無限の世界のプレイ日記   作:黒矢

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前回のあらすじ:空は危険なので飛行する際は注意しましょう(戒め

今話は前話の反動(?)で少し短めです!
……いや、6000字もあれば十分なのでは?

それでは本編をどうぞ!


第二十六話 でんどろぐらむ・学園編!

□<大白宮・『黒庵堂』> 【隠密】ジーニアス

 

 

 

 

「――そんな訳で! ここの予算は僕が持つから皆じゃんじゃん頼んでねー!」

 

 

「僕は元々そのつもりだと言うか、そういう約束だったのですが」

「まさかジーニアスに奢ってもらう事になるとはなぁ……ジーニアス、僕だってお金(リル)は持ってるんだからこっちの分は――」

「良い匂いです――ほ、本当にここで頼んで良いんでしょうか? 私、そんなにお金は――」

「あの、所でこれはどういう集まりなのですか……?」

 

 

 カシミヤ、そういうのは別にバラさなくても良いと思うんだ!

 コテツ、こういう所でくらい僕にも恩返しさせて欲しいという事で納得して貰いたい!

 サラさんは普通の反応(?)をありがとう、本当にありがとう……僕も多少は小金持ちだから全然頼っていいんだよ。

 春香、それはだね――

 

 主に僕とカシミヤの夏休みお疲れ様会兼お食事会だよ!」

 

 

 ――そんな風にテンションを上げながら、いつか春香に紹介された茶屋での招宴が始まったのであった!

 美味しい物くらいは特に難しい事を考えずに良く味わって食べたいからね――

 

 

 

 

 

 

 

 さて。

 今日こうして皆で集まって高級茶屋で寛いでいるのは他でもない、つい昨日カシミヤと約束した「一回奢る」が発端だった。

 別に僕も〈神造ダンジョン〉での稼ぎや他のジョブクエストでの稼ぎのお陰で金銭には余裕があるし、それ自体は問題なかったのだけど……

 問題があったのは、いや問題と言う物でもないのだけれど、今日が現実世界で八月の三十日……もう学生たちの夏休みが終わる時期になっていた事だった。

 

 流石の僕でも学校を自主的に休んでまでデンドロはプレイできない。

 必然、これ以降はまた冬休み等の長い休みになるまで一日中デンドロをプレイする、なんてのは平日には出来なくなってしまう。

 ……まぁ、つまりそれを寂しい、と感じてしまったのだから仕方がないよね。

 だから、この機会に少人数でも人を呼んでパーッと盛り上がろう! という魂胆だったのだ!

 

 

 そんな招宴に招かれてくれたのはこちらの四人!

 

 普通に現実側(リアル)で連絡取って合流したコテツ!

 美味しい物を食べさせようという意見の一致により参上させられたサラさん!

 【陰陽師】ギルドのお手伝いしていた所を誘った春香!

 最初から数の内だったので時間通りに合流したカシミヤ!

 以上!

 ……冒険者ギルドで烏丸達とも会ったんだけど、丁度今からクエストだからと泣く泣く断られたんだよね。頑張って!

 

 

 ――人数が少し少ないかもしれないけど、僕の交友関係からすればまぁこれくらいでいいんじゃないかな、と思う。あまり大人数過ぎても店に迷惑だしね。

 そもそも僕のフレンドリスト、20人くらいしか……いや、それは別に関係ないか。

 

 

 

 

「――それにしても、二人はもう学校が始まるんだね。カシミヤ君は課題とか大丈夫かい?」

「ええ、はい。恥ずかしながら夏休みの最初の方はこのデンドロに嵌ってしまいまして、終わらせたのは少ししてからなのですが……」

 

 

 宴が進むにつれて、皆もお喋りモードへと移行していく。

 あ、カシミヤ。それは僕もだったね……

 ……サラさんだけはまだまだ目を輝かせたまま甘味を頬張っている様だ。元々こういうのはあまり食べた事なかったのかな?

 

 

「いつも不思議に思っていたのですけど……本当に“私達の世界”と“其方の世界”では、時の流れが違うんですね? ……複雑な、感じです」

「それは僕達も不思議に思っているんだけどね……一体どうなっているんだろうね?」

 

 ちなみに、僕達はこうやって夏休み、とは言っているけど、デンドロ内での季節はも丁度夏真っ盛りの時期を迎えている。

 サービス開始がデンドロ内での春真っただ中のとても過ごしやすい気候の日だったのは、さてどの管理AIの企みだったのやら。

 ……そういう所は気が回るのに所々で運営としてアレだからもう!

