無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:クエストの事後処理と野盗討伐の巻。

前半の話が脱線し過ぎている気がする……
それでは本編をどうぞ!


第二十一話 暇を持て余した・神々の遊び

□<天地・慶都>某所――とある道具屋 【光術師】ジーニアス

 

 

 

 

 

 この世界に“神”はいない。

 

 

 

 

 ……と、いきなり言い切っても何の事か全く分からないと思う。

 そもそも【アダムカドモン】を持つ僕が何を言っているんだという事柄でもあるが、それは一旦脇に置いておいて。

 いやそれ以前に、【神】(ザ・ワン)シリーズやら僕自身の種族である“天使”の存在やら反証に成り得る者もいるのだけど。

 とりあえず此処で言う“神”とは所謂、某宗教で崇めたてられる様な『全知全能にして万物万象を司る世界総てを自分の意のままに動かしている高次の超常的な存在』の事を言うとしよう。

 

 確かに、そんな存在はこの<Infinite Dendrogram>内には居る筈がなく……いや、そもそも現実世界にだって居ないと思いたいんだけど。

 

 ……居ないよね? 僕自身の出自を考えてみるとちょっと不安になってくる。

 確かに“研究所”に居た頃は神々がうんたらかんたら言ってたのを聞いていた覚えもあるけど、結局僕の身には何も異常はないし、あの時の会話からしたら唯一絶対的な力を持つ唯一神の教えにある様な神ではなく、強大に過ぎる力を多神教の神の力に喩えて話していたのだと思うから関係はない筈だし……

 

 ……居ないよね?

 

 

 

 そ、それはともかく!

 この世界には先に例えた様な絶対の力を持つ唯一神の様な存在や、或いは娯楽書籍(漫画や小説)なんかにありがちな個性豊かな神々なんて言うのも存在しない。

 【司祭】や【教皇】、【巫女】、【教会騎士】みたいなジョブはあるのにね。

 それらのジョブについては後述するけど……ならばこの世界には宗教と呼ばれる物はないのかと言うと、それも違うみたいだ。

 

 

 僕やコテツ、そして“組織”での知り合いが(半分趣味で)調べた情報によると、そんな“神”が居ないこの世界でも信仰や宗教は確かに根付いているのだ。

 

 それは、言うなれば強大なる力を持った存在に対する信仰、という形で行われている。

 もしくは、“力”そのものに対する信仰と言っても過言ではないのかもしれない。

 

 自分達に寄り添う強力無比なる存在に対する信仰を、自分達を襲う災厄とも言える絶大な力を持った存在に対する畏れを、自分達に生き抜き戦い抜く力を与えてくれる存在に対する恩恵を。

 例えば、黄河の龍信仰、例えば、レジェンダリアの自然崇拝。

 ドライフ皇国が機械文明の信奉者だと言われるのも、或いはそれと同様の問題かもしれない。……もしかしたら、カルディナが“金”を信仰しているのだってそうだ。 

 

 何故なら、兎角この世界は危機に満ち溢れているから。

 

 レベルを持つ人間と持たない人間では、戦闘職を持つ人間と持たない人間では。

 半端な才しか持たない者と合計レベルをカンストさせられる者は、そして超級職を得られた一握りの人間とでは、戦闘能力は天と地程の差がある。

 そんな戦闘能力が必須とでも言う様に、街道でも運が悪ければモンスターに襲われる。街道を外れたならモンスターの群れとご対面なんてよくある事なのだ。

 並の戦闘職の護衛が居た所でモンスターの大暴走(スタンピード)の前では儚く命を散らす運命であるし、そも合計レベルをカンストさせた才のある武芸者であっても純竜級のモンスターと一対一で勝利するのは至難の業だ。

 〈UBM〉ともなれば、ティアンであればほぼ遭遇と死を=で繋げられる程の脅威なのだ。……超級職を得た様な頂点に居る者でなければ、の話だが。

 

 そう、この世界の人間(ティアン)は、基本的にこの世界の戦闘能力のカーストの中の下層に位置付けられている。

 故に人々は祈るのだと思う。その力で我々を庇護してくれと、我々を襲ってくれるなと、力を授け給えと。

 

 かつて強力無比なる文明を、時代を築いた機械技術に、水晶(クリスタル)より与えられし(ジョブ)に、或いは自分自身の武威に。

 かつて隆盛を誇った文明を滅ぼした天罰神と呼ばれた存在に、レジェンダリアの大木に、絶大なる力を持った【竜王】達に。

 

