無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:ガチャァ……

何故か長くなってしまった……
それでは本編をどうぞ!


第二十二話 ダンジョン・トラベラーズ

□将都 <修羅の奈落>入り口前 【光術師】ジーニアス

 

 

 <修羅の奈落>、というダンジョンがある。

 〈神造ダンジョン〉――この世界の法則に則って様々な経緯で形作られた〈自然ダンジョン〉とは違う、神々(管理AI)によって作られたとされているダンジョンの一つだ。

 

 何故神々が作ったダンジョンとされているのか。それは――そのダンジョンの仕様が余りにも()()()()()()()()()()()とはかけ離れているからに他ならない。

 

 一つ。繁殖やエレメンタル、植物系統の発生等の出現要因や生態系に関係なくモンスターが湧き出る(リポップする)特異性。

 一つ。リポップするモンスターの数は一定以上にはならず、そしてダンジョン外へのモンスターの流出が一切起こらない(従属契約(テイム)して連れ出す場合等を除く)。

 一つ。浅い階層では非常に弱いモンスターしか出ないが、深く進んでいくにつれてモンスターはどんどんと強くなり、深部では純竜級を越えたモンスターも、伝説級や神話級モンスターですら出現する始末。

 一つ。モンスターと同じ様にアイテムの入った宝箱も稀にリポップし、深部ではその中から今は失われた筈の古代の兵器や、なんと〈UBM〉の特典武具が出てくる事すらある。

 一つ。一定のフロア毎にボスモンスターが配置されており、これを討伐すると追加のアイテムも得られる。

 一つ。その起源は一様に詳細が不明であり、誰が作ったのかも、どの様に作られたのかも一切記録には残っていない。

 一つ。そのダンジョンを完全に踏破した者には神より莫大な報酬が与えられると言う…………

 

 

 それが、ティアンの人々に伝わる〈神造ダンジョン〉についての概要だ。

 だがしかし、そのダンジョンの説明は一部の<マスター>、というよりゲームやファンタジー物が好きな<マスター>達にしてみれば、まさに期待していた通りの『ゲーム的なダンジョン』であり、この情報が知れ渡るや否や多くの<マスター>が熱狂していたらしい。

 実に多くの<マスター>達が〈神造ダンジョン〉に突撃しようとしたが……事はそう上手く進まない。

 

 何故なら、各〈神造ダンジョン〉には各々に侵入条件が設定されていたから。

 

 その特性から基本的に各国に管理されている〈神造ダンジョン〉。当然ながら、基本的に管理している各国に所属しなければ入る事は許されない。

 難易度の低いクエストや多少の金銭で解決できるアルター王国の<墓標迷宮>や大名から信任を得れば基本的にパーティメンバーも含めてフリーパスの<修羅の奈落>はまだ良い方だ。

 そもそもレジェンダリアやドライフやグランバロアみたいな〈神造ダンジョン〉がある環境の方が問題で、案内役にカンストレベルの【冒険家】系統が必要な迷いの森の奥地だったり、超極寒地帯で入り口周辺を純竜級のモンスターがうろうろしてたり、深海にある上に迷宮全体が水没してて水中行動能力が前提だったりする頭おかしい〈神造ダンジョン〉も少なくない。

 

 さて、そんな良い方と噂の〈神造ダンジョン〉である<修羅の奈落>の【探索許可証】を手に入れた僕達も意気揚々と挑戦した訳だけど。

 

 

 

 ……今では<修羅の奈落>の入り口でMP(魔力)切れの疲労感でぐったりしてるんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、良い経験になった様で何よりです。身体はどうですか? 状態異常が残ってたら大変なので確認しておいた方が良いでしょう」

 

「竜胆さーん……」「竜胆師範……」

 

 精神的に疲弊している僕らを見て涼し気な顔でそう言う竜胆さんを見て、春香と二人して半眼で睨む。

 いくら事前に【救命のブローチ】を渡されていたとは言え、まさかあんな……あんな、()()()()()()だったとは思わなかった。

 

 そう、事前には濁されていた<修羅の奈落>の特徴は……()()()()()()()()()()()()()()()()()が侵入者を迎え撃つ、非常に危険な高難易度ダンジョンだったのだ。

