳥くらいにはなっているのだ。

 

 術師の都の人間とは言え、物理型のビルドをしている二人は興味深げに色々な形をリクエストして来たりする。

 代わりに、と面白そうな〈UBM〉や天地の強者についての話を聞き出していく。

 

 歩きながら自然を味わって進むのも良いけど、折角の馬車の旅なのだから、揺られながらそんな四方山話に花を咲かせる。

 

 しかし、小柄ながらも流石は亜竜級なだけはある【疾風駿馬】。

 三人が乗り込んでる馬車を引いてるのにかなり速いスピードだ。これなら暗くなる頃には慶都に到着できるだろうか?

 ……それにしても、浮遊している筈のリンはどうやってこのスピードに着いてきているんだろう? 位置情報が主である僕に紐付けでもされているのだろうか?

 

 

 そんな事を考えながら《フォトン》の光の色を赤色に変えて懐から【符】を数枚取り出し…………

 しまったなぁ。

 

 

「……ジーニアス君、どうかしました? 何か珍しい顔してますけど」

「……多分顔じゃなくて表情じゃないかなって思うんだけど。よく分かったね」

 

 本当に鋭い。何かそういうスキル……は、ないと思ったけど。

 

「うーんと、【光術師】の魔法を【符】で使う時、【陰陽師】や【退魔師】の魔法スキルを使う時とは何か違う感触がするんだよね」

「?? 確かジーニアス君のエンブリオで、詳しく分からないけど使えるんじゃないのですか?」

 

 そう、そうなのだ。

 僕のエンブリオ、【アダムカドモン】の固有スキル、《全主権限(オールド・オーダー)》によって、本来は【符】を使用しない西方の【魔術師】に属するジョブの魔法スキルであっても十全に使用出来る様になる……筈なのである。

 

 しかし、本来使用できない西方の魔法スキルを《全主権限》で無理矢理使う場合、《符作成》で【符】を作成した時点でどの魔法スキルに、どの程度MPを注ぎ込み、魔法拡張スキルもどれ程使用するか詳細に作成しないと発動できないみたいだ。

 まぁ、用途毎に各スキル用の【符】を作成すれば良いだけではあるのだけど、同系統のスキルであれば【符】を流用したり、実際に使用する際にMPを継ぎ足しできる東方の魔法スキルと比べて自由度が幾らか低い。

 それも本来【符】を使用する事が前提ではない魔法スキルなのだからある種当然ではあるのだけど、あるのだけど……

 

「――そんな訳で、光属性魔法の【符】を使うのはちょっと面倒みたいなんだよね」

「ジーニアス君のエンブリオって、自由度が高そうに見えるけどそこはかとなく不便ですね……」

 

 ふ、不便……

 確かに、そこらのエンブリオにある様な派手さはないけど、不便かなぁ?

 でもほら、種族変化とか結構派手……天使の翼とか輪がある訳でもないから傍目には普通の人間と変わらないんだけどね!

 

「そういえば、《全主相応》は正直ただのステバフでしかないし、《全主恩寵(・・・・)》は現状まだ何も意味はないし……もしかして僕のエンブリオって地味目な固有スキルばっかり……?」

「ま、まぁまぁ! でも一番使ってるあのスキルは凄いじゃないですかっ!? 【符】だって食料品と違って痛んだりしないんですから沢山作っておいても問題ないですし!!」

 

 その慰めがクリティカルヒットだよ春香ー……

 竜胆さんも馬車の中で声を押し殺しながら笑ってるし!