 

 ……最近では、アルターや天地を中心に現実世界の日本で実在している宗教、<月世の会>が少しずつ広まってきているけど、それは例外としておく。

 あれは確か現実逃避的な宗教だったから、この世界でも合わない訳でもないとは思うけど、実際に広めるのは本当バイタリティあるよね……

 天地では特に術師の都である大白宮を中心に他の術師が大名として納めている領地にも広がっていると言うのだから驚き。まぁ、天地の武芸者の入信者はあまり居ないのだけど。

 まさか明さんも<月世の会>の信者だったとは思わなかった。バリバリ武闘大会に出場していたのは広報か何かだったのかな?

 

 

 また話が少しズレたけど、確かにこの世界に神と呼ばれる様な存在は基本的に存在しない。

 が、それに近い、崇め奉られる様な強大なモンスター――〈UBM〉は存在するのだけど、それらも“神”の名を冠する者は殆ど存在しない。

 ジョブとしての【神】は唯の人間範疇生物が得られる無形の超級職の種類の一つでもあるし、これもとりあえず考えないでおく。

 実態の全く掴めない天罰神とやらやその眷族も違う。……だが、実は前述した様な“神”に近い存在は、確かに実在する。

 

 そう、管理AI達だ。

 この世界(ゲーム)を運営しているゲームマスターであり、管理者でもあり、絶対者とすら言える、この世界において最も“神”に近い存在だと思う。

 

 超高性能な人工の電脳知性を持つ、僕らとは違う意味での超越者。

 一体一体が小国一つの情報やネットワークを管理掌握できる程の能力を持った彼らが計十三体。

 これだけ切り出すと何を企んでいるのかとか聞きたくなる程に怪しいけど、どうやら管理AI達も前述した“神”程には全能ではないらしい。

 チュートリアル、キャラクターメイクの場での会話や極稀にこの世界の中での他の<マスター>と管理AIとの関わりが整理され、まとめとして情報サイトやWikiに載っている。

 それによると、あの管理AI達にもそれぞれ得意不得意があり、派閥があり、好悪の情すらある。

 ……稀に特定の<マスター>を贔屓するかの様な事もあるらしいのはご愛敬か。ここら辺は情報が少なくて真偽は未確定らしいけどね。

 ……あれ? もしかして僕の時も贔屓されている事になるのかな? ジャバウォックとアリス、二人も管理AIが居たし……

 

 ――こほん。それともう一つ、彼ら管理AIについて共通して語られている事はある。

 

 それは、管理AI全員が僕ら――<マスター>を心から歓迎している、という事。

 

 ……彼らも管理AIなのだ。確かに何らかの目的はあるとは思うのだけど、その事に関しては僕も同意したいと思う。

 こんなオーバーテクノロジーなゲームを出しておいて一体何を目論んでいるのか、それは未だに分からない。

 だが、あの時の、僕を迎え入れ、そして送り出した時のあの二人の真剣な表情と声音くらいは信じられそうな気がしたからだ。

 

 ……まぁ、だからもっと運営頑張って! という意見もない訳ではないのだけどね! イベントとかイベントとかね!

 

 

 

 

 

 

 さて、少し話はズレる……いや、元に戻るのだけど。ここにLUC(幸運)と言うステータスがある。

 【採掘師】、【賭博師】系統や【商人】系統、【司祭】系統等の特定のジョブ以外では全く上がらない少し特殊なステータスだ。

 このステータスが高い事で幸運の名の如く、運が良くなる……()()()()()()()()

 

 ……ある意味それも当然だ。運という物は世界全体から見た巡り合わせで、人一人のステータス如何でどうこうされる物では決してない。

 ステータスのデータとして、LUCに関わるスキルや状態異常に対する抵抗判定、採取採掘、モンスター討伐時のアイテムドロップ率などに寄与する物の、逆に言えばそれ以外には殆ど関わりがないし、上がるジョブも極端に少ないので殆ど重視される事がない、不遇のステータスでもある。

 ちなみに、このステータスが高くても運が良くなる訳ではないけどこのステータスがマイナスに行くと色々が不幸が重なって死ぬらしい。意味が分からない。

 

 ――そう、(マイナスにさえならなければ)基本的にLUCの大小は幸運の多寡には関係がない。

 聖職者系統がLUCに補正があろうとこの世界の聖職者は“神”を信仰している訳でもなければそもそも最も“神”に近い管理AIだってその先行きに幸運を導いたりはしない。

 LUCが数万を越える程の値を保持していたって不幸な出来事に遭遇しない訳でもなければ賭け事に勝てる訳でもない(カルディナにはLUCで勝負を決める賭け事もあるらしいけど)。