 

 部屋と部屋を通路で区切られ、通路や部屋の床、壁、天井を問わず所々に種々様々なトラップが仕掛けられ、部屋からは多数のモンスターが雪崩れ込む。

 「何処のローグライク?」と思ったけど、この人間の命が儚い世界でリアルなローグライクダンジョンって、かなり難易度が高い。

 

まず、数居るモンスター達はそういうゲームと違って通路に戻って一体ずつ戦おうとしても、高いステータスに裏打ちされた身体能力で三次元的に襲い掛かって来るし(こちらも慣れないながらも応戦した)、そもそも数メテルはある人間サイズの通路だと短剣等ではない普通の刀剣類を振るうのに困らないのは良いけど、【小鬼】や小~中サイズの魔獣や魔蟲等は普通に複数体同時に襲い掛かってこられるからむしろ不利になる事すらある。

 基本的に一つの階層には同じ種族のモンスターが出てくるからモンスター同士で連携してくる事も当然の様にあるし、モンスターの数も非常に多く、索敵もしていないのに間引きクエストを張り切っていた時と同等以上の数と戦う羽目になった……

 

 そして、そんなモンスター以上に罠も厄介な物が多かった。

 どうやら宝箱やモンスターと同様、何らかの仕様により再出現(リポップ)しているみたいで、しかもローグライクのゲーム等とは違い、リポップにタイミングはないのか探索中に突如足元に罠がリポップするという事もありえるらしい。意味が分からない。

 罠の種類も豊富で、壁から矢や槍が飛び出る罠なんて序の口、騒音が数十分鳴り響いて集中を乱しつつもモンスターを呼び寄せるアラームトラップ、粘着性の糸を使ったトラップや、明らかに魔法的な罠も多く見られた。

 特に魔法の罠は状態異常に関する罠が多い為、一時も気が抜けない……絶えず【陰陽師】の探知系統の術を展開していなかったら危なかったかもしれない。

 そのせいでMPが少なくなってモンスターを魔法で殲滅もできなかったんだけどね!

 

 せめて、僕と春香だけじゃなくて、もう少し人数を増やして戦力があれば対処はできたと思うんだけど……

 まぁ、〈神造ダンジョン〉を楽しみにし過ぎた僕らも悪いと言えば悪いのかもしれないけど!

 

 

「いやぁ、<修羅の奈落>の洗礼を受けるのはこの天地の武芸者の誉れ。それも手を貸さずとも十六層まで二人だけで攻略できるとは。お二人とも流石ですね」

 

「せめて事前にもっとこう説明を……それじゃ洗礼にならないのかもしれないけどね」

「……これもお父様の指示なんでしょうか」

 

 ため息を吐きながら言う春香。僕はそれで正解だと思うよ。竜胆さんも少し申し訳なさそうにしてるし。

 ……誤魔化そうとしている様な魂胆もある気がするけどね!

 

 

 

 

 

 さて。そんなやり取りの後、僕らは改めて竜胆さんに<修羅の奈落>についての事を教えて貰う事になった。

 

 <修羅の奈落>。

 この天地の将都のとある場所から地下へ地下へと続いている〈神造ダンジョン〉である。

 〈神造ダンジョン〉であるこの<修羅の奈落>のダンジョンとしての特徴は、名前の通り修羅が如く――大量のモンスターとトラップにある。

 他の〈神造ダンジョン〉と比べても非常に多いモンスターのリポップ量、そして種類の豊富さもその数もしっかりと兼ね備えている多彩なトラップ群。

 トラップの一環なのか、定期的にダンジョン内の床や壁や天井が動いてフロアが再形成される事すらあるらしい。不思議なダンジョンか何か……?

 このトラップ群は基本的に下層へ向かう毎に危険度が上がっていき、深層近くまで進んでいくと即死罠(デストラップ)もかなりの頻度で登場する様になるらしい。……殺意高いね!?