 

 まぁでも、できない物はできない、って認めなきゃね。

 当座は特典武具――【極光天輪 ラスリルビウム】があるから余程の相手が出ない限り【符】を使わなくても僕の自前のMPと、【極光天輪】に蓄積してある分だけで問題ない。

 都に着いて、MPに余裕が出来たら少しずつ【符】を作成していけば万事解決という訳だ。

 

 だから――

 

 

「ところで、話は少し変わるんだけど――この天地で、“野盗”の扱いってどういう風にすればいいのかな?」

 

「え? それは当然――鏖殺です。それが武芸者の義務ですから」

 

 

 ……うん。今までの話を聞いててそうなんじゃないかなって思った。

 

 それなら、やっぱり――

 

「――合計19人。木っ端しかいませんね。折角の機会です。春香お嬢様、ジーニアス殿。あれなら敗北はありません。仕手をお願いしても?」

「はい。これも大事なお勤めですからね!」

 

 和やかな雰囲気は変わらないまま、物騒な会話が続けられる最中に……草むらや木陰から、十数人の男達が飛び出してきた。

 分かっていたとでも言う様に馬車を曳いていた【疾風駿馬】もその足を止める。

 ……最も、足を止めた理由は恐怖とか混乱ではないのだけど。

 

 

「ガキに浮浪人しか乗ってねェとは丁度良いぜェ! 命も金も荷も全て奪っちまうぞォオ!!!」

「いや、ガキは高く売れそうだ。とっとと捕まえてお楽しみと行こうぜ。イッヒッヒ……」

 

 

 如何にも山賊という様な荒れた言葉を発しながら馬車を取り囲んで来た者達。

 確かに強面……と言えなくもないかもしれないけど、感じられる威圧感からして、合計レベルも三桁に達している者すらいそうにない貧弱な物だ。

 

「ふぅむ。装備の素材の質は悪いが、【鍛冶師】としての腕は悪くないようで。他の者は農夫上がりか。勿体無い物だ」

「……竜胆さん? これ、もしかして狙ってましたか?」

 

 冷静に野盗達の装備を見据える竜胆さんの様相に思わずそう言葉が漏れるのも仕方のない事だと思う。

 竜胆さんのジョブ構成は【鎧武者】をメインジョブとして、サブジョブは――【格闘家】【拳士】系統のジョブで埋まっている。

 一見噛み合っていないそのジョブを噛み合わせる要素が、彼が持っている特典武具――【全刃鎧装 シューベルト・ソーン】だ。

 瞬間装着機能を持ったその全身鎧型の特典武具を主武装に、格闘による白兵戦を得手とする彼は武器らしい武器も持たず、特典武具を展開していない状態ではまるで村人の様な軽装の出で立ちなのだから、確かに浮浪人という印象を受けるのも無理はない。

 

 そして、そんな武器も持たない竜胆さんに僕と春香……幼いとすら言える年頃の少年少女の三人旅。

 そりゃ、邪な情を持った賊達が狙わない訳がないと思うよね。

 

 そう考えていた僕に、竜胆さんは涼し気な顔をして。

 

「治安の維持に己の本分も弁えぬ不出来者を始末するのは遥か昔より天地に住まう武芸者に課せられた使命でもあります」

「それに、この<桑川街道>は今や天地で一番の賑わいを誇る慶都と他国との貿易の要たる港都を繋ぐ道。不埒者の跳梁を許す訳にもいかないと思いませんか?」

 

「理解できないでもないけど、さっきの質問の答えになってないですよね?」

 

 胡散臭い笑みで返される。或いは、そういう経験を積ませてくれているのかもしれないけど……うん。

 

 

「何コソコソ話してんだオラァ!」

「もうやっちまおうぜ兄貴ィ!」

 

 と、そんな話をしている内に野盗の方々は剣を斧を槍を手に既にヒートアップしている様だ。

 

 意気揚々と春香が御者席から降りて即座に一番近い賊へと向かっていく。

 

 ……春香だけに任せる訳にはいかないね。

 僕も念の為に御者席から降りて、右手を上げて――唱える。

 

 

「――極光よ、集いて此処に。二十の光球、敵を撃て。《ライトボール》」

 

 光属性の初期攻撃魔法にて、野盗達を打ち据えた。

 《極光剣》による強化もあってか、下級攻撃魔法とは思えぬ威力で相手に襲い掛かる。

 