 

 まぁ、こっち(デンドロ)の世界は四季はあっても気温の変化はそこまで激しくないみたいだけど。

 ……むしろ、〈UBM〉とか超級職のせいで異常気候になる事の方が多いんだとか。

 

 あ、管理AIで思い出したけど運営関連の調査は全くと言って良い程進んでないらしいんだよね。

 作為を感じるけど、少なくとも僕にできる事はないからなぁ……

 今はとにかくデンドロを楽しむのが、多分良いんだろうけど。

 

 

 

「――――しかし、学校、ですか……」

 

 

 

 と、そんな事を考えていると、コテツとカシミヤの会話を耳にしたのか春香が……憂い顔で呟いた。

 

 

「……どうしたの? あ、確かに僕とカシミヤがこちらに来る頻度は少なくなるとは思うけど――」

「あ、いえいえ。えーと、そうではないんです」

 

 

 うん……? その話じゃなかったんだ。

 ……なんだろ? あ、僕らが学校で習っている事とか、知りたいのかm――

 

 

「――私も、あと数ヶ月もしたら学園に通わなくてはならなくなるので、少し寂しくなると思いまして……」

 

 そう、儚げな表情をした春香はトンでもない発言をした。

 ――

 学、園……な、なんだってー!?

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

8月30日(日)

 いよいよ明日で夏休みも終わり! 明後日から小学校の二学期の始業式!

 ……夏休み中は友達を作ろう作戦を考える暇も無かったけど、カシミヤが言ってたのを実践してみれば……うん、なんとかなる、筈……!

 

 それにしても、夏休みは実際は一ヶ月半だった筈なのに、僕的には体感時間では三ヵ月半以上経っていたように感じられるけど、三倍時間を考慮すればまぁ四ヶ月半くらい。

 ……うん、休憩時間とかを鑑みれば僕もコテツ程ではないけど本当にデンドロ漬けの夏休みだったね。

 大丈夫だとは思うけど、体内時計を狂わせて学校で失敗しない様にしなくちゃね。

 

 今日は午後からカシミヤに一食奢る約束があったので午前中はたっぷり時間を使って宿題や提出物の見直しを余裕を持って行っておく。

 それと、夏休み中ずっと世話掛けちゃってたから、こういう時くらい明日香の家事の手伝いをして、勝も合流して三人で昼食。

 ……だったのだけど。

 話の流れで夏休み明けからのお話。まぁ、僕は予定通り普通に学生として学校に通いながらそれ以外の時間は今まで通りにするという事。家でまで勉強しなきゃいけない様な学力じゃないからね。ふふん。

 びっくりしたのは、僕がそうやって学校に通学している間、その時間に使われていない僕のデンドロのハードを使ってデンドロをプレイしても良いかと明日香に聞かれた事だった。

 ――<Infinite Dendrogram>は各々のデータを各ハードではなく、運営(管理AI)の方で個々に脳波データと紐付けして登録しているらしい。

 だから、同じハードを使用していても別人がログインすればちゃんと別々に遊ぶ事が出来るんだとか。……まぁ、同じハードを流用しているんだから一緒にはログインできないんだけどね。

 また、ハードではなく脳波データで紐付けしているからもし新しいハードを“組織”から支給された際にも特に問題なくデンドロを再開できるのもある。

 うん、明日香には本当に夏休みの間中我慢させちゃってたんだから僕としては全然問題ないのだけど……本当に三つ目のハードの支給が早急に待たれるね!

 

 さて、午後はカシミヤと一緒に茶屋に行く予定だったのだけど、少し思いついた事があったので、勝にも来て貰って早めにデンドロにログインした。

 それと言うのも、元々カシミヤとの約束がなくても今日か明日にでもお世話になった人達に長期休暇(夏休み)が明けて彼方の世界へ行く事(ログイン頻度)が落ちると言う事を伝えに行こうと思っていたのだ。

 そこで、丁度良いのでこの機会に世話になった人とか親しい人も呼んでパーティ(お食事会)みたいな物をで感謝の意を伝えたいと考えたのだ!

 

 ……まぁ、いきなり呼んでもそんなに時間は割けないからって誘えたのは春香だけだったんだけどね!

 藤原さん(受付のお姉さん)とか、池辺さんも声を掛けてみたりしたんだけど、残念。

 <マスター>の方は元々ログイン時間がまちまちだし、活発的に活動している人はあまり街に留まってないしで結局はカシミヤと春香、それとコテツとサラさんの少人数になってしまった。

 まぁ店の規模的に元々大人数はNGだったし、割と丁度良かったのだけれど! ……だからリンもイグニスも【ジュエル】の中から通信魔法使ってまで慰めてくれなくてもいいんだよ!