 

 ちなみに、そんなに苦労する<修羅の奈落>なのだから、宝箱もさぞかし期待できるのだろうなと考えるのだけど、宝箱の量や質は他の〈神造ダンジョン〉の平均と大して変わらないらしい。悲しい……

 大量に出現するモンスターから戦利品や経験値は得られても、罠からは基本的に何も得られないのにね……

 

 しかし、それはそれとして<修羅の奈落>は仮にも〈神造ダンジョン〉。例え多少、と言えない程のデメリットがあったとしても無尽蔵にモンスターと宝箱を生成するというその特性は変わらない。

 むしろ、侵入手段が容易な点を鑑みればこの程度のデメリットは無いも当然……とは言いたくないけど、そう言われているらしい。

 それどころか、天地の人々(ティアン)はこのダンジョンにおけるそれ以上の付加価値を見つけてしまったのだ。

 

 それは、そう――()()()と言う価値を。

 

 ……試練の如く大挙して押し寄せてくるモンスター。意識が戦闘のみに偏る事を許さぬ大量の罠。

 それらを乗り越えた先にある強敵(フロアボス)との戦いと、報酬としての宝箱。

 しかもこれらは奥へと進んでいくに連れて段々と危険度と難易度を上げると言う……

 

 ――だから、天地の武芸者はここを修業場として利用していたのだ。

 モンスターの大暴走や戦争においても十分な戦闘が可能な様に大量のモンスターと戦う経験が積めるこの<修羅の奈落>を。

 戦闘能力だけではない第六感を、役割を分担する能力を、多種多様な人間が嫌がる罠の知識を得られるこの<修羅の奈落>を。

 モンスターの戦利品を、宝箱をこの国に住まう者の財産とする為に、強くなる為に、武芸者の自分の腕試しの為に……

 

 ――まぁ、分からないでもない。

 この天地のお国柄と、〈神造ダンジョン〉の性質を考えれば、むしろまだマシな方なのかもしれない。

 多分、天地の武芸者ならもっときつい〈神造ダンジョン〉でも嬉々として挑戦していただろうからね。

 ただ、それがエスカレートして初挑戦の際に“洗礼”だと言って情報も渡さずに放り込むのはどうかと思うけどね!

 ……まぁ、【救命のブローチ】を貸して貰った上に戦闘には参加しなかったけど着いてきてくれたんだから、竜胆さんも気を使ってるのだとは思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 <修羅の奈落>への初挑戦(洗礼)も済ませ、竜胆さんに此処の説明も十分に受けて。

 それじゃ準備を整えたら早速再挑戦――とは、流石に行かなかった。

 

 次からは普通に天地でも上位の武芸者である竜胆さんも戦闘に参加してくれるとの事だけど……正直、それだけだと全く足りないのだ。

 勿論、僕と春香だけだった時よりはモンスターの殲滅力も経戦力も飛躍的に高まるが――どうしても、あのモンスターの数を相手に三人だけで挑むのは分が悪い。

 

 ……春香や竜胆さん曰く、“広域制圧型”や“個人戦闘型”だとか色々と戦闘のタイプを聞いたけど、それは長くなるから省略する。

 重要なのは、この三人共が個人戦闘型であり、そしてこの人数だと<修羅の奈落>のモンスター相手に不安が残る、という事。実力的な面はそこまで問題はないのだけど。

 そうと決まればやる事は単純だ。

 

 そう――パーティメンバー募集である!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして集まったやる気満々のメンバーがこちら!

 

 

 パーティの引率役! 天地決闘ランキング第二十二位! 当然ながら合計レベルはカンスト! 竜胆直寿さん!

 メインジョブは【鎧武者(アーマード・サムライ)】、サブジョブとして【格闘家(グラップラー)】【拳士(ボクサー)】等!

 特典武具の全身鎧を最大限に生かした豪快な戦法の頼れる先達! 当然前衛!

 

 フレンドリストから偶然将都に居たのを勧誘! 宗教勧誘はご遠慮するよ! ナイスミドルな植田明さん!

 メインジョブは【連闘士(チェイン・グラディエーター)】、サブジョブとして【戦士】【武士】【闘士】等!

 彼が持つエンブリオ【苦鍛窮宮 ダイダロス】は珍しいTYPE:ラビリンスの簡易ダンジョンを生み出すキャッスルの上位カテゴリー!