 ある者は胴体に直撃して腹部が破裂する。

 またある者は四肢に命中して手足が捥ぎ取れる。

 リーダー格だった男は一発は血を吐きながらも耐えたけど、直後に襲来した二発目が直撃して堪らずに崩れ落ちる。……あ、春香に首を刎ねられた。

 亜音速にも届かぬ光球の速度ではあったけど、それでも戦闘用のジョブもまともに持っていない野盗達に回避できる道理はない。

 光球の魔法の直撃で、あるいは追撃している春香の一撃で、次々と賊の骸が出来上がる。

 逃げようとしたのも居たけれど……事前に命じておいたリンの働きもあり、特化されたAGI型である春香から逃げられる筈がなかった。

 

 警戒しながらその様子を確認し……次々と経験値(リソース)が自分の中に入っている事を実感する。

 

 

 ――賊については自業自得だけど、これはちょっと勝に報告した方がいいかな……?

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

8月13日(木)

 今日は以前より受けていたクエストの仕上げ――〈UBM〉、【極光剣精 ラスリルビウム】との決戦に赴いた!

 ……とは言え、事前に相手の攻撃手段等の情報も割れていて、十分にジョブのレベル上げに費やす時間も対策を練る余裕もあった。

 それに、考えていた作戦も予想以上に上手く嵌ってくれた事もあって、【ラスリルビウム】との戦闘は凡そ優位に立ち続ける事が出来た。

 それでも、圧倒的強者であったのは間違いないから何度か危うい場面がない訳でもなかったけど、最終的には僕らの準備勝ち、という事になった。

 むしろ、あれだけ準備に費やしてあそこまでやられるとは思わなかったよ……本当に、〈UBM〉は油断できないよね。

 ……あと、アレも勝利の要因の一つだったのは間違いないね。

 戦闘中に僕のエンブリオが第四形態、上級エンブリオに進化した、という事が。

 

 

 

《光天使の身体》Lv2※:パッシブスキル

 自身の種族を「天使」に変更する。また、以下の補正を受ける。

 光属性攻撃耐性+70%

 闇属性攻撃耐性-70%

 病毒系状態異常耐性+50%

 精神系状態異常耐性+50%

 傷痍系状態異常耐性+20%

 一部の状態異常に対して完全耐性を得る。

 このスキルはOFFにする事ができない。

 このスキルのスキルレベルは特定の手段以外で上がる事はない。

 

 

 

 そう、なんとエンブリオが孵化した時点から何も変化がなかった《光天使の身体》も強化されたのだ! わーい!

 ……うん、変化地味だね!? 確かに光属性耐性も増えて、かなり戦闘が楽になったのは確かなんだけどねっ!?

 その他にも、《全主相応》のスキルレベルが4になったり、ステータス補正もLUCを除く全能力値補正がDになったり……むしろ、此方の方が、地味ながらも確実な強化、かな?

 実質的に全能力値が第三形態だった時と比べて1.2倍程度まで強化されている、と言っても過言ではないからね。

 

 ……まぁ、そのくらいの強化はどの上級エンブリオでも見られるみたいだけど。

 やっぱり第三形態から第四形態、上級エンブリオへの進化では今までの進化と比べて強化が劇的になる例が非常に多いらしい。

 

 僕のエンブリオも、確かにもう一つ新たな固有スキルを習得して劇的な変化と、言えなくもないのだけど――

 

 何せ、新たに習得したスキルが()()()()()()()()()()()()のだから、評価が難しいのも仕方がないと思う。

 ……有用なスキルでは、ある筈なんだけどね。

 

 

 とりあえず、それはそれとして、作戦を立てて明確に役割分担して、対策まで練った上でエンブリオが上級進化した事で無事、勝利を得られた。

 ――多分、式神か千里眼、遠視等詳細な手段はちょっと分からないけど、何らかの方法で戦いを見守ってた泰央氏も、これなら大満足だと思う。

 ……討伐MVPは僕だったけど、流石に貢献度は譲れないから仕方ないよね?