 逆に、LUCが殆ど初期値の新人が望外の幸運にも賭け事で大勝したり、幾つもの偶然が重なって〈UBM〉に勝利したり、ガチャでいきなり超大当たりを引く事だってあるかもしれない。いいやある筈だ。

 

 そもそもの話として、先に挙げた様な極一部のジョブ以外は合計レベルがカンストしている武芸者や戦闘職の超級職であろうともLUCは100前後と非常に少ない値しかないのだから、ある意味当然ではある。

 超級職に至った彼らが不幸であったのか、いやそれはない筈!

 

 ならば、【アダムカドモン】のLUC補正がない僕であっても――否、補正がないという事はマイナス補正ですらなく、他のティアンの人々と同じ立ち場にあると考えるのが当然だと思う。

 

 

 ――よし!

 

 

 

 

 

ФΩ■◎∠☆彡(やめときゃいいのに)……』

 

 

 

 そこ、リン。何言っているかは詳しくは分からないけど黙っているように。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

8月15日(土)

 今日は春香や竜胆さんと一緒に慶都の中でも特に有名な、天地一の広大さを持つ闘技場施設を観光したり以前はあまり詳しく見れなかった街中をブラブラする予定!

 天地でも有数の商業・興行都市として名高い栄えある中立都市。

 その上で今では天地を初期国家として選択した<マスター>の初期スタート地点となった事からも人口や各種需要が爆発的に増加した天地の中心!

 

 ……まぁ、僕はちょっとした事があって早々に大白宮に移動する事になったんだけどね!

 僕が移動したのもデンドロ内時間では二ヵ月以上前。あの時は本当に初心者中の初心者だったからまともに街の観光も出来ていなかったけど――

 上級エンブリオにも進化し、実力的にも金銭的にもかなり余裕が出来た今なら、思う存分に楽しめると思うんだよね!

 

 そんな訳でとりあえず初日は街の中を回ってショッピングに繰り出す――つもりだったのだけど。

 竜胆さん曰く、武具に関しては初心者用の装備以外ならばこの慶都で購入するよりは、将都まで行ってから買った方が良いのだとか。

 なんでも、【匠神】(ザ・クラフト)や【鍛竜王】を始めとした一握りの最上位の鍛冶師達は天地の心臓たる将都に工房を与えられている事から、腕の良い鍛冶師達はそれに競おうと将都に集まっている為、将都とそれ以外の都では鍛冶師の質が一回りも二回りも違っているらしい。

 勿論、鍛冶大国として名高い天地であるからして、当然の様に他の都に居る鍛冶師達だって他国と比べると十分以上の実力を持っているらしいのだけど。

 ……コテツにお土産でも買って行こうと思ったけど出鼻を挫かれてしまった。

 ついでに、【陰陽師】や【光術師】で使用するようなアイテムも、術師の都と名高い大白宮の店で見た物と比べると……うん、確かに質は落ちるね。春香の言った通りだった。

 

 ……かと言って、商業都市としても名高い慶都の店にも長所は当然あった。

 それは、品物の種類や幅広さ、雑多な雑貨、日用品や名工の技を思わせる工芸品、食文化に闘技場で有用だと喧伝される数多のアイテム群、そして――どの店に行っても存在する“初心者<マスター>用”のコーナー。

 

 日用品や雑貨は以前慶都に居た頃からお世話になっていたし、多分他の国では見られない様な“和”を感じさせる工芸品も素晴らしい物だった。

 ただ綺麗なだけの工芸品もあったけど、それにプラスして一つ一つにスキルが付与されている様な作成者の実力を感じられる品物も結構あって見ているだけでも楽しめそうな程だった。

 ……もしかしたら天地で一番<マスター>が多い都でもあるから、それも狙ってたのかな?

 僕も《自動洗浄》《自動修復》のスキルを付与された綺麗な染布や魔力(MP)を込めると込めた人によって違う何かが起こると言う小さな龍の彫像を買った。ちなみに僕が魔力を込めたら虹色の光球が周囲にホワン……って数秒浮かんで消えた。

 ……これ【光術師】の影響じゃない!? 《フォトン》で同じ様な事出来るし!