 ……ダンジョン狩りには使えない! ステ補正もDEX特化らしいから補正もあまり期待できない! 己の力や技を頼りに〈神造ダンジョン〉を体験しエンブリオを強化したいのだとか! ジョブからしても当然前衛での参加!

 

 フレンドリストから勧誘二人目! ステータスは最強! レベルも竜胆さんに次いで高い! 名前が発音しにくいよモョモト!

 メインジョブは【修行者】! サブジョブとして【大戦士】【大武士(グレイト・サムライ)】【狂戦士】等!

 【修行者】はステータス強化スキルに特化したジョブだからか、彼のエンブリオ【極天覇道 ハジュン】の極大のステータス補正も併せてステータスが純竜級にまで達している強者!

 ただしスキルは色んな意味でお察し……典型的なHFO! 

 ボス以外ならどんと来いらしい! 【修行者】の装備制限で籠手しか武器ないのにね! 前衛しかできない!

 

 パーティの紅一点! 大白宮の都のお嬢様! 何気にデンドロ内で一番付き合いが長くなってる気がする西白寺春香!

 メインジョブは【軽剣士(フェンサー)】、サブジョブとして【光華武者】【華武者】!

 レベルはパーティ内で一番低いけれど特化したジョブ構成と装備品の力でAGIはパーティ内トップの回避盾!

 今回の〈神造ダンジョン〉では大幅なレベルアップが期待できそうな気がするね! 勿論前衛!

 

 

 

 

 バランス悪いとか結局範囲攻撃が碌にないとか色々あるけど…………

 

 罠 の 探 知 は ! ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

8月18日(火)

 昨日一昨日と、結構寄り道もしたけどようやく! 無事に天地の要所、【征夷大将軍】が治める都、将都へ到着した。

 七大国の一つ、天地の心臓と言われるだけあって人口も多くて活気溢れる街なんだけど……なんて言うのだろう。

 慶都や大白宮と比べて明らかに“圧”が違うって感じがするんだよね。

 竜胆さんに聞いてみると、それはこの将都に居る数多の武芸者達の威圧感……つまり、力量を感じ取っているらしい。

 ……現実では全く使わない感覚な気がするよっ!

 まぁ、つい最近強敵(〈UBM〉)とも人間(野盗)とも戦ったから、そんな感覚があっても不思議じゃない様な気もするけど。

 確かに、明らかに慶都や大白宮よりも多い、そこらを歩く武芸者らしき人達を意識して見てみればなんとなく相手の力量(レベル)がどの位なのか分かる気がする。

 超級職っぽい凄い威圧感を持った人が短時間で二人もすれ違ったのは多分天地だからかなって……

 

 さて、将都に到着した後は冒険者ギルドで配達依頼を終えて宿の手配も済ませ――いざ行かん、〈神造ダンジョン〉、<修羅の奈落>へ!

 

 

 ……と、思っていたのだけど。

 竜胆さんの提案でまずは僕と春香だけで腕試しに挑戦してみる事になったのだ。

 〈神造ダンジョン〉の低層は本当に初心者が戦う様なモンスターしか出ないらしいからね。慣らしとしては良い塩梅かなと思えたのは、五層目までだった。

 

 ……モンスターとトラップ、多っ!?

 そう、後で竜胆さんに聞いたのだけど、<修羅の奈落>は多量に大量なモンスターとトラップで侵入者を歓迎するある意味正統派に高難易度な〈神造ダンジョン〉だったのだ。

 結局、罠の探知用のMPが危なくなったのと殲滅力が足りなくなったから、十五層のフロアボスを斃して大量の雑魚の中に亜竜級モンスターが混ざる十六層で引き返す事になったよ……

 

 半日強のダンジョンアタックで後は宿屋に戻って休みながら竜胆さんに<修羅の奈落>についての事を講義して貰った。

 

 <修羅の奈落>。

 天地に在する〈神造ダンジョン〉で、その起源は不明だが少なくとも先々期文明時代の後、天地が一つの国として形を成してきた頃には既に存在したという。

 その場所は今僕らが居る将都……なのだけど、実はこのダンジョンの入り口の場所は少し特殊であるのだとか。

 どう特殊なのかと言うと――なんとその入り口は【征夷大将軍】の居住している城の地下にあるのだ。

 しかし、このダンジョンは別に今代の【征夷大将軍】の家が管理してきたとか、そういう訳ではない。

 なんと、この<修羅の奈落>は【征夷大将軍】が代替わりする度にその当代の居住している城の地下へ入り口が転移(ワープ)するんだとか! ……どういう事なの!?