 実際に春香に【ラスリルビウム】を誘導するのも、【ライトエレメンタル】を抑えて貰うのも本当に助かったからね。

 

 そう、つまり〈UBM〉が〈UBM〉である所以の一つとして扱われる討伐MVPに与えられる特典武具――【極光天輪 ラスリルビウム】を入手できた。

 赤い宝石の付いた綺麗な指輪型の装飾品(アクセサリー)型の特典武具で、確かにその性能は僕に合わせた物になっている様だった。

 

 

 

【極光天輪 ラスリルビウム】

 <伝説級武具>(レジェンダリーアームズ)

 極光を操る稀なる武器の概念を具現化した伝説の武具。

 装備者に極光を操る力と攻撃力を変換する力を与える。

 

・装備補正

 MP+20%

 

・装備スキル

 ・《極光変換》

  周囲の光エネルギーを吸収・蓄積する。

  蓄積した光エネルギーは光エネルギーを放出する際、MPとして使用する事が出来る。

  また、光属性魔法《フォトン》を使用できる様になる。

 

 ・《極光剣》

  魔法攻撃を発動する際にMPを消費する事で物理攻撃力を魔法攻撃力に加算する。

  この際に消費するMPは《極光変換》で蓄積しているMPを使用する事が出来る。

 

 ※譲渡・売却不可アイテム

 ※装備レベル制限なし

 

 

 ――おそらくは、装備スキルを重視した特典武具。

 そのスキルはどちらも〈UBM〉だった時にも使用してた代物か、或いは多少のアジャスト程度だと思う。

 ……物理にも魔法にも何方つかずである僕には非常に助かる物だ。これから大いに頼らせて貰いたいと思う。

 特に《極光剣》は、今までの僕の魔法に圧倒的に足りなかった魔法の攻撃力を増強してくれる……良い物だよね。

 

 そして、これはそんな〈UBM〉との死闘の余談になるのだけど――【ラスリルビウム】を斃して、この特典武具を手に入れてから、春香に群がっていた【ライトエレメンタル】の内の一体が僕の腕に擦り寄ってきたのだ。

 

 ……余りにも敵意がないからつい素通りしちゃったけど、その子を数瞬見つめていると、なんというかその、天啓が落ちた様な感じがした。

 娯楽書籍風に言うならば『ティンと来た!』という所だと思う。

 味方になってくれる様な、そんな雰囲気を感じた……と言うのは、言い過ぎかな?

 

 そんな訳で、懐いてきた【ライトエレメンタル】を連れてそのまま大白宮に帰還した僕は【従魔師】(テイマー)【光術師】(ライトメイジ)のジョブに就いて、その子を《従属契約(テイム)》したのであった!

 名前は“燐光”から取ってリン。良く見てみれば蛍みたいで可愛い子だ。

 食餌は《フォトン》で出した光で良いみたいなので掛かる食費がほぼゼロなのも嬉しいね!

 

 まぁ、問題は流石にリンが下級モンスターだとは言え、テイムして直ぐ従属キャパシティ内に収められなかったという所かな……

 亜竜級のモンスターには及ばないとはいえ、初心者狩場のモンスター程度なら簡単に制圧できるエレメンタルのモンスターだからね。

 それでも、【陰陽師】のレベルで多少は従属キャパシティが増えているのと、《全主相応》で増えているのも鑑みれば【従魔師】のレベルを10程度まで上げれば普通にキャパシティ内に入れられるんじゃないかなと思う。

 

 

 ……と、それらの諸々の後に本題だけど。

 見事【討伐――【極光剣精 ラスリルビウム】】のクエストを成功させる事が出来た僕達は大白宮に戻った後泰央氏から報酬を貰う事になった。

 今回のクエストの報酬は現金で200万リル、そして――【修羅の奈落探索許可証】、将都にある〈神造ダンジョン〉に入る為に必要なアイテムだった。

 各領地の大名からのみ、目覚ましい貢献を行った者に直接渡される譲渡・売却不可能のアイテム。

 ……一度行ってみたいと思ったんだよね。〈神造ダンジョン〉……各国に最低一つはある、という話だけどさてどんな所だろうね。

 ――と、思っていたのだけど、老婆心を出してきたのか、(やっぱりどうにかして状況を見ていたらしい)特にクエストでの活躍を褒められて、追加報酬として闘技場観戦チケットと闘技場利用チケットを五枚ずつも貰った!