 

 そ、それはともかく。それ以外で特に僕の目を引いたのが……“初心者<マスター>用”のコーナー。まだ僕が慶都に居た頃にはあまり浸透してなかった筈の物だった。

 その名の通り、性能が多少低くても十分に使用出来る安価な様々な物品を金銭的な余裕がない初心者<マスター>の為に用意された特別なコーナーだった。

 低レベルなポーションや霊紙、安価な馬に従属モンスターに【ジュエル】に武器防具装飾品と、今の僕には必要な物はあまり無かったが興味深い物が多い。

 ……5000リルで安売りされてたテイム済み【小鬼】のジュエルは結構人気者みたい。人型で器用でそこそこ頭も良く将来性もある、新人【従魔師】や【陰陽師】に人気らしい。

 数瞬、僕も買おうかなと思ったけど、テイムと言うのはそのモンスターの命を預かる行為。そんなに気軽に決められはしないよね。買うならもう少し考えてまた慶都に寄った時にするべきだよね。

 まぁ、リンをテイムした時は勢いだったけど……

 後、【小鬼】って間引きクエストの時の事を思い出しちゃうから……

 

 

 買い物の後はお待ちかね――三人で闘技場施設の観戦。

 前述した様に天地で随一の闘技場施設の広大さを誇り、中立都市であるという特性からか天地での決闘ランキングで使用するランキング戦もこの慶都で行うらしい。

 ……何故か闘技場施設を使ったランキング戦なのに不戦勝が結構あるらしいんだよね。謎だ。

 

 闘技場施設内では幾つかのフロアに分かれており、純粋に障害物も何もない真っ平らなランキング戦や練習試合で多く使われる通常のフィールドの他にも岩や砂場等の障害物が多少あるフィールド、足場となる岩場が幾つも突き出ている様な何処かで見た様なフィールド、レース競技で使われるらしいコースが描かれている広いフィールド等様々な場所が区切られており、何処も不思議な緊張感を感じられる……“決闘場”だった。

 その内の幾つかは僕らが観戦している間にも賭け試合や練習試合、演武で使用されていて盛況な様子が見られる。

 ちなみに、決闘ランキングのランカーでもある竜胆さんはこの闘技場施設の常連についてもかなり詳しいらしく、毎回僕らに実況と説明をしてくれた。

 どの試合も違う趣きがあって楽しめたけど――出場している武芸者が、ほぼ全員が合計レベルをカンストさせている猛者だったのは驚きだ。

 それだけではなく、出場していた武芸者の中の一人として、ステータスやスキルに頼った戦闘ではなく、鍛え上げられ、練り上げられ続けた“技”を感じさせる。本当に観戦できて良かった……

 

 

 メモ:

 C 【祝福の宝玉】

 B 【コモンルーン・《クリエイトウォーター》】

 D 【海の幸セット大盛り】

 F 【MP回復ポーションLv3】

 F 【10フィートの棒】

 

 メテルは!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月16日(日)

【<Infinite Dendrogram>リリース一ヶ月記念、公式季節イベント開催中!】

【現在、『ラベンダー祭り』イベント開催中!様々な効果を持った薬草を手に入れるチャンス!】

 

 ――うん、まさか遠征中にイベントが始まるのは予想外だったなって。

 前回のイベント、というかキャンペーンから現実時間で約一ヵ月、デンドロ内で三ヵ月も経ってるからそりゃ意識してなかったよ。運営(管理AI)めぇ……!

 

 今回のイベントは前回と違って一部はティアンの人達にも関係がある。それと言うのも今回のイベントが『ラベンダー祭り』……

 そう、一言で、各地の掲示板で呼称されている名称で言うならば『薬草祭り』だったから。

 

 今日と明日、デンドロ内時間で合計六日間は世界各地で薬草類の植物の繁茂率、採取効率、効能等が飛躍的に上昇し、その上七大国各国にそれぞれで特色に合わせた薬草が色んな所で採取できるようになるんだとか。

 更に、<マスター>はこの期間中に薬草の採取、使用、生産素材として使用した時や、モンスターを討伐した時に貢献度に応じた“ポイント”を手に入れる事ができ、イベント終了後に街のセーブポイントで様々な豪華景品(これも薬草類らしい)と交換できるんだとか!

 

 

 ――地味ッ! 凄く地味だよ運営(管理AI)ー!

 

 ……まぁ、それでも折角のイベントだから頑張って参加したいと思う。ある意味これも仕事(?)なのかな?