 非常に珍しい特殊超級職、或いは【征夷大将軍】そのものか、【征夷大将軍】の土壌となる天地と言う国に何か深く関係があるのだろう、と言われているが、その謎は未だに解明されていない。

 まぁ、詳細が解明されている〈神造ダンジョン〉なんて基本的にないんだけどね!

 

 その特徴を一言で表すなら……“リアル的ローグライクダンジョン”だろうか?

 かなり広い空間を部屋と通路で区切られた、地下型のダンジョン。……地下って言っても前述の仕様を鑑みるに入り口からダンジョンが存在する別空間に転移している様な気もするけどね。

 まさにゲームらしくモンスターもトラップも自動生成され、フロアを降りる毎に各々の性能が上がる、典型的? なダンジョンだと思う。これはどの〈神造ダンジョン〉も共通らしいけど。

 ……トラップとモンスターの多さを除けばね!

 

 圧倒的多数の敵を制圧、殲滅できる戦闘スタイルの事をあの世界では広域制圧型、広域殲滅型、と言うらしいけど、天地の武芸者は、いや他の国であろうとも大多数の戦闘職の人間の戦闘スタイルは対少数を最も得手とする個人戦闘型に分類される。

 当然ながら僕も春香も、そして竜胆さんだって個人戦闘型だ。

 そんな僕らが自前のMPを多過ぎる罠の探知に使っていて余裕がなく、【ラスリルビウム】に充填してある分を除いて他の魔法も使えない様な状況で戦うと言うのは、非常に難しい。本当に難しい……

 だからこそ、そんな状況を学べるこの<修羅の奈落>が重宝されているのだと思うけど、うん。本当に天地の武芸者のバイタリティは凄い。

 

 さて、だからと言って〈神造ダンジョン〉攻略を諦める訳には行かないのがゲーマーにして武芸者のサガという物。

 探査魔法を【符】に込めながら、商店を回って使えそうなアイテムや消耗品を増やしておけば……

 ううん、それも必要だけど、やっぱり必要なのは人数……かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月19日(水)

 今日から本格的な<修羅の奈落>ダンジョンアタックに挑戦!

 ……勿論準備を整えてから、整えてからなのだけど……

 ある意味、一番手強かったのが人集め――パーティメンバーの募集だった。

 

 言わずと知れた天地の心臓、将都。

 そこに集まる武芸者のレベルも高く、冒険者ギルドに居たり街中で見かける武芸者達は低くても合計レベルが350を下らない様な猛者ばかりだ。むしろ500(カンスト)の割合が非常に多いくらい。

 ……そして、この天地でそこまで鍛錬と修練と修羅場を重ねてきた猛者達にとって、僕らは非常に頼りなく見られるらしい。

 確かに、装備や〈エンブリオ〉の補正を入れて戦力にはなるけど、天地の歴戦の武芸者達と競える様な経験があるかと言えば、ある筈がないのは間違いでもない。

 当然ながら同じ年頃の年少武芸者も見つからず、レベルや経験が近い武芸者を探そうとしても運悪く見つかる事はなかった。

 

 ならば、<マスター>はどうなのかと言うと……まず、他の都に比べると将都にはあまり<マスター>が居ないという悲しい事態を思い知る事になった。

 然もありなん。天地を選択した<マスター>の初期スタート地点は中立領である慶都で、そこから他の自分が所属する領地を選ぶ形式なのだが……現時点で既に最大勢力にして既得権益も強そうな将都にはあまり<マスター>は集まらなかったらしい。

 所属している武芸者と競う難易度の高さ、判官贔屓、慶都からの距離、初心者用の安価なアイテムの少なさ、周辺のモンスターの環境、【征夷大将軍】って怖そう、エトセトラエトセトラ。