 その上で更に大白宮から慶都、そして将都までの案内まで手配してくれるのだとか。

 本当太っ腹だよね! ……と、思ったのも束の間。

 僕の案内人と言うのが……大白宮の客分の一人でもある歴戦の猛者の【鎧武者】、竜胆直寿氏と……春香だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

8月14日(金)

 大きなクエストを終えて一息吐き、勝や明日香とデンドロの話で盛り上がりながらの朝食。

 明日香も掲示板や情報サイトで得られた情報や動画を通じてかなり話が盛り上がった!

 そろそろデンドロが始まってリアルで一ヵ月の時が経過するけど、世間のデンドロ熱は未だに収まる事を知らない所か、世界中でハードが品薄でプレミアも付き放題なんだとか。

 ……そんな物に負けずに三つ目のハードはまだなんだろうか! と思わないでもないけど、それを一番に思ってるのは明日香だよねぇ……

 

 ちなみに、特に学生と言う娯楽を求める一番の年代が夏休みの時期と言うのもあって日本の学生や青年達には非常に人気を博しているんだとか。

 ……友達とゲームの話で盛り上がる、とかあるかなぁ。いや、そもそも学校に友達居なかった……っ。

 そういえば、カシミヤも多分日本人、だよね……? 今はどうしてるのかなぁ。

 

 二人との会話の途中で勝には僕が泰央氏から案内を付けて貰って慶都と将都に遊びに行くと伝えたら、少し悩んでから僕を送り出してくれる事になった。

 どうやらまだ〈DIN〉の新入りとして忙しい時期らしい。残念……だけど、独り立ち(?)を許して貰ったのは嬉しいね!

 …………案内人と言うか、ベテランの保護者が居るからと言うのもある気がするけど!

 

 ログインしてからは午前中は旅行の準備に奔走する事になった。

 同じ天地の国内だとは言え、今まで慶都から大白宮に移動して来た時や狩り場に行く時と比べれば必要な準備は段違いだ。

 特に食糧、水、回復アイテムなどの消耗品の他に予備のアイテムボックスに靴や装束。

 それ以外にも特殊な所で【ジョブクリスタル】や【陰陽師】が使用する消費アイテム、はたまたリンを入れる【ジュエル】等も新しく購入する事になった。

 

 ……本当は<修羅の奈落>に有用なアイテムもあれば揃えたかったんだけど、リアルの掲示板や情報サイトにも<墓標迷宮>以外の〈神造ダンジョン〉に関する情報は殆どなかったし、ベテランの竜胆さんも「あそこの事は直接行って自分の目で確かめた方が良い。<マスター>であるなら尚更かと」と言われて碌に教えて貰えなかったから、全く準備できてないんだよねぇ。

 

 準備を終えて春香と竜胆さんと一緒に出発する事になったのだけど、今回の旅路の道中は竜胆さんが所有している馬車に乗って進む事になった。

 流石はベテランと言うか、当然の様に亜竜級の馬に馬車を曳かせて居るのだから実力の違いが垣間見える。

 それもその筈。何故なら竜胆さんはこの天地において決闘ランキングのランカーとして名を連ねる程の猛者であるのだとか。

 超級職にこそ就けていないものの、レベルは当然の様にカンストしていて、更に特典武具まで所持、使用した特異な戦術らしい。

 ……僕もエンブリオの力があるとはいえ、とてもではないがまだまだ勝てるとは言い辛い程だ。

 天地は本当に武芸者のレベルが高い。そんな竜胆さんでもランキングでは20位台なのだから。

 

 ……と、そんな風に竜胆さんと話していると男同士の会話で除け者にされていると思ったのか春香が拗ねていた。

 お願いして二人並んで御者席に座って景色を眺めながらまた話で盛り上がりながら進む。

 リンも【ジュエル】から出してその不思議な感触を楽しんだり、以前聞いた〈UBM〉や歴代の強者についての話をまたせがんだりして……そんな時だった。

 

 

 僕達が乗っていた馬車を野盗達が襲ってきたのは。

 

 

 慶都から大白宮へ、コテツと二人で歩いた道中や狩りの最中には遭遇しなかったから忘れていたのだけど、この世界にならこういう存在と遭遇するのだって至極当然だったんだよね。

 後で竜胆さんに聞いた所、天地ではそこそこ珍しい事ではあるけど、他国では結構頻繁に遭遇するらしい。

 ……竜胆さんの装いが問題なのでは? そりゃあんな軽装で武器も持ってないなら襲ってくるよ!