 ちなみに、天地で入手できる特殊な薬草は【血戦草】。

 鮮やかな赤がとても目立って採取しやすい薬草。HPの回復効果と増血効果があるらしい。

 ポーションにすれば緊急時に役立つ一品になりそうだと生産系のスレでは結構盛り上がってたみたい。

 

 さて、今日はイベントが始まったのを竜胆さんや春香も知っていたみたいだから、準備を整えたら将都へ向かう道に出て、道すがら薬草を採取しながら歩いていく事に決定した。

 三人で一緒に冒険者ギルドで将都への配達の依頼を幾つか請けて、いざ出発!

 

 今まで馬車を曳いてくれてた【疾風駿馬】も【ジュエル】に戻され、馬車もアイテムボックスに収納されて徒歩の旅に。

 竜胆さんは僕と春香に地図を渡して「地図を見ながら進む様に」と、言ってきた。

 どうやらこれは勉強の一種らしい。春香、確かに箱入りっぽいからね……

 地図を見てゆっくり、何度も採取したりモンスターを狩りながらの行軍も悪くない。

 

 ……ただ、道を進んでいくとどうしても思い浮かぶのは先日の野盗達。

 前回の相手はレベルも低く弱い野盗達ではあったけど、ここは他の国の人間曰く、修羅の島国、天地。

 僕達すらもなぎ倒せる実力者の野盗がいない等と言う保証は何処にもないし……何より、ティアンの野盗よりも恐ろしい存在――<マスター>の野盗が出ないとも限らないのだから。

 

 

 言わずと知れた、不死身の存在にしてまさしく千差万別とも言えるエンブリオを所有するマスター。

 PK関連のスレでは他者から奪い取った薬草類でもポイントになる事が既に証明されており、このイベント期間中であれば危険度は更に上がる。

 そして何よりも……先日野盗とやり合った際に発覚した、経験値の問題。

 

 それは、現実の掲示板サイトでも噂レベルの眉唾物として扱われていたが――そう、確かにそれは噂として既に定着していたから。

 僕やコテツ以外の誰かが、ティアンを殺しその入手経験値の事を知っているのだ。

 

 ……流石にそれを実証してみよう、等とあの世界での酔狂な真似を掲示板で赤裸々に公開した人は居ないみたいだけど、一度でもそれが情報として掲示板に上がっていた以上、秘密裏にそれを“試してみた”人はさてどれくらいいるのやら。

 

 そして、その経験値を、その()()()()()を知った者が深く考えずにそれを利用しようとすれば……

 

 

 とりあえず、今日の旅路の中では遭遇する事は無かったけど、この考えはこれからも杞憂であって欲しいと思うね。

 ティアンの野盗も、竜胆さんが言った通り天地ではあの類の野盗は珍しいのか全く遭遇せずに済んだ。

 薬草も結構採取できたし善哉善哉、かな?

 

 

 メモ:

 D 【果物セット大盛り】

 C 【身代わりお札】

 D 【劣化万能霊薬(レッサーエリクシル)

 E 【エメンテリウム】

 F 【岩塊】

 

 岩、でかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月17日(月)

 昨日は書くのを忘れていたんだけど、実は今回の徒歩の旅の最中では夜毎に道中の村で泊まりながら進んでいたんだよね。

 それと言うのも、前回の大白宮への旅路みたいに<マスター>だけの旅じゃなく、先日の慶都への旅路の様な亜竜級の馬に曳かせた馬車の旅でもない。

 <マスター>とティアンでの徒歩の旅だからこそ起こる問題……そう、僕のログアウトの問題があったからだ。

 流石の僕でも現実での数時間置きの定期的なログアウトは必須だから、仕方ないね……まぁ、ティアンだけの旅でも道中に村があれば泊まるのは普通の事らしいんだけど。

 

 なんで態々これを書くのかと言うと……今日のその日も地図を頼りに泊まれる村へ行こうとしてた僕らの下にその村――<緑葉村>の村人が突然飛び出してきて、助けを求めてきたからだ。

 

 曰く――亜竜級以上の実力を持った妖怪が村の近くの森で大量発生してしまい、危機に陥っている。

 数が多くて妖怪の実力も高かった為、村の武芸者達は村の防衛で手一杯で問題を解決する余力が残っていない。

 将都へ助けを求めに全力で走っていた所で<緑葉村>へ向かう僕らを見つけ、助力をお願いできないだろうかと懇願している、という事らしい……

 その村人も一人で護衛も付けずに将都まで駆け抜けられる程度には鍛え上げられた武芸者で、決闘ランキングのランカーである竜胆さんの顔を知っていたから是非に、という事みたいだけど……これも有名税と言っていいのかな?