 ……他にも、中立領である慶都から出たくない生産型がいたり、すべての領地を見て回るコンプ勢がいたり、【征夷大将軍】相手じゃ神造ダンジョン入場券でもある【修羅の奈落探索許可証】が手に入れ辛そうだから敢えて他の領に行く人がいたり、そもそも一つの領地固執してない人も多かったりして将都に居付く<マスター>の数は非常に少ないのだ。

 罠満載の<修羅の奈落>のダンジョンアタックだから、<マスター>のパーティメンバーが一番楽だと思ったのだけど……

 

 ……と、そんな事を考えながら商店で【MP回復ポーション】や【解毒薬】等の消耗品を買っていた時、ふとフレンドリストを見ると――なんと、二人もこの将都の街中に居たのだ。

 早速その二人――武闘大会で知り合った明さんとモョモトに接触してパーティの勧誘をすると二人は喜んで快諾してくれた。

 どうやら二人の目的も<修羅の奈落>で、地道に討伐クエスト等をこなして顔を売っていたらしい。

 単純にステータスが高くて強いモョモトと、相手を様々なデメリット付きの簡易ダンジョンに隔離できる明さんの【苦鍛窮宮 ダイダロス】があれば純竜級のモンスターでも狩れるのだとか。これは頼もしい。

 

 ……と、その時はそう思っていたのだけどね?

 

 実際に竜胆さんも入れたパーティメンバーとしては、竜胆さん、明さん、モョモト、春香、そして僕の五人…………

 

 前衛しかいない! 魔法も支援も回復も探査も基本的に僕しか出来ない! 前衛しかいないから通路じゃ非常に戦いにくい!

 竜胆さんもモョモトも罠は漢感知とリアルスキルの直感と身体能力頼りだし明さんの【ダイダロス】は〈神造ダンジョン〉内じゃ使えないし殲滅力は抜群に上がったからどんどん進んで【符】も【MP回復ポーション】もゴリゴリ減っていく……

 この中じゃ親に貰った装備品(マジックアイテム)のお陰とは言え、多少の魔法攻撃が出来る春香が天使に見えるよ……

 烏丸達と組んだ時、とてもバランスが良いパーティだったんだなと改めて思い返しながらも狩り自体は順調に進んでいった。狩り自体は。

 誘った<マスター>は既に二人共僕と同様に上級エンブリオに進化している事もあり、個々の実力は高かったから春香と二人だけだった時と比べて安定感は増していた。

 

 ……バランスは悪いのにね!

 全身鎧の特典武具を【鎧武者】のスキルで強化した竜胆さんと、エンブリオのステータス補正でENDが5000まで達しているモョモトの二人が優秀なタンクとして最前衛で壁をやってくれるお陰で僕の方にモンスターが来る事は稀だったし、明さんと春香がフォローして抜けてきたモンスターは即座に倒されてたからね。

 ……僕も基本的に前衛で、自衛くらい普通にできるって事忘れられてないよね?

 

 五人でのパーティは僕の消費以外は特に問題なく<修羅の奈落>を突き進み、最終的に亜竜級上位から純竜級下位のモンスターが出現する二十五層付近で狩りを行う事に決定した。

 とは言っても、パーティを組んでの初回の狩りではそうして当面の狩場を決定したら将都まで戻る事になった。

 何故なら、<マスター>である僕らはどうしても定期的にログアウトをする必要があるからだ。

 僕ら<マスター>がログアウトしている間ティアンである二人だけには出来ない。

 交代でログアウトするというのも出来るが、どちらにしろこの<修羅の奈落>でずっと戦闘を続けていると身体的・精神的な疲労で集中力も落ちてくるので適度な休みは必要なのだ。

 モンスター狩りと休息はバランス良く行う様に、とは天地の武芸者の常識でもあるからね!

 

 ……まぁ、僕はそんな休憩の時間中にもMPが回復する度に【符】に探知魔法を込める作業があったのだけど。

 それを見かねてか、三回目のダンジョンから帰還と休息の時に春香は【斥候(スカウト)】に、明さんは【狩人(ハンター)】にジョブチェンジしてくれた。嬉しいね!