 

 ……野盗達との戦いは一方的な物になった。この世界でレベルでも戦闘経験でも圧倒的に劣る者がそれらで上回る相手に勝つなんて、それこそ特典武具やエンブリオの固有スキルがなければできる訳がない。

 竜胆さんは馬車の護衛に専念して直接戦うのは僕と春香になった。……聞いた天地の武芸者の話を思い返すと、あれはもしかしたら花を持たせようとしてくれていたのかもしれない。

 

 躊躇いは一瞬あったけど、いざ戦闘となれば思考は即座に切り替えられた。

 二人で容易く野盗達を全滅させ、全滅させた野盗は春香と竜胆さんで首を切り取って赤いアイテムボックスに順々に収納していた。

 あれは各町の衛視に渡して証拠とするらしい。

 

 敵を――野盗達を殺した事で【光術師】のレベルが6から一気に19まで上がった。

 流石に喜びにくい物がある……いや、それ以前の問題があると思う。

 

 ――経験値が、多過ぎじゃないか?

 

 僕と春香で単純に貢献度で分けたと考えても、どう計算してもあの合計レベルが100にも達していなかった野盗達は一人一人が持つ経験値が亜竜級モンスター三、四体に匹敵するか、或いはそれ以上の莫大な経験値を保有していたのだ。

 二人に聞いてみた所、間違いはないようだ。ティアンは、<マスター>やモンスターと比べて遥かに殺害した時の経験値が多いのだと。

 

 流石に、この情報は無視できないから、ログアウトした後勝と明日香と相談しておく。もしかしたら何か特殊な仕様なのかもしれないし…………

 

 

 その野盗の襲撃の後は特にトラブルもなく、順調に慶都に到着する事が出来た。

 門番の衛視の方に《真偽判定》や《看破》、《鑑定眼》を交えた多少の問答の後に首を渡す事になった。

 証拠として裏を確認して貰い、結果として報奨金で一人20万リル貰う事が出来た。泡銭……!

 

 そうして慶都へ到着した所で今日はログアウトする事にした。

 ……いつの間にか夏休みも後半月程度しか残っていない。

 本当にデンドロ漬けの夏になるようだ……!

 

 

 

 To Be Continued…………




自分で考えたオリジナルの詠唱をノリノリで使う系少年のジーニアス君。

ステータスが更新されました――――

《魔物成長》: パッシブスキル
 スキルレベルに応じて配下のモンスターの獲得経験値、成長限界を上昇させる。
 【従魔師】系統のスキル。

《光属性適性》: パッシブスキル
 光属性のスキルの効果をスキルレベルに応じて強化する。
 【光術師】のスキル。類型は他の術師ジョブでも習得可能。

《光属性魔力》: パッシブスキル
 このスキルのスキルレベルと《光属性適性》のスキルレベルに応じてMPを増加させる。
 【光術師】のスキル。類型は他の術師ジョブでも習得可能。


 ……はい! 今話もご覧頂きありがとうございました!
 後書きのスキルはそのー、バランスを考慮した作者の妄想の産物です。ご了承を!
 (【従魔師】系統もなくキャパシティもなくてもパーティ枠使えば純竜級だろうとレアモンスターだろうと使役できるんならこういうスキルがなきゃ【従魔師】系統って不遇なのでは? とか、術師系統ってMP増加系スキルがなきゃ色々計算合わないんじゃ……等々)

 そんな訳で次回から天地をプチ旅行です。
 ジョブも新たにいざ〈神造ダンジョン〉へ!(直ぐに到着するとは言っていない

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