 

 

 ……まぁ、今日最大の事件はそのパーティの場で起こったんだけど。

 雑談をしている内にそういう話になったのだけど、なんと春香も近く学園へ、それも全寮制の学園へ三年間通う事になるんだって……!

 特段厳しい所――と言う訳でもないらしいけど、それでも全寮制の学園。外出できる機会は非常に少なく、当然ながら今後はこうやって過ごすのも難しくなる、という……

 僕とカシミヤがログイン頻度が減ると言う話の流れで更にその追い打ちだったから、春香も凄く寂しそうな顔をしていて、だね……

 

 ……金にあかせて茶屋で甘味を大量にテイクアウトしてアイテムボックスに入れて貰い、一旦パーティを打ち切る事にしたんだ。

 春香の手を引いて、そこに居た皆と一緒に冒険者ギルドに連れ込んで適当に職員の人に選んで貰った仕事(ギルドクエスト)を片っ端から受けていく事にした!

 気を紛らわせる方法としては下策だったかもしれないけど、あの時思いついた方法では最良だと思ったんだよ……!

 カシミヤとコテツとサラさんには少し迷惑を掛けて借りを作っちゃったけど、仕方ないな、とでも言いたそうな顔で手伝ってくれたのは嬉しかった。

 ……やっぱり、この世界に来て初めてできた、同年代の友人達だから、暫く会えなくなったり、会える頻度が減るって言うならこうやって馬鹿やってみるのも、良かったかな……?

 僕がこういう経験全然ないの知っているのにコテツは少し後ろでクエストのサポートしながら微笑んでいるだけだし、正解なのかは全然分からないんだけどね! 本当にこれで良かったのかなー!?

 

 そして、冒険者ギルドの職員さんもここぞとばかりに他の人が受けない様な手間の掛かるクエストばっかり持って来るとか! ぐぬぬ。

 まぁ、クエストに対する愚痴を零し合いながらもステータスやスキルを全開にして取り組んでいく内に呆れたやら可笑しいのやら、春香もいつも通りの表情になったのだから、多分良かったのだと思いたい……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月31日(月) 

 ……昨日と今日の僕のデンドロでのテンションを思い出すとまだ少し恥ずかしくて顔が熱くなるけど、なんとか冷静になって日記を書く事にする。

 明日は始業式だからね。

 

 今日のデンドロは昨日の続きから。

 カシミヤとは少し前に解散したけど、残りの僕らはまだギルドクエストを続けていた。

 ……まぁ、他の人がやらない様な探し物とか簡単だけど報酬の少ない下級の素材調達とか、エトセトラエトセトラ。

 半ば自棄になりつつも全力で取り組んでいたんだけど、そんな細かくも面倒な依頼達を10個も終わらせる頃には春香も落ち着いてきて僕らの意図を察したらしい。

 顔を僅かに赤くしながらもコネを使ってか南の<群白森林>の奥地の泉の魔力の込められている水の採取依頼を請ける事になった。

 奥地まで行けば人に会う事もそんなにないし、そこそこ時間が掛かりそうな依頼でもあるのでゆっくり話ができそうだった。

 

 ……で、少し詳しい話を聞く事になったのだけど、どうやらこの天地の国では(他の国でも同じ様な所はあるらしいけど)大名や他の有力者の御子息御息女や稀なる才能を持つ子供等は、12歳になるとその国で最大の規模を誇る学園に通い、学ぶ暗黙の了解があるらしい。

 勿論、本人や家族の意思を尊重するのが一番ではある。あるのだけど……

 暗黙の了解、と言ってもティアンとして、この世界で生きていく者として、権力者の子として、才能を持つ子として、国からある程度の支援を受けながらも学業に専念して様々な事を学んでいく――

 それは他でもないその子供の為でもある事なのは間違いない事実として認識されているし、実際それは真実なのだろうとも思う。

 それでなくともこの世界は、この世界を生きていく者達に対して“厳しい”のだ。

 幼い子供の頃から病弱で家から出て寮で暮らすなんてとてもできない様な子や、既に“問題”を起こしていて家の意向で軟禁され続ける未来が確定している様な問題児とか、そういう例外以外は普通は学園に通っていくものらしい。

 

 ……そして、今。今この時期においては事情はこれだけに収まらない。

 この世界は今までに類を見ない程の動乱の時を迎えようとしているのは、おそらくこの世界に生きる力を持ったティアンなら誰でも察しているだろうと思う。

 <マスター>の急激な……今までと比べて急激すぎる程の増加はその増加が始まってデンドロ内で四ヶ月以上が経過している現在であっても未だに新たな<マスター>が各国の初期位置に現れ続ける程。