 斥候(スカウト)のいない冒険(ダンジョン)は無謀である事の例えだ、と昔の本にもあったからね。

 まだ二人共ジョブレベルが低いけど、これで負担が大分減るよ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月20日(木)

 今日の分の狩りで明さんの【狩人】も春香の【斥候】のジョブレベルも随分と上がり、順調に<修羅の奈落>で狩りを続けていた、いたのだけど……

 リアルで約二日、デンドロ内で六日も連日〈神造ダンジョン〉に潜る日々が続いて流石に根を上げる事になってしまった。

 

 ……コテツが作成した【ミスリルソード】が。

 思えば、武闘大会に出る直前に鍛えて貰ったこの剣で随分と無茶をした気がする……

 武闘大会を始めとして、間引きクエストで大量の鬼族の血を吸い、〈UBM〉との激戦にも耐え、村を襲っていた妖怪達を斬り伏せ、そして〈神造ダンジョン〉で迫りくる大量のモンスター達を切り捨てていった良い相棒だったのだけど、ついにこの時が来たね……

 特典武具やTYPE:アームズ系統のエンブリオと違い、当然ながら武器や防具は使えば摩耗するしそれが限界まで達すれば使い物にならなくなる。

 むしろ、明らかに数段以上格上の剣だったあの【ラスリルビウム】とまともに斬り結べただけ凄いよ。

 普通は武器以上に硬い相手を全力で攻撃したり、圧倒的な攻撃力を持つ攻撃を放たれれば摩耗など関係なく武器も防具も耐久を超えて壊れてしまうんだけど、ここまで持ってくれて本当、助かったよ。

 防具は……あまり被弾してないから損耗的には大丈夫だけど、性能的にはそろそろ新しいのが必要になる時期かな? どちらにせよ、大白宮でコテツと合流してからの話になるんだけど。

 そう、今日問題になったのは流石に武器なしでの戦闘は難しいと言う事だ。

 ……格闘術? それはまだ練習してないからなぁ。デンドロやってると余裕があったら嗜んでみようかなという気にもなるけど。

 【10フィートの棒】が武器として使えればとも思ったんだけど、流石に強度的にダメっぽいね。

 

 そんな訳で、現実世界での夕方頃から明日の朝頃まで……デンドロ内時間では一日半程長い休憩を取る事にしてその間に将都での買い物を楽しむ事にした。

 何せ、将都の鍛冶師達は天地で随一の実力を持つと評判らしいのだ。天地で随一、という事はデンドロ内では一番と言っても過言ではない。

 ……まぁ、確かに楽しみではあったんだけど、やっぱりコテツが作った奴が良いなぁ。

 

 結局、買ったのは中堅武芸者用の長剣である【エレメンタルブレイド・天】と太刀の【十六夜】だった。

 【エレメンタルブレイド・天】は剣としての性能は使用してた【ミスリルソード】の若干ではあるが純粋強化の様な物。

 装備スキルを発動させる事でMP(魔力)を消費して天属性のいずれかの属性を一定時間剣に付与する事が出来るんだとか! 地味かもしれないけど、中々に使い勝手は悪くないと思う。

 【十六夜】は黒い刀身をした太刀で、今までの武器と比べると少々取り回しに難があるけど闇属性に属する装備スキルが付与されており、斬り付けた相手を闇属性の魔力で更にHPを減少させる代物。

 <修羅の奈落>では使わないけど、品質も悪くないし値段も良い感じだったので予備の武器として購入しておいた。御満悦。

 

 

 そして、もう一つ。

 ううん、正確には武器じゃないのだけど……将都の商店等を散策して見て回っている時に、つい目に留まった物……いや、()があったのだ。

 それを見つけたのは、テイムモンスターやティアンの奴隷を販売している商店。

 【陰陽師】が使役する鬼族や妖怪ばかりだった大白宮の店や、初心者用のテイムモンスターが多かった慶都の店とも違う。

 亜竜級や、数は少なかったけど純竜級のモンスターも扱っている将都の高級店。

 その店で見つけた、【ジュエル】に入れられた一匹の亜竜――火竜だ!