 

 ちなみに、野盗の時と違って今回みたいな事は天地ではそれなりに良くある事らしい。

 モンスター達を間引く武芸者の実力に沿って生態系が形成されていった結果、弱肉強食の地となり、突然変異、特異強化されるモンスターも多いらしい……流石天地だね!

 

 

 結果として事件はこの日記を書いている時点で既に解決しているのだけど、今回の事件の原因は突然変異で発生した純竜級の妖怪、【でいだら】だった。

 数十メテルもある巨大な人型の妖怪。僕も直接戦いたかったのだけど、有力な魔法攻撃が出来る僕は取り巻きの妖怪退治に駆り出される事になった。

 頭目の妖怪だけ倒して他の亜竜級の力を持った妖怪に村を襲われた、じゃクエストを請けた意味がないから、仕方ないよね。

 村の武芸者、男衆もそこそこの実力は持っていたみたいだけど、彼らには村の防衛に専念して貰って僕と春香で森中の配下の妖怪を討伐して回る事に。

 結構数が多かったけど、別に急ぐ旅でもないからね。

 

 ……と、思っていたのだけど。

 取り巻きの妖怪の探索中、一部の妖怪には《生体探査陣》による探知の効果がなく、目視と自前の直感で探索してたんだよね。

 【陰陽師】の他のスキルでも探査系統の術はあるけれど、僕のスキルレベルじゃそこまで広域の探査はできないし。【陰陽師】のレベルも中途半端なままだしね。

 そんな僕に、春香が……「あれ? 《魔性探知》は習得してないんですか?」と――

 ……それは僕もカンストまで上げた【退魔師】のスキル、らしい。僕はまだ覚えていないのだけど。

 なんでかと思ったのだけど、なんと《魔性探知》の習得条件は特定のジョブ――つまり、【退魔師】のジョブクエストに関係するものなのだとか。

 ……【退魔師】のジョブクエストとか、全然請けてないよっ!?

 慶都や大白宮の近辺に妖怪とかアンデッドとか、少なかったから仕方ないと思うよね……!?

 

 聞く所によると、《魔性探知》以外でも各ジョブでのジョブクエストを請ける事が習得条件であるスキルはそこそこあるらしい。

 知らなかった……クエスト関連のスレとかは、あまり見てなかったから……

 しかも一番多くジョブクエストを請けていた【剣武者】にはジョブクエストが関連するスキルはないんだとか、がってむ!

 

 リンにも協力して貰って、取り巻きの妖怪退治と、ついでに薬草採取とポイント稼ぎは結構上手く行ったから今回の失態は忘れたいかなと思う!

 大白宮に帰ったらジョブクエスト、重点的に請けなきゃ……

 

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

【黄金サボテン】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 カルディナで入手できる特殊な薬草(?)。
 高値で換金が可能。

【深海海藻】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 グランバロアで入手できる特殊な薬草。
 栄養素が豊富で、加工したアイテムを摂取すると一定時間《ボトムウォーキング(水中行動)》の効果を得られる。

【魔霧草】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 レジェンダリアで入手できる特殊な薬草。
 加工する事でMPの回復効果と一部の呪怨系状態異常の耐性、回復効果が得られる薬品を作り出せる。

【勇戦草】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 アルター王国で入手できる特殊な薬草。
 加工する事でSPの回復効果と一部の精神系状態異常の耐性、回復効果が得られる薬品を作り出せる。

【龍玄草】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 黄河帝国で入手できる特殊な薬草。
 加工する事で一定時間攻撃力、魔法攻撃力向上効果と一部の病毒系状態異常の耐性、回復効果が得られる薬品を作り出せる。

【黒鉄草】
『ラベンダー祭り』イベント限定アイテム。
 ドライフ皇国で入手できる特殊な薬草。
 加工する事で一定時間防御力、魔法防御力向上効果と一部の制限系状態異常の耐性、回復効果が得られる薬品を作り出せる。


 ……はい! 今話もご覧頂きありがとうございました!
 後書きの他国のイベント産アイテムを出してみた意味? 趣味です。
 描写はしてないけど村々を回ったりしてました。描写を入れろって? 御尤もです。

 それでは、次回こそ神造ダンジョンに到着します!
 ……日記形式なので例によってどれくらいダンジョンが描写されるかは分かりませんが。
 
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