 そして、<マスター>の急激な増加に呼応する様に発生した〈UBM〉の増加、急速に、エンブリオの力を得て強くなっていく<マスター>達や〈UBM〉によるパワーバランスの変化に、刻一刻と通常モンスターの生態系は変動し続けていく。

 当然ながら、それに伴って起きる各国間、各組織間のパワーバランスの変化もまた然り。

 

 こんな時期に学校の教育を受けられない、というのはなるほど確かに、非常にマイナスになる筈だと冷静に考えられる。

 学園での学びは勿論の事、学園の場所も場所なので他の都市に居るよりは安全だし、情勢の変化に伴う教育内容の変化もダイレクトに味わうだろうけど、それもまたこの後のこの世界を生きていくのに必要な事なのだろう、と泰央氏は言っていたらしい。

 それでなくても春香が通う事になる学園は国では一番の規模を誇る、一種の研究所としての役割も持つ施設でもあるのだから、やはりそこで学べる事を逃す事はできない。

 

 その様な事情もあり、春香が学園に行く事は既に確定している事で、これを引き留めるのは自分勝手な我儘でしかない……のだと、良く理解できた。

 でも、僕も折角仲良くなったんだからそれで疎遠になってそのまま、なんていうのは本当に嫌だった。……って、こうやって日記を書いて振り返ってみると、デンドロで過ごした内の時間では本当に一番長く一緒にいたんだね。

 

 

 まぁ、そんな訳で自然と話題は春香が学園に行ってからの話になった。

 結論から言うと……僕と春香は文通をする事になった!

 春香が行く学園は慶都にあって、在校生や学園の職員の許可があれば特定の敷地内なら普通に出入りする事も許可されているとの事なのでたまに遊びにでも……という話もあったんだけど、ティアンの学園生活と僕らの現実側(リアル)の学校生活のライフサイクルはそう簡単には一致しないんじゃないかな、と。

 

 その為に提案されたのが、これ(文通)だ。

 手紙の配達配送などは本来は【飛脚】や【荷役(キャリア―)】の専門ギルドの管轄だけど、現状は実際には冒険者ギルドで斡旋しているメインのギルドクエストの一つ。

 これを利用すれば文通だって現実的に可能なのだ! ……配送料一回数百リルとか取られるけど、まぁこれくらいのお金は僕も春香も端金みたいな物だし。

 ちなみに、僕は<マスター>で特定の拠点とか、持ち家とか、そういうのは持ってないんだけどそこは文のやり取りの度に次回は何処の冒険者ギルドへ届けて貰うか指定すれば指定された冒険者ギルドで受けとる事が可能なのだ。

 それこそ僕が監獄とかに送られでもしない限りはね! ……犯罪をするつもりはないのだけど。

 今の僕はイグニスでひとっ飛び何処へでも飛んで行けるし、最悪何かあってもコテツに依頼するという手も使えるからね。

 

 ……うん、まぁ。大白宮に居て欲しい、って。直球で正面から言われた時は本当に困ったけど。

 最終的にどうするかはともかく、僕はこの世界を――天地だけじゃなくて、いつかはすべての国を見て回りたいって思っているからね。

 <マスター>として。あと、僕個人の意思としても。

 

 ……って言ったら涙ぐまれるのは本当に反則だよね!?

 結局その後も暫く気晴らし兼、思い出作りに時間ギリギリまで色々と付き合う事になった。まぁ、これくらいは良いんだけどねっ!

 

 

 

 

To Be Continued…………




ステータスが更新されました――――

【飛脚】【荷役(キャリア―)】:それぞれ東と西の運び屋系統下級職。
 ステータスはAGIとSTR、そしてSPに特化している。【飛脚】はややAGI寄り、【荷役】はややSTR寄り。
 《行路適応》《持久力強化》《走力強化》《危険察知》《大跳躍(ハイ・ジャンプ)》等正にジョブに相応しい有用なスキルを複数習得する。
 更にそれぞれのジョブで最大スキルレベルの違いなどはある物の、非戦闘時のAGIとSTRを格段に引き上げるスキルだとか所持しているアイテムボックスの容量を若干拡張するスキル等も習得する。
 そんな有能ジョブなのに専門ギルドのジョブクエスト請けてくれる人が少ないと嘆きの声が聞こえるとか聞こえないとか。


 はい、今話も最後までご覧頂きありがとうございます!
 今回の学園行きの伏線は初登場の時に御年11歳だと描写していた時点で必然……必然っ。
 そんな感じの話でした。まぁまだ数ヶ月(デンドロ内で)は時間に余裕がありますが。
 さて、次回でようやく一章エピローグです。
 次話もよろしくお願いします! ……夏休み明けの学校の描写は多分あっさり気味になりますが!
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