 

 ファンタジーの代表的なモンスターは? と言えば当然ながらドラゴン。

 ドラゴンの代名詞と言えば絶対に炎の吐息(ファイアブレス)だよね。

 これは幾ら時が経とうとも変わらない浪漫だって思うんだよ!

 その中でも、この子だ、という最初に目が留まった子がいた為、金額も買える範囲だったので即金で購入!

 ……いつかの日記で書いたのと反するみたいな感じだけど、あの子は逃せない! って感じがしたんだよね。

 リンと同じ様な気配と言うか……うん。後悔はしてないかな。

 

 天竜種の一種、【火炎亜竜(フレイム・デミドラゴン)】の中でもレベルや年齢と比べて身体的なステータスが低いという事で亜竜の平均よりも安めだったけど、全然ハズレなんて事はないと思う。

 感じられるこの感覚、その身の内に秘めている高い魔力(MP)、澄んだ瞳に宿る高い知性、紅蓮に輝く鮮やかな鱗。どれを取っても凄い素敵だよね!

 ……購入して早速スキンシップしてたらリンに体当たりされたけど。

 

 名前は少し迷ったけど、安直に“イグニス”って付ける事にした。

 フレイム、ブレイズ等からリンとも感じが近いレイ、って名前も考えたんだけど、光属性魔法の《レイ》と紛らわしいし、何故か何となくダメな予感がしたからね……

 こういう直感には従っておいた方が良いと思う。リンともイグニスとも出会えたのも直感のお陰だしね!

 

 

 炎を吐き出すドラゴンの背に乗って空を駆る……早速夢が一つ叶いそうだよ。

 これからよろしくね。イグニス!

 

 

 

 

To Be Continued…………




冷静ぶっている様に見えるけど、大体ノリと勢いで行動しているよねジーニアス君。

ステータスが更新されました――――

【修行者】:修練系統下級職。身体修練特化型。
 HP、STR、AGI、ENDと言った身体的ステータスを割合増加させるパッシブスキルやそれらの元々のステータスを微量増加させるパッシブスキルを習得する。
 効率的にステータス(だけ)は上げられるが、このジョブをメインジョブにしている時は武器を装備する事もできなくなり、同じ修練系統以外のジョブスキルは全く使えなくなるのでレベル上げが地味に面倒。
 同系統にMP、LUCに特化した【瞑想者】やDEX、SP、MPに特化した【熟練者】等がある。


名称:【苦鍛窮宮 ダイダロス】
<マスター>:植田明
TYPE:ラビリンス
能力特性:試練・苦難
到達形態:Ⅳ
スキル:《迷宮形成》《神の試練》等
モチーフ:ギリシャ神話において怪物ミノタウロスを閉じ込めた迷宮、ラビリンスを作り出した名工、“ダイダロス”
紋章:棘が生えている砦
備考:迷宮を創造し、モンスターを徘徊させ侵入者を排除する世に溢れる典型的なTYPE:ラビリンスのエンブリオ。
 特徴的なのはスキルによりリソースを用いて自身が想像する“試練”を侵入者に与える事が可能だと言う事。
 戦闘条件設定、状態異常、ダメージ、隔離分断、トラップの追加、モンスターの強化……
 出来る事は多岐に渡るが、その出力と強度はリソースに依存し、そして基本的に試練や苦難という形でしかエンブリオ内に干渉する事が出来ない。


 ……はい! 今話もご覧頂きありがとうございました!
 〈神造ダンジョン〉での稼ぎってヤバそう。レイ君が倒したデミドラ一匹で数万~数十万(あの鎧は四十万で売れたし)ですよ。
 上級エンブリオになれば亜竜級とか簡単に倒せる<マスター>多そうだし、やっぱり〈神造ダンジョン〉のリポップ凄いなって。

 ちなみに、ジーニアス君の従属モンスターはイグニスを境に暫くストップする予定です。
 【従魔師】以外にその系統のジョブに就いてないし、あまりいきなり増やし過ぎても(作者が)扱いきれないし……

 次回は狩りの続きとか他! になります。
 ジーニアス君は宝箱から超レアアイテムを入手したりできるのか……!?(できない)


 ‐追記‐
 西白塔、西白塔……詳細が分かるまでスルーします宣言